20-160
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:49:05 (5643d)
160 名前: 寝る前に [sage] 投稿日: 2007/09/20(木) 01:11:45 ID:PRUWUfI5
夜。
サイトが完全に寝てから、ルイズは日記を読んでいた。
日記を読み返すたびに、ルイズは昔を思い出す。
サイトとはじめて出会った時の事。サイトにゴーレムから守られた時の事。サイトに激しい折檻をした時の事。
それは、サイトと出会う前からは考えられないような非日常の出来事。サイトと出会ってから日常になった出来事。
その出来事の連続の中で、いつの間にか生まれていった自分の気持ち。
まさか、わたしがこんな奴を好きになるなんて。
隣で寝ている愛しい使い魔の寝顔を見る。幸せそうな寝顔ではあるが、少々間抜けな寝顔。
でも、それも愛しい。
「はぁ……」
思わずため息を漏らしてしまう。こんな間抜けで色ボケで変態な使い魔の何処がいいのかしら。
そう思ってしまうものの、時は既に遅すぎた。ルイズは自分の気持ちを自覚していた。
好きなんだからしょうがないもん。
さっきの心の声への返答は、これだった。
何処がいいのかと自らに問いかけても、意味の無いことだ。答えではない答えが、既に自分の中にあるのだから。
わたしも染まってきてるわね。
そんな自分に少し呆れつつ、悪くないと思うルイズ。愛しい使い魔の寝息をBGMに、ルイズは日記を読み進めていく。
「あっ……」
読み進めると、一行の文が目についた。
161 名前: 寝る前に [sage] 投稿日: 2007/09/20(木) 01:12:22 ID:PRUWUfI5
使い魔をクビにしてしまった。
こんなこともあったわね、とまたルイズは懐かしく思う。
サイトと大喧嘩をして、サイトに首を通告してしまった日のこと。よく覚えている。
ううん、大喧嘩って言うのは正しくない。原因はわたしの早とちり。
はぁ、とまたため息をつくルイズ。あの頃のわたしは何をしてたんだろう、と情けなくなってくる。
チラリとサイトの寝顔を見て、もしもサイトをクビにしたらと考えてみる。
サイトは行くところがなくなる。でも、シエスタがいる。シエスタのことだから、村に帰って一緒に暮らそうと言うに決まってる。わたしは……惨めな思いをする。使い魔がいなくなって、寂しい思いをする。帰ってきて欲しいと思っても、たぶんサイトは帰ってこない。
そんなの耐えられない。考えただけで、胸が締め付けられる。考えただけなのに、涙が出そうになってくる。
離れて欲しくない。サイトに、離れて欲しくない。
離れて欲しくないから、サイトと離れたくないから、わたしは日記を放り投げてサイトに抱きついた。こうしてると、安心できる。サイトがいるって実感できる。
「ん……なんだよ?」
サイトの眠そうな声が聞こえてきた。ルイズが抱きついたせいで、サイトが起きたようだ。
寝惚け眼をこすりながら、サイトはルイズを見る。目にうっすらを涙を溜めて、幸せそうな表情でこちらを見つめているルイズがいる。一体何があったのだろう。
「何かあったのか?」
「な、何でもないわよ。少し眠いだけ」
言えない。妄想して泣きそうになったなんてみっともないこと、サイトには言えない。知られたくない。
「あ、そう」
納得したのか、サイトはそう返事をして、再び目を瞑った。そしてすぐに寝息を立て始める。
ルイズもサイトの様子を見て安心したのか、眠くなってきた。サイトに抱きついたまま、そのままウトウトとし始める。
絶対に、離さないから。
そんなことを思いながら、ルイズは幸せな夢へと落ちていった。