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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:00 (5645d)
285 名前: えむえむあ〜る 1/7 [sage] 投稿日: 2007/12/26(水) 00:17:50 ID:kN8yWABH 着の身着のまま放り出される方がまだマシだったかも知れない。 『野良魔獣に襲われた時の為に』 多分ルイズが気を回したのだろう。 (……ど、どこまでも不器用な奴) 秋葉原にシャヴァリエのマントを装備した少年が、『AK小銃』装備 (捕まるって……) 人通りの無い路地裏で、しばらく悩んでいたサイトだったが、気を取り直して堂々と道を歩き出す。 (警察がそんなにうろうろしているもんでも無いし、何とかなるだろ) ――サイトは知らない、昨今の秋葉原の状態を。 ……サイトが異世界に行った頃は、そんなことは無かった。 「君……ちょっと、良いかね?」 サイトが反射的に逃げようとするが、あっという間に数名の制服警官に囲まれた。 (な、なんだこのマドハンド) 「どうして逃げようとするんだい?」 目が笑ってない。 「ちょ、ちょっと急いでて……」 警官の視線は、サイトの抱える銃に向けられていた。 「いや……その……えっと……」 しばらく悩んだサイトだが、おとなしく持ち物を見せることにした。 (本物だとは思わないだろう) ――サイトは知らない。 「ほ、本物ぉぉぉぉ!!」 それでもサイトにはあまり危機感が無かった。 (まさか、乱射すると思われる筈も……) ――サイトは知らない。 「それで、彼は何処から銃を手に入れたのかね?」 自分たちの管理していない『凶器』が、今どれほどこの街にあるのか想像して、男は苛ついていた。 「その男の職業や、年齢は?」 『坊さん』の一言を聞いた瞬間、部屋の空気が止まった。 「……宗教関係……カルトかっ!」 男は頭を抱える。 「くそっ、今度は何処の馬鹿だ!」 ハルケギニアだの、ルイズだの、鍵になりそうな言葉を断片的に漏らす他は、 「保護者が……面会を求めております」 そうですね。 「真面目な……良い少年なのですが……」 とはいえ、未成年。 「おい!」 随分と分かりにくい優しさに、それでも男の部下は気づいた。 「はいっ」 急いで駆け去る部下の背中を見ながら、男は次の案件の書類を手に取った。 調書を取る最中に、平賀少年にふと聞いてみた一言が始まりだった。 『あんな銃持ってても、そうそう使えるものじゃないしね』 使えない。 その一言を引き出そうとした、善意の誘導だった。 『いや、多分使えるはずですよ』 最悪の返答だった。 ――平賀少年の言葉は、シューティングレンジで証明された。 「なんだこの成績、奴はオリンピック選手か何かか?」 優秀すぎた。 「分かりません」 こうなってしまっては、簡単に釈放するわけにはいかない。 『他の銃でも、出来ますよ』 平賀少年は得意げに言った。 ――本当だった。 「しばらく……ここで暮らしてもらうことに成るな」 毎日通う保護者に、なんと伝えるべきか。 部下は日に日にやつれて行く。 「五ヶ国語……六ヶ国語か?」 外国人に拉致されていた可能性がある。 「どの国の言葉も、最初は分からないようなのですが」 どの国の言葉も、見事に理解して見せた。 「工作員としての教育を受けているのか? ……拉致したのは『北』か?」 サイトが扱って見せた銃器の中には、流通の限られているものも随分有った。 魔法のような技術に、平賀少年を調べている関係者は悪夢を見せられている気分だ。 「どれだけ聞いても、『空白の一年』については口にしないのだな?」 最悪だった。 一年。 一年でありえないレベルの言語教育と、銃器、ナイフどころか、弓矢、ボウガン、スリング、吹き矢。 「彼に何が有ったんだ?」 体に残る傷が、彼の一年を想像させる。 「治療すら禄に受けられずに……訓練を……」 痛ましい話だった。 部下の目が潤んでいた。 ――情に流されるのは愚かな事だと、何度も教えたはずだが。 自分の教育もまだまだだという事だな。 「国内で発見された点から考えるに、拠点若しくは目標が日本に有ると見るべきだろう」 平賀少年と同程度のスキルの持ち主が…… 「彼の手の刺青は見たか?」 考えたくない事実だが…… 「俺はシリアルだと思っている」 甘い! 「国内の行方不明者が、例年どれだけの数になると思っている!!」 彼と同程度のスキルの持ち主が、あの数居るのだとすれば……クーデターすら容易い。 「あの数は十分に可能だ」 そうだな……少なくとも気休めには成る。 「あの種類の銃を用意できる国は限られている」 ならば、あんな所で容易く発見されるはずは無い。 「日本だ」 持込が難しいとはいえ物資の流通量は世界屈指で、検閲も…… 「外交官が噛んでいるかも知れんな」 二人の背筋を冷たいものが這い上がった。 (自分たちの手に負えない事件なのではないか?) そう考えては見ても、他に回せば揉み消されるとしか考えられなかった。 「し、しかし、そんな資金や行動力を持つ組織なんて……」 部下の現実逃避に、男は止めを刺した。 宗教法人の登記を受けているくせに、政治に干渉する有り得ない団体。 「し、しかし……」 不透明な資金で、武器を買い。 考えれば考えるほど有り得る事態に、部下が言葉を失っていた。 男もまた……語る事が尽きていた。 (……さて……どうするか……) 先の見えない戦い。 硬く目を瞑り、一心に悩む。 が、答えは簡単に出た。 ――考えるまでも……無いな。 自分がこの職業を選んだ理由。 「行くぞ」 部下を従え、男は初めて直接平賀少年を尋問する事にした。 ――留置所にて 「うー、暇だなぁ……」 (TVもねー、ネットもねー、漫画もねー 外部の情報に触れるのを制限するため、サイトには新聞すら与えられていなかった。 (あーでも、銃持ってて捕まったら、こんなもんなのかなぁ?) 無知ゆえに、サイトはひたすら耐えていた。 ――見覚えの有る光が、サイトの前に現れた。 『帰れる』サイトの心に有ったには、その想いだった。 ――最早サイトにとっての故郷は、日本ではなく。 「待ってろよ! ルイズっ」 ロマリアとガリアの戦力差は明白だった。 ヨルムンガルド一体を倒すのに、エルフ一人を倒すのに、 策で埋められる戦力差など、高が知れていたのだ。 じわじわと弄られ消耗しきった使い手と、三分の一にまで数を減らしたロマリアの国軍にとって、最後の希望は一つしかなかった。 ―-ティファニアの使い魔。 必死で説得された彼女がやっと唱えた、『サモン・サーバント』そして現れたのが…… 「サイトっ?」 ゲートから飛び出したサイトを迎えたのは、大きなおっぱいだった。 詠唱も無しで、テファの唇を奪おうとするサイトに、勢い良くぶつかった物が有った 「あああ、あんたねぇぇっっっ」 ――いつもはおとなしく受けていたルイズの暴行を、今日のサイトは軽々と避ける。 ――虚無を使い、サイトが立ち去った後を見ながらヴィットーリオは悩んでいた。 『自白剤を用意しろっ』 ジュリオと共に、異界を覗く。 「聖下、追い返したらたのしそーだなー、とか思ってません?」 ロマリアの使い手と使い魔は余興が大好きな為、 |
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