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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:11 (5640d)
471 :年末大掃除 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/31(月) 02:52:42 ID:FsYTwLEr
どこの世界も、年末は冬の最中にやってくるものらしい。
のんびりベッドの上で夢を見ていた才人を、突然の寒気が襲う。
シエスタが窓を開け、ルイズが才人のかぶっている布団をひっぺがしたからだ。
「いつまで寝てんのよ!掃除の邪魔っ!」
言ってルイズは布団を抱えてシエスタの開けた窓から干す。
…なんで、ルイズが掃除なんかしてんだ?
その疑問は、才人が口にする前に、シエスタが応えた。
「えっとですね、今日は大掃除の日でして。
貴族も平民も関係なく、自分の部屋は自分で掃除するんですよ。一年の汚れは、自分自身が落とさなきゃいけないっていうか。
…サイトさんの故郷はしないんですか?大掃除」
まだ半分寝ぼけている才人は、そんなシエスタの話を聞きながら、日本の年末を思い出す。
…確かに、俺も自分の部屋は大掃除してたっけ…。
ベッドから降りて、慌しく動き回るシエスタとルイズを見つめながら、才人がボーッとしていると。
「…こら犬。あんたも、あの『ゼロセン』の倉庫くらい、掃除してきたらどうなのよ」
本棚から本を抜き出し、整理しているルイズが、間抜け面をして掃除の様子を見つめる才人に文句を言う。
言外に、『手伝わないんなら邪魔』と言われているようだ。まるで役立たずのダメ夫扱いである。
才人は、ルイズの言う事も一理ある、と思った。
「そだな。じゃ、俺倉庫の方掃除してくるわ」
言って部屋を出て行く才人。
あ、じゃあ私も、と後に続こうとしたシエスタを、ルイズがちょっと待ちなさいアンタはこの部屋やるんでしょ、と引き止める。
確かにシエスタは、ルイズの部屋の掃除を買って出ていた。ルイズの暮らすこの部屋は、すなわち才人の暮らす部屋でもある。才人のメイドであるシエスタがこの部屋を掃除するのは当然の理であった。
シエスタは渋々ルイズの言葉に従い、空になった本棚の移動を始めた。
才人が倉庫に向かう途中。
大量の本を抱えた、タバサとシルフィードと出くわした。
この二人も、大掃除の最中らしい。
朝の挨拶をすると、シルフィードが全て語ってくれた。
この一年で溜め込んだ要らない本を、図書館に寄付しに行くところらしい。
捨てればいいじゃん、となんとなく言った才人だったが、タバサはすぐにそれを否定した。
「…私には必要のない本でも、誰かが必要としているかもしれない」
確かにタバサのいう事にも一理ある。自分に必要ないからといって、それが他人にとって無駄であるとは限らないのだ。
それに、ハルケギニアはそれほど印刷技術が発達しているわけではない。本の単価だってバカにならないのだ。
才人は思わず感心するが、それをシルフィードがぶちこわした。
「『青空少女隊』とか『螺旋王の冒険』とか『真っ赤な誓い』とか、あんまり読んでも役に立たないとおもうのね?きゅい」
それは最近増えているトリステインのライトノベルのようなもので、一時的に楽しむことは出来てもあまり得る物はない、とされているものだ。
それを言っては元も子もないが。
まるで神の手の代行者のように、タバサの杖がシルフィードの脳天に振り下ろされる。
本の束を抱えるシルフィードはその一撃を避けられない。
「いったーい!ひどいのねおねえさまー!」
そして、二人はその場で言い合いを始める。
どちらかと言えば吼えているのは主にシルフィードで、タバサはたまに鋭いカウンターを返すだけだったが。
そんな二人を置いて、才人は倉庫へ向かう。
あのままその場にいたら、きっと本を持たされて、そのまま手伝わされるであろうからだ。
472 :年末大掃除 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/31(月) 02:53:10 ID:FsYTwLEr
才人は倉庫に着くと、まずゼロ戦の掃除を始めた。
とは言っても、週に二度は手入れをしているため、掃除する場所などほとんどなかった。
また、ろくな調度もなく、テーブルと椅子と棚くらいしかない格納庫の掃除は、あっという間に終わった。
そして、今才人の目の前には、木箱が一つ。
それは、かつて水精霊騎士団で宴会をした際に、ワインを詰めた箱を倉庫に置きっぱなしにしていたものである。
その中には、格納庫に転がっていたガラクタが詰め込まれていた。
しかしよく見ると、まだ使えそうなものが残っている。
それは、いつぞや街で魔法具屋を手伝った折にもらった品々。
「そーいや、こんなもんもあったっけねえ」
泥でできた奇妙な人形。黒と白の宝珠。瓶に入った薬。
魔法具に使用期限はあるのだろうか。少なくともこの年末辺りには使っておいたほうがいいかもしれない。
他にもつかえるものはないか、と探してみる。
すると、まだいくつか使えそうなものがあった。
試験管に詰められた、粘液状の液体。何か不思議な文様の書かれた、木の札。
試験管はいつかのお詫びにモンモランシーが分けてくれたもの。たしか、『ルイズがいらないって言うから、あなたに渡しておくわ』なんて言っていたが。効果を尋ねても、顔を赤くするだけで教えてくれなかった。ただ、塗り薬だという事だけ教えてくれた。
木の札はよくわからない。確か、ギーシュが持ってきたもので、話によれば一晩だけ願いをかなえるとかどうとか言っていたが。しかし入手ルートが行商人では、その効果のほどは眉唾だった。
これらも、使っておくべきなのだろうか?もし、期限切れなどになってはもったいない。
才人は五つの品をテーブルの上に並べ、うーん、と唸る。
「どうすっかなー」
このまま使えなくなるのを待つのか、それとも。
そんな風に才人が悩んでいると、格納庫の入り口から、大掃除が終わったのか、誰かが才人を呼ぶ声がした。
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