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569 名前:萌えろ!トリステイン学園[sage ] 投稿日:2006/09/17(日) 01:11:07 ID:bc66ugOj 平賀才人は転校生である。 「えーっと、ここだっけか」 トリステイン学院の寮は、春ヶ木沢の街から少し離れた位置にあった。あったのだが。 「あー、平賀才人君ね。確かに承ってるけど、ごめんねえ」 受け付けてくれたやけに若い寮の管理人は、ミス・ロングヒルと名乗った。 「今寮が満室なのよー。街の方で部屋探してもらえないかしら」 はい?どういうことなんですか、そんな話聞いてませんよ、と才人が言うと、 「連絡に手違いがあったのかしら?あのボケ学園長にも困ったものねー」 知り合いの不動産業者に連絡は取ってあげるから、とミス・ロングヒルは言ってくれた。 どうやら、全寮制とは銘打っているものの、少し事情が違うらしい。 春ヶ木沢の街に降りた才人は、ミス・ロングヒルの教えてくれた不動産業者に行ってみる。 「…や、休み?」 紹介された不動産業者の名は「ギトー不動産」。その入り口には「本日体調不良によりお休み」との張り紙。 わふわふっ! 「わわわっ!?」 巨大な毛の塊が、正面から才人にのしかかってきた。才人は避けられず、押し倒されてしりもちをついてしまう。 「くっそ、どけよこの犬!」 しかし犬は言うことを聞かず、もふもふと才人の匂いを嗅ぎ続ける。 「あらあら、だめよデルフちゃん」 570 名前:萌えろ!トリステイン学園[sage ] 投稿日:2006/09/17(日) 01:12:21 ID:bc66ugOj 「ほら、その子困ってるじゃない?どいてあげなさいな」 飼い主の言葉に、モップはわふ!と応えると才人の上からどいた。 「うっわ、べたべただよ」 才人の前髪と住宅情報誌は、モップの吐き出したよだれでべたべたになっていた。 「あらあらごめんなさいね。うちのデルフちゃんがとんだ粗相を」 言って女性は上着のポケットから小さなハンカチを取り出し、才人の前髪を拭く。 「あらあなた、この街でお部屋をお探しなの?」 にっこり笑って言った女性は、カトレアと名乗った。 カトレアの家はこの春ヶ木沢の名士で、大地主の家らしい。 「私がここの管理人をしているの」 言ってカトレアは「管理人室」と書かれた部屋のドアを開け、才人に「おいでおいで」と手招きする。 「こら、お前は外だろ」 才人は追い出そうとするが、デルフは言うことを聞かない。その巨大な尻を床に下ろし、動く気配はない。 「あらあらダメよ。デルフちゃんはここの王様なんだから」 カトレアの言葉に、デルフは嬉しそうにわふ!と応える。 「この子すっごい寂しがりやでね。人がいないとダメなの。だから、このアパートではどこでも出入り自由なの」 その台詞と同時に、カトレアははいこれ、と才人に鍵と書類を手渡した。 「あなたのお部屋の、103号室の鍵と、各種契約書ね。家賃は月3万円、敷金礼金は0。デルフちゃんがノックしたら入れてあげること、以上かしら」 嬉しそうにカトレアは笑う。 571 名前:萌えろ!トリステイン学園[sage ] 投稿日:2006/09/17(日) 01:14:31 ID:bc66ugOj 「じゃあ、ここにします」 とりあえず、住む場所が落ち着いて才人はほっとしていた。 「103号室、103号室、っと」 103号室は4部屋ある1階の、管理人室の二つ隣の部屋だった。101号室がないことから、どうやら101号室を管理人室として使っているらしい。 「あのなあお前、管理人さんのとこに戻らなくていいのか?」 わふ!デルフは前足で器用に103号室のドアを指す。開けろ、という意味らしい。 「誰の部屋だと思ってんだよ」 まあいいか、凶暴な犬ってわけでもないし、と才人は前向きに考え、デルフのいるリビングまで進む。 「?なんかあんのか?」 才人がそちらを向くと、そこには奇妙なものがあった。 『デルフー?そこにいるの?』 カトレアのそれとは違う声。幼さを含む、少女の声。 『待ってよ、今シャワー浴びたとこなんだから』 その声に反応し、デルフはさらにわふ!と鳴くと、カーテンめがけて飛び掛った。 そこにいたのは、桃色の髪の、タオルを一枚身体に巻いただけの、胸の小さな、少女。 「い…」 一瞬の硬直のあと、彼女は叫んだ。当然である。 「いっやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァ!」 声と一緒に飛んできた中身の入ったペットボトルをまともに食らい、才人は気絶した。 572 名前:なかがつ[sage ] 投稿日:2006/09/17(日) 01:16:17 ID:bc66ugOj |
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