10-22
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:44:13 (5637d)
22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 02:07:59 ID:qoB/843M
よく夢を見る。似たような夢を何度も。
「ルイズ…愛してる」
「私だけを愛してるの?」
「ああ…お前だけだ。俺はお前だけのものだ…」
「…サイト…嬉しい」
どちらからともなく体を近づけ、寄り添い合う。それは抱擁となって、お互いの鼓動だけを耳にする。
少しだけ瞳を閉じ、もう一度目を開けた時には…
「あ…私…なんで?」
「俺も…」
「やだ…恥ずかしい…裸なんて…」
「これからそう言う事するんだろ」
「…」
「…いやなのか?」
「…ううん。サイトなら…」
真っ赤になった自分の顔を思い浮かべると、急に気弱になってしまう。
これ以上言葉が出せなくなった時、サイトは決まってこう言う。
「…ルイズ。俺、ルイズが欲しい」
この上なく甘い言葉を囁かれて、今までのルイズはいなくなる。
「…うん」
ためらいなく頷いた後、更に深く重ねようとする体を感じて。
ルイズの目は覚めた。
「きゃぁっ!」
ルイズは頭の中を整理しようと、ベッドからはね起きて洗面台に向かう。
鏡台には赤面の治まっていない姿が映し出された。
「また…見ちゃった」
独り言を呟く。夢であった筈なのに鼓動はおさまらず、体は火照っている様に感じた。
23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 02:09:40 ID:qoB/843M
「どうして…どうしてよ…」
何度つぶやいても、灼きつけれられたような夢が頭に残っていた。
愛の言葉を囁くサイト。恋人として最後のコトを、受け入れようとした自分。
「なによ…私がサイトを好きだって言うの?…サイトなんか…サイトなんか…」
きらい、の筈なのに、言葉に出来ない。
「サイトなんか…サイトなんか…」
「呼んだか?」
「え?」
「…」
「…?」
「…きゃあああっ!」
「朝からあんだけ大声だせば聞こえるだろ…」
投げつけられたブラシのせいで出来たコブをさすりながら、サイトは言う。
「だって!いきなり!アンタがいるんじゃないのよ!」
「そりゃあ、あんな悲鳴みたいな声を聞けばいかない訳には行かないだろ。それに…」
「なによ?」
「なんか…横にお前がいないと、目が覚める」
その言葉にまた、ルイズの胸が反応した。
「ど、どういう事よ?」
「ほら、俺もいつも…お前を抱き枕みたいにして寝てるし…」
ルイズの知らない、事実。同じベッドと言っても、いつもは背を向けあって寝ている筈で、サイトが抱き枕にしていいのは、ルイズ自身がサイトの方に寄り添った時だけだ。
それなのに。
「ね、ねぇ?」
「うん?」
「私がいつそんなお許しを出したのかしら?」
「…あ」
24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 02:10:36 ID:qoB/843M
幾つか思いあたる節があった。なにより抱き合っていたような感覚ははっきりしていたのだ。
「最近寝苦しいと思ったら…」
「ま、待て!それはどうしても我慢できなかった時だけで…」
「我慢できなかったってなにをよ!」
朝の澄んだ空気に、サイトの悲鳴がこだました。
気分を入れ替えたはずでも、ルイズの頭の中には夢の中での行いが残っていた。
服を着替えても、気を紛らわせる為に紅茶を啜っても、隣のサイトを見ると溜め息が出てしまう。
サイトがいなくなればいなくなったで考えるのは、夢の続きであった。
「裸で抱き合って…なにするのよ?」
性の知識に乏しいルイズが、何故あんな夢をみたかはルイズ自身にもわからない。
ただ、なにかを望んでいた自分の姿を見てルイズは一人でうなったり、顔を真っ赤にしている。
「寝言になってないわよね…」
一番の心配事はそれだった。
サイトの方はルイズの機嫌の悪さを感じ偶然見つけた、適当な人の来ない部屋で昨晩の事を考えていた。
あまり寝言を言わないルイズだからこそ、昨日の寝言はよく覚えている。
サイト…なら…
ルイズに秘密にしていた抱き枕の時、ルイズは明らかに抱きしめ返してくれたのだ。
どんな夢をみていたのだろう?
25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 02:11:17 ID:qoB/843M
いざという時、ルイズの視覚を共有する事はできても夢までのぞけない事を、サイトは恨めしく思った。
例え寝言でも好きな人の夢に現れられたのは嬉しい。しかも、ただ事ではない寝言を残したのだ。
あの時先に寝ていたルイズとは違い、サイトはおぼろげながら確実に意識を残していた。
もしかしてルイズも俺の事が好きなのかと思ってしまうが、自分の希望的観測とも思えてくるとサイトの気持ちは沈んだ。
「俺は好きなんだよ…」
目の前の扉に覇気なく告げる。
ルイズは一度も告白めいた事を言っても、はっきりとした返事はしてくれなかった。
気があるようにも思えたがそのたび自分の勘違いと思い、サイトのモヤモヤだけが溜まっていく。
一言「好き」と言ってくれればルイズの地位は、サイトの中では不動となるのだ。
その言葉は聞けていない。
「ちゃんと俺が言ったらはっきりするのかな…」
今までの言い方では無くて、
「俺は使い魔とか関係無くて、ルイズが好きなんだ!」
と言えばいいのか。
ここまでちゃんと言わなければならないルイズが鈍感な気もするが、サイトはそれでもはっきりするなら、と心に誓う。
26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/12/28(木) 02:12:39 ID:qoB/843M
ルイズの方も自分の気持ちを整理すれば整理するほど、サイトへの思いが強くなっていたのを感じていた。
他の女の子のトコばっかり言ってるじゃない!
私の側にいればいいのよ!アンタは一生私と一緒にいなきゃならないの!
…でも、サイトと一生一緒にいるって…
サイトも使い魔の前に男の子だ。しかもルイズと同じくらいの年頃だ。
男と女。
一生共に。
イコール…
「ば、馬鹿じゃないの…」
誰もいないのに語尾が高く小さくなってしまった。
ルイズは改めて考える。
二人で一生一緒にいるなら…関係は…
サイトが嫌いではない。
「俺がお前を守る」。これは一種のプロポーズないだろうか。
そして二人は一緒に暮らして…家庭を築いて…
「なんで私がサイトの赤ちゃんを産んでるのよ!」
気がつけば思考は信じられない所までふっとんでいた。何度考え直してもルイズの未来にはサイトの存在があった。
その頃には料理くらいできて、眠るサイトを優しく起こす姿もあった。
「ほら…おきなさいよ」
「う…ん」
「私が起こしてあげてるのに、起きない気?」
「う〜ん」
「いいわよ?今日は一緒に寝てあげないんだから?」
「ゴメン…」
「わかればいいのよ」
口調は変わっていなくても、サイトと意志の疎通ができていた。誰よりも信頼して愛し合っている、そんな仲になっていた。
「…」
限りなく甘い妄想に、ルイズは浸っていた。
サイトにあんなコトやこんなコトをしてしまう自分が幸せそうに見えた。
そう考えると、今までサイトに取っていた行動が冷たいものに思えて、心配になってきた。
「ま、まだ嫌いになってないわよね…」
その相手の男は、今晩の決着を目指して、今から気持ちの整理をしていた。