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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:10 (5618d)
454 名前: 幸せな家族の聖夜 [sage] 投稿日: 2007/12/30(日) 19:23:10 ID:xiS5/zFo
幸せな家族の聖夜
ある雪が降り積もったハルケギニアの深夜のこと。
その日は、ハルケギニアでは聖夜──クリスマスと呼ばれた。
とある魔法学院の異界の男により広まったクリスマスはハルケギニア全土へ広まり、
地球のそれと、ハルケギニアのものは大して変わらない風習のようなものとなっていた。
無論キリスト教だとか、そういった宗教的なものは関係なく、降臨祭に似たただのお祭りみたいなものだ。
恋人たちは愛を語り、子供たちにはサンタクロースからの祝福を。そして、豪華な食事。
ただそれだけの日だった。
そんな日に、一人の男が電気のついていない部屋に忍び込むかのように音を立てずに進入する。
サイトだった。
その部屋には一人の男子が寝ているだけだ。
深い眠りについていることを確認し、そっと足音を立てないように枕元までゆっくりと動く。
まずは形から、ということで意味もなく、付け髭もつけている。服装は黒いパジャマだ。
問題なく目的の場所へ『プレゼント』を置き、そっと気付かれずに部屋を出る…筈だった。
プレゼントを置くときに少しばかり大きな音をだしてしまったのだ。
そして男子は目を覚ました風だった。
「しまった!」と思い咄嗟に男子の方へ目を向けると、目がばっちりあってしまった。
急いで部屋を出て髭を外し、自分の寝室へ戻る。
455 名前: 幸せな家族の聖夜 [sage] 投稿日: 2007/12/30(日) 19:24:31 ID:xiS5/zFo
中で待っていた妻─ルイズは、少し慌てた様子のサイトを見て疑問を口にした。
「どうしたの?」
「いや…それがプレゼントを置いたときに音がしちゃって、目がバッチリあっちまった。」
「あんたねぇ…子供の夢を壊すようなことを…まぁいいわ。仕方ないじゃない。」
まぁそうなんだが…と言いかけたところへさっきの男子─つまり二人の間の子供が入ってきた。
「パパ、ママ!聞いて聞いて!ぼくサンタさん見たよ!」
ルイズは軽くサイトを睨み、サイトは冷や汗をかきつつ、平静を保とうとしていた。
「どんな人だった?」
サイトは少し恐れつつ尋ねた。
「あのね…パパにそっくりだった!」
(あちゃー…これはやっぱりダメだったか。)
なんて後悔してると子供は続けて、
「黒のベルトに黒のブーツ履いてたんだ。」
あれ?と二人は顔を見合わせる。
「だから、パパとは別人だよ!」
(どうしてそうなるんだ!)
しかしそうとは言わず、いやむしろ言えず
「よかったな。サンタさんを見れたんだ。」
などと返すサイト。
「うん。きっと窓から入ったんだ。服とか全部真っ黒だったのは、きっと家に忍び込むためだよ。
黒い服装なら見えにくいもんね。」
ルイズはさっきから呆れながらも笑いを堪えている。正直俺も笑いを堪えるのに必死だ。
「そうか、よかったな。とにかく、今日は遅いからもう寝なさい。」
はーい、と元気な返事と、おやすみなさい、と丁寧な挨拶をして寝室を後にする。
「なんというか、純粋な子供に育ってて助かったわね。」
「そうだな…アイツが大きくなったらいい笑い話になりそうだ。」
「そうね…」
などと子供には聞こえぬよう笑いを漏らしながら話す二人。
じゃあ俺たちも寝るか、と寝転がるサイト。
しかし、寝転がるサイトの服の裾を引っ張るルイズ。
「ねぇ…今日はクリスマス、でしょ?」
サイトはにやーっとしながら起き上がり、ルイズを見る。
「久しぶりだな…ルイズから誘ってくれるのは。」
などと言いながらすぐにルイズを抱きしめるサイト。
「今日は特別なの。分かってるくせに。」
ルイズもサイトを抱きしめる。
そうして幸せなハルケギニアの夜は更けていく。
─Fin