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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:44:09 (5645d)
104 :220 1/4 :2006/12/30(土) 01:13:50 ID:ies/KQEv
虚無の呪文。四系統とも、先住魔法とも異なる呪文である。以上。
要するに誰にも解き明かせておらず、その分何が何起きても不思議ではないのだ。
ルイズはそんな気まぐれな「虚無」の犠牲者となっていた。
「…で?俺にどうしろと?」
「そんなのわからないわよ!」
サイトはルイズの凄い剣幕にも関わらずのんびりと対応していた。いつもの迫力がルイズにはない。その理由は…
「だったらどうしようもねえだろ!」
「そ、そんなに大きい声出さないでよ…ふ、ふぇ…」
ルイズはうずくまって目に涙を浮かべ始めた。どうやらこの状況のせいで気弱になっているらしい。
もちろん、相手がサイトだからこそ喜怒哀楽がはっきりしているのだが。
「わ、悪かったよ…」
「わ、わかればいいのよ」
袖で目を拭い、胸をそらす。
…小さい。胸だけでは無い。短くなった腕、プニプニとした肌と頬。自慢だった脚は確かに美しいが、以前よりデフォルメ化されている。
何より、全身が幼児のそれに匹敵する大きさになったのはただ事では無かった。
「なんでそうなったんだ?」
「朝起きたらこうなってたのよ」
「…とりあえず、いつもみたいに待つしかないんじゃ…」
「…」
この二人の意見が一致する時は、ろくでもない場合が多い。
105 :220 2/4 :2006/12/30(土) 01:14:49 ID:ies/KQEv
今回もその例に漏れず、幼児となったルイズはとりあえずサイトと共に居ることにした。
オストラント号ではルイズとサイトは同室である。使い魔だからと言うのもあるが、実際はお節介をしたキュルケの働きも大きい。
窓からは雲の流れが見え束の間の休息をサイトは楽しんでいた。紅茶やクッキーなどを食堂に取りに行き朝の空気を楽しむ日本人の、サイトらしからぬ光景である。
同じ一つのテーブルについているルイズを楽しそうに眺めながら。
「カップが大きいんじゃないのか?」
「大丈夫よ!」
と、言いつつルイズは片手ではこぼしそうなサイズのカップを両手で持っていた。
そんなルイズを見てサイトは自然に笑みがこぼれてしまう。
「こぼすなよー」
「大丈夫って言ってるでしょ!」
飲み込むときの
んくっ、んくっ、という音は今のルイズに似合っていた。
「クッキー、あーんしてやろうか?」
「ふざけないで!」
ルイズは自分で小さなクッキーを口に運ぶものの、口が小さい為にくわえる様にしか食べられなかった。サイトはますますからかいたくなる。
「小さく割ってやるぞ?」
「う゛〜」
再び涙を浮かべるルイズを、サイトはなだめにかかっていった。
106 :220 3/4 :2006/12/30(土) 01:15:58 ID:ies/KQEv
「食堂で椅子にも座れ…」
「ふっ…ふぇ」
「いや、馬鹿にしてるんじゃないって!」
事あるごとにルイズは涙を浮かべた。サイトに馬鹿にされるのがやはり悔しいのである。
サイトはルイズの頭を撫でながら言う。
「ほら、だからメシは俺がとってきてやるから、お前は部屋から出なくていいぞ」
「…わかったわ」
「あんまり外にも出たくないよな?」
「…うん。きっとからかわれるもの」
やることが無くなってルイズはベッドの上に寝ころんだ。幼児の習性かルイズはそのまま寝息をたてていく。
「やれやれ…」
サイトはため息を一つつき廊下に出た。
「あれ?サイトさん?」
「シエスタ?」
シエスタとサイトが出会ったのはサイトがドアを閉めて直後だった。
いくら巨大船とは言え船は船である。狭い廊下ではばったり他人鉢合わせる可能性は高い。
「おはようございます」
「あ、おはよう…ってもう昼じゃん!」
「でも今日は初めて会いましたもの?」
「あ、そっか。おはよう、シエスタ」
こんな状況でもルイズとサイトは一緒に居る時間が長いのに比べ、シエスタはサイトと話す時間が最近少なくなっていた。
ここぞとばかりに二人に進展があったのかと思い、問い詰めていく。
107 :220 4/4 :2006/12/30(土) 01:17:20 ID:ies/KQEv
「ミス・ヴァリエールは?」
「いまちょっとな…」
目をそらしたサイトを見て不審に思ったのか、シエスタは身を乗り出した。
「ちょっと、何です?」
何か疑ってんのかな…シエスタは俺の事好きだってはっきり言ってるし…
疑ってくる時のシエスタには慎重に言葉を選ばなければならない。
サイトは平静を装い言葉を返す。
「そうだな、きっとどこかに…」
「どうされたんですか?私、今朝何度かここを通りましたけどミス・ヴァリエールを見かけていないのですが?」
シエスタはさりげなくプレッシャーを掛けていく。
こんな昼間近くまで部屋の中で何をしていたのか、と。シエスタの監視は凄まじかった。
「いや…その」
「どうされたんですか?」
三度目、すでにプレッシャー以上の物がシエスタからは出ていた。
苦し紛れにサイトは言う。
「疲れて、寝てるんだ」
ここ一週間、戦いらしい戦いは起きていない。
シエスタの目に炎が宿るのを確認し、サイトは顔を真っ青にした。
シエスタはサイトをはねのけ、素早く扉を開ける。
扉の開いた音は少々大きく、ルイズを眠りの世界から呼び戻すのに充分だった。
「ミス・ヴァリエール?!まさかもう…」
シエスタが部屋の中を見回すとベッドの一部が膨らんでいる。サイトの取り付く島もなくシエスタはそこへ直行して、シーツに手を掛ける。
「や、やめろシエスタ!」
「ミス・ヴァリエ…」
そこでシエスタの動きが止まった。
恋の炎で頭に血が上ったシエスタには、その「幼児」が、ルイズ本人であるとは微塵も思えなかった。有り得ない方向に誤解していく。
「ま、まさか…」
「シ、シエスタ…」
夢の世界から戻ったばかりのルイズはまだ寝ぼけており、一言こう呟いた。
「お母様…?」
211 名前:220 1/4[sage] 投稿日:2007/01/01(月) 15:31:30 ID:9tAm7A7k
ルイズが寝起きに放った一言はサイトにとって最悪のものであった。
覚めたばかりの目をこすりながらルイズはようやく現実の世界に戻っていく。
「あれ…メイド?なんで?」
「サイト…さん」
ベッドから身を起こすルイズを無視し、シエスタはサイトの方に向き直った。
「思いもよりませんでした…二人の仲が…こんな…こんな」
「いや、だから」
「もうこんな…愛の結晶になっているなんて!」
シエスタはショックを受けた風にその場に打ち伏せた。サイトが誤解を解こうとする前に、シエスタの考えは益々独り歩きしていく。
「そうですよね…あれだけ一緒に居たんですもの。そんな事があっても…」
「違うんだって」
「ミス・ヴァリエールは素敵でしたか?子供の居る部屋でそんな事はあまり良くありませんよ?」
「だから何もして」
「今度そういう事をなさる時はおっしゃって下さい。私、面倒くらい見れますから」
そう言うとシエスタはすくっと立ち上がり、ドアを開けた。
「負けてしまった以上、これ以上闘うのはみっとも無いですよね。何か入り用の物があったらおっしゃって下さい。私は応援させていただきます」
本職のメイド行儀の言葉を並べ、シエスタは部屋を後にした。
212 名前:220 2/4[sage] 投稿日:2007/01/01(月) 15:32:36 ID:9tAm7A7k
結局誤解が解けていないまま、シエスタを自分の部屋に返してしまったのである。
それがどういう結果となるか、あまりよく無い想像がサイトの頭をよぎった。
再び寝直すと言ったルイズを部屋に置きサイトは食事を取りに行った。どうやらぼーっとしていたらしく先程のシエスタとの会話は覚えてはいない様だった。
「ったく…なんなんだ?」
独りごちながら厨房に料理を頼んでいく。
あんまり肉は食べさせない方が良いよな…後硬い物とか…
なんとなくそんな事が思い浮かび、メニューを幾つか訂正していく。
このままじゃ本当に親父じゃねぇか、と自分にツッコミを入れルイズの事を考えた献立にすると…
「…なんだコリャ」
お子様ランチとなっていた。流石に日の丸の旗は立っていないがオムレツ、温野菜、パンも柔らかな白パンを選び、柔らかなデザートを幾つか並べていく。
同時にこのメニューは人目を引いた。
「やあサイト、具合でも悪いのか?」
こういう時に絡みたくない相手、ギーシュが構ってくれば、
「そうだサイト。そのメニューが昼食だとは僕には信じられない」
とマリコルヌが脂っこい料理を満載しているトレーを持ち、話しに乗ってくる。
213 名前:220 3/4[sage] 投稿日:2007/01/01(月) 15:33:41 ID:9tAm7A7k
「ルイズの分だよ」
「ほぉ。そう言えば今日はルイズをみかけていないな」
「気分が悪いんだと」
これ以上は構ってられないと言わんばかりにサイトは二人を振り切ろうとする。が、それは余計に不審がられたらしい。
「なにかあったんじゃないのか?」
マリコルヌが食い下がった。
「そうだな。何故かサイトの顔色も悪い様な気がする」
ギーシュも同調してサイトの背中を目で追う。
このままついてこられたらまずいな…
サイトは駆け足で部屋に向かった。
「ただいま…」
ルイズは未だに寝息を立てていた。サイトはテーブルの上に料理を起きベッドの端に腰掛ける。
「…」
ルイズの寝顔はいつもの激しい気性を隠し、無防備な表情を見せていた。今のルイズが幼い姿になっていても、サイトはこういうルイズを見るのが好きだった。
むしろ幼い姿になっている分ルイズの事がわかりやすくなった気がして、嬉しかった。
いつもより小さな唇がむずむずと動いている。
「ルイズ…」
サイトは〇リコンでは無い筈だがルイズの唇が魅力的に見えて、キスがしたい、と思ってしまう。
「今やったらやばい気がするけど…でも」
相変わらず窓からは昼の明かりが差し込み、穏やかな昼間を演出していた。
214 名前:220 4/4[sage] 投稿日:2007/01/01(月) 15:35:12 ID:9tAm7A7k
殆ど無意識にサイトはルイズに顔を近づける。あどけない顔を見ると罪悪感どころか、するのを待っているんじゃないかとさえ思ってしまう。
そして
「…」
サイトは甘い香りに包まれながら幼い唇を味わっていった。
「なあ?」
「うん?」
「ノックも無しに…」
「何を言ってるんだ?ノックなんかしたら意味がないだろう?」
「それはそうだけど…二人っきりで部屋に居るんだ。何をしてるかわからないじゃないか」
扉の前で言い争っていたのはギーシュとマリコルヌである。結局二人で部屋に行き、気になったからサイトを探ってみようという意見が一致したのだった。
「早くしないと時機を逃してしまうぞ?」
「時機って何だよ。もしかしたら僕達が思いもよらない所まで事態が進んで…」
「それはそれで見ものだろう?」
妙な所で臆病であり、妙な所で積極的だったのがギーシュだった。今回は積極的である。
扉に耳を当てても部屋はしんとして、人の気配は感じ取りにくかった。
「二人ともどこかに行っているんじゃ…」
「逢い引きか?入って見ればわかるだろう。とにかく僕は行く」
「ま、待ってよギーシュ!」
ギーシュはそっと、なるべく音を立てない様に扉を押した。
「…なあギーシュ」
「…なんだい、マリコルヌ」
「僕は見てはいけないものを見た気がする」
「ああ、僕もだ」
二人に気付いたサイトが扉を何度も叩いているが、その音を気にせず語らいを続けていた。
「あれは…ルイズだったかい?」
「いや…もっと幼かったよ。目には自信がある」
「そうか…」
背中で扉を抑えつけながら二人は、頭の中に部屋の中の光景を焼き付けていた。
「…違っ…ルイ…」
扉越しのサイトの悲鳴を聞いて。
323 名前:220 1/5[sage] 投稿日:2007/01/04(木) 14:26:59 ID:fk6ZSF4H
214
ギーシュとマリコルヌが入り口を塞いでいる以上サイトに逃げ場はなかった。目を覚ましたルイズは鬼のような形相でサイトに歩み寄る。
…実はそれほど迫力が無いのだが。
「なんか息苦しいと思って目ぇ開けたら…アンタは何やってんのよ!」
「いや、ルイズの寝顔が可愛くって…」
問答無用と言わんばかりの蹴りが、サイトの股間にクリーンヒットした。
「ぅ…ぉぉ」
いくらルイズの体が小さいとは言え、ここへのダメージは大きい。
「それで?扉の外は誰?」
「ギーシュと…マリコルヌ…」
吐き気をこらえながらサイトが言う。ルイズはうつ伏せるサイトを素通りし、扉を叩いた。
…手応えが無い。
ルイズはため息を付くと、サイトに何が起きていたのかを聞き出していった。
「で、どうなんだ?」
ギーシュが問う。
「ええ、あの子は…」
シエスタが答えた。
ギーシュとマリコルヌはメイドの給仕室に来ていた。あの衝撃的な光景が何だったかを確認する為である。マリコルヌの進言で
「今一番あの二人と親しいのはメイドじゃないか?」
と言う言葉にギーシュも同調し、シエスタを訪ねる事にしたのだ。
もちろんシエスタの誤解は解けていない。
324 名前:220 2/5[sage] 投稿日:2007/01/04(木) 14:28:57 ID:fk6ZSF4H
シエスタは何か悟ったような笑みを浮かべ、さらりと言ってのけた。
「お子さんですよ?」
「誰のだ?」
「サイトさんとミス・ヴァリエールの…」
「…」
「…」
「「何ー!」」
ギーシュとマリコルヌが声を揃えて驚く。
「い、何時の間に…」
マリコルヌに至っては声も発せないようだった。この二人も性に関する知識が乏しいのか、ルイズが子供を産める筈が無い事に気づいていない。
どうすれば子供が出来るのか。その程度である。
「サイトは大人になったのか…」
男として二歩も三歩も先に行ってしまったと感じ、二人はがくりと肩を落とした。
「ん?じゃあキスの相手は誰だ?」
「親子なんだからそれ位するだろう?」
「そんな感じじゃなかった様な…」
もう少し、今度はサイトに聞いてみたいと言う思いが膨らんでいく。
二人の話を聞いていたシエスタはここにいる貴族より遥かに、想像力が豊かであった。目の前でギーシュとマリコルヌが話している内容を聞いて、自分なりの解釈をしていった。
…そう言えば母親はミス・ヴァリエール。よって似ている。
サイトさんはミス・ヴァリエールが好きだから、似ている人を好きになるかも知れない。
325 名前:220 3/5[sage] 投稿日:2007/01/04(木) 14:30:29 ID:fk6ZSF4H
娘=母親似。
サイトさんは異常では無い筈だけど、父親によっては異常な程娘を愛すと聞いたことがある。
そして、深いキス…
「サイトさん!人の道を外れては行けません!」
何もない空間に向かってシエスタは声を張り上げた。両手でテーブルを叩いた音に他の二人は驚いて、体を縮み込ませる。
「な、なんなん…」
「行きましょう!そんな事をするサイトさんは生きてはいけない人です!」
「い、一体…」
「止めて下さい!サイトさん!」
疾風の様にシエスタはドアを跳ね飛ばし、サイトの部屋へと向かった。体を起こしたギーシュとマリコルヌも顔を見合わせた後、シエスタの後を追う。
シエスタの誤解は深まっていた。
ルイズはフォークでサイトの取ってきたオムレツをつついていた。空腹には勝てないようだ。
「アンタ、何やってんのよ!」
「俺だってわかんねぇよ…シエスタもギーシュもマリコルヌも何を勘違いしたのか…」
食事中に会話をする事がよろしくない事をルイズは知っているが、怒りで頭が回らないらしい。サイトは意気消沈して同じテーブルに腰掛ける。
「俺の話を聞いてくれないんだよ」
「…はっきり言うしかないじゃない。私がルイズだって」
326 名前:220 4/5[sage] 投稿日:2007/01/04(木) 14:32:27 ID:fk6ZSF4H
ルイズも半ば諦めのため息が出始めていた。
「…早く戻りたいわ」
「ああ」
「…ねぇ?」
「何だよ?」
「あまり考えたくは無いんだけど…私がこのままだったらどうする?」
デザートをつつく手を止めてルイズが聞いた。
確かに戻れると言う保証は無く、今までのルイズの考えなど希望的観測に過ぎない。戻れないなど、あまり考えたくは無かった。
ルイズの声にもいつもの強気が感じられない。
「さあな」
「なんでそんなに平然と答えられるのよ…ご主人様の一大事なのに…」
「だってさ」
サイトはすくっ、と立ち上がるとルイズに近付いた。見下ろす形になって、ルイズをじっと見つめる。
「な、なによ?」
「お前はお前だし、俺のご主人様だし…」
「…」
「と、とにかくルイズはルイズだろ?これからも俺は何も変わんねえよ」
自分の言ったセリフにサイトは赤面した。
「…そう」
同じ様にルイズも赤面して目をそらす。
いつもならこのまま口付けを交わし、少しだけの間思いを繋げる事が出来る。
しかし、身長差が大きくルイズから仕掛ける事が出来ない。
恥ずかしさをこらえてルイズが言った。
「ちゃ、ちゃんと使い魔の自覚が出来ているようね?」
327 名前:220 5/5[sage] 投稿日:2007/01/04(木) 14:37:15 ID:fk6ZSF4H
出来れば素直にキスがしたいと言いたいのだが、ルイズの方からは言えないのだ。
「ほら…たまにはご褒美よ」
「え…ご褒美って?」
「時々してあげてるじゃない…もう…」
唇に指を当てる仕草を見て、サイトはそれを悟る。
「この体でも…それ位できるわよ…」
「そ、そうか?…じゃあ…」
「背が届かないからアンタが抱えて」
サイトはルイズの小さな体を両手で抱きかかえた。同じ目の高さまで持ち上げ接近して見るとはっきりルイズと分かる。
唇という目標も小さくなっているが、その分愛らしくも見えた。
「…」
「…」
しばし唇を合わせた後、沈黙する。
「いつまでもこの体だと…」
「…何だよ?」
「…いつまでもキスまで…ね」
ルイズの言っている意味を、サイトは理解した。
「お前…それ…」
「ア、アンタとだってそういう事あるかも知れないわよ?」
「…いいんだよ。ルイズが俺のご主人様だったら、それでいいんだ」
「じゃ、じゃあもし私の体が戻って、私が良いって言っても…しないの?」
「そ、それは…」
サイトは答えに詰まった。もしルイズが自分の事を一生愛してくれるのならば、状況によってはしてしまうかもしれない。それどころか底無しに求めてしまう可能性もある。
オロオロするサイトを見て、ふっとルイズは笑みを浮かべた。
「…冗談よ」
「…何だよ。冗談か」
「…」
「…」
今頃になってルイズは自分が言った事の重大さに気付いた。サイトに許してしまう、と言う可能性を本人の前で言ってしまったのだ。キス以上をルイズが望んでいる。とも取れる。
サイトの方も幼い姿のルイズに、一瞬ではあるがキス以上の事を望みそうになってしまった。しっかり「ルイズ」と確認したせいで、衝動的にこのルイズでも良い、と思ってしまったのだ。
「…い、いまは無理なんだから!」
「…うん。頑張る」
「何を頑張るのよ!」
「ルイズが良いって言うまで」
「こ、この体じゃ無理なんだからね!」
「ルイズは?」
「…」
「ルイズは?」
サイトの暴走が始まった。サイトに抱えられているせいでルイズはもがくしか無く、気持ちが高ぶってしまったためサイトをはっきりと拒否出来ない。
「…私は…その」
「ルイズ」
「え?」
「ごめん。頑張って」
「…本気?」
サイトは首を縦に振り、幼いルイズを大きく見えるベッドに押し倒した。