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525 :犬竜的日常〜セクハラ編〜 :2007/10/05(金) 00:21:45 ID:c1KS1yIj
ギーシュが水精霊騎士隊の溜まり場で優雅に午後の紅茶を楽しんでいると、頬を押さえた才人がやってきた。
「やあどうしたねサイト、そんなしかめ面で」
「どうしたもこうしたもねえよ。ルイズの奴がよ、掃除してくれっつーからやったら『遅い』って言うし
洗濯しろっつーからやったら『雑だ』って蹴るし」
「相変わらず悲惨な毎日だね君も」
「全くだぜ。別にあいつのために何かするってのはそんな嫌じゃないけどよ、
ちょっとぐらいは感謝してくれてもいいんじゃねーかなー」
「まあ、そのぐらいの見返りは期待してもいい気はするね」
「だよな。あー、報われないぜ全く……」
「……そこいくと、お前は反応が分かりやすくていいよな」
「きゅい?」
才人の前で首を傾げるのは、風韻竜のシルフィードである。
今日も今日とて単純明快能天気、才人がゼロ戦格納庫から出てきた途端に「遊んで遊んでー!」とじゃれついてきたのだ。
「よし分かった、今日は日が暮れるまでお前と遊ぶことにしよう」
「わーい」
「ははは、お前は本当に素直で可愛い奴だなあ……ん?」
ふと、才人は眉をひそめた。嬉しそうに尻尾を振るシルフィードの体が、全体的に埃っぽいというか、泥で汚れている。
「おいおい、お前また駆け回ったまま体洗ってねえだろ」
「え、そんなに汚くなってる?」
首を伸ばして自分の体を眺め回すシルフィードに、才人は何度も頷いた。
「汚い汚い。前も言っただろ、お前も女の子なんだからよ、もうちょっと身だしなみに気を遣えっての」
「ぶー。サイトってばお母様みたいなこと言うのねー」
「アホ。勿体無いんだっての。折角こんな綺麗な青い鱗持ってんのによー。
翼だって、こんな汚れっぱなしじゃみすぼらしいだろ。男……いや、この場合は雄か。雄にモテねえぞこんなんじゃ」
鱗に覆われた背中を撫でながら言うと、シルフィードは才人の眼前まで首を突き出してきて、円らな黒い瞳でじっと彼の顔を覗き込んだ。
527 :犬竜的日常〜セクハラ編〜 :2007/10/05(金) 00:22:48 ID:c1KS1yIj
「サイトも、シルフィの体が綺麗な方が嬉しいの?」
「そりゃまあな。見栄えもいいし」
深く考えずに頷くと、シルフィードは落ち着きなく翼をばたつかせ始めた。
「じゃ、洗ってくださいな」
「オイオイ、どうした急に……まあいいか。じゃ、ちょっと桶とブラシとってくるからよ。近場の泉にでも乗っけてってくれよ」
「了解なのね」
やけにやる気を出したシルフィードが全力で羽ばたいたので、学院近くの泉までは一分もかからなかった。
「とうちゃーく」
「やっぱ飛ぶと速ぇな……じゃ、洗ってやるから、大人しくしててくれよ」
「うん、シルフィ、大人しくするの」
やけにかしこまった様子でじっとしているシルフィードに苦笑しながら、才人は桶に水を汲み、ブラシで彼女の体をごしごしと擦り出す。
「いやん、気持ちいいー。サイトったらテクニシャンなのねー」
「アホ。どこでそんな言葉覚えてくるんだ、お前は」
「お姉さまが読んでた本に書いてあった」
「……何読んでんだタバサの奴」
少々薄ら寒さを覚えながら、才人は遠慮なくシルフィードの体をブラシがけしていく。
女の子とは言え所詮相手は竜なので、特に気を遣うこともない。
(あー、そういや、尻尾の付け根の辺りとか、隠れてる部分もちゃんと洗ってやらねえとな)
そんなことを考えながら、才人がシルフィードの尻尾をひょいと持ち上げて、その裏側を覗き込んだときである。
「いやぁっ」
不意にシルフィードが悲鳴を上げた。
「あん? どうした、シルフィード」
「ささささ、サイト、どこ見てるのね!?」
「どこって……なに? なんかあんの、ここ?」
今までにないシルフィードの反応を怪訝に思いながら、才人はぐっと身を乗り出して、尻尾の付け根の裏側を覗き込む。
たくましい二本の後ろ脚に挟まれた部分である。特に、おかしなところはないように見える。
「別に、何もねえぜ?」
不思議に思いながら、何気なく手を伸ばしてその部分を撫でてみた。その途端に、
「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!」
凄まじい悲鳴と共に、シルフィードが大きく体を振った。
防御する間もなく襲い来る後ろ脚に、才人の体が軽々と吹っ飛ばされる。
地面に叩きつけられて意識が遠のく中、才人は怒り狂ったシルフィードの声を聞いた。
「バカァッ! サイトのえっちぃっ!!」
「やあどうしたねサイト、そんなにボロボロになって」
「……いや、なんかさ、スゲー損した気分なんだよ」
「何が?」
「……俺は、一体どこに欲情するべきだったんだろう?」
「……何の話をしているんだね、君は」