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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:02 (5643d)
299 名前: 25日 1/4 [sage] 投稿日: 2007/12/26(水) 02:52:11 ID:kN8yWABH 「な、何だぁ?」 八割ほどの生徒が、残り二割の生徒に絡んでいた。 そんな周りの状態に気をとられ、サイトは異常な物体の接近を警戒するのが遅れた。 「サぁぁぁぁイぃぃぃトぅぉぉっぉぉぉ」 マリコルヌ……いや、マリコルヌだったモノがそこには有った。 「き〜さ〜ま〜の〜手を見せろ〜」 マリコルヌの腕がサイトの手を掴み、恐ろしい力で引き寄せる。 「ちょっ、わ、分かったから、落ち着け」 サイトがマリコルヌの目の前で手のひらを開いてみせると、地獄のそこから響くような声が聞こえてきた。 「ちがぁぁぁうぅ、反対側だぁぁぁっ」 何でこいつはこんなに怖いんだ? 「あれ? ……サイト……お前……」 ? マリコルヌは憑き物が落ちたかのような顔でじっとサイトの手を見つめていた。 「ど、どうしたんだ?」 さっきまでとは打って変わった様子で、サイトに笑いかけるマリコルヌが…… (ぶ、不気味すぎる……) サイトは何がおきているのかさっぱり分からなかった。 教室内の混沌とした状況の理由も、マリコルヌが何を見ていたのかも。 「きぃぃぃぃさぁあぁぁぁああまぁぁぁあああああっ!」 サイトはマリコルヌを必死でなだめた後、自室に帰った。 「……働けど、働けど……ですか? サイトさん」 シエスタが、ふとサイトの手を見つめ、何かに気がついたように小物入れまで走った。 「サイトさん、しばらく動かないでくださいね」 シエスタの柔らかい手が、サイトの手を優しく固定する。 「あれ、つめ伸びてた?」 右、左とシエスタが丁寧につめを切ってゆく。 (……当たってる……) シエスタが爪に鑢を当てる間、サイトの理性は鑢と同じタイミングで揺らされ続けた。 「ちょっ、いいよシエスタ。それくらい自分で……」 サイトの足を大切な物の様に包み、またパチリと音が響きだす。 (……なんか……すごく偉くなった気分だなぁ) サイトはのん気にそんなことを考えていた。 「綺麗に成りました」 切る位は自分でして居たが先まで整えたり、見たことも無い道具で磨かれたのは初めてだった。 「ミス・ヴァリエールのですから……使ったの内緒ですよ?」 小さく笑いながら、細々とした道具を丁寧に仕舞ってゆく。 「あのさ、今日マリコルヌがさ……」 教室での出来事を話すと、しばらく悩んでいたシエスタが頬を染めた。 「あの……それって……」 シエスタの説明は長かった。 「その……それで、その前日は恋人同士が一緒に過ごすことが、いつの間にかトリステインで流行したんです。 他の生徒たちは、昨日は…… 「マリコルヌが怒り狂ってた理由と、男子生徒の明暗が分かれてた理由は分かった。 もじもじと悩んだシエスタが、つとサイトの耳元まで来ると、小さな声でこしょこしょと説明を始めた。 つんつんと、サイトの指先に触れるシエスタは愛らしいが、サイトには何の事だかさっぱり分からなかった。 「えと……手を見たことと何か関係有るの?」 潤み始めたシエスタの目を見つめながら、サイトは質問を重ねた。 泣き出しそうな瞳のまま、悩み続けていたシエスタが、 「ちょっ、シエスタっ?!」 サイトの指先がズロースの厚い布地の向こうから、熱を伝えた。 (……………………………………………………っ) サイトの頭の中が興奮で真っ白に染め上げられる。 「ここ、触るのに……爪が伸びてたら痛いじゃないですか……」 中とか……意を決したらしいシエスタの言葉も、サイトの脳にはほとんど伝わっていなかった。 (あー、そっかー、今日つめ綺麗にきってた奴って、昨日……) 朝のやり取りをようやくサイトは理解…… 「って、マテイっ!」 自分が庇ったギーシュと、質問攻めに有っていた二割の生徒を思い出す。 「あんの、裏切りものどもがぁぁぁぁぁぁぁ」 ――マリコルヌ、君は正しかった。心友よ! 無言でサイトは教室に向かう。 「俺よりモテル奴に会いに行く!!」 主に殴るために。 「あの……サ、サイトさ……」 怒りに我を忘れたサイトが、教室で暴れたのはその5分後だった。 そして…… ――シエスタは一週間口をきいてくれなかった。 |
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