結婚式前
Last-modified: 2014-10-11 (土) 23:17:11 (3483d)

 サイトは夢を見ていた。四方八方が霧に覆われ、自分はそこを
当ても無く、歩き回っていた。『何処なんだ、ここは』思ったが
声がでない。それと同時に自分は何故ここにいるのかと自問自答
していた。暫くそうしていると「サイト、眼を覚まして…」とか
「サイトさん、あんまりですよ。ミス・ヴァリエールを選ぶだけ
選んで私達を振らずに死ぬなんて…」という声とうっすらと入る
光に気付いた。目を開けるとルイズやシエスタだけでなく、他に
ギーシュやモンモン、それにテファ達の顔が見えた。なぜかみん
な泣きそうな顔でサイトの顔をのぞきこんでいた。
「どうしたんだ。みんなそんな顔して」とサイトが呟くとルイズ
が泣きながらサイトの胸を叩いていった。
「バカ!!死んだと思ったじゃないの!!プロポーズしてくれた
かと思ったらいきなり倒れちゃって動かないんだから!!」
といった。しかし、サイトにはなんのことかわからない。
「プロポーズ?いつしたんだよ。そんなことより、ドラゴンはど
うなった?さっさと、教皇とデルフの仇討ちしねえと!」すると
ギーシュが「もう終わったよ。ドラゴンは君とルイズで倒したか
ら」といった。
でもサイトには記憶がない。「何だって!何日前だよ?」
今度はコルベール先生がいった。「3日前だよ、サイトくん。
それでは君はなにも覚えてないんだね?」
サイトは黙って頷き、「俺、デルフが壊れた後からなにも覚
えてないんです。今までどこに居たのか全く」
するとそれまで黙っていたシエスタが「デルフさんが壊れた後、
サイトさんはガリアに帰って来て〔戦闘機〕があればドラゴン
なんて倒せると言っていたのを聞いていたミス・ヴァリエールが
〔戦闘機〕を取りに行きましょうと嘘をついて【世界扉】でサイ
トさんを送り返したんです。サイトさんのいるべき世界に」と
いった。「でも俺はここにいるぞ」
今度はテファが「サイトさんは太陽から飛び出してきたんです。
そして、ルイズさんのエクスプロージョンをリーヴスラシルの力
で増幅させてドラゴンを倒してルイズさんにプロポーズした後、
今までずっと眠ってたんです」といった。さらにモンモンが続け
て「私の作った薬を飲ませたけどぜんぜん効果が無くてみんなで
あれだこれだと大騒ぎだったのよ」と言った。
「そうなのか、でも全然何一つ覚えてないんだ」
「しかし、何でその周辺の記憶がないのかな?」とコルベールが
首を傾げた時、「原因がわかりました」と声が聞こえ、アンリエ
ッタがジュリオとタバサと一緒に入って来た。「姫様!それに
ジュリオとタバサ!どうしたんです?」とルイズが尋ねた。アン
リエッタとタバサはサイトに「サイトさん、目を覚ましたのです
ね、良かったわ」と言った。
「でも俺、デルフが壊れたあとの事を覚えてないんです、本当に
ドラゴンは倒せたんですよね?」」
「うん、サイトとルイズがドラゴンを倒した後、サイトは意識不
明になったからロマリアから取り寄せた秘薬を飲む事でなんとか
一命をとりとめたの」
「でも伝説じゃ、リーヴスラシルの力を使い果たせば死ぬと云わ
れてたのに何故俺は助かったんですか?」
「それを今からジュリオさんが説明します」
「それはガンダールヴのお陰だよ、きっと」
「ジュリオ!!ごめんな、教皇のこと」
「いいんだよ。サイトくん、君が生き延びてくれて良かった、そ
れだけが救いさ」
ルイズがジュリオに聞いた。「でもガンダールヴのお陰ってどう
いうことなの?ジュリオ」ジュリオは静かな口調ながらはっきり
と語りだした。
「サイトくんが意識を失ったあと、ロマリアの古文書をオスマン
学院長と二人で読んだらこう書いてあったのさ。6000年前のリーヴ
スラシルは二人いたそうだよ、一人目が途中で死んでしまい、二人
目はガンダールヴがリーヴスラシルの力も持って世界の危機を救っ
たそうだよ。さらにシャルロット女王からガリア王家に伝わるとい
う古文書を見せてもらい読んでみるとそこにはにはその際、リーヴ
スラシルはとても強い力を一気に使ったから、ガンダールヴが自分
の命を守ろうとしたのか自分の記憶に使う力を生命に回して、助か
った代わりに世界を救えたという記憶が無かったという事が書いて
あったのさ。それらの古文書に書いてあることを照らし合わせて出
た答えはガンダールヴは一命をとりとめた代わりに前後数日間の記
憶が抜けてしまったという事さ」といった。
聞いていたキュルケがジュリオに聞いた。「それじゃ6000年前と同じ
ことがおきたことによって、サイトは助かったということになるのか
しら、ジュリオ?」
「その可能性が高いね。そうでないとしたら、サイト
くんとルイズの互いの絆が強かったから起きた奇跡と
しかいえないよ、どう考えても」
するとシエスタが突然、「サイトさん、ミス・ヴァリ
エールにちゃんとプロポーズし直しません?」
と言い出した。
「え〜!!恥ずかしいよ」
「シエスタ、いいアイディアね!私、返事してないし、
サイトが覚えてないんじゃ意味ないもん!」
「分かったよ、ルイズ!使い魔の俺だけど、世界で一番大好きだから結婚してくれ!」
「いいけど、浮気したら許さないんだから!!サイト、私のこと幸せにしてね」
翌日、サイトは胸のあたりの重さで目が覚ました。
見てみると自分の胸を枕にしてルイズが寝ていた。
そして、寝言で何度も呟くのはサイトの名前。
「サイトォ、死んじゃダメェ・・・」
サイトはルイズの頭をそっとなでる。
すると目を覚まして笑顔で「サイト、おはよう!」といってきた。
「目が覚めたか?ルイズ」頷くルイズ。
するとドアが突然開いて血相を変えたシエスタが飛び込んできた。
「サ、サイトさん、ミス・ヴァリエール。大変です!!」
「どうしたんだよ、シエスタ?こんな朝早くからそんなに慌てて?」
しかし、シエスタはサイトの言葉が聞こえてないのか早口で
「ミス・ヴァリエールのお姉様がいらしたんです!!」といった。
「はぁ、ルイズの婚約者を決めたから実家にこいかな。やっぱり、
世の中甘くないな・・・」するとルイズはシエスタにむかって
「もしもの時はサイトと結婚してあげてね」
「ミス・ヴァリエール・・・」シエスタは複雑な心境だった。
出来れば二人に幸せになってほしい。
二人の気持ちが一番分かるのは自分だから・・・
でも二人の間をヴァリエール家が許すかどうかわからないこの状況では
頷くしかない。「分かりましたわ、ミス・ヴァリエール」といった途端に
「ルイズ、ちびルイズ!」と口調は普段どおりだが、
眠そうな声のエレオノールがはいってきた。
「エ、エレオノールお姉様!どうしたの、こんな朝早く?」
顔色を変えて叫ぶルイズ。
するとエレオノールは三人にむかって予想外のことをいった。
「お父様があなたたちに話があるから迎えに行ってこいって
言われたから来たのよ。いうことがわかったらさっさと
着替えなさい。聞いてるの?ちびルイズ!」
サイトとシエスタは顔を見合わせた。「夢じゃないよな。これ」
「ええ、現実のことですわ」
エレオノールはサイトにむかって
「あんたもぼさっとしてないで、シュヴァリエのマントをつける!」
「は、はい!」どたばたと準備を終えると四人は馬車に向かい、歩きだした。
すると途中で会った、モンモンとテファとキュルケが
「こんな朝早くから何処へ行くの?」と聞いてきたので、
ルイズが「実家に行ってくるのよ」と答えた。
シエスタに見送られて動きだした馬車の中でルイズはエレオノールにいった。
「父様ったら私に婿をとれっていうのかしら」するとエレオノールは
「父様ったら急に名門貴族から婿を取らないといいだしてね、(ルイズに
一番あってるのは、使い魔兼オンディーヌ副隊長のシュヴァリエ・サイトだ!)
といって、私と母様が(ヴァリエール家が平貴族を婿にするなんて前代未聞よ!)と
いったけど、聞く耳もたずで(エレオノール、今すぐ学院に二人を
迎えに行ってこい!)って怒鳴られたから来たのよ、お陰で寝不足だけどね」
と欠伸を噛み殺しながらいった。
それはサイトたちも一緒ということで、三人とも寝てしまった。
馬車は、猛スビードで街道を一気に走り抜け、昼過ぎにはヴァリエール家に到着した。
馬車を降りた途端にヴァリエール公爵は、ニコニコ顔で
「ルイズ、婿殿、待ってたぞ!」といった。
サイトは思わず確認した。「本当に俺なんかでいいんですか?
貴族のルールもなにも知らないのに・・・」すると公爵は、
「いや、その謙虚さと、勇気の大きさを私は気に入ったのだよ、
名門の子弟達は揃いも揃ってルイズを幸せにすることより、
我がヴァリエール家と親戚になり、この国の利権を持とうと
いう気持ちしかないのだし、ワルドの様に恩を仇で返すやつもいたからなっ!!」
サイトは思い出した。ギーシュが前に言っていたことを…。
そこにカトレアが出てきて、「ルイズ、良かったじゃない!」と言っていた。
しかし、エレオノールとカリン夫人がサイトに対し、「あなた、ルイズを
泣かしたりしたらヴァリエール家の伝統の魔法で命がないと思いなさい」と
睨み付けられ、サイトはすくみ上がっていたのだった…。サイトは考えた。
「ルイズの家やこの世界の常識で言えば、あり得ないことを俺は実現させち
まったんだからこれくらいの風はしょうがねえなあ〜」
そして、夕食を終えた後、サイトとルイズは寝室にいた。
ルイズはサイトに聞いた。「サイト、元の世界に帰る気あるの?」
サイトは一瞬で答えた。「帰る気なんかないよ。ルイズと居られるんなら・・・
それに嬉しかった。やっとみんなに認められたんだと想って」
「でも元の世界に未練は無いの?」
「なあ、ルイズ。(世界扉)ってまた使えるんだろう?だったらそれでたまに帰れ
ばいいという気持ちなんだ。元の世界に帰れる嬉しさより、ルイズと離ればなれに
なるほうがよっぽどつらいから・・・」
「サイト・・・」
「ルイズ・・・」
唇を合わせる二人…。やっとお互いの気持ちが素直になれた瞬間だった。
しかし、この頃、学院では大騒動がおきているのであった…。


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