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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:54:26 (5639d)

犬竜騒動 竜の子供  205

 

 『鉄の竜』の騒動から、また少しの時間が流れた。
 幼き風韻竜シルフィードは、相変わらず楽しい日々を過ごしている。
 主であるタバサが祖国の命で任務に赴くときは同行してあれこれと手助けし、何事もな
いときは魔法学院の中で他の使い魔たちと遊んだり、グースカのん気に寝こけたりする。
 そんなのんびりとした日々の中でも、シルフィードが格別楽しみにしていたのは、やは
りサイトと一緒に出かけることだった。先の一件以来、才人は自分の言葉を守って、あの
『鉄の竜』にはほとんど乗らないでいる。遠出したいときは大抵シルフィードに声をかけ
たし、また、彼女が『一緒に出かけよう』という意志を伝えるために鼻先を摺り寄せると
きも、よほど忙しくない限りは承諾してくれる。
 才人と一緒に出かける、とは言っても、目的地が決まっていることはほとんどなかった。
シルフィードが考えに考え抜いて選び抜いた『タバサおねーさまとサイトのラブラブデー
トコース』はもうほとんど踏破してしまっていたからだ。
 だから、二人は気ままにフラフラと空の散歩を楽しんだ。面白そうなところがあれば適
当に降りてみたりもするが、だからと言ってそこでなにをするというわけでもない。渓谷
に降りれば才人が器用に即席の釣竿を作って釣り糸を垂らし、森に降りればシルフィード
が長い首を伸ばして果物や木の実を集めたりする。風の気持ちいい丘などに降りたときは、
大抵二人ともうたた寝してしまい、帰りが遅くなって互いの主人に叱られたりもした。特
にルイズの怒り方はタバサの十倍はきつかったから、シルフィードは彼が怒られるたびに
申し訳ない気持ちになってしょんぼりしてしまう。
 だが、そういう彼女を見つけると、才人は決まって笑いながら首筋を撫でてくれて、
「気にすんなって。俺だって、たまにゃのんびり昼寝したいときがあるんだしさ。また今
度あそこいって一緒にサボろうぜ、な?」
 と、悪戯っぽく片目を瞑ってみせる。それだけでシルフィードの胸はスーッと軽くなり、
また才人を乗せて空に舞い上がりたいという気持ちが湧きあがってくるのだった。
 だが、あるとき、そんな日々に変化が訪れた。トリステインとアルビオンの間に戦争が
勃発したのである。
 シルフィードには詳しい事情は分からなかったし、主であるタバサもこの戦争には不介
入の態度を取っていたので、さして興味を抱くこともなかった。しかし、才人がルイズに
くっついてこの戦争に参加することになったと聞いて、心中穏やかではいられなくなった。
「大丈夫だよ、なんとかなるって」
 出兵の前日、不安に耐え切れなくなって会いに行ったとき、才人はそんな風に笑っていた。
(でも、もしかしたら帰れなくなるかもしれないわ)
 シルフィードが不安な気持ちを表そうとして短く鳴くと、才人はまた笑って彼女の首筋
をぽんぽんと叩いた。
「なに、ちゃんと帰って来るって。それより悪いな、しばらくは遊んでやれそうにねえや。
ま、戦争が終わったら、また二人でどっか出かけようぜ」
 そして、あの『鉄の竜』に乗って、才人は遠い空へと飛んで行ってしまった。それでシ
ルフィードはまた嫉妬に駆られたが、今度は前のように騒ぐことも出来なかった。アルビ
オンの空域には絶対に近寄らないよう、タバサに厳命されていたからだ。
 そんなわけで、戦争が続いている間、シルフィードはずっともどかしい気持ちで日々を
過ごすことになった。
「ねえねえお姉さま、戦争はいつ終わるの?」
「分からない」
 そんな問答を、何度繰り返したことだろう。
 その間にも、いろいろなことがあった。魔法学院が襲撃を受けて教師の一人が重傷を
負ったり、彼を運ぶためにゲルマニアまで飛んだり。だが、そうした忙しさの中にあって
も、シルフィードの胸からは、常に才人の身を案ずる気持ちが離れなかった。
 やがて待ちに待った終戦の日が来て、学徒兵として戦争に駆り出されていた魔法学院の
生徒達も、大半が無事に戻ってきた。だがその中に、シルフィードが待っていた才人の姿
は見当たらなかった。
「ねえねえお姉さま、戦争終わったのに、どうしてサイトは帰ってこないの?」
「分からない」
 タバサは静かな声でそう言ったきりだったが、いつもの無表情は、いつもよりも少し沈
んでいるように見えた。
 そんなとき、シルフィードはある噂を耳にした。
『サイトは主人であるルイズを助けるために、一人敵に立ち向かって死んでしまった』
 と。それを聞いたとき、シルフィードは生まれて初めて『喪失』の恐怖というものを味
わった。この間まで隣で笑っていた人が、もう永遠に戻ってはこないのだ、というその事
実。頭では分かっていたつもりだったが、現実になってみるとその衝撃は耐え切れないほ
どに大きかった。
 だから、シルフィードは無理にそれを否定した。
(嘘よ、嘘に決まってるのね! サイト、またシルフィと遊んでくれるって、ちゃんと約
束したもの!)
 才人は今までシルフィードに嘘などつかなかったし、約束を破ったことも一度もない。
今度だって、その内ひょっこり帰って来る、と。
 最初こそ半ば無理矢理そう信じていたシルフィードだったが、一日、また一日と日が過
ぎ、それでも彼の姿が見えないままだという現実を突きつけられて、次第に幻想を信じる
気力も無くなってしまった。
(サイト、死んじゃったんだ)
 ある雨の降る寂しい夜、森に作った小屋の中で寝そべりながら、シルフィードはようや
くその事実を受け入れた。
 死、という概念は当然理解していたし、タバサの任務中に人が死ぬところを見たことも
あった。だが、近しい人の死、というものを体験したのは初めてだった。人間に比べれば
はるかに寿命が長く、また外敵などいないと言ってもいいほど力の強い風韻竜という種の
生まれだったし、主であるタバサも、何度窮地に陥っても必ず生還してきた非常に強い人
間だ。だから、そもそも「親しい人が死んでしまう」ということが現実に起こりうるのだ
と、明確に意識したことすらなかった。自分の知らない人が死ぬのは現実だったが、好き
な人は絶対に死んだりしないと、勝手に思い込んでいた。
(でも、サイトはもう帰ってこない)
 そう考えると、途端に涙が溢れてきて、胸がしくしくと痛んでたまらなくなった。こん
な痛いのは嫌だ、と思った。
(仕方のないことなのね)
 シルフィードは自分に言い聞かせた。
(そもそも、シルフィは人間よりもずっと寿命が長い風韻竜だもの。いつか別れが来るの
は当たり前だし、それがちょっと早くなっただけの話なんだわ。そうよ、別に悲しんだり
泣いたりするようなことじゃないのよ。そう、きっとそう)
 必死に言い聞かせているうちに涙は止まり、胸の痛みも少しはマシになった。
(さあ、寝るの、寝るのよ。何も考えずに寝て、また明日からお姉さまの使い魔をやれば
いいんだわ)
 シルフィードは体を丸めて目を閉じ、ただ眠ろう、眠ろうとだけ念じた。頭に才人の笑
顔が浮かぶたびに必死に頭を振り、タバサとだっていつか別れる日が来る、という想像が
首をもたげるたびに意味もなく身じろぎした。結局、明け方まで眠れなかった。
 苦しい想いを抱えたまま、シルフィードは朝を迎えた。こんなに体が重たい朝は生まれ
て初めてだった。
(お姉さまのとこ行って、朝のご挨拶をしなくっちゃ)
 別に毎朝そんなことをやっているわけではないが、今日ばかりは別だった。一刻も早く
タバサのところへ行って、彼女がいつもどおり無表情で本を読んでいる姿を確かめたかった。
 重たい翼で無理矢理空に舞い上がったとき、シルフィードはふと、ずっと向こうの空か
ら何かが近づいてくるのに気がついた。
(あれは……?)
 目を凝らすと、それが何頭かの竜であることが見て取れた。竜が、太い縄のようなもの
に大きな箱をぶら下げて飛んでいるのだ。
(竜籠なのね)
 人間達……特に、身分の高い一部の人間が、空を往くのに使う乗り物だ。それが、何故
かぐんぐん魔法学院の方に近づいてきて、ゆっくりと広場に下りていく。。
(誰が来たのかしら)
 今はタバサのところへ行かなくてはならないというのに、何故かその船のことがやけに
気にかかった。
(お姉さまにも関係のあることかもしれないし)
 誰にでもなく心の中で言い訳しながら、シルフィードはよろよろと飛んで、広場の方へ
近づいて行った。
 体のだるさは本当に酷いもので、シルフィードは広場の近くで飛ぶのが億劫になってし
まった。だから地に降りてのそのそと歩いて行ったのだが、入ってみると広場はちょっと
した騒ぎになっていた。
「君は必ず生きていると信じていたよ!」
「あんた銅像作ってたじゃないの」
 そんな会話がかすかに聞こえてくる。
(生きていると信じていた?)
 その言葉を聞いたとき、シルフィードの胸の中に小さな希望の火が灯った。
(まさか、まさか……!)
 急に体に力が戻ってきた。シルフィードは飛ぶのも忘れて必死に大地を駆け、人ごみの
方へ向かっていく。
「うわ、なんだ、なんだ!?」
 群集の外側にいた生徒の一人が、突進してくる竜の姿に驚き、慌てて脇に避ける。周り
の生徒達もその声でシルフィードの接近に気がつき、結果的に人垣が割れた。
 その向こうに、あの少年の姿がある。
(ああ、サイト、サイトだ……!)
 走るシルフィードの胸が、じんわりと熱くなる。ひょっとして都合のいい夢ではなかろ
うか、と疑ったとき、少年が気楽に笑って片手を上げた。
「ようシルフィード、久しぶり」
 懐かしい声だった。
(サイト―――――ッ!)
 人間の声で叫んでしまわなかったのは、タバサの躾の賜物と言ってもいいだろう。
 歓喜の涙を千切れさせながら力強く地を蹴ったシルフィードは、ほとんど踏み潰す勢い
で突進し、
「ぐえっ……」
 せっかく生還した才人が、帰ってきて早々また死にかける結果となった。

「全く、危なっかしいったらありゃしないわ!」
 ぷりぷりと怒るルイズの横で、シルフィードはしょんぼりと身を丸めていた。才人が
帰ってきた嬉しさのあまり、またやってしまったのである。
(シルフィはおドジさんなのね)
 と、落ち込む彼女の首を、誰かの手が優しく叩く。顔を上げると、そこに懐かしい笑顔
がある。
「気にすんなよ。俺は嬉しかったぜ、お前があんな熱烈に迎えてくれてさ」
 気楽でありながらも愛情に満ちた声音。もう二度と聞くことは出来ないのだと思ってい
たその声に、シルフィードはまたも視界を潤ませた。才人が本当にそこにいるのか確かめ
たくなって、何度も何度も彼の顔を舐め上げる。彼は「おい、くすぐったいって」と苦笑
しながらも、シルフィードの好きにさせてくれた。
(良かった。本当にサイトだ。サイト、ちゃんと帰ってきてくれたんだ)
 シルフィードはほっと息を吐いた。ただの風竜と身分を偽っているから、死んだと思わ
れていた才人がどうして無事に帰ってきたのか、詳しい事情を尋ねることは出来ない。だ
が、帰って来てくれただけで満足だった。
「しかしまあ、あれだね」
 不意に、才人を囲んでいた生徒達の中から、からかうような声が上がった。
「君は相変わらずモテるみたいじゃないかね、サイト?」
 そう言ったのはギーシュで、端正な顔が意地悪げににやけていた。
「帰ってきて早々女の子の熱烈な歓迎を受けるとはね! いやはや、同じ男としては羨ま
しい限りだよ」」
 周囲の生徒達がどっと笑う。
「全くだな」
「いやー、お似合いだぜサイト」
「末永くお幸せにな、二匹……いやお二人さん」
 シルフィードは最初こそ困惑して周囲を見回していたが、やがて自分と才人がからかわ
れているのだということに気がついて、低く唸り声を上げた。
「ほらほら、怒んなよ、シルフィード」
 吠えて威嚇してやろうと口を開けかけたシルフィードの頭を、才人が軽く撫でた。
「気にすんなよ。俺はホントに嬉しかったんだからさ」
(うー、サイトがそう言うんなら)
 シルフィードは、きゅう、と小さく鳴いて大人しく引き下がった。それを見ていたモン
モランシーが、感心したように言った。
「本当によく懐いてるわねえ」
「使い魔同士気が合うってことじゃないのかね?」
 ギーシュが肩を竦めると、才人が豪快に笑った。
「使い魔とかそんなん関係ねえよ。こいつって空飛ぶし気が利くし元気だし、マジいい奴
なんだぜ! 俺らってばもう親友だもんな、なーシルフィード?」
(もちろんよ!)
 同意するようにきゅいきゅい鳴いてまた才人の顔を一舐めすると、何故か周囲の生徒た
ちの表情が引きつった。
「おいおい」
「サイト、まさかお前マジで」
「それだけは止めとけよ。それだったらルイズの方がまだマシだぜ」
「ちょっと、最後の台詞言ったの誰よ!?」
 ルイズが怒鳴り、生徒達が悲鳴やら歓声やらを上げて散り散りになる。才人は笑ってそ
れを眺めていたが、やがてふと思い出したようにギーシュに問いかけた。
「そうだギーシュ、先生いるか? 俺、帰ってきた挨拶したいんだけど」
「先生? 誰のことだい?」
「コルベール先生だよ、コルベール先生」
 その名前を聞いた途端、ギーシュとモンモランシーの顔が凍りついた。二人とも気まず
げに目をそらし、「なんだよ、どうしたんだよ」と才人に詰め寄られている。
 シルフィードもまた、そんな才人を見ながら居心地の悪さを感じていた。だが、それは
先の二人とは別種の感情である。
(うー、あのおハゲの先生なら、本当は生きてるのねー)
 才人がいない間に、この魔法学院は賊に襲撃を受けている。その際、コルベールという
教師が自ら杖を振るって敵を撃退したが、自身も致命傷を負ってそのまま息を引き取った、
と、ほとんどの者は認識している。
 だが実際には、彼はシルフィードの背に乗せられて密かに運び出され、今もゲルマニア
で療養中なのである。
 それを知っているが故に、シルフィードはもどかしかった。今、彼女の目の前で、事実
を知らされた才人が呆然と立ち尽くしている。突然の悲報に声も出ない様子である。
(ああ、サイト、かわいそうなのね)
 だが、声が出せない以上、シルフィードには真実を伝える術がない。仮に声を出せたと
しても、コルベールが生きていることは秘密にしておけとタバサに言われているから、ど
ちらにしろ話せないのだが。
 そうやってシルフィードが何も言えないまま話はどんどん進み、結局才人は恩師が死ん
でいると思い込んだまま、彼の研究室に帰還の報告に行くこととなった。誰もいない研究
室の中で、才人がどんな気持ちでいるのかと想像すると、シルフィードは胸が痛くなった。
(サイトも今、昨日のわたしみたいな気持ちを抱えているのかしら)
 しばらく経って、才人は研究室から出てきた。肩を落とし、とぼとぼと歩いてくる。俯
かせた顔の中で、唇が一文字に引き結ばれているのがやけに痛々しく見えた。
(サイト、大丈夫なのよ。あのおハゲの先生なら、すぐに帰って来るのねー)
 シルフィードはそれを伝える代わりに才人の顔をぺろぺろと舐めた。才人はぎこちなく
笑って、弱弱しく彼女の頭を撫でた。
「ありがとな、シルフィード。それとゴメン」
 何かに必死に耐えるように、震える息を吐き出す。
「今日はちょっと、遊んでやれそうにねえや」
 それだけ言い残して、才人は広場を立ち去った。付き添うように、ルイズも後について
いく。シルフィードは彼らを追うことも、引き止めることもできず、ただ小さくなってい
くその背中を見送るしかなかった。

 その晩、シルフィードはまたも眠れぬ夜を過ごすこととなった。
 森の小屋で寝そべっていても、昼間の才人の小さな背中や痛ましい表情が頭を離れず、
なかなか眠れなかったのである。彼が今も喪失の痛みに苦しんでいるのだと思うと、今す
ぐに飛んでいって真実を打ち明けたい衝動に駆られた。何度か翼を広げかけたりもしたの
だが、そのたびに、
(でもでも、お姉さまの言いつけがあるし)
 と尻込みして、結局はまたその場に寝そべってしまうのである。
(言いつけ、なんて)
 そんな思いが、一瞬脳裏を掠めた。
(別に、サイトに喋っちゃったところで、凄い問題になるわけでもないし。今も苦しんで
るサイトのためだったら、お姉さまの言いつけを破っちゃってもいいんじゃないのかしら)
 少し迷ったが、結局その選択肢を選ぶことは出来なかった。
(だって、お姉さまの言いつけなんだもの)
 その言葉で胸のもやもやに無理矢理蓋をして、シルフィードは別のことを考え始める。
(そうだわ。よく考えてみると、これはまたとないチャンスなんじゃないかしら)
 今、才人は喪失の悲しみを嫌というほど味わっているはずだ。そばにいるのはルイズだ
ろうが、あんな我がまま娘に人を慰めることなど出来るはずがない(と、シルフィードは
見ている)。となれば、ここに主のつけいる隙があるのではなかろうか。
(そうよ、これだわ! 悲しみに打ちひしがれるサイトに歩み寄る小さな影。普段は無表
情な少女が懸命にかける慰めの言葉に、いつしか身も心もほだされて……! その上、お
姉さまは実は生きていたおハゲの先生の命の恩人! うひょー、これはもう上手くいくこ
と間違いなしなのね!)
 自分の思いつきに興奮して、さっきとは別の意味で眠れなくなってきた。
(ああ、お姉さま早く帰ってこないかしら)
 今日、タバサはガリア王国の使者から呼び出しがあったとかで出かけていて、ここには
いない。シルフィードを残して行ったのは、才人と再会した使い魔に対する、彼女なりの
気遣いかもしれない。
 と、そのとき、不意に小屋の扉が開いた。見上げると、冴え冴えとした月の光を背に、
小柄な人影が立っている。
「おねーさま!」
 シルフィードは歓喜の声を上げた。自分の名案を伝えようと思っていた矢先に主が現れ
るとは、これはずいぶん幸先が良さそうだ。
「おねーさま、あのね、わたし、おねーさまがサイトと仲良くなるためのとっときの」
 シルフィードの言葉は尻すぼみになった。無言で立っているタバサの顔はいつも通りの
無表情だったが、その奥に深い苦渋の色が見え隠れしていた。
(なにか、悪いことがあったのね)
 すぐにそう理解したが、自分から何があったのか聞くのは躊躇われた。いつも冷静なタ
バサがこれほど苦悩するのだから、それはおそらくシルフィードにとっても辛いことのは
ずである。
「命令が来た」
 端的に話す声音は、やはりいつも以上に硬かった。
 タバサはしばしの間、躊躇うように沈黙したあと、先ほど以上に硬い声で、こう告げた。
「虚無の担い手であるルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを誘拐することが、今回の任務」
 搾り出すような声で、付け加える。
「誘拐に際し、使い魔が障害となるようならばこれを抹殺するように、とも」

 ルイズ誘拐は、魔法学院の催し事の一つである双月の舞踏会の夜に決行される。と言っ
ても、誘拐を決行するのはガリア王の側近であるミョズニトニルンの役目である。タバサ
の役目は、誘拐に際して邪魔立てするであろうルイズの級友や、彼女の使い魔を排除する
ことであった。
 極端に言ってしまえば、才人を殺すことが、次のタバサの任務なのだ。
 誘拐決行当日までの数日間、シルフィードは森の小屋に篭り、自分がどうするべきなの
かを延々と考え続けた。
 才人と戦う、あるいは彼を殺すことなどしたくもないし、出来るはずもない。だが、タ
バサを止めることもやはり出来ない。心を壊された母親を人質に取られている以上、彼女
が「命令に従わない」という選択肢を選べる余地はないのだ。自分が「サイトと戦わない
で」と頼むことは、「お母様の命を諦めて」と頼むことに等しい。タバサが祖国からどれ
ほど辛い役目を負わされているか、間近で見てきたシルフィードに、そんなことが出来よ
うはずも無かった。
 そうして、日々はただ悪戯に過ぎ去っていく。シルフィードは結局何もできなかった。
才人に警告することも、タバサを止めることもなく、ただ「ひょっとしたらなにかがどう
にかなって結局うまくいくのではないか」という、根拠もなにもないか細い希望にすがる
だけだった。
 そして、舞踏会の夜がやってきた。

 遠くの方から、優雅な音楽が聞こえてくる。華やかな舞踏会の席からそっと抜け出し
たタバサは、使い魔シルフィードと共にヴェストリの広場の隅に佇んでいた。
 情報が漏れていないのだから当り前の話だが、ルイズの誘拐計画には何の妨害も入らな
かった。おそらく、今この学院の敷地内のどこかで、ジョゼフの側近であるミョズニトニ
ルンがルイズをさらうべく行動しているはずである。
 シルフィードは不安に胸を押しつぶされそうになりながら、遠くに見える舞踏会の明か
りと主の横顔とを交互に見つめていた。闇の中に佇むタバサの顔はいつもどおりの無表情
であり、そこには迷いや逡巡など欠片も浮かんでいない。
(お姉さま、やっぱりサイトと戦うおつもりなのかしら)
 シルフィードはこのときに至ってもなお、主が何か他にいい案を考えて、才人と戦うの
を止めてくれるのではないかと密かに期待していた。
 しかし、タバサの小さな唇が妙案を語りだすことはなかった。
「向こうは首尾よく進んでいるみたい」
 夜空の闇に飛び立った巨大な黒い影を見上げながら、タバサが静かに呟いた。
「わたしも行動を開始しなくてはいけない」
 シルフィードはそれを聞いて身を硬くするのと同時に、違和感を覚えた。
「お姉さま、今、『わたしも』って」
 わたしたちも、ではないのか、と口にしようとしたとき、タバサはゆっくりと己の使い
魔に向きなおった。
「言い間違いじゃない。あなたは、来なくてもいい」
 シルフィードは息を飲んだ。口を開けて反論しようとしたが、何を言っていいのか分か
らない。もどかしさに呻く彼女の頬に、タバサの小さな手が伸びてきた。
「あなたが彼と仲良しなのはよく知ってる」
 主の手が、シルフィードの頬をそっと撫でた。いつもの無表情だったが、手つきからは
確かな労わりと優しさが感じられる。
「だから、今回はわたしに従わなくてもいい。あなたの意思で行動して。そうするのが正
しいと、自分がそうしたいと思うことをするの」
「お姉さま」
「わたしは彼を殺す」
 静かな断言。
「ジョゼフを殺し、母様を救うその日まで、何があっても立ち止まるつもりはないから。
それがわたしの意思」
 どこか自分に言い聞かせるような口調でそう言ったあと、タバサは踵を返して歩き出し
た。おそらくサイトがいるのであろう方向に向かってゆっくりと歩いて行くその背中から
は、振り向く気配が微塵にも感じられない。止めることも追うこともできず、シルフィー
ドはその場でせわしなく身じろぎした。
(ああ、どうしよう、どうしたら……!)
 何かないかと必死に周囲に目を走らせるが、何もない。そもそも、こんな状況でどんな
物が自分の役に立ってくれるというのか。
 それでも、シルフィードは何かを探さずにはいられなかった。自分の進むべき道を決め
てくれる、何かを。
(お姉さまを裏切らずに、それでいてサイトと闘わなくても済む道……)
 この数日間何度も何度も頭の中で繰り返してきた言葉を、もう一度繰り返す。だが、い
い案は何も浮かばない。ただ悪戯に時間だけが過ぎてゆく。
(ダメ! こんなの、どっちも選べるはずがないわ)
 大好きなタバサと大好きな才人。どちらかを選ぶということは、どちらかを切り捨てる
ということだ。そんな残酷な二択を突き付けられたのは、生まれて初めてだった。胸が押
しつぶされそうなほどの凄まじい重圧を感じて、シルフィードは心の中で悲鳴を上げた。
(ああ、いっそのこと、お姉さまが『わたしに味方してサイトを殺す手助けをしなさ
い』って命令してくれたら迷わずに済んだのに!)
 苦しみの果てに一瞬頭を過ぎったその思考は、シルフィードの胸にどうしようもない嫌
悪感を湧き上がらせた。何かどろどろしたものが、体の内側にたまっていくような気がす
る。じっとしていられなくなり、彼女は大きく翼を広げて夜空に舞いあがった。吹きすさ
ぶ風の中で地上を見下ろすと、煌びやかな舞踏会場から遠く離れた場所に、白刃と氷刃の
閃きが見えた。
(ああ、もう始まっている……!)
 シルフィードは迷い、躊躇った。今ならまだ間に合う。今から二人の間に割って入れば
止められるかもしれない。だが、そうしたところで戦う理由がなくなるわけではないのだ
から、結局は無意味なことだ。
(どうしたら、どうしたら)
 その言葉だけがぐるぐると頭を巡る。また、先ほどと同じように、何かないかと周囲を
見回す。すると、夜の闇にまぎれて旋回している巨大な影が見えた。ガリア王ジョゼフの
配下、ミョズニトニルンの操る巨大なガーゴイルだ。
(あいつが一番悪い奴なのに)
 そうと分かっているのに、タバサの母親を人質に取られている以上、手を出すことはで
きない。シルフィードは低く唸りながら、再び視線を眼下の戦いに転じる。
 白刃と氷刃とのつばぜり合いは、いまだに続いていた。タバサも才人も共に歴戦の勇士
であり、相当な実力者だ。おそらく、互いに決定打となる一撃が放てずにいるのだろう。
 それでも、全力を尽くして戦っている以上は、いつか決着がつく。必ず、どちらかが死
ぬ。両方を救う方法など、もはやどこにも残されていない。
 本当は、頭の隅でそのことを理解していた。それでも、シルフィードはなお、どちらの
道も選べずにいる。このまま何もせずただ成行きに任せるというのが、最悪の選択肢であ
ることが分かっているにも関わらず、だ。そうなるぐらいならいっそ何も考えずに飛び出
して行って、ともかくこの場だけでも収めた方がいいのかもしれないが、そう考えてもな
お、動けない。
(選べない)
 シルフィードはか細い鳴き声を漏らした。
(選べないよぅ)
 涙で視界が滲み、束の間、地上の戦いが見えなくなる。こんな風に、何もかもなかった
ことにしてしまう方法はないものか。
(誰か、助けて……父様、母様……お姉さま、サイト……)
 親しい人たちの姿が次々と思い浮かぶ。しかし、今、シルフィードの助けとなれる者は
誰一人としていなかった。
 そのとき、滲んだ視界の中で、一際大きな光が閃いた。かと思うと、今度は何も見えな
くなる。白刃と氷刃の閃きが、地上から消え失せていた。
(終わったの?)
 終わってしまった。
(どっちが)
 シルフィードは小さく息を飲んだ。今、地上に降りれば、そこには勝者が立ちすくみ、
敗者が血を流して横たわっているはずだ。
(でも、わたしがなんともなってないってことは、きっとお姉さまは無事だってことだし
……じゃあサイトが? ううん、お姉さまは負けたけど、まだ瀕死の状態で生きているだ
けっていう可能性も)
 様々な予想が浮かんでは消える。そのどれが正しいのか、確かめるのは簡単だ。地上に
降りて、この目で勝負の結果を見ればいい。いや、単に、心の中で主に呼びかけるだけで
もいいのだ。そうすれば、どちらが死んだのか、はっきりする。
 しかし、やはりシルフィードには出来なかった。ただ翼をはためかせて、その場に滞空
する。降りるどころか、この場所から動くことすらできそうにない。
(もう、何もかも終わってしまったのに)
 シルフィードは心の中で己の弱さを罵ったが、現実を直視したくないという感情はどう
やっても消えてくれなかった。
 ――シルフィード
 不意に、頭の中に声が響いた。シルフィードは驚き、咄嗟に周囲を見回す。そうしてか
ら、それが主と使い魔の間でなされる精神感応であることに気がついた。そんなことも忘
れてしまうほど、心の余裕がなくなっていたらしい。
(お姉さまの声が聞こえるってことは、サイトが……)
 その事実にシルフィードが凍りついたとき、再び頭の中に声が響いた。
 ――どうしたの。早く降りてきて。
 タバサの声には、珍しく若干の焦りが含まれていた。戦闘の直後で気が昂ぶっているの
だろうか。
 主に呼ばれてもなお、シルフィードは躊躇した。才人の亡骸をこの目で見るのが嫌だった。
 ――早く。早くしないと、二人とも囲まれてしまう。
 三度目の声が響き渡ったとき、シルフィードは違和感を覚えた。
 ――二人、って。
 ――わたしとサイト。二人とも、生きてる。
 タバサが簡潔に伝えてきたそのメッセージは、シルフィードの心に歓喜の情を湧き起こ
した。爆発的に広がったその感情が、全身に溜まっていた恐怖や自己嫌悪を全て吹き飛ば
し、翼を動かす原動力となる。
 ――すぐに行くのね、お姉さま!
 シルフィードは矢のように体を伸ばし、地上に向かってまっしぐらに飛び込んで行った。

 地上に降り立ったシルフィードを、タバサと才人が出迎えた。二人とも、ちゃんと二本
の足で立っている。そのことがとても嬉しかった。
「乗って」
 シルフィードに跨りながら、タバサが才人に向かって手を差し出した。彼は無言で頷き、
脇腹を押さえながら少女の手を取る。肩越しに振り返って垣間見た彼の表情はとても厳し
く、瞳には燃え盛る炎のような怒りが宿っていた。その怒りが自分に向けられているかの
ように錯覚してしまい、シルフィードは小さく身を縮めそうになる。
(ううん、今はそんなことしてる場合じゃない)
 精神感応により、タバサから大方の事情は聞いていた。予定を変更して、ミョズニトニ
ルンを叩き潰す。そうなった経緯はよく分からなかったが、とにかくあの憎い敵を倒せば
いいということが分かれば、それで十分だった。
 上空を旋回している巨大なガーゴイルが、すぐさま小型ガーゴイルを無数に送り出して
きた。シルフィードはその群れをかいくぐり、ときに炎を吐きだし腕を振って、小さな邪
魔者を次々に叩き落とした。大事な人を殺されそうになった怒りのためか、それともどち
らを助けることも出来なかったことへの羞恥心のためか。とにかく、今まで感じたこ
ともないほどの気の昂りの命ずるまま、シルフィードは無我夢中で飛び回った。
 そうして気がついてみると、戦いはいつの間にか終わっていた。上空に、ガーゴイルで
はなく巨大な船が見える。
 ――キュルケとミスタ・コルベールが乗ってる。助けにきてくれたみたい。
 タバサが短く説明してくれたが、シルフィードにとって、それはどうでもいいことだった。
(サイトは―ー)
 背中に、先ほどよりも一人分ほど増えた重みを感じた。ちらりと肩越しに振り返ってみ
ると、才人とルイズが寄り添って自分の背に座っているのが見えた。
(良かった)
 ほっと息をつきながら、シルフィードはゆっくりと地上に降り立つ。そして、タバサた
ち三人が自分の背から降りたとき、異変に気がついた。
「サイト、サイト!」
 誰かの泣き声が聞こえた。驚き、声の方に目を向けると、地上に横たわった才人のそば
で、ルイズが泣きじゃくっているのが見えた。
(どうしたの)
 おそるおそる近づいて見ると、横たわった才人の脇腹から、大量の血が溢れ出していた。
一瞬、何も考えられなくなった。
「わたしの魔法による傷」
 隣に立ったタバサが、小さく呟く。横顔はいつも通りの無表情だった。
 ――サイト、大丈夫なの?
「すぐに水魔法の使い手が来るだろうから、死にはしない。大丈夫」
 タバサは淡々とした声でそう答え、再びシルフィードの背に跨った。
「飛んで」
 ――どこへ?
「ガリアへ。わたしはジョゼフを裏切った。母様を取り戻さなくてはいけない」
 確かにその通りかもしれない、と思いながらも、シルフィードはなかなか飛び立てな
かった。タバサは大丈夫だと言ってくれたが、才人のことが気になって仕方がなかった。
「大丈夫だから」
 淡々とした声の中に確かな労わりを滲ませながら、タバサが言った。
「それに、ここにいたとしても、わたしたちにできることは何もない」
 これもやはり、正しかった。
(サイト……)
 もしも自分があのとき二人の間に割り込んでいたら、才人はあんな怪我をせずに済んだ
かもしれない。シルフィードの胸がずきずきと痛んだ。
(サイト、ごめんね、サイト)
 心の中で何度も謝りながら、シルフィードは罪悪感を抱えたまま飛び立った。翼がやけ
に重かった。

 ガリアへと向かう道中で、シルフィードはタバサにこういう風になった理由を説明して
もらった。
 タバサに殺意の篭った氷の刃を飛ばされてもなお、才人はギリギリまで彼女と戦うこと
を躊躇ったという。彼が最後に決意を固めて飛びかかってきたとき、タバサは死を覚悟し
たそうだ。避けられない、と。
「でも、次の瞬間、倒れていたのは彼だった」
「どうして」
「振るった剣を、彼が自分の意思でわざと外したから」
 タバサは、溜息を吐くように言った。
「その瞬間、わたしを殺さなければ、逆に自分がやられるだけだと、わかっていたはずな
のに」
 息も絶え絶えの才人に、タバサが「どうしてわざと外したの」と言うと、彼はこう答え
たらしい。
 ――やっぱり、友達は殺せねえよなあ。
「きゅい、じゃあ、サイトは自分の命よりも、お姉さまの命を優先したの」
「そう」
 タバサは何かを考えるような間を置いて、言った。
「わたしと彼が置かれた状況は酷似していた。お互い、大切な人を人質に取られていて、
その人を助けたかった。わたしはそのためには他の人間を犠牲にしても構わないと考えて
いたけど、彼は違った。自分が死んだらルイズを助ける人間がいなくなると知りつつ、そ
れでもわたしという」
 タバサは一瞬、次の言葉を口にするのを躊躇ったようだった。
「わたしという友人を犠牲にしてもいいとは、考えなかった。その姿を見て、わたしも気
づかされたの。本当は、わたしも彼のように行動したかったのだと。どれだけ成功する可
能性が低くて無茶な選択肢だろうと、母様も友達も、みんな助ける道を選びたかった。単
にその道が困難だから、より簡単な方、楽な方を選んでいただけなんだって」
 その声はいつもと変わらず淡々としていたが、彼女がこれだけ長々と喋るのは非常に珍
しいので、シルフィードはそれだけ主が感銘を受けているのだと悟った。
「だから、わたしは今までとは違う選択肢を選ぶ。もう、ジョゼフの言いなりにはならな
い。でも、母様のことも助けてみせる。絶対に」
 その声音は、今までシルフィードが聞いてきた、タバサのどんな声とも違っていた。今
までと同じ、いやひょっとしたらそれ以上に強い意志を感じさせながら、それでいて冷た
さのない、澄んだ声音だ。
 タバサが選んだのは、間違いなく茨の道である。言うだけなら簡単だが、実際に成し遂
げるのはほとんど不可能、夢物語だ。シルフィードがそう思うぐらいだから、本人だって
ちゃんと分かっているはずである。だからこそ、タバサは今までその選択肢を選ばなかっ
たのだから。
(でも、お姉さまは自分の意思でその道を選んだんだわ)
 シルフィードはちらりと、自分の背に跨っているタバサに目をやった。遠くガリアの空
を見据えるその顔は、気高さを感じるほどに凛々しかった。
 その主の姿と、二人が戦っているとき何も出来なかった、いや、何もしなかった自分の
姿とを比べて、シルフィードはたまらなく恥ずかしくなった。
 今更ながら、やはりあのとき二人の間に割って入るべきだったのではないか、とか、
もっと本気で主を止めてみるべきだったのではないか、あるいは才人に相談すべきだった
のではないか、という思いが浮かんでくる。
 本当は、頭の片隅にそういう案はあったのかもしれなかった。ただ、怖くて選べなかっ
ただけだと、タバサの言葉を聞いていて気づかされた。
(わたしと二人の違いはなんなんだろう。二人みたいに、一番正しいと思う道を自分で選
ぶためには、どうしたらいいんだろう。どうしてわたしは、ただ怖がってばかりなんだろう)
 ガリアの空へ向って飛びながら、竜の子供はずっとそのことばかり考え続けていた。


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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:54:26 (5639d)

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