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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:50:22 (5639d)
618 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:16:29 PHAMvhgH その日。 『ミス・ヴァリエールへ。 授業が終わって自室に帰ったルイズは、テーブルの上に無造作に置かれたその手紙を読んだ瞬間、激昂した。 「な、なによあのメイド!抜け駆けしようってわけ!?」 そう叫んで、思い切りその手紙を引き伸ばして、破ろうとする。 『もし、ここに気付いてくれたら、幸せです。 それを読んだ瞬間、ルイズはうぐ、と言葉に詰まって、その便箋をくしゃっと丸めるに留めた。 「…わかってるわよ、そのくらい…!」 ルイズはそう言って、半分怒った顔のまま、ベッドに倒れこんだ。 タバサを使い魔にした才人を、ルイズが部屋から追い出して、十日あまりが過ぎた時のことだった。 「サイトさん!」 才人がその日、半分日課になりつつあるタバサが借りてきた本の返却をしに、山と詰まれた本を図書室へと運ぶ途中、中間地点の中庭に着いた時。 「…あ、あの、シエスタまだ怒ってる?」 怯えたようにそう言った。 「…何の話ですか?」 当然、シエスタには才人の言葉の意味が理解できない。 「…いや、タバサとアレがごにょごにょ…」 蒸し返して怒らせてもなあ、と思った才人の語尾は、尻すぼみになってしまう。 619 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:17:31 PHAMvhgH 「…怒ってませんよ、そんなこと」 才人は、てっきり、シエスタはルイズと一緒に怒り狂っているものとばかり思っていたのである。 「…サイトさん。お願いがあります」 あまりにも真剣な眼差しで見つめるシエスタに、才人は後ずさってしまう。 「な、なにかな?」 思わず才人の目が点になる。 「…メイドの嬢ちゃん。そりゃムチャが過ぎるってもんじゃないかい?」 しかし、シエスタは反論した。 「…います。いるじゃないですか、デルフさん」 デルフリンガーは鍔をかちゃん、と鳴らした。相槌のつもりらしい。 「……完璧忘れてた。そーいやブリミルの野郎がそうだっけか」 その話に、才人が割り込んでくる。 「どうしたい相棒?」 あまりにも気楽に言うデルフリンガー。 「無理でもいいんです!形だけでいいんです! 才人はあまり乗り気ではないようだ。 「…サイトさんのモノになれないなら、私、生きてたってしょうがないです。 ちらり、と横目に才人を見るシエスタ。 620 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:18:49 PHAMvhgH 才人ははぁ、と大きなため息をついて。 「…しょうがないなあ…。カタチだけでよければ」 諦めたようにそう言ったのだった。 我が名は平賀才人。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ。 才人の声が、人の居ないタバサの部屋に響く。 「じゃ、いくよ、シエスタ」 シエスタは才人を見上げ、覚悟を決めたように目を瞑る。 「これで、また契約成立したらオドロキだな相棒」 冗談めかしてそう言ったデルフリンガーの声に。 「…やばい…」 才人の声が重なり。 「いたっ…痛い、いたいたいいたい!」 突如痛みを訴えだしたシエスタの声が重なった。 「さ、サイトさん…」 才人の腕の中で彼の手をしっかり握ったシエスタの痛みは、すぐに納まった。 「私…サイトさんの、使い魔に…なれたんですね…」 才人の中に、言葉とともにシエスタの歓喜の感情が流れ込んでくる。 …心も、繋がったみたいだな…。 才人の心の声に、シエスタは思わず声を上げてしまう。 「え?え?な、なんですか今の?」 こういうことも、できるみたいなんだ。 621 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:19:20 PHAMvhgH 才人の心の声に、さらに激しい歓喜の感情が、シエスタから送られて来る。 嬉しい!嬉しい!すっごく嬉しいです! その声とともに、シエスタは才人にぎゅっ、と抱きついた。 「…で、さ。シエスタの身体のどこかに、『使い魔の印』が刻まれてるはずなんだ」 言って自分の『ガンダールヴの印』を見せる。 「ちょ!シエスタ何やって」 慌てる才人に対し、シエスタは冷静だった。 「これが、使い魔の印…」 感動するシエスタを、才人の言葉が台無しにした。 …サイトさんの、すけべ♪ その言葉には、あまりにも淫靡な感情が乗っていた。 …あのなあ、シエスタ…。 呆れたような才人の心の声を、シエスタの心の声が打ち消した。 …十日以上もご無沙汰だったんですよ。 そして、才人のズボンを器用に下ろすと。 いっぱい、出してください♪ご主人様♪ 622 名前:メイドが来たりて笛を吹く ◆mQKcT9WQPM 本日のレス 投稿日:2007/11/18(日) 01:19:58 PHAMvhgH そして、その夜。 「…別に構わない」 タバサのその言葉に、嘘偽りはない。 …ごめんな、シャルロット。 しかし。タバサの反応は、才人の予想と違っていた。 …何を謝るの? 心の中で言い切って、タバサはシエスタに歩み寄る。 「これからよろしく」 シエスタはその小さな手を握り返した。 「私も、サイトさんを独占しようなんて思いませんよ♪」 にっこり笑って言うシエスタ。 これ、どうやら使い魔どうしでも通じるみたいですよ? シエスタの心の声が、全ての疑問の答えになった。 「じゃ、これから二人分頑張ってくださいね、ご主人様?」 二人分のねぎらいと期待の感情に、乾いた笑いの漏れる才人だった。 …ひょっとすると、将来的には三人分になるかもですけどね。 二人には伝えないよう、心の内で黒髪のメイドはそう思った。〜fin |
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