ベアトリスの憂鬱
Last-modified: 2014-05-21 (水) 19:47:45 (3625d)

クルデンホルフ姫殿下のベアトリスはほっとため息をついた。
「全く、学院の生活も退屈ね・・・」今日は珍しく、
取り巻きを連れず、一人でいた。なぜなら三人とも
急用で実家に帰ってしまったからだ。
ベアトリスがぼんやりしているとそこへ
「もう、サイトったら修理の方に夢中になってないで
少しはご主人様の事も気にしなさいよ」と声がした。
ベアトリスは声が聞こえる方を見ると桃色の髪の
少女が鉄の龍みたいな物をいじっている黒髪の少年に
声を掛けているのが見えた。
「そんな事、言ったって仕方ないだろ、こないだの
騒ぎのお陰で修理が進んでないんだからさっ」
「コルベール先生と二人っきりで直してないで騎士隊
に手伝わせなさいよ。あんた、副隊長なんだからっ」
「あいつらに手伝わせたら一生終わらねえよ、今日は
もうじき終わりにすっから俺の側に居ればいいだろっ、
俺はどこにも行かねえよ、俺はルイズの使い魔なんだ
からさっ」と少年がいうと、
少女は言われた通りに少年の側に来て肩に手を掛けた。

ベアトリスはそんな少女がうらやましかった。
その少女の名前はルイズ・ド・ラ・ヴァリエールという
トリスティンの実力者の一人であり、ベアトリスの父、
クルデンホルフ大公国王も頭が上がらない三人の内の一人、
ヴァリエール公爵家の三女でありながらかつて魔法が使えずに
「ゼロのルイズ」と呼ばれていたベアトリスの二学年うえの
上級生である。そして、そして、彼女のそばにいるのは
オンディーヌ騎士隊の副隊長であって、そのルイズが
使い魔として、召喚してしまったという経歴を持つ、
サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガという少年である。
何故、ただの使い魔の少年が騎士隊の副隊長に
なれたのかというと以前あったアルビオンとの戦争の際、
七万という敵軍をたった一人で喰い止めながら奇跡の
生還を果たすという人並み外れた大戦果をあげたからだ。
しかし、後で聞いた話ではベアトリスのクラスメイトであるティファニアと
いうハーフエルフの少女が死にかけていたところを助けたらしい。そして、
今回のエンシェントドラゴンの出現の世界の危機の際なんか、召喚
される前にいた世界から戻って来て、この世界を救ったという
トリスティンが誇る勇者である。
ベアトリスも彼の強さを知っていた。なぜならティファニアに最初、
異端審問をした際、彼は自分の護衛と戦って互角にやったからだ。
(あれなら、ヴァリエール公爵が気にいるわよねー)と素直に感じた。
実際、何だかんだ言いながら二人からは笑い声が聞こえている。
(自分にはああいう大事にしてくれる人は現れるのかしら、確かに
自分の周りには友人や取り巻きがいる。でもあの人みたいに側に
ずっといて守ってくれる人がほしい)ベアトリスはそう思った。
「ベアトリスさん、どうしたんですか?、そんな深刻そうな顔して」
声がして、顔をあげるとティファニアがいた。あんなことをしたと
いうのに自分を友達にしてくれたティファニアに感謝していた。
「あの二人が羨ましくてつい眺めてしまってたのよ」と言えば
ティファニアは「サイトさんとルイズさん、本当に仲がいいですよね、
私がサイトさんを使い魔にしてみて思ったんです。サイトさんとルイ
ズさんは心がやさしいです。私がサイトさんを使い魔にして、死んで
しまうかも知れないのに私を責めなかったから・・・
だから二人には幸せになってほしいです」と言った。
ティファニアは続けて「ベアトリスさん、私は貴方の友達だから
困った事があったら私に相談してください、私に出来ることが
あれば手伝ってあげますから」と言った。
「ありがとう」ベアトリスは嬉しかった。自分にもルイズのそばにいる
サイトのような自分を分かってくれる人がいることが分かって・・・。


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