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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:46:36 (5639d)
42 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 22:38:32 ID:Ba+HHKIK
数多の闘いでサイトは、寝たきりの状態になってしまった。
魔法学院の秘密の部屋でサイトがベットで横たわっているそこに、男がサイトに呼びかけてくる。
「私の声が、聞こえるかいサイト君」
「あんたは、誰だ?こんな状態の俺に何か、用か?」
「君に選ばせてあげよう、一生このままで過ごすのか、それとももう一度以前のようになりたいのか?」
サイトにとって、どちらを選ぶかなど分かり切っている。
なぜなら、こんな状態の自分のことなど誰も必要としないから、誰にも必要とされないなんて死んでいるのと変わりはない。
シェスタは、私が全部サイトさんの面倒を見ますと言ってくれたがそこまで面倒は掛けられないし、男としての誇りが許さない。それに、望まれているのは「ガンダールブ」であって、お荷物ではない。
43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 22:40:28 ID:Ba+HHKIK
「ただし、動けるようになる代わりに君の寿命を頂く」
サイトは少しだけ悩んだのち、口を開いた。
「……どのくらい……、差し出せばいい……?」
「そうだね、分かり易く説明しようか。例えば君の寿命が
80年だったとする、で君が今17歳だね、10年分差し出せば
君は27歳まで動けるようになるよ、それと引き換えに君の寿命は
53年になるわけだけど……。」
「どうする?やるかい……それとも……」
「いいよ、それでいい……、この状態から抜け出せるなら
何だってするよ。」
「それじゃ、契約成立だ。それで、何年分差し出すの?」
「それは……」
ルイズ、シェスタ、タバサ、アンリエッタら多くの人々らが
サイトの“奇跡的”な回復を、心から喜んだ。サイトの顔には、
少しだけ蔭りがあったがうれしさのあまり、本来なら気付いたであろうこと
を、見落としてしまう。
このことを、ルイズたちは後悔することになる。
147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/05(土) 19:30:20 ID:VavJiNS6
あれから、数日がたった。
今、サイトは一人夜,学院の中庭で物思いに耽っていた。
(正確にいうと、逃げてきた。)
ルイズの部屋では、
ルイズとシェスタが仲がいいのか悪いのかケンカ中である。
よく、あきもせずにやるものだ。
身体は以前のように動くようになったが、
これがあの男と契約したという紛れもない事実であることを
如実に物語っている。
日本に戻れば、契約は消えるのだろうか?
ルイズとの契約とはちがい、どうしても気が重くなってしまう。
このことは、誰にも話せない。もちろん、自分のかわいい御主人様にも。
「サイト君、聞こえているかい?」
「ああ?」
また、あの男だ物思いに耽っていて気付かなかったらしい。
「なんか用か?」
148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/05(土) 19:32:44 ID:VavJiNS6
あまりあいたくはないのだが、しかたがない。
黙って話を聞くとしよう。幸いここには、誰もいない。
「実はいい忘れたことがあってね。」
「君の寿命のことなんだが、あれは
“あくまでも日常生活のなかで生活する”
うえでの話しであって、もし君が戦闘などで負傷して
動けなくなった場合は
別料金になるから気をつけてくれたまえ。」
この男が、何を言いたいのかよくわからない。
「具体的には?」
「動けなくなって再契約する場合、以前の契約どうり君の寿命は
消費されたことになる。つまり、残りの寿命をまた差し出すことになる。」
「私は、動けるようにはするとはいったが“不死身”
にするとはいっていないからね。」
サイトは、一瞬詐欺のように感じたが口に出すのは止めておく。
この男に、文句を言っても無駄だからだ。
この数日で嫌と言うほど、思い知った。
「まあ、私も鬼ではない。少しばかり助言を与えよう、宝物庫に
いってみるといい。君を助けてくれるものがあるはずだ。」
宝物庫か……そういえば以前ロケットランチャーがあったな、
中に入ったことがないから詳しいことは分からないが
探してみる価値はありそうだ。
オスマン氏に頼んでみるか。
149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/05(土) 19:37:13 ID:VavJiNS6
しかし、この男はなんでそんな事まで知っているのか?
ここまでくると、恐ろしくなる。
「お〜いサイト」
この声は、ギーシュである。走ってこっちに向かってきている。
こんな時間になんのようだろう?
男の方に視線を戻してみると、もう男の姿はない。
まったく、油断も隙もない男だとつくづく思う。
「こんなところにいたのか?ルイズの部屋にいってみたら、
君の御主人様とメイドがやりあっていたからね。」
「もう、おさまったかな?……」
口をだすとろくでもないことになるので、そそくさと部屋から
出てきたのだが
もうそろそろ帰ってもいい頃かもしれない。
「それよりもサイト、病みあがりで悪いが任務だ。」
230 名前:死神[sage] 投稿日:2007/05/08(火) 22:49:23 ID:jfHa4IGU
ある日、突然サイトが死んだ。本当に急だった。
何で死んだのか、分からなかった。
病気でもなく、ケガでもななかった。
サイトが息絶える瞬間を未だに鮮明に、覚えている。
笑っていた、最後まで笑顔だった。
それからの私は自分でも、何をして過ごしたのかよく覚えていない。
あの"男"が現れ全てを話すまでは、
私達は呆然とただその男の話を聞くしかなかった。
その男の話を聞いて、浮かんできたのは狂おしいまでの殺意と憎しみそして
怒り。その男との会話は、多分こんな感じだったと思う。
「あんたのせいで、あんたのせいで、サイトが、サイトがぁぁぁ」
「それは、心外だなマドモアゼル。私は、ただ彼の望みを叶えてあげただけ。」
シェスタも黙ってはいない。
「何が、望みを叶えただけでけですか。この人殺し、このろくでなし!!」
タバサも低い声で
「殺す!!」
私や、シェスタ、タバサがその男に掴みかかろうとするのをキュルケ、モンモランシー、アンリエッタ姫が止めにはいる。
231 名前:死神[sage] 投稿日:2007/05/08(火) 22:50:49 ID:jfHa4IGU
「ちょ、ちょっと、いくらなんでもヤバイわよ。」
「落ち着きなさい、ルイズ・フランソワーズ」
「ダメだってば、」
この男に挑めばただでは、すまないだろう。
それは、わかっている。わかっているけど……
そのやりとりををみていた男が、おもしろそうに口を開く。
「それでは、聞くが彼が"動けなくなって"私と契約することになったのは誰のせいかな?」
「そ、それは……」
「君たちが、貪り尽くしたからではないのか?」
「違う!違う!そんなことはない、そんなことは……」
私は必死に叫ぶ、私自信に言い聞かせるように。
「まず、そこのメイド!君は、ヴェストリ広場での決闘の時、彼を一度見捨てているね。
それでいて、彼が強いということが分かると戻ってきた。まるで、娼婦のようだ。!」
男の指摘にシェスタは口をつぐんで、下を向いてしまう。
232 名前:死神[sage] 投稿日:2007/05/08(火) 22:52:13 ID:jfHa4IGU
「次に、シャルロット嬢、あなただ。あなたは、母親のためとはいえ彼を殺そうとしたね。
そして、無謀にも単身ガリアに乗り込みあっけなく返り討ち。
挙句の果てに、彼に救出された。
その過程において、彼の肉体が、精神がどれほど傷ついたか……、まったく最悪な王女ですね。
毒はあなたが飲めばよかったのでは?」
男の声は優しいが、その発せられる言葉は機関銃の威力で心を壊していく。
タバサの瞳から、殺意がなくなり代わりに浮かんだのは、絶望の色。
「姫、あなたもですよ。あなたは、復讐のため彼を死神に差し出した。
まるで、自分が、自分だけが世界で一番不幸で復讐する権利があるかのように。
七万の軍をとめろだなんて、普通死にますよ。
自分が命令されたら、どんな気持ちになったんでしょうね?」
アンリエッタ姫は、身をブルブル震えさせ、うずくまってしまった。
233 名前:死神[sage] 投稿日:2007/05/08(火) 22:53:22 ID:jfHa4IGU
「最後に、あなただヴァリエール嬢。あなたの罪は誰よりも重い。
彼は、汗を流し、血を流し、また身体を張り続けた。
あなたのために。それなのにあなたは、彼に何をしましたか?
あなたはあろうことか彼を藁束に寝させ、鞭でことあるごとに叩き、
食事は家畜並みの酷さ……。人のやることではありませんね。」
私は、口をぱくぱくさせながら膝をついてしまった。
他人に、言われて初めて私がサイトにしてきたことの酷さを
痛感させられる。ここまで、心に刺さるとは……。
涙が溢れてきて、止まらなくなる。
「ふふふははははははははははははははははははは」
男は狂ったように笑い続けた。実際、狂っているのかもしれない。