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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:53:00 (5643d)

イザベラ慣らし 3部 1  191の者

 

誰何の声を発する間も与えずに水の鞭が飛びサイトはエントランスから石畳へと弾き飛ばされる。

「っ?!」
かろうじて転がされる程度で済んだものの、サイトを強い違和感が襲う。
『どうしたよ、相棒。あんな単調な魔法にも反応できないなんて』
デルフに言われるまでもなかった。

 …感覚が無い、いや五感としては何も失っていない。ただ身体を動かすということだけが意思とのズレを訴えていた。そう、悪い寝起き時の金縛りのように、視線を変えるのが精一杯だった。

「アッハハハハ! 無様だねぇ!? さっきまでの勢いはどうしたんだい?」
 段上からの哄笑が次第に近くなった、と感じた矢先に意思とは関係なくサイトは起き上がり声の主に向き合っていた。当然視線の先にはさきほど組み敷いたはずの王女の姿があった。
――得物がナイフから杖に変わっているのは持ち替えただけなのか…?――
「さすがに手早いじゃないか。やっぱりお前はこの手の仕事にはうってつけだよ」

――お前?うってつけ?今の言葉は自分に向いて喋っているが
  自分に向けたものではない、がデルフにでもない。一体誰に?――

―〔俺にさ、不運な御客人〕―
自問するサイトの脳裏に自身の思考とはまったく異なる意思が響く。
――誰だ!?何処にいる?――〔やれやれ、どいつもこいつも話しかけてやればそればっかりだ〕――
――〔自分で招いた事態だってのにな。まぁだからこそ俺も活躍できるってもんだが〕――

「自己紹介はすんだかい?」
沈黙、の内面での会話を見越したようにイザベラが問いかけてくる。
「たいしたもんだろう?《地下水》の技は。姿も見せずに狙った相手を支配下に置く…
 そして獲物は私の命令ひとつでどうにでも料理できる状態になる。今みたいにね!」
サイトの頬に手を添え、彼の眼を覗き込むイザベラの表情はこんな事態でさえなければ実に蟲惑的だったろう。
「五感と思考を残してお前を捕らえたのは何でだと思う?」
「……」
「あぁ、そうだった。喋ることまでは許していなかったね」
一人で自らの問いかけの矛盾を指摘し、ケラケラと笑い出す。
「まぁいいさ、お聞き。あんたが私にしでかした非礼の数々を倍返しにしてやろうってのさ」
途端にその目つきが猛禽類のそれのごとき鋭さを帯びる。

「もっとも私は王族、お前のような下衆な真似はしないけどねぇ」
パンッ!!
再び頬に手が伸ばされたかと思うと渾身の一撃とばかりの平手打ちを見舞われる。
「お前たち適当に遊んでおやり!でも殺すんじゃないよ。トトメは私が刺すんだからね!!」
夜の庭に響く主の命を受けガーゴイル達が動き出す…


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