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365 名前:青銅と香水と聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/04(日) 22:20:51 ID:sloCef+W 「ふん…日が上る前からこれか…。全く、何人に唾つけてるのよあの節操なしわぁ…」 影はそう呟くと、贈り物どもを手に持っていたズダ袋に放り込む。 「…ちゃんと、気づきなさいよ…」 そして、箱に軽く口付けすると、それを扉の前にそっと置いたのだった。 ギーシュは目を覚ました瞬間、がばぁっ!とシーツを跳ね上げると、寝巻きを着替えもせずに扉に駆け寄った。 「…え?一個だけ?」 それも小さい。 「ケティ?マリエラ?ルーシア?ファビオラ?メリッサ?それともハルナかっ?」 思い当たる数が多すぎて、逆に特定できないギーシュだった。 モンモランシーは一人で中庭で朝早くからお茶をしていた。 「…トイレ行ってこよ…」 朝から飲んだ紅茶は既に十杯を越えていた。 366 名前:青銅と香水と聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/04(日) 22:22:25 ID:sloCef+W 「ああケティ!君だね!君こそがこの香水を僕にぃぃぃぃぃ」 ギーシュがモンモランシーのあげた香水の箱を握り締めて、後輩の女の子の腰に抱きついていた。 「ひどいですわギーシュさま!私が贈ったのは手作りのケーキでしたのに! 言って、立ち上がってきたギーシュの前で、大きく右手を振りかぶると。 「最っっっっっ低!!」 ばっしぃぃぃん、と大きな音を立て、ケティの平手がギーシュを再び床にノックダウンさせた。 「ああ、待っておくれ、ケティぃぃぃぃぃぃぃぃ」 情けない声をあげてケティを制止するギーシュだったが、もはやケティの耳には届いていない。 「ぐぎゅっ」 潰れた蛙のような声をあげ、ギーシュは再び床に突っ伏した。 「ああらせっかくの聖女の日を邪魔してごめんなさいミスタ・グラモン? 背中を踏み潰されてぐりぐりされていたため、呼吸困難に陥っていたギーシュだったが、その言葉とともにモンモランシーが少しだけ足の力を緩めてくれたので、なんとか呼吸が戻ってきた。 「も、モンモランシー。その問題に正解したら何かいいことでもあるのかい?」 モンモランシーの声音からは本気しか伝わってこなかった。 「よ、よし言ってみたまえ」 あまりにも簡単だ。簡単すぎて、逆に引っ掛け問題なんじゃないか、と疑いたくなる。 367 名前:青銅と香水と聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/04(日) 22:23:26 ID:sloCef+W まだあるのか、とギーシュは反論しようとしたが、そんな間もなくモンモランシーは次の問題を出してきた。 「あなたに贈られたものは香水でしたね? なんだ簡単じゃないか、とギーシュは心の中で胸をなでおろしていた。 「も、もちろん…?」 ちょっとだけ、ホントにちょっとだけドキドキしながら、モンモランシーは彼の言葉を促す。 「もちろん、僕を愛しているどこかのレディが僕に贈ったものさ! 今度こそ、本当に、遠慮なく。 愛は空気のようなもの。普段は気づかないけれど、それがないと、人は死んでしまうもの。 |
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