25-507
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:17 (5639d)

507 名前: これからもよろしく(1/2) [sage] 投稿日: 2008/01/01(火) 01:21:13 ID:pXv/Xm3T
ヤラの月の第一週フレイヤの週の最初の日。虚無の休日。

ハルケギニアでは始祖の降臨祭の初日にあたる。

ルイズとサイトは、ハルケギニアにはらしからぬ出で立ちで町を歩いていた。
町外れの始祖を祀る教会に行くのである。

ルイズの服は、上下のつなぎの服――脇から袖にかけて長く垂れ下がっている特徴のある服である。
柄はというと黒地に花の文様が散りばめられており、しかも前で合わせて太目の紐で止めている。
その紐にも金や朱の糸で美しく刺繍が施されているものだ。

一方のサイトは、黒色で袖の部分が大きくたるんでいる上着を前で合わせ、紐で結んでいる。
ズボンはというと、グレーでかなりだぶついていて、ざっくりしたタックの入ったものだった。

そう、ふたりは日本でいうところの振袖、羽織袴だったのである。
サイトの専属メイドのシエスタが実家からわざわざ取り寄せたものだった。
もちろん、二人にこの服装を着せたのも彼女であった。

「ねえ、サイト。これフリソデっていうの。随分歩きにくいわ」
やや内股になり、覚束ない足取りであるくルイズが言った。
「しょーがないって。でも、ルイズ。似合ってる」
サイトはたまに転びそうになっている彼女の手を取って答えた。
桃色がかったブロンドの髪をアップに結ったルイズは、少女ではなく女性の色香を湛えている。
サイトはルイズをうっとりした目で見つめていた。

「そ、そう?」
ルイズは少し頬を朱に染め上げ、彼の視線から隠れるように俯いた。
「う、うれしい・・・」
そうつぶやくと、ルイズはサイトの手を握り返すのだった。

「去年は、色々大変だったよな」
サイトが空を見上げて言った。

その一言にルイズは表情をやや曇らせた。
「・・・サイト。わたしを独りぼっちにしたもんね」
「あれは・・・仕方ないだろが」
「サイト、死んじゃったかと思ったんだもん。それに――」
ルイズの少し震え気味な声。

サイトは、握っていた手を今度はお互いの指が絡み合うように握りなおすことで答える。
(もうだいじょうぶ)

ルイズにも伝わったみたいで、それ以上言葉をつなぐことなく黙って歩いた。
彼女の手に力が入った。
(ほんとに?)

サイトも絡めた指を動かして、彼女の手をなでる。
(ほんとだよ)

ルイズは顔を上げ、サイトのほうを見つめ、
彼がやったのと同じように指を動かして彼の手をなでた。
(・・・しんじる)

サイトもルイズのほうを見つめた。
ふたりの視線が絡み合った。
そして、自然とふたりとも笑顔になった。

508 名前: これからもよろしく(2/2) [sage] 投稿日: 2008/01/01(火) 01:23:05 ID:pXv/Xm3T
教会につき、ふたりは祈りを捧げた。
サイトはこっちの宗教は全く知らなかったが、郷に入ればなんとやらで見よう見まねで願掛けをしたのだった。

帰る道すがら、ルイズはサイトに聞いた。
「ねぇ、サイト。なんてお祈りしたの?」
「・・・おしえねー」
サイトの短い返事に彼女は膨れっ面になった。
「あによ。なんでご主人さまには言えないお願いなのねっ」
「ちがうっての」
「じゃなによ。怒んないから言ってみなさいよ」
「誰かさんの平原が豊かに実りますよー(ゴスッ)ってーよ」
「ほほほんとに。そんな大それたことゆったのかしらぁ?」
「殴ってから怒ってんじゃねーよ。ウソに決まってんだろが、ウソに」
「じゃ、何よ。今度はウソついてもダメ。ウソ禁止なの」

サイトは彼女から目をそらしてボソッと言った。
「―――おまえと・・・おまえとこれからもずーっと一緒に居られますよーにって願ったんだよっ悪いかよ!!」
ルイズはサイトの言葉に虚をつかれたように言葉に詰まった。
そんな彼女を尻目にサイトが言い返す。
「そうゆうおまえはどーなんだよ」
「わ、わたしはいいいいーのよ」
「ずるいっ」
「ず、ずるくないもん。使い魔の気持ちをちゃんとご主人さまはしっとかなきゃだめだから聞いただけなんだから」
彼女はなぜか頬を染め、口を尖らせて言い返す。
「ずーるーいー」
じーっとサイトに見つめられ続けて、ルイズは根を上げてしまった。

「わ、わかったわよ。言うわよ。でも一回しか言わないもん」
「どーぞ。」
サイトは聞き漏らすまいと耳に手を当てた。
ルイズはきょろきょろと視線をあちこちにやったあげくに小さな声でぼそりとつぶやいた。
「サイトが地球にかえりませんよーにってお願い・・・しちゃった――」
ルイズの顔がふにゃっと崩れ、サイトにしがみついた。
「だって、やなんだもん。もーひとりはやなんだもん。ずーっと一緒にいたいだもん」
嗚咽交じりに彼女は言葉を零す。

泣くな、泣くなって。サイトは愛しむように彼女の肩を抱いた。
「大丈夫。俺はここに残るから。絶対おまえのそば離れないから」
ルイズは首を縦にふった。
「信じろよ」
「――うん」
彼女はもう一度頷いて、涙に濡れた顔を上げた。
サイトはそっと指で彼女の濡れた頬をなでてあげた。
「これからも、ずっとよろしく」
「わたしこそ、よろしく」

二人は軽く唇を合わせ、再び手を取り合って歩きだすのだった。


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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:17 (5639d)

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