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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:47:22 (5643d)
447 :1/6:2007/07/20(金) 01:58:52 ID:lDlai0Ed ほんの少しだけそんな事を考えてしまう。 でも無理。 誰かが起こしに来てくれた時、気付かずに寝ていたら恥ずかしいし。 わたしは狙われているからと、子供たちとは引き離されてしまったけれど。 サイト達が居るのなら……寂しくないから。 「うん、大丈夫だよ、みんな……」 そっと呟いて身体を起こす。 サイトは……結構お寝坊さんだったな…… 「そうだ……サイトを起こしに行ってあげよう」 うん、いい考えよね。 『貴方はお客様ですから』 そう言ってこの国の女王様がいろいろな物をくれた。 (す、少し派手かな?) 色々な服を身体に当てながら、大きな鏡を覗き込む。 (……サイト……なんて思うかな?) 大切な大切な初めてのお友達、 (サイトが……) わたしを見て、少しだけ……驚いてくれたら…… うれしい……な…… その事を想像して、ぎゅって服を抱きしめた。 448 :2/6:2007/07/20(金) 01:59:36 ID:lDlai0Ed (ちょ、丁度良いよね?) みんなが起き出すほどには遅くなくて、 (サイトがもう起きてたらどうしよう?) そう思うと、わたしの足が少しだけ速度を増す。 『ここが俺の部屋だから、何か有ったらすぐ来いよ、テファ』 そう言ってくれた。 ……だって……サイトの部屋を忘れたくなかったから。 …………だって……偶然サイトに会えるかもしれなかったから。 (知り合いが居なくて、心細いし) そんな事を思いながら、サイトの元を目指す。 どこに居るのかは知らないけれど、ここにはルイズさんもシエスタさんも居るもの。 (でも……良いよね?) 会うだけだから。 壊れそうに高鳴る胸を押さえながら、わたしはサイトの部屋の前に着いた。 449 :3/6:2007/07/20(金) 02:00:18 ID:lDlai0Ed ……今からわたし、ちょっと怪しいと思うし。 息を詰めてドアに耳を当てる。 ――うん、物音は聞こえない。 折角だから驚かせちゃおう。 急に起こしてみようかな? 楽しい想像をしながら、音を立てないようにドアを開ける。 ――――あ……れ? 部屋の真ん中に有るベットでサイトが寝て……る。 それは……分かってた、ここはサイトの部屋だもの。 (ルイズさん……シエスタ……さん……) サイトの両手には、一人づつ女の子が掴まっている。 (い……や…………) ウエストウッドで、ルイズさんとサイトが一緒に寝ていたのは知っている。 別れ別れになっていた二人が、久しぶりに会ったから。 ……でも、ここは……サイトの部屋で…… (いつも?……いつも一緒なの?) 楽しかったはずの世界が、あっさりと色褪せてゆく。 安心しきったように眠る三人に、わたしの心は深く深く沈みこんで行った。 450 :4/6:2007/07/20(金) 02:01:00 ID:lDlai0Ed (あ……はは……サイトの部屋までの道、一生懸命覚えたの…… こんな事のために、昨日わたしは一生懸命になったんだ。 二度寝なんてしないのに、もう一度ベットに横になる。 「うっ……っく……ひぅ……っ……ぇ……」 小さい時は母に心配を掛けない様に、 わたしは声を上げて泣かない。 折角貰った綺麗な服、皺に成っちゃうな…… ――何度かドアがノックされた。 知らない学院の人に、随分心配を掛けてしまった。 優しかった。 でも……その分辛かった。 「何か有ったんなら相談してくれよ」 そう言ったサイトが部屋を立ち去る時、しがみ付いてでも引き止めたかった。 でも、そんなのは迷惑に成るから…… 「ん……ありがとう……サイト……」 わたしはお礼しか言えなかった。 451 :5/6:2007/07/20(金) 02:02:09 ID:lDlai0Ed 昨日わたしは眠ったのかな? 起きている様な、眠っている様な、朦朧とした状態で部屋の中を見るとは無しに見ていた。 「入るわよ」 宣告と共にドアが開く。 (っ……ルイズさん……) 「大丈夫? 旅の疲れでも出たの?」 ……ヤメテ……優しく……しないで…… 「サイト相手だと相談できないような事? わたしが力になれる事有る?」 …………酷い……よぅ……こんなに胸が痛いのに、 「同じ虚無の使い手ですもの、わたしに出来ることが有ったら何でも言ってね」 真摯な言葉に、心を抉られ、罪悪感が胸を潰す。 「っ……えっ……ふぇっ……えええぇっぇぇぇ」 何年ぶりか分からない位、久しぶりに声をあげて泣いた私をルイズさんが優しく抱き寄せてくれる。 父や母と居た頃の安らぎに包まれたような気がした。 (もう……二度と…………) こんなに幸せな時は訪れないと思っていたのに…… 452 :6/6:2007/07/20(金) 02:02:51 ID:lDlai0Ed 優しいルイズさん…… 「ほら、何が有ったのか言ってみて、楽になるかもしれないでしょ?」 母に諭された時のように、ただ考えた事を口に乗せる。 「――あのね、胸が重いの」 時間が……止まる。 (サイトの事を考えると楽しかったのに、ルイズさんとサイトを見ると切なくて、 色々説明は考えたけれど、わたしは口に出来なかった。 「……なぁっ……なっ、なああぁぁぁぁんですってぇぇぇぇぇ」 鬼のような形相に、わたしの涙は止まってしまう。 「この胸かぁぁぁぁ、重すぎて困るのは、このムネナノカァァァァ」 「謝りなさいっ!謝りなさいっ!謝りなさいっ!」 狂ったように胸を揉みまくるルイズさん(とっても痛いの)を、サイトとシエスタさんが止めてくれるまで、 「むきゃぁぁぁぁ」 「ご、ごめんなさぁぁぁぁい」 いつの間にか部屋の前には人だかり。 結局この騒動は、 (胸が苦しいのって、揉んで貰うと治るんだ!) |
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