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251 名前:黒い蜘蛛の糸 1/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:19:35 ID:lmkgam+I おかしいと思い始めたのは数週間前。 怖くて怖くて仕方が無かった。 笑いながら薬を渡してくれたモンモランシーが教えてくれた、魔法薬の使い方。 指先を少しだけ切って、にじみ出る血をハンカチに垂らす。 それだけ。 自分の部屋に閉じこもって、部屋の隅で指先のじくじくした痛みに耐えながらじっと見つめる。 赤く滲んでいた血が、鮮やかな蒼に変わる。 「……あ……」 ウェストウッドのティファニアの家で、 何度も重ねたサイトとの行為。 その結果。 「…………モンモランシーにお願いしないと……」 今度のお願いを聞いたモンモランシーは怒って……怒って…… ……それでも……引けないわたしは、一生懸命お願いして…… ――『保険』を手に入れた。 252 名前:黒い蜘蛛の糸 2/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:20:09 ID:lmkgam+I 出征前の思い出に、 自分を安売りして、数ヵ月後に青くなった娘は沢山居た。 ……わたしだって、ギーシュがせまって来たら分からなかった。 だから欲しがる子には無料で分けてあげた。 ほっとした子も居た、覚悟を決めた子も居た。 でも、一つだけ納得行かない道があった。 「どうしてこんな薬を欲しがるの?」 コレは毒薬だ。 相手の戦死の報が届いて思い出すのも辛くなった、身体が弱くて母体がもたない。 この子はそのどれとも違うはずだった。 「……サイトは……いつか居なくなるから」 何度も何度も繰り返されるルイズの言葉に、 「……使うのは最後の最後にしなさい」 「……ん」 ――こんな事を繰り返すわたしは、いつかきっと地獄に落ちると思う。 253 名前:黒い蜘蛛の糸 3/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:20:43 ID:lmkgam+I 本当はとても怖いけれど、モンモランシーと約束したから。 「サイトに……一言だけでも……」 そんな風に思われるのが嫌だった。 「……き、嫌われたら……」 サイトはいつか帰るつもりだと思うし、サイトを助けるのはわたしじゃなくても良い。 チクンと、胸の奥が痛む。 ……胸だって、シエスタや姫さまより小さい。 サイトの事を思ったら、身を引いたほうがサイトは幸せかもしれない。 「……離れたくないよぅ……」 ……でも…… 「わ、わたしが……わたしが居ることが……サイトの邪魔になるかもしれない」 ――そして、この子が。 サイトに言わない方がいいのかも知れない。 でも……モンモランシーが…… ……ううん……嘘だ。 「サイトに……祝福して欲しい」 優しいモンモランシーは、わたしにきっかけをくれたんだ。 254 名前:黒い蜘蛛の糸 4/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:21:15 ID:lmkgam+I 誰も居なくなった騎士隊の隊舎でサイトをつかまえた。 ……でも、今日はいつも違って辛かった。 「あの……ね、あのね……サイト」 「あ、…………あ……」 もし、 「ん?」 話をそらしたい、そんなことまで考える。 でも……今は逃げちゃだめだ。 「……赤ちゃん……できたみたい……なの」 255 名前:黒い蜘蛛の糸 5/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:21:49 ID:lmkgam+I 静まり返る部屋に、サイトの足音だけが響く。 ……だめ……だ、きっとだめだったんだ。 「ご、ごめんなさいっ、だ、大丈夫だからっ、ほらっ、モンモランシーに堕胎薬貰ったから。 目を閉じたまま、隠し持っていた薬を飲もうとした手が、 「おめでとう……いや……ありがとうか? ルイズ」 これはきっと夢。 「お父さんになる訳だな、俺」 ……ほんの少しの希望を込めて。 「なんで? 何が邪魔なの?」 聞き間違いだと思った、だってこんなに幸せなのは有り得ないから。 「ずっと側に居るよ、ルイズ」 この夢は覚めなかった。 256 名前:黒い蜘蛛の糸 6/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:22:31 ID:lmkgam+I サイトが笑う。 「だ、大丈夫! 父さまはわたしが説得するからっ、父さまだって初孫だし、 まだ男の子か女の子か分からないのに。 本当は凄く嬉しいのに、バカなわたしはこんな時でも素直に成れない。 「仕方ないのか」 サイトが笑ってわたしを抱きしめる。 それが凄く恥ずかしくって。 「わ、わたしっ、モンモランシーに報告に行ってくるっ!」 お礼も言わなくちゃ。 「ルイズ、その薬は置いていけ、お前走るとその辺の物飲み干すだろ?」 わたし……これからサイトに勝てないかもしれない。 257 名前:黒い蜘蛛の糸 7/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:23:06 ID:lmkgam+I 「……お、おめでとうございます……サイト……さん」 気丈な事だ。 「その子の、弟かな? 妹かな?」 「……ど、どうしましょう……」 ……少し面白くなかった。 「シエスタ、まだ言っていないんだよな?」 そんな方法などあるはすも無いのに、ショックを与えずに知らせようと、シエスタは悩み…… 「コレ、飲んでみる?」 何の薬かは分かっているだろう。 258 名前:黒い蜘蛛の糸 8/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:23:43 ID:lmkgam+I サイトさんとミス・ヴァリエールは近い将来結ばれる。 なら……妾腹で年長の子供の存在など…… 「薬は俺が預かっとくから……考えといて」 どこか遠くでわたしが返事をしている。 サイトさんはミス・ヴァリエールが持ってきた薬を、 隊舎のドアが無慈悲な音をたてる。 幸せだったのに、 ……これはきっと罰。 「……ミス・ヴァリエールを……騙していたから…… 誰も居ない部屋で、 遠くで聞こえる雷の音が、全てを壊そうとしている様だった。 259 名前:黒い蜘蛛の糸 9/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:24:18 ID:lmkgam+I 「ちょっと、なんでこんな……もうっ、体冷たくなっちゃってるじゃない」 廊下を濡らしながら、ルイズはシエスタを部屋まで連れて行った。 伝えたい事が有った。 しかし尋常ではないシエスタの様子に、ルイズは彼女を傷付けかねない言葉を紡げなかった。 「ほら……シエスタ、自分で洗濯してるんだから、遠慮しないの!」 ありったけの布でシエスタの水気を拭き取ってから、暫し考え込んだルイズはシエスタを抱きしめる。 冷え切った体と心に、少しつづ熱が戻り始める。 ――ワタシのユメはスキナヒトのソバにイルコト 260 名前:黒い蜘蛛の糸 10/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:24:59 ID:lmkgam+I 「ミス・ヴァリエール……怒ってましたね」 部屋を出ようとするシエスタを、ルイズは必死で止めた。 「わたしなんかを心配してくれるなんて……ミス・ヴァリエールのバカ」 わたしはずっと貴方を騙していたんですよ。 サイトの立ち寄りそうな所に顔を出す。 「隊舎に戻っているなんて……行き違いですね」 「サイト……さん?」 「あ……はは……わたしは何をやっても……駄目ですね」 そのまま立ち去るつもりだったのに、テーブルの上に気付いた。 ……気付いてしまった。 261 名前:黒い蜘蛛の糸 11/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:25:35 ID:lmkgam+I 薬を持ち上げる手が震えるのは、寒さだけが原因ではなかった。 「こ、これ…………で……」 ミス・ヴァリエールもサイトさんも、これから先、笑って幸せに暮らしていける。 真っ黒に染まった世界の中、薬と自分だけになった気がした。 「さようなら」 会うことも出来なかったね、そう名のる資格も無いけれど…… 飲もう。そう決めると、荒れ狂っていた心が凪いだ。 ミス・ヴァリエールもサイトさんの為にこれを飲もうとしたんですもの。 口元に当てた瓶を一息にあおる。 でも……自分の内側が中から汚されていく、そう感じた。 これ……で…… ――甘かった。 悲しすぎて、辛すぎて、凍った心は涙すら流せなかった。 262 名前:黒い蜘蛛の糸 12/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:26:18 ID:lmkgam+I 「飲んでくれたんだね」 ……サイトさんが笑ってくれているから…… きっとこれで良かったんだ。 「俺の子、死んじゃったんだね、シエスタ」 ……納得……え? 「可愛かっただろうな、シエスタと俺の子」 わ、わたし……わたしっ…… 「シエスタはルイズと俺の側に居る為になら、俺の子殺しちゃえるんだね」 サイトさんがわたしの服を脱がせてくれる、 わたしは……わたしは…… 「ほら、おいで」 「ご、ごめんなさい……」 このまま死んでしまいたい。 263 名前:黒い蜘蛛の糸 13/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:27:00 ID:lmkgam+I 「いいこだね、シエスタこんなに泣いて」 優しくシエスタの背中を叩きながら、サイトは冷静にシエスタを見つめていた。 サイトには不満が有った。 シエスタに泣き止んでもらうため、強く抱きしめながら囁いた。 じたばたと暴れるシエスタを、サイトの鍛えられた腕はあっさりと取り押さえる。 264 名前:黒い蜘蛛の糸 14/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:27:37 ID:lmkgam+I サイトさんの言葉が胸の奥まで届いて、怒っていた筈なのに、嬉しくて顔が赤くなる。 うれしい……サイトさんがそんなにわたしの事を思っていてくれたなんて。 「シエスタが子供を殺すほど、俺の事が好きだって分かって嬉しいよ」 ……や……いや……やだぁ…… 「そ、そんな……そんな事言わな……い……でぇ……」 耳を塞ごうとするわたしの手を、サイトさんは決して離さずに、 「……や……ごめ……ごめんな……さ……」 ……あぁ……わたしが殺そうとしたのは、わたしだけの子供じゃなくて…… 「サイトさんの……こども……」 ……ご め ん な さ い 「わ、わたし……サイトさんの子を……こ、ころ……ころす……」 大好きな人の子供を殺そうとしたわたしが許されることなんて有るのでしょうか。 265 名前:黒い蜘蛛の糸 15/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:28:12 ID:lmkgam+I 「でも良いんだよ、シエスタ」 優しく、これ以上無い位優しいキス。 「シエスタには最初っから、俺以外は要らないだろ?」 子供の話をするシエスタを見てから、俺はずっと不安だった。 ……だけど……俺は? この知り合いの少ない世界で、これ以上味方が居なくなるのは……恐怖だ。 側に居てくれると思っていた人が唐突に消える。 …………どこか遠くで、何かにヒビが入る音が聞こえた。 その日から……子供の話をするシエスタが、この世界に来て最大の恐怖だった。 誰一人知り合いの無い世界で一人にされる恐怖。 シエスタは変わる、ルイズもいつか妊娠して……それに…… 「シエスタには、俺が居るよ」 ――――シエスタには俺が居ないと生きていけない位、俺に依存してもらうことにした。 そして…… 悩むことはいくらでも有る……でも、まず 「シエスタ……いい子だね」 266 名前:黒い蜘蛛の糸 16/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:28:45 ID:lmkgam+I 「サイト……さん」 濡れて冷え切っていた身体を温めるように、じっくりと時間をかけ、 俺に触れることで、シエスタがもっと狂えば良い。 「わ、わたし……わたし……こんなに優しくしてもらっ……そんな……資格……」 好きだよシエスタ」 こぼれ始めた涙に、胸の奥で快哉を上げる。 も っ と 俺 を 好 き に な っ て く れ 声にならない叫びを上げながら、温まり始めたシエスタにマントを掛けた。 「サ、サイトさん、いけません。これっ、シュヴァリエのっ」 これから暫く、何度も何度も機会が有るたびに思い出してもらう。 マントで包んだままのシエスタを椅子に座らせて、自分の服を脱ぐ。 ……昨日までなら…… シエスタはじっと俺を見つめていた。 ……成功、か。 喜びを隠し切れない俺は、獣のようにシエスタに襲い掛かった。 267 名前:黒い蜘蛛の糸 17/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:29:20 ID:lmkgam+I 「いいよ……こんなの、後で洗ってくれないの?」 身体の奥から喜びが溢れてくる。 「こんなモノよりシエスタが大事なんだ」 まだ何か言おうとするシエスタの唇を塞ぎ、仰向けに寝てもあまり形の崩れない張りの有るシエスタの胸を両手で包んだ。 「どうして欲しい? シエスタ」 質問をした途端に、うっとりと閉じられた瞳に羞恥の色を浮かべて、凄い勢いで目を逸らされた。 可愛いシエスタ。 268 名前:黒い蜘蛛の糸 18/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:30:00 ID:lmkgam+I 「はぅっ……そこっ……」 「どうして欲しいのか分からないからね」 それでも腰は止まらなかった。 「いっ、いやぁぁぁ、ち、違う……そのっ……とにかく違うんですっ」 「……っっ、サイトさぁん……どしてっ……なんで今日こんなに意地悪なんですかっ」 高い悲鳴を上げながら、いやいやをする様に頭を振るシエスタに声を掛けた。 「ほら、シエスタ見てごらん」 カーテンの陰に潜んでいた人物が、俺の指示通りに姿を現した。 269 名前:黒い蜘蛛の糸 19/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:30:33 ID:lmkgam+I 「ひっ……やあぁっ……やだっ、見ないでっ、見ないで下さいっっっ」 「サ、サイトさんっ、サイトさん、あの人っ、あのひとぉぉぉ」 「って、何してるんですかっ……やぁっっ」 サイトさんの唇が充血していた所に当てられ、勢いよく吸い上げ始めた。 「っく…………だ……め……ひと……が、人が見てま……す」 わたしの声が漏れるたび、男の子が息を呑むのが聞こえて、せめて両手で体を隠そうとすると、サイトさんがおもむろにわたしを羽交い絞めにした。 「み、見られてっ、っっやぁっ、いやっ、止めてください、サイトさん」 270 名前:黒い蜘蛛の糸 20/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:31:10 ID:lmkgam+I 「ひ、ひどっ、わたしっ、サイトさん以外に……」 「期待してる?」 本人にそんなつもりは無いのだろうけれど、甘えた瞳が主張している。 「……サ……サイト……さぁん……」 「……っ……はぁ……っ……く……っ」 見られないように、出来る範囲で捻られていたシエスタの身体が、 もう一息だ。 271 名前:黒い蜘蛛の糸 21/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:31:46 ID:lmkgam+I ……いつもなら……もうとっくに…… 今日のサイトさんは意地悪だ。 「シエスタのココは、気持ち良いね」 「…………て……」 「シエスタ、今、なんて?」 「子供を殺すシエスタは、さっきなんて言ったのかな?」 身体は快感に蕩けたまま、頭が芯から冷たくなっていく。 ほんの少し前に、自分が何をしようとたのかも忘れて……わたしは…… 「でも、いいんだよ、シエスタ」 272 名前:黒い蜘蛛の糸 22/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:32:22 ID:lmkgam+I 「シエスタは、俺のことだけ考えてれば良いんだ」 壊れかけていた心が、サイトさんの一言で救われる。 捕まった。 「ほら……シエスタ、さっきの……もう一度言ってごらん?」 何もかもかなぐり捨てたわたしの懇願は、容易く叶えられた。 「あっ……あぁあああああっ」 根元まで飲み込むと、サイトさんは今までの埋め合わせのように激しく動き出した。 一瞬だけ、子供の事が気に掛かる。 「……っと……もっと……もっと……シテ……シテクダサイ、サイトさんっ」 でも……ほんの……一瞬だけだった。 273 名前:黒い蜘蛛の糸 23/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:32:54 ID:lmkgam+I 「ご、ごめ……さっ……」 「ほら……シエスタ、どんな感じか教えてあげたら?」 どうしてさっきまで恥ずかしかったのかしら? 「サイトさんの……おっきいのがぁ、わたしの中でうご……ってぇ……」 痺れたような頭では、男の子にしては、声が細いことも高いことも、分からなくて…… 「サイトさんに、愛してもらうのは、とぉっても気持ち良いんですよ。 認めたくないものを見せ付けられているかのような反応。 サイトさんは許さなかった。 サイトさんとは違う、白く細い指先に身体が竦む。 「も……っと……もっと……触って……きもちいぃのぉ……」 男の子が泣きそうに見えたのはどうしてだろう? 274 名前:黒い蜘蛛の糸 24/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:34:19 ID:lmkgam+I 楽しい。 俺の身体から離れられない様に、じっくりゆっくりシエスタを染めていく。 身体を支えるために俺以外に抱きついていても、視線と意識は常にこちらに向け、 なんて健気で可愛いんだろう。 「シエスタ、大丈夫?」 快感に曇ったまま、真っ直ぐに俺をとえら得た瞳が、少しだけ力を増す。 「っっく……だめ……ちゃんと……いいたいの……にぃ……サイトさんの意地わ……る……」 どうやら俺は意地悪らしい、意外な事実を教えてくれたシエスタに感謝を。 「あっ……あああっ、きゅうにっ……いやぁっっ」 「っ……ひぁっ……もぅす……ぐ……ちゃぅ……だ……め……」 口付け、絡み合いながらの、シエスタのたどたどしい告白に、背筋をゾクゾクと快感が這い上がる。 「いっっあぁあああああぁぁぁぁっ…………」 シエスタの嬌声が部屋中に響き渡り、その場にクタリと崩れた。 「……し……あわ……せ……です」 小さく耳に届いたシエスタの言葉に頬が緩む。 やっと、『タイセツナモノ』が手に入った実感に、喉の奥から漏れる哂いを抑え切れない。 おもわず……俺も何か叫んだのかもしれない、 275 名前:黒い蜘蛛の糸 25/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:35:08 ID:lmkgam+I 逆らうつもりはないけれど。 『この命は、あなたに捧げる』 そう言った瞬間から、この人が望むことを何でもしてあげたかった。 誓いの夜にわたしの部屋を訪ねてきたサイトが、身体を求めるのにも抵抗出来なかった。 最後だと……そう思っていたから。 死ぬ覚悟は出来ていたけれど、女の子らしい幸せも……一度位は感じたかった。 『始めてだったら痛いから、今日は無理にしねぇよ』 そう言って、わたしだけを感じさせてくれたサイトの優しさが嬉しかった。 ……気持ちよかった。 母さまが大変な目にあっているかもしれないのに、サイトの指先に逆らえなくなった。 (このままじゃ、駄目な子になっちゃう……) そう思ったわたしは、母さまの所を目指して旅立って…… ……母さまの幽閉されている城までの旅で、サイトに会えない切なさに耐え切れなくなった、 ……『死』が怖くなった。 それだけだった筈なのに…… サイトは変わってしまった。 276 名前:黒い蜘蛛の糸 26/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:35:54 ID:lmkgam+I サイトの様子がおかしいのには直ぐに気付いた。 「どうしたの?」 ごめんなさい、最初の言葉は決めていたのに、あまりの変化に先に疑問をぶつけてしまう。 「っ…………」 ――相談もせずに消えたわたしを迎えてくれたのは、 目の前のわたしではなく、サイトはどこか遠くを見ていた。 「シエスタに俺より大事なものが出来た途端にタバサが消えた、 ……なら……きっと、ルイズも……ルイズだって……いつか……」 力強いサイトの腕の中で、全身の骨が悲鳴を上げる。 …………それでも、久しぶりのサイトの体温にわたしは目を細める。 そう思って、じっと耐えた。 277 名前:黒い蜘蛛の糸 27/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:36:27 ID:lmkgam+I 緩んだ腕と引き換えに与えられたのはそんな言葉。 「もうどこにも行かない」 他の人の事なんてどうでも良かったのに、この人に信じてもらえないのは、どうしてこんなに切ないの? 「信じて……」 ……サイトは大切だけど、長年掛けて編み上げた感情はそう簡単にほどけない。 「……ほぉら……やっぱり……」 慌てて否定しても、わたしの声はもうサイトに届かない。 「みんな、居なくなるんだ…… サイトの声が小さくなっていく、他の誰とも違うサイト。 ほかの誰も、彼の事を本当に理解できない。 生まれ育った優しい世界に、二度と戻れない。 少しづつ、少しづつ集めたに違いない、『大切な者』に折角加えてもらったのに、 この人が変わったのは、わたしの所為。 「……ごめんなさい」 やっといえた言葉は、この人の届くのだろうか。 「……そんなの、聞きたい訳じゃ無いっ!」 叫んだサイトがわたしを置いて駆け去って、一人その場に残されて、 278 名前:黒い蜘蛛の糸 28/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:38:33 ID:lmkgam+I 一度失った信頼は、犯してしまった過ちは、容易く取り戻せはしない。 サイトに触れたいのに、気持ち良くなって欲しいのに…… ……わたしのココを……使って欲しいのに。 「……少し、変わったことをしようか?」 何か思いついたんだ、そう……思った。 特に好きなのが、メイドやシエスタとの行為を見せ付けること。 サイトに触れる腕を、サイトに絡む脚を、サイトを迎え入れる……を。 今日も……物陰で一人泣いていると、サイトと目が合った。 『こっちにおいで』 い、いいの? 許してくれるの? 「ほら、シエスタ見てごらん」 え? 「ひっ……やあぁっ……やだっ、見ないでっ、見ないで下さいっっっ」 あ…… タバサの事なんて考えてないよ。 あんなに激しくされているのに…… 「み、見られてっ、っっやぁっ、いやっ、止めてください、サイトさん」 どうして、あの子はあんなに乱れているの? 279 名前:黒い蜘蛛の糸 29/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:39:21 ID:lmkgam+I サイトの言葉が胸をえぐる。 わたしには触れさせもしてくれない所が、敏感な入り口を擦って、見る間にメイドの理性を溶かしていく。 後ろからサイトが、大きな胸をギュって掴む。 ……おっぱいが無いから、サイトいろいろしてくれないのかな? わたしが悩んでいる間も、サイトとメイドは溶け合っていて。 「入れて……入れてくださいっ」 メイドの叫びに、自分の喉が音を立てる。 ……あんなに大きいのに、メイドはやすやすとサイトを飲み込んでいく。 「……っと……もっと……もっと……シテ……シテクダサイ、サイトさんっ」 色に狂ったメイドが憎い。 そんなわたしの想いを知らないサイトが、メイドの身体をわたしに向かって小さく押した。 280 名前:黒い蜘蛛の糸 30/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:39:55 ID:lmkgam+I 泣きそうなわたしの耳元に、熱い吐息が掛かる。 「サイトさんの……おっきいのがぁ、わたしの中でうご……ってぇ……」 ……っ、ひど……い……ひどいよぉ…… 「……や……やめ……て……言わないで」 必死に絞り出した声にも構わず、メイドはわたしを追い詰める。 「奥に届くたびに、おかしく……なって……わたし……わたしぃ……」 わたしだって……サイトが……サイトがしてくれるならっ! 「サイトさんに、愛してもらうのは、とぉっても気持ち良いんですよ。 嫌がるわたしの手を、そっとサイトが握ってくれて、少しだけ落ち着く。 でも次の瞬間、わたしの手がメイドの胸にめり込む。 そのまま腕を引こうとすると、サイトが嫌がらせの様に胸の中にわたしの手を押し込んだ。 「も……っと……もっと……触って……きもちいぃのぉ……」 …………い……や……ぁ…… 281 名前:黒い蜘蛛の糸 31/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:40:31 ID:lmkgam+I 「……サ……イ……トぉ……」 タバサには感謝していた。 「これでシエスタは、俺を捨てない」 シエスタが手に入った。 俺の一言を聞いただけで、タバサはどれほどの事を悟ったのだろうか。 「頭の良い子だね、タバサ」 のろのろと言葉を紡ごうとするタバサの唇を無言で塞ぎ、 気が付くと俺にもたれかかる様に体重を預けたタバサが、もじもじと膝を擦り合わせていた。 「俺が怖い?」 一度逃げたタバサは、いつ居なくなるかわからない。 「怖くない」 ならその身体の震えはなんなんだ? ……タバサを……人を信じたいのに、俺の心は疑うことばかり上手になっていく。 282 名前:黒い蜘蛛の糸 32/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:41:42 ID:lmkgam+I 何もして上げられない自分が悔しくて、 そこまで考えて、わたしは愕然とする。 ……わたしは……なに……を…… 母さまを助けに行くのは、娘として当然のことなのに。 身体が小さく震えだす、わたしはこの一週間で、何回母さまを思い出したのだろう? ……今は……サイトの事ばかり考えている。 ……どうしよう……母さま、シャルロット悪い娘になっちゃった…… 何年もわたしを形作っていたモノを、知らず知らずのうちにおざなりにしていた事に、 「おいで」 そんな時に優しいサイトの声がする。 支えを失ってしまったわたしの心が、音を立てて傾いていくのが分かる。 ……だ……め……こんなの……わたしの為にも、サイトの為にもならない。 「わ、わたし……悪い……娘に……なっ……」 何も言わずに抱きしめてくれる手が、優しさだけで出来ているのではないことを理性は悟っているのに。 駄目なのに、今のサイトを頼っては。 「タバサはいい子だよ」 サイトの声がわたしを繋ぎとめる。 サイトの腕の中に絡め取られる事を渇望する身体に、弱い心は押し流されて…… 283 名前:黒い蜘蛛の糸 33/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:42:16 ID:lmkgam+I 「だ……め……やめ……て……」 サイズの問題かもしれないけれど、男の子の制服はエッチだ、サイトが服の下で何しているのか、さっぱり分からない。 「やだ……見ないで……」 服の中からサイトは、わたしの視線を辿って苦笑すると、 そんな行為に、また少し……少しづつ、 「……ま……って……やだぁ……」 自分でも硬くなっているのが分かる先端を少し強めに吸ったり、 「っ……ふぁ…………む……ねばっ……りぃ……」 そ、そんなつもりじゃないのに。 「ひゃぁぁんっっっ……っ…きゃあっっ」 背中の刺激に反り返った途端、突き出させる形になった胸に、サイトが優しく歯を立てる。 「そんなに触って欲しかったんだ」 胸を気にしたら、背中から。 逃げ場の無いまま、サイトの好きなように操られる。 284 名前:黒い蜘蛛の糸 34/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:43:03 ID:lmkgam+I 息……苦し……ぃ……よぅ…… 途中から腰に力が入らなくて、サイトが支えてくれないと、その場で倒れそうだった。 「大丈夫?」 優しい言葉を掛けてくれるのが嬉しくて、何とか頷いてみせる。 快感の余韻に浸っていると、腰の辺りで何か音がしたけど、 少しだけ落ち着いた頃、サイトが笑いながらわたしの頭に『何か』乗せた。 「返すな」 ……返す……って事は、わたしの物? 真っ白い布で、ちょっと……ううん、結構濡れ……て? 嫌な予感に、そーっと視線を下にずらしていく。 「っ! こ、これっ、わたしのっ」 上半身には、ボタンが止まっていないとはいえ、大きめの制服を着たままなのに、 「な、何も穿いて無いっ!」 慌てて制服の前を合わせて、サイトからあちこち隠す。 「い、いじわ……る……」 声が泣きそうになってる。 サイトに物足りないって思われたんだ……こんな子もう触るの止めるとか思われてたらどうしよう。 不安に震えていると、サイトが側まで来てくれた。 285 名前:黒い蜘蛛の糸 35/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:43:40 ID:lmkgam+I ……っ……どうせ可愛い胸だもん。 「タバサ?」 意地でもサイトを見ない。 「誉めたのに、何で泣いてるんだ?」 ……胸とか見ながら可愛いは誉め言葉じゃないと思う。 「知らない」 焦れたサイトは軽々とわたしを持ち上げると、わたしごと手近な椅子に腰掛けた。 「小さい……から……可愛いって……」 そこまで言って、サイトはやっと納得した顔をする。 「そんなつもりで言ったんじゃねーよ」 嘘だ。 意地になったわたしを膝に乗せたまま、サイトが愛撫を再開させた。 「タバサは可愛いよ」 今度はわざとだ…… 「あ…………」 何か硬いモノが、サイトの指の向こうにあるのが分かった。 「……ちゃんと反応してるし、可愛いは誉め言葉だぞ?」 ……うれしい。 「……ごめんなさい」 サイトが本当のことを言ってくれていたのなら、さっきまでのわたしは凄く嫌な子だ。 286 名前:黒い蜘蛛の糸 36/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:44:18 ID:lmkgam+I 自分では動いているつもりなんて無いのに。 「ご、ごめ……」 背筋が凍る。 一度裏切ったわたしは、サイトの大切な所に触る資格なんて無いと、何度も何度も思い知らされていて、 「タバサ?」 サイトの声の質が変わる。 甘くて幸せだった空気を奪い取られる予感が、全身を震わせる。 「だめじゃないか、タバサ」 熱の無い目、止まった指、凍った声。 あんなに何度も繰り返したのに、わたしはまだサイトの望み通りに動けない。 「俺が気持ちよくなっちゃ、タバサが困るだろう?」 ……え? 287 名前:黒い蜘蛛の糸 37/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:45:00 ID:lmkgam+I 「ど……して? サイトが気持ちよくなってくれたら嬉しいのに」 サイトがわたしに触らせてくれない理由。 何度か聞いたけれど、教えてくれなかった。 「子供が出来たら……」 こ、子供が出来たら? 「タバサの、大事な大事な復讐の邪魔だろう?」 え? 「復讐の?」 あぁ……母さま、ごめんなさい。 「復讐なんかどうでもいいよぉ、サイト……サイトの方が大切っ、大事だからぁっ」 サイトはわたしの為に、最後までしないでいてくれたの? 「あ、あれ、あのお薬も有るっ、出来たらあれ飲むからぁっ……最後まで……最後までしてぇ」 メイドとやり取りは聞いていた。 サイトは喜んでくれなかった。 「……へー、まだそんな事……復讐の事考える余裕あるんだ」 観察する様にわたしを見ていたサイトの目が、ますます熱を失う。 わたしから離れようとするサイトに、力の限りしがみ付いて、 「ち、違うのっ、復讐なんかどうでも良いからっ、 ……最後までして下さい。 288 名前:黒い蜘蛛の糸 38/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:45:40 ID:lmkgam+I 「本当に? 本当にどこにも行かない?」 一度口に出してしまうと、もう止まらない。 「子供できても構わないんだ?」 確かめるようなサイトの口調に、熱に浮かされたまま答え続ける。 サイトが最後までしてくれると、そう……信じて。 「復讐より……俺が大事?」 喋れば喋るほど、わたしの中でサイトの存在が膨れ上がる。 「タバサの……シャルロットの……大切なモノを……貰って…… 精一杯の告白。 「……った……に……った……タバ……おれの……」 289 名前:黒い蜘蛛の糸 39/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:46:14 ID:lmkgam+I 「いくよ、タバサ」 ……シャルロットって呼んで貰おうか? 身も心も捧げることに決めたわたしは、過去を捨てる決意をする。 「はい」 全ての想いを込めて、一言だけ返事をすると、 何度も望んだ瞬間がついに訪れる。 その大きさに少し不安に成る。本当に入るのだろうか? 「……サイト……わたしで、気持ち良くなって……」 サイトの耳元で囁くと、サイトは嬉しそうに笑う。 「そのまま腰を下ろして」 サイトを想って自分の中に指を挿れた事を思い出して、 「……んっ……」 自分の中に異物が侵入してくる。 「……った……い……よぉ……」 溢れる涙をサイトが唇で拭ってくれた。 「諦める?」 折角、折角サイトが貰ってくれるのに、 「最後まで……貰って……」 サイトの気が変わらないうちに…… 290 名前:黒い蜘蛛の糸 40/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:46:47 ID:lmkgam+I 「タバサ、大丈夫?」 嘘だけど。 「がんばったな」 サイトの手……暖かくて……うれしい。 「うん」 サイトは動きたいんだと思う。 「ごめんなさい」 悔しくて何もいわずにサイトに抱きついていると、サイトの指がわたしの身体の上を跳ね回った。 「っ……な……に?」 痛みを忘れさせようとしてくれる、サイトの気遣いが嬉しい。 「……動いて……いいよ」 少しだけ痛みになれたわたしは、サイトに身体を任せる。 「でも……」 出来るだけサイトに密着して、身体を擦りつけながら精一杯のお願い。 「っ……いいんだな?」 もうわたしは全部サイトのモノだから。 291 名前:黒い蜘蛛の糸 41/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:47:41 ID:lmkgam+I 「動い……て……」 俺の耳元に囁くために、タバサが姿勢を少し変えるだけで、狂いそうな快感が俺を襲う。 「あ……あぁっ……動く……ぞ……」 両手でタバサの腰を持ち上げて、軽いタバサを腰の上で踊らせると、 「…………き、気持ちい?……わたしの身体で、気持ちよくなってくれてる?」 「……サイト、サイトの子供……タバサに……頂戴」 タバサを持ち上げることがもどかしくなって、繋がったまま立ち上がった俺は、 「っっっ! サ、サイトッ……っめぇっ……奥……奥がっ……ひっ……ぅ……あっぁぁ」 「……かっ……はぁっ…………き……つぃ……よぅ……」 息も絶え絶えなタバサを寝かせて、動きやすい体勢をとった俺は、 「あっ……あぅ……え? な……に? う……そ……気持ち……いい?」 タバサの感触を確かめるように動き始めると、タバサの目に微かに快感が浮かぶ。 お互いに。 「……タバサ……ごめん……いく……」 奥歯を噛み締めながら情けない報告をすると、幸せそうな笑顔が俺を迎えた。 「……ん、気持ちよくなって……サイト……わたしの中で……いって……ね?」 これは……反則だ……いつもの超然としたタバサとのギャップが、最後の一押しになって、 二つの寝息が部屋に響く。 窓の外を見ながら、俺はひっそりと笑った。 292 名前:黒い蜘蛛の糸 42/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:48:18 ID:lmkgam+I 冴え渡るエクスプロージョン! 実は二人目、サイトがそう報告した途端詠唱が始まり、 「ご、ごめんなさいっ、ミス・ヴァリエールっ、わ、わたしがっ」 サイトの言葉は最後まで告げられることも無く、口の中にルイズの爪先が直撃した。 「だまんなさい、だまんなさいっ、だまんなさいっっ!!」 じたばたと暴れながら、ルイズは全身で自己主張した。 「どゆこと? なんで? サイトっ、あんたどーゆーつもりなのよっ!!」 反省の色の無いサイトを、視線で射殺そうとするルイズの耳に、ぽそりと小さな声が響いた。 「……やっぱり……わたし、これ……飲みますね」 シエスタの手には、見覚えの有る小瓶。 「……って、駄目――――――!!!」 「でも、シエスタ、一回それ飲もうとしてるし」 サイトの一言に、ルイズは怒りの矛先をシエスタに向ける。 「なななな、なんでっ?」 ルイズの一言にサイトは飛びついた。 「ラッキー……がはっ」 サイトの鳩尾にルイズは飛び蹴りだ。 「は、反省の色がなぁぁぁぁい」 流れるような連続技を繰り出しながら、ルイズの叫びがどこまでも響いていた。 293 名前:黒い蜘蛛の糸 43/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03:48:52 ID:lmkgam+I ……なんだか嫌な気分ね…… 複雑な感情を抱きながらも、ルイズは教室でタバサを探す。 「あ、居た居た、タ〜バサ〜」 用事は他に有るのだけれど、 「あのね、わたし……サイトの赤ちゃん出来ちゃった」 誰に話しても驚きが先に来ると思っていたのに、まず祝福してくれたタバサをルイズはかなり見直した。 「あ、ありがと……その……それでね」 「次の虚無の曜日に……街まで連れて行って欲しいの。 それだけ告げると、用は済んだとばかりに本に目を戻す。 「ま、まだ産んでないもん」 連れて行ってくれるつもり。そう理解したルイズはタバサにじゃれ付いて、 「あのねっ、わたしたち……シエスタもだけど…… 本当よ」 今だって幸せそうなルイズの笑みを見ながら、タバサも微笑む。 「そうね……皆……幸せになれるね」 机の影でタバサの右手は、そっと自分のお腹に添えられていた。 |
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