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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:45:44 (5642d)
391 名前:1/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:47:50 ID:Fmaw2vgn ……こんなに体力あまってるのなら、明日からのもうちょっと訓練増やしてもいいな。 「専属のメイド……専属のメイドだよ? ……いいなぁ……」 確か同室にシエスタがいるのは嬉しい。 「何が言いたんだ?」 マリコルヌの奢りで、幾つかの料理がテーブルに運ばれてくる。 「あーごめん、マリコルヌ今日はシエスタが料理を……」 わざとらしい繰り返しに、流石にサイトが聞きとがめた。 ――遠くで雷が鳴り、それに照らされたマリコルヌの顔が、醜悪なピエロに見えた。 「……じょ、冗談……だよな?」 真面目な顔のマリコルヌが、両手で隠した口元で舌を出しながら続けた。 「まぁ、それでも食べながら話を聞けよ……サイト」 マリコルヌの話が終わって、サイトが席を立った。 「濡れるぞ?」 雨の中をふらふらと歩くサイトに、マリコルヌが声を掛ける。 「……別に……いい……」 びしょ濡れに成りながら歩み去るサイトを、マリコルヌが笑って見送っていた。 392 名前:2/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:48:21 ID:Fmaw2vgn 部屋に帰った俺を、シエスタが迎えてくれる。 『故郷だったら、自分付きのメイドなんて……』 マリコルヌの言葉が、脳内で繰り返される。 シエスタに……そんな…… 「サイトさん?」 覗き込んでくるシエスタの邪気の無い瞳に、俺の理性が見る見る焼き尽くされる。 「っち、近いっ、シエスタ、近すぎるから」 俺が騒いだ所為で、シエスタが慌てて飛び退く。 俺がシエスタを遠ざけたことに、ショックを受けた様子だったが、 「ひょっとして……意識してくれました? ……だったら、嬉しいですサイトさん」 綺麗なシエスタ。 ……喉が……渇いた。……ひどく……喉が渇く。 『好きに扱える玩具だよ。あれだけ可愛ければ毎晩楽しいだろう?』 っ!! そんなの嫌がるだろう……当然俺は反論した。 『いや、本当だよ。そもそも実家のメイドは基本的に、領民だからね』 ……吐きそうだ…… 393 名前:3/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:48:54 ID:Fmaw2vgn ……黙れ……黙ってくれ…… 『今は貴族が微笑む時代なのさ』 ……頼むから……頼むから黙ってくれ…… マリコルヌの話が、繰り返し繰り返し頭の中で流れる。 ……い、いいん……だよ……な? 『何も遠慮することないんですよー』 って。 「サイトさんっ!」 俺の頭に、優しくタオルが掛けられる。 「あ…………」 何も知らずに、シエスタが俺の側にいた。 ……コレ……オレノ…… 思わず俺は両手をシエスタの腰に回し、その胸元に顔を埋めていた。 394 名前:4/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:49:30 ID:Fmaw2vgn 冷え切っていた身体が、中からも外からも温められる。 「……サイトさん?」 怪訝そうなシエスタの声を無視して、荒い息を吐いてその香りを堪能した。 「サイトさん? ちょっ、大丈夫ですか?」 ……は? 大丈夫? 怪訝に思いのろのろと顔を上げると、真剣な表情のシエスタと目が合った。 「サイトさん! こっちへ」 シエスタはガシガシと頭を拭きながら、俺を……ベットに連れて行った。 「座ってくださいっ」 手際よく俺の水気を拭き取ったシエスタが、じーーーーっと至近距離で俺を見つめる。 (っきゃぁぁぁぁ) 情けない位心臓がバクバクと鳴る。 ほんの数秒が、数分にも数時間にも感じられている間に、シエスタの顔はどんどんと近づいてきた。 395 名前:5/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:50:02 ID:Fmaw2vgn 「なっ……なに? なに? なんなの、シエスタっ」 ……いや……あの……普通、女の子にオデココツンされて、体温上がらない訳無いかと…… 「濡れて帰ってきて、ぼーっとなさったり、その場で倒れたり…… …………いや……倒れたんじゃなくて、最初から胸を狙ったんだけど? あまつさえ、全開で襲うつもりでした。 「ほら、今日は暖かくしてお休みしましょうね?」 ……ま、まて、俺……うんってなんだ? 「まずは身体拭きましょうね?」 ――シエスタが濡れた服を剥いだり、何度もタオルを変えて水気を…… ごめん、幼児退行は嘘だ。 顔を埋めた所為で、身体に掠るたびに感触が蘇って…… 「サイトさん、着替えましょう……立てますか?」 勃ってるから、恥ずかしくて立てません…… 「そ、そんなに調子悪いんですか?」 あーごめん、泣きそうな顔しないでー 396 名前:6/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:51:21 ID:Fmaw2vgn 「でも……でもぉ……」 その場に土下座したい気分だったが、そういう訳にもいかず、とりあえずシエスタの頭を…… 「……どーゆー事態?」 ポンとシエスタの頭に手を置いた時、部屋の入り口に立つルイズに気がついた。 「ミ、ミス・ヴァリエール」 シエスタの目が涙で濡れて……って、おい 「ちょっ、まっ……なんで杖構えるんだよっ、ルイズぅぅぅぅ」 俺でも止められないルイズを、シエスタは手振りと声で押し止めた。 「な、何がよ」 ルイズの殺気が薄れ俺は胸を撫で下ろした。 「……で、…………なんです」 あれ? 疎外感を覚えている間に、シエスタがルイズに何か説明を終えた…… 「あ、あんた立てないほど体調悪いんなら、大人しくしてなさいよぉぉぉ」 泣きそうな顔が、もう一つ増えていた。 397 名前:7/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:52:24 ID:Fmaw2vgn 「くっ……食べ過ぎたか……」 ミシミシとしなる木に怯えながらも、目的の場所にたどり着いた。 「ここだ……」 魔法で飛んでも良かったが、精神力は温存したかった。 「そろそろ、破局の時間だよな……」 ルイズの帰る時間を計算した上でサイトを開放したマリコルヌは、 「メイドに手を出せるわけ無いだろう」 学園のメイドは領民ではないし、そもそも、そういう年頃になると学園に放り込まれる。 「学園のメイドに手を出せば、軽くて謹慎……場合によっては退学か……」 マリコルヌには夢があるッ!! 前途は遠い…… 「まずは、サイトからだぁぁぁぁ」 そんな事に気が回る性格だったら…… 計画の成り行きを見ようと、マリコルヌが詠唱を始める。 「歪めぇぇぇ空間、見えろやぁぁぁ、遠くぅぅぅぅぅぅ」 別名・覗き魔法 ……モテない筈である。 そんなマリコルヌの魔法が効果を表した瞬間…… 「な、なぜだぁぁぁぁぁぁ」 彼の叫びが、魂の悲鳴が響き渡った。 398 名前:8/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:53:16 ID:Fmaw2vgn 背後からシエスタの声が聞こえる。 「い、いいから、大人しくしてなさいっ!」 腕の中でルイズが丸くなってる。 ……すーげー、今俺が置かれている状況を説明しよう。 まだまだ寝るには早いが、俺たちは皆寝巻き。 早く寝る=皆で寝る と、言うことらしく、いそいそと二人とも着替えた。 ……あちこちに色々当たって幸せだったことを特に記す。 部屋にはどこから用意したのか、大量の布団、毛布、クッション。 コレだけも幸せなのだが…… 「横になったほうが良くないですか?」 成ってたまるかぁぁぁぁ、言おう! 至福である! と。 「サイト……あんた…………っ、きょ、今日だけだからねっ」 ルイズの視線がちょっと痛いが……今日の俺の枕は素晴らしい。 俺 は そ の 上 ! ……つまり…… 「おっぱいクッション!!」 俺の首に後ろからフィット。 ……俺だ、サイトさまだぁぁぁぁぁ 「あ……あんたって……」 不満気だったルイズが、真っ赤に成って黙り込んだ。 399 名前:9/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:54:03 ID:Fmaw2vgn ルイズは俺の身体が冷えないように…… 凹凸の少ないフラットなボディーのお陰で、最高の密着を誇るッ!! つまりっ 「ルイズ、ぶとーーーん!!」 なんか背中でシエスタがヘコんでる…… 「おっぱいまーくーらー」 「ルイズ、ぶーとーんー」 ふぅ、モテる漢はつらいぜぇぇぇぇ 何この最強布団セット。 げへぇぇぇぇ、なんてスバラシィィィィ この世の天国……プライス・レス っつーか売らねぇ、絶対売らない。 「サイトさん、ちょっとは何か食べませんか?」 ……なんてっ……幸せ。 400 名前:10/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:54:41 ID:Fmaw2vgn み、耳から脳が垂れる……、 「はい、ミス・ヴァリエール」 解説しようっ 究極!! しかぁも、ルイズの『あーん』で食べるリンゴは格別だ!! 「もっと要りますか?」 マリコルヌに勧められて、いくつか料理を食べた俺は、そんなにお腹は空いていない。 「しょ、食欲無いんですか?」 食欲位無いフリしないと、体調不良の信憑性が……既に怪しい気もするが。 「……し、仕方ない……わ……ね……」 ルイズがシエスタに目配せをして、更にリンゴを剥かせる。 シエスタに指示して、さっきまでより細長く切り分けられたリンゴをルイズが口にする。 って、自分で食うのかよ。 「ひゃぃ……わーーーーん」 わぁお 401 名前:11/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:55:16 ID:Fmaw2vgn 「あーーん」 大きく口を開けると、ルイズの目がうっとりと細められる。 俺のお腹に乗っていたルイズが、ゆっくりと口元に来る。 「もぉ……ミス・ヴァリエール……ずるいです」 シエスタの囁きが起こした風が耳元に触れ、快感が背中を跳ね回る。 ? 不思議に思っていると、少しだけ口の中にリンゴが入ってくる。 シャリ……と、音を立てて俺の歯がリンゴを噛むと、またルイズが少しだけ進む…… 一つのリンゴをたっぷりと時間を掛けて味わう。 前後からの心地よい感触を味わううちに、りんごの最後の一欠片が口の中に転がり込む。 チロっと可愛い舌を出して、俺の唇についたリンゴの果汁を舐め取る。 「っっ! ル、ルイズっ」 悪戯っぽう笑うルイズを、シエスタだけが不思議そうに見ていたが、 「……サイトさん……まだ……要りますよね?」 楽しい食事はまだまだ続いた。 402 名前:12/12[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01:55:53 ID:Fmaw2vgn 思い出すだけではにゃぁぁんと、頬が緩む。 寝れるはず無いと思っていたが…… 「子守唄……歌ってあげますね?」 ……二人の可愛い歌声に、案外あっさり負けてしまった。 二人の身体もなんと言うか……適温で気持ちよかったし。 最も……あの究極の布団セットで一晩過ごした俺は…… ま、それはいい。 「また……いつでも言って下さいね?」 ……どうやらいつでもオッケーらしく…… 何て幸せな日々だろう…… 幸せに酔う俺の前に、なんだか急いでギーシュが現れた。 「あーサイト……知ってるか?」 ……殴るべきか感謝するべきか……悩みながらギーシュの言葉を待つと、 「謹慎食らったらしいんだよ……『俺もおぉぉぉ』って叫びながらメイド宿舎に突っ込んだらしいんだ」 ……とりあえず……殴るのは勘弁するとして…… 「それよりギーシュ、美味しい果物を知らないか?」 夜が楽しみだ。 |
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