13-312
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:45:40 (5638d)

312 名前:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:39:43 ID:xTnH8xTx
大丈夫。自然にしてればばれないはず。
あの馬鹿結構周り見えてないし。
大丈夫、絶対大丈夫だから。
そして扉が開く。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

あくまで自然に。
まるで、最初から自分がそうするのが当然であるかのように。
そして、相手がそうされることを当然だと思うように。
そこに『不自然さ』や『ぎこちなさ』があってはならない。

「お疲れでしょう。お召しものをこちらへ」

気付かれてはならない。
狡猾に、繊細に、大胆に。
あるがままであるように振舞えば、全てはうまくいく──────。
はずだった。

「さ、最高だよっ、モンモランシィィィィィィィィィ!」
「落ち着けこの馬鹿っ!」

扉の前で固まった状態からルパンダイブに移行したギーシュを、モンモランシーのアッパーが撃ち落した。

313 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:40:45 ID:xTnH8xTx
モンモランシーが『メイド実習』のご主人様に選んだのは、もちろんギーシュ・ド・グラモンその人だった。
ギーシュにメイドとして仕えるなど、ある意味危険極まりないことだが、モンモランシーに選択の余地はなかった。
他の娘をこの男に近づけさせないためにも、自分自身が犠牲になる必要があったのである。
そして今。
ギーシュはメイド姿のモンモランシーに踏まれていた。

「あ、あの、モンモランシー?」
質問は却下。
 私は今からあんたのメイドとして仕えるけど、それは実習の一環だから。それ以上でも以下でもないから。
 もし変なことしようとしたりしたら、溺れてもらうからね?」

言ってモンモランシーがいつの間にか手にしていた杖を振ると、ギーシュの目の前にこぶし大の水の泡が浮かぶ。

「わ、わかったよモンモランシー」
「わかればよろしい」

モンモランシーは杖をしまい、ギーシュの背から脚をどける。
ギーシュは埃を払って立ち上がると、まじまじとモンモランシーを見つめた。

「…な、何よ」

はだけてもいないのにモンモランシーは思わず胸のあたりを隠す。
そんな彼女に、ギーシュはうっとりと呟いた。

「モンモランシー。君は本当に何を着ても似合うなあ」
「ほほほほ、褒めたって何も出ないんだから!」

思わず照れて赤くなってしまうモンモランシー。
そして歴史は繰り返す。

「そんな可憐なキミもステキだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「するなっつってんでしょうがっ!」

今度ははたきおとされた。

メイドに手を出せばどういう目にあうか、さんざんギーシュの身体に教え込んだモンモランシーは、まず最初に何をするべきか考えた。
やっぱりここは。

「で。何かして欲しいことはない?」

ご主人様に尋ねてみるのが一番。

「どうせなら」
「ヤらしいこととか言ったら溺死させるからね」

釘を刺すのも忘れない。

「うぐ」

やっぱりか。
ギーシュは言葉につまり、モンモランシーの鋭い視線に思わず仰け反る。
呆れたように見つめるモンモランシーに、ギーシュはあーでもないこーでもないと考えをめぐらせる。
…どうしよう。
ギーシュはヤらしいことしか思い浮かばない自分に驚愕していた。
こ、これがサイトの言っていた『ワビ・サビ』の魔法というやつか!
ちょっと違う。

314 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:41:34 ID:xTnH8xTx
「…して欲しいことないんなら勝手にやらせてもらうわよ」

悶えるギーシュに、モンモランシーが歩み寄り、その肩に手を掛ける。
ギーシュがはっとしてモンモランシーを振り向く。

「や、やっぱりそうなんだねモンモランシぃぃぃぃぃ」

そして両手を広げて抱きつこうとする。

「止まれ馬鹿」

ごっちんとモンモランシーの拳とギーシュの頭が音をたてた。
痛みにうずくまるギーシュ。
モンモランシーは軽く痛む拳をさすりながら、うずくまったギーシュの肩をむんずと掴む。

「…やっぱり」
「…な、何がやっぱりなんだいモンモランシー?」

疑問を口にするギーシュには一切応えず、モンモランシーは無理やりギーシュを立たせると。
ベッドに向けて、うつ伏せに押し倒した。
また何か言おうとするギーシュの頭を、今度は発言する前にベッドに頭を押し付けて口を封じた。
じたばたともがくギーシュの頭を抑え付けたまま、モンモランシーは呟く。

「最近、水精霊騎士団の演習とか出ずっぱりじゃない?
 疲れてるだろうと思ってさ」

言って今度はギーシュの背中を押す。
ガッチガッチに凝っていた。
普段、まともに身体を動かすことの無い貴族が、毎日演習だ訓練だで身体を酷使しているのだ。当然といえば当然だった。
モンモランシーは凝っている部分を中心に、マッサージを始めた。

「どう?きつくない?」

モンモランシーのマッサージは、それなりに気持ちがよかった。

「うん、なかなか上手だねモンモランシー」

それは、メイド実習で習った成果なのだが、褒められて悪い気はしない。
モンモランシーは凝った部分を解しながら、言った。

「ほんとにもう、凝りすぎ。何をこんなに頑張るんだか」

呆れたように言うモンモランシーに、ギーシュが応える。

「決まっているだろう、もちろん君のためだよ」

不意打ちだった。

「僕には君を守る力が無い。前の戦いでそれを思い知ったんだ。
 だからちょっとでも君を守れる男になれるよう、自分を鍛えているのさ」

いつもの演技くさい声ではなかった。
生の、ギーシュの声だった。
マッサージを受けているせいもあるのだろう。ギーシュはモンモランシーに本音を吐いていた。

「まあ、お陰で毎日筋肉痛だけどね。普段鍛えてないとこういう目にあ」

ぎゅう。

モンモランシーは突然、ギーシュの首を後ろから抱きしめた。

315 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:43:41 ID:xTnH8xTx
「え?え?モンモランシー?」

驚くばかりのギーシュに、モンモランシーは囁くように言った。

「…ばか。そんな頑張らなくたっていいのに」

自分のため。そう言ってくれたのがこの上なく嬉しかった。
モンモランシーはそっとギーシュの横顔を覗き込む。そして、彼の耳元で、囁く。

「…私、守ってなんかもらわなくても、ギーシュがそばに」

よく見るとギーシュの鼻の穴が2倍ほどに膨らんでいた。
背中に密着した胸がやっぱりまずかったようである。

「モ、モンモランシィィィィィィィィ!ぼかぁ、ぼかぁもぉっ!」

器用に上と下を入れ替えて、ギーシュが上になる。
そのまま食虫植物のように伸びた唇がモンモランシーを襲い。
正気に戻ったモンモランシーの拳が、ギーシュを壁まで吹っ飛ばした。
この、せっかくいい雰囲気だったのにこのバカはっ!
この二人が結ばれるには、もう少し時間がかかりそうである。〜fin

追記:モンモランシーに脅されて、ギーシュは合格を出したらしい。


URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:45:40 (5638d)

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル