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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:53:07 (5639d)

イザベラ慣らし 3部 2  191の者

 

後悔……、とまではいかぬ半端なこの心情をどう表現すべきか。

このときイザベラをそうさせたのが一体なんであったか、いっそ判らなければ楽であったものを。
そう、他ならぬ自分が元なのだから…

イザベラは自身の発した命令のバカバカしさに飽いていた。

 適当に遊んでやれ

擬似思考を持つとはいえ所詮はガーゴイルである、猫ほどにも獲物を嬲れもすまい。
 実際ガーゴイル達は動けぬ獲物を扱いかねているようにも見えた。
「嬲る」というのは相手が、敵わぬながらも「抵抗」したり「防御」するから成立する行為であり
地下水に自由を奪われている時点で、眼下の侵入者はその要件を満たさないのである。
 子供達が鞠をあっちこっちと投げあったり壁にぶつけている、その程度の味気無さでしかない。

――つまらない こうも退屈であるならば、むしろ――

「お前達、くだらない座興はそこま……」(ザンッ)(ガシャッ)
止めてしまえ、という言葉を遮って足元の階段に剣と腕が降り刺さる。

――殺すな、と言ったのに。腕をもいだのか、
  アイツを八つ裂きにするのは、していいのは私だけなのに!――

「誰が切り刻んでいいと言ったんだい!?私の話を聞いていなかったのか!
 それともお前たちまで私を虚仮にッ…!」
「そんなに怒ってちゃ、かわいい顔が台無しだって前にも言ったよな?」

軽くヒステリーを起こしかけたイザベラの耳に響く人の声。
地下水でもなく、侵入者の持つ大剣でもなく、まして囮とした人形でもない声。
昨夜から忘れもせず、だが完全に捕らえたはずの人物のものであった。

まるで幽霊の声でも聞いたかのように驚く段上のイザベラを‘彼’は見上げる。

 左手にデルフリンガー右手に地下水を持ち、周囲をガーゴイルに囲まれ、サイトは声を発する。
「確かにこんな座興はもう終わりにするべきだよな…」
地下水を逆手に持ち直しデルフの柄と重ねるように両手で握りこむ。

「地下水! ふざけ方にも程度ってもんがあるだろう!?」
「やっぱり、こいつが《地下水》か」『だったな、相棒』
「お前、まさか…支配を受けていないのかい!?」

「最初は支配されかけてたさ、でもあんたが意識を残させてくれたおかげで気付けたのさ。
 体が動かなくなったのはいつからからか、どうしてかってね。そして決定的に俺はコイツに強い、
 そうわかった瞬間に動けるようになった」
「な、なんでよ……」

「持った人間を支配するマジック‘アイテム’だったらお終いだった。でもこいつはインテリジェンス‘ナイフ’だった。
 あんたも知ってるだろう?伝説を詠った一節を、そこに歌われた《神の左手》を」
「《神の左手》ガンダールヴ…ありとあらゆる武器を使いこなせし、勇猛果敢な神の盾……!」

信じられないといった呟きがイザベラの口から漏れる。
「そ、そんなデタラメを良く思いつくものだわ。地下水、いい加減にしないと本当に怒るわよ?」

周囲のガーゴイルがめいめいの得物を構えサイトを取り囲む。が、次の瞬間には羽根のごとく包囲網から脱出していた。
そのふわりとした軌道がイザベラの神経を逆なでする。
 (イル…フル・デラ…ソル……)
「何を逃げられてるんだい、落ちてくるところを狙うんだよ!」(…ウィンデ)
わめきたてる主に従うように、護るように武器を構える、が獲物は降ってはこない。
頭上を滑る影にイザベラは少し安堵する

―フライの呪文!ならばメイジだ。使い魔であるメイジがいるはずが無い
ましてや伝説の始祖の使い魔であろうはずが……ー


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