33-205
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:02 (5638d)
○後編1の続きです。
雲さえ黒々として、庭の木々も夢にひたる真夜中。
窓からの夜風がベッドに届き、枕辺の花瓶にただ一本挿されたレモンの枝をなぶった。その白い花びらがともしびに透けている。
細工物の花のほうは、まだ少女の耳たぶできらめいている。ベビードールを完全にはぎとられた後では、身に着けているのはその装身具だけとなっていた。
夜露をふくむかと思うほど濡れた声が、寝室の天井や壁に溶けこむように流れていくあいだ、その耳飾りは哀しくちゃらちゃらと揺れていた。
ツリガネソウ型のランプが灯る、影朦朧とした夏の夜。淫蕩なたわむれがいつ終わるともなく続いていた。
背徳的なほどに濃い室内の夜気が、荒くも甘い息づかいに満たされている。
ベッドにうつぶせた少女が、呼吸のたびに肉の薄い背を上下させた。熾烈な快楽の余韻に耐えるように、大きなクッションをぎゅうと抱きしめている。
「はあっ、はあっ……ぁあ……っ……」
アンリエッタは抱いたクッションで豊かな乳房をつぶすように、上体をべったり伏せていた。
シーツについた両ひざは間隔広めに開かれている。華奢な背が流麗なラインを描いて反り、くびれた腰が弓なりに上がっている。美麗かつエロティックな尻が妖惑するようにかかげられて、二つの桃丘をヒクヒクさせていた。
汗まみれで痙攣する女体は、茹でられて湯気をたてる海老のように紅潮していた。
彼女はつぶれかけた四つんばいで、長々と才人に後ろから貫かれていたのである。
どんな男でも目をそらせないような濃艶な獣の姿勢をとったまま、濡れた裸身をぴくぴくと引きつらせ、涙とよだれと悩乱しきった声をこぼす。
たったいま四回目の射精を終えた才人の肉棒が、胎内でまだ脈打っている。
つい今しがたまでさんざん蜜壺を突き上げられ、子宮周辺をこねまわされ、ひっきりなしに絶頂の叫びをあげさせられていたのである。
一片の余裕も残っていない泣きとろけた顔で、アンリエッタは怨じた。
「……ひぃ……はぁっ……ほん、ほんとうに、やすませてくれないなんてぇ……
……はふぅぅっ……、はぁ……、はっ……気を、うしなってたのよ……それなのにぃ……」
「ああ、最近ははやばやと気絶するのは珍しかったから驚きましたよ。
でも俺、あのときまだ二発しか出してなかったから我慢しきれなくってさ。何日も溜めてたんだし」
「ううっ……ひどいぃ……」
途中で完全に失神したのに、その後もほんの少しも容赦してもらえなかったのは、今夜が初めてだった。
いつ目が覚めたのかさえあやふやだった。
濃い肉悦の狂想曲が、頭の中に響きわたっていたのである。無意識との切れ目がまったく定かではなく、たった数分前の明瞭な記憶さえないのだ。
何度「イク」と言ったのかなどとうにわからなくなっている。
ただ、意識の戻らないうちからベッドで貫かれ、果てしもないほどの長時間責めあげられていたことだけが確かである。
幾度も達し、今の今まで火照った叫びを上げつづけていたのだった。
それだというのに、才人が肉棒を抜きもせず後ろで言った。
「俺も今夜はなんだか、不思議なくらいすごく昂ぶってるみてえ。四発出したのにまだしたくてたまらねえや。
姫さまは? いま何回目ですか?」
「はーっ、はふーっ、ひふぅっ……ふぇ……?
にゃんかい……?」
「イった回数ですよ。何回か、って聞いてるんだけど」
「ふゃぁ……あの……あの、かぞえて、おりませぬ……」
「……やる気あんの?」
才人が腰を突き上げた。
まだ硬度をそれほど失っていない男根で、精液をつめこまれた子宮を叩かれ、少女の尻がはねる。
「やあああッ」
「注意したじゃないですか、自分だけ勝手にイきすぎだって。
これからは公平に同じ数だけ俺をイかせられるようになるよう、がんばって直せって言っただろ?
それがなんだよ、自分のイった回数を数えもしないで、発情期のエロ猫みたいに声とろかしてみゅうみゅう鳴いてるだけじゃねえかよ」
「あッ、あッ、もうしわけ、ぁン、んぅっ」
トントンと奥を小突かれながら叱られ、上気してひくひくと肌を痙攣させる。
犯されつづけた体とともに心も弱っていて、男に理不尽に責めなじられてもほとんど反抗できない。
美しい裸身をよじって、なめらかな肌から被虐的な淫気を汗とともに噴き、懸命に甘声で謝罪しつづけるのだった。
しばし虐められてから、ようやく肉棒がぬぽっと抜かれた。
「ふゥん……ぅっ……」と鼻声を漏らしながら、アンリエッタは紅潮した肢体をゆるやかにくねらせた。シーツのしわがさらによじれ、波を作ってなまめかしい光景となる。
少女は体の力をくったりと抜き、抱きついたクッションにぽふっと横顔を埋めた。まばゆいばかりの裸身が、腹ばいの犬のように完全にへたりこむ。
艶然と瞳をほそめて余韻を噛みしめる彼女に、男の声がかけられた。
「そうだな、決めた。これそっちが返す『借金』だし、姫さまには自分自身を抵当に入れてもらおうかな。
借りを返せるまで、つまり姫さまが余分にイった回数だけ俺をイカせられるまでは、この体は俺の『所有物』。わかりやすいだろ」
「……それ……返せなかったら、どうなるのですか……?」
「そりゃこの先ずっと、ベッドの上では奴隷みたいなものになってもらいましょうか。えっちの。
やってる時は俺の言うことは何でもしてもらうし、いろいろ恥ずかしいことをさせてあげます。うれしいだろ?」
「いや……いやです、そんなの、うれしくなんてないわ……んぅぅ……んっ……」
アンリエッタは弱々しくシーツに頬をすりつけるように首を振った。
「それに…………か、返せませぬ……見ていたならわかるでしょうに……
むりでございます……だって、お腹の奥……、どんどん敏感になって……
ふあああっ!?」
言葉の最後を悲鳴がいろどる。
周縁部までべっとり白濁をあふれさせた蜜壺に、少年が指を二本そろえて差しこんできたのである。
ぽかりと男の肉の形に開いたままだった膣口が、指を入れられた瞬間にキュッと収縮した。
才人はただ指を二本そろえて入れただけではなく、脱がしたベビードールの布を指に巻きつけている。
鳴き騒ぎだした少女の様子も意に介されることはなく、彼の指はグチュグチュと前後して精液を奥からかき出していく。
「たしかにどんどん敏感になってますね。
布ごしでもわかるけど、やっぱりおま○この中、いつもと感触が変わってる……ここもここもこんなに充血して、ザラザラしてるとこやコリコリの部分がぷくんって腫れあがってる。
道理で毎回、イかせるほど味がよくなるわけだ。ほんと男泣かせのおま○こだよな。
でもこんな状態じゃ、姫さまのほうがもっと泣いちゃいそうだけど」
女の肉体が長く興奮状態に置かれていたため、もともと感度がいいうえに少年に開発されてきた膣内のポイントは、充血しきって膣肉を狭くしていた。
そんなところに薄く手触りなめらかなシルクとはいえ、布をまきつけた指を挿入されて、肉の具合をたしかめるように指でかきまわされ、こすられるのである。
「いやぁ! いやあっ」
薄明かりの中で、牝尻が指から逃げようとヒュクヒュクよじりたてられた。
「濡れすぎてると感度が下がるとか言いますしね。
ちょっと奥のほうまで拭き清めてますから……なんだよ、もう終わるからそんなに騒ぐなよ。
このくらいでいっか」
膣でかたく食い締めていた指を、いきなりすばやく布地ごと抜かれ、アンリエッタは失禁のようにまた潮を漏らしかける。
短く叫びながら無意識に尻たぶごと括約筋をきゅっと閉じ、瞬間的な絶頂をどうにかこらえた。
が、まさにその直後に才人がアンリエッタの腰をつかみ、尻におおいかぶさるようにして肉棒をヌルリと蜜壺に挿入してきた。
悲惨なほどに反応が高まっていた胎内に、男根がゆっくり奥へと入ってくる。
少女の奥歯がカチカチ鳴り、ぞわっと頭の中にまで鳥肌が立ったような感覚にとらわれる。
「ひいっ、ひいいいっ……は、入ってくるぅ……っ」
アンリエッタがクッションをいっそうきつく抱きしめると同時に、彼女の肉の壺が、男を迎えて勝手に動き出す。
ねっとりとろけた膣粘膜が、吸い付くように肉棒をしゃぶりたてる。わなないてしめつける。腫れてしこった部分からコリコリした感触を伝える。奥に引き込もうと動く。
肉棒が根元まで埋まり、子宮をぐちゅ……と押し上げられたとき、アンリエッタは見開いた目を白黒させた。
「ひ……ぁ、あわぁぁ……?」
可憐な舌が宙に突きでて震えた。
熟しすぎていた性感が、さっきよりさらに一回り肥大していた。自分の「牝」が奥の奥から震撼している。
肉棒を受け入れただけの女の肉が、いまにも達してしまいそうだった。
あふれすぎていた潤滑液をある程度ぬぐいさられた膣壁は、より鮮明に肉棒の形を意識するようになってしまっていたのである。
締め付けられて反応したらしく、蜜壺の深部でぐぐっと才人の亀頭がさらにふくらみ、張り出したカリが子宮口まわりの極上の性感帯を圧迫してきた。
それだけで甘い痺れが脳髄から尾骨にはしり、アンリエッタは艶めく唄をこぼして、つながった尻をブルルッとわななかせてしまう。
胎内を深く埋め尽くす肉棒に“帰ってきてくれましたのね”とばかりに女の肉が甘えすがる。
ふっくら膨らんで濡れきった大陰唇さえ、キュムキュムと痙攣的に左右から寄せられて、柔らかい圧迫を肉棒の根元に与える。
再びとろんとなった瞳から感極まった涙がこぼれた。
「……んうーっ、ぅぅぅ……っ」
ほぐされていく体と心の奥ふかくに、危機感があった。
遊びとはいえ肉の負債を背負わされて「奴隷のようなもの」とまで言われているのに、それに反発する意思がほとんど起きない。
それどころか、充足感と安心感さえ湧き起こってしまう。ひれ伏したような形の四つんばいで背後から深々と貫かれながらである。
才人も似たような心地らしく、彼が背後で漏らしたため息はしみじみと満足げだった。
「うはぁ……温かいおま○こ、ち○ぽに吸いついてくる。
ぷにぷにした赤ちゃんの両手をハチミツでヌメらせて、それでキュッてにぎりこまれてるみたい。
動くのがちょっと惜しいくらいだな」
「うごかな、うごかないでくださいましぃ、
ああ、今は……んんっ、いや、それだって、そんな動きもだめっ」
アンリエッタは肩甲骨を寄せるように肩をちぢめつつ、細い糸を長々と震わすような声で抗議した。
子宮口のあたりを小刻みにノックされ、カリで奥の秘肉をくちょくちょと掻かれだしていた。
……これはどちらかといえば官能をゆっくり高めるための責めのはずなのに、もうこれだけで舌が艶かしくこぼれてしまう。
耳たぶをついばむように口を寄せてきた才人のささやきが、背後から鼓膜をくすぐった。
「なんだよ、激しくはしてないだろ?
もっかい最初からゆっくりおま○こを慣らして、姫さまの体の熱を冷まさないようにしてるんですよ。
お乳も触っててあげます」
乳肌に触れられ、ぞわんと悪寒に似た快美感が駆け上がる。
双の乳房とそれが押し付けられているクッションの間に、少年が前にまわした手をさしこんできたのである。
抱きついたクッションとの間で淫猥につぶれていた二つの肉房を、手のひら全体でむにゅりと握りこまれた。
たわわな両乳を優しくあやすように揉まれ、女そのものの肉房が流動するようにたぷん、クニャリと形を変える。アンリエッタのあえぎがかすれた。
「む、むねもだめぇ、お乳はもうたっぷり触ったでは、あ、ぁぁぁ……」
先ほどまでの抽送のとき、両乳を執拗に揉みこねられていたのだった。
しかも、クリトリスに塗られた刺激クリームを乳首にまでたっぷり塗りこめられた上で、だった。
けっきょく荒々しいほどの絶頂を味わいつづけながら、嬲られる牝としての被虐感をたっぷり刺激されて、乳房での性感も限界まで呼び起こされてしまっていたのである。
「姫さまのおっぱいの表面プリプリに張ってるけど、芯はとろけそうなほどクニャクニャにやわらかくなってて……
ちょっと揉みこめばこんなに指が沈む」
そして今はそこを、嫌味なほどねちっこく愛撫されている。
温まった胸脂肪を芯まで熱するように揉みほぐされ、生ぬるく性感を煮立たせられる。
指紋の段差を感じられるくらいにゆっくりと、乳肌と乳輪の境界線を指の腹でなぞられる。
「くふゥん、いやぁ、そんな手つきで……あぅっ……」
ときおりきつく握りこまれると、才人の十指の間からムチッと乳肉が淫猥にこぼれた。鼻声を漏らしながら、アンリエッタは細い背に汗の玉をさらに浮かべてしまう。
「べたって這ってないで、ちょっと胸を浮かせろよ。どうせ乳首むずむずして必死にクッションに押し付けてるんでしょう?」
「それはあなたが、お乳の先にまであんなものを塗りましたからずっとピリピリして……
うあっ、や、いやあ、はげしくしないと言ったではっ」
抽送をわずかに速められた。蜜壺から上ってくる甘い疼きが、じゅくじゅくと増していく。
激しすぎる肉の悦びへの恐怖がわきおこり、性感を責めてくる脅しに屈さざるをえなくなる。
「ほんとうに卑怯っ、んんっ、もう……こ、これでよろしいでしょうか……」
けっきょくアンリエッタはクッションに腕をまわしたまま肘をついて、上体を軽く浮かせた四つんばいとなる。
すぐにたぷんたぷんと宙に柔らかく踊った双乳を、牝牛の搾乳のように乳首に向けて揉み搾られはじめる。
限界まで充血した乳首が、ふもとの白丘を揉みたてられるたびに救いがたいほどヒクヒクうごめいた。
けれどその乳首にまだ愛撫はほどこされない。
男の手は乳輪のふもとまでさんざんに嬲ってきているのに、もっとも敏感なピンク色の肉粒は意図的に避けているようだった。
乳腺が開いてしまいそうな切ない官能だった。
「ここに来てから、おっぱいまた大きくなったんじゃないですか? えっちなことばっかしてるからかな。
むっちり重く育っちゃったこのやらしいおっぱい、手で搾られるのがたまんねえんだろ?
言い訳したらだめですよ……いじめられるのが好きな体だから、強めのこね方でもあんなに悦べるんですよね」
言葉での嬲りに、心がぞくりとうずいた。
扇情的に瞳をまたたかせつつも、抗議しようとアンリエッタが肩越しにふりむいたとき、唐突に両乳首に責めがうつってきた。
「ひっ、ひうううぅっ、そこっ、そんなふうにしないでぇっ!」
乳輪からクニュゥとつままれて、勃起している乳首をさらに内部からヒクンと押し出すようにされ、それからあらためてつまみしごくようにピンクの勃起を嬲られはじめた。
乳房を揉みたてられて味わうのが温熱の心地よさなら、乳首は電流の発生装置だった。
胸の双丘からゆったり全身に拡散していた快感が、乳首をいじり始められたとたんたちまち凝縮し、流れも速まって五体をかけめぐる。
才人が顔を重ねてきた。唇を奪われて唾液を流しこまれる。
「あむゅ、ン……」
黙らされた少女は儚く鼻を鳴らし、男の唾液を従順にコクコク飲みくだした。
しこったピンク色の乳頭を、コリュコリュと甘痛く揉みしごかれて細肩をわななかせながら、ぷるんとした感触の美麗な唇を男にしゃぶられていく。
親指と中指でキツめに乳首の腹をつまみつぶされつつ、先端を人さし指の爪先でカリッと掻かれたとき、アンリエッタは口づけのなかでくぐもった艶声をもらして達した。
「んむうぅぅっ――!」
少女は乳先から走った軽い絶頂に息をあえがせ、四つんばいの体をわななかせる。
唇をほんの少しだけ離した才人の声が、水面の波紋のように脳裏に響いてきた。
「ちょっとほっといた乳首いじっただけで、やっぱりあっけなくイきましたね。
でもまだこれからですよ」
アンリエッタに対しそうささやきながら、才人は手で乳房を搾り、腰を継続的に動かして蜜壺を追いこみ、貫いた女体をコントロールしていくのだった。
…………………………
………………
……
肉を責められる。
激しくはされないが、それは救いにはならなかった。
温かく上気して桜色になった柔艶な肉房をムニュムニュとたっぷり揉みしだかれ、乳肌をさすられ、乳首を指で弾かれて、恨めしげな蕩け顔で才人を見つめながら腰をくなくな揺らす。
最後には乳首を延々とこすりつぶされて、体をS字状にくねらせて達してしまう。
おまけに偏執的なほど、子宮口周辺を小刻みにトントン小突かれつづけている。
男の肉のごく微妙な律動を、一定の速度で、後背位で受けていく。
……すぐに、幾度も小さく達するような状態に戻された。それでも薄く官能を与えられる。
濡れたあえぎをこぼして、四つんばいのまま小刻みな官能に耐えていく。
…………途中で、ぷちゅっと一条の潮を漏らした。
このころには、瞳も唇もゆるんだ状態から戻らず、思考がかすみがかっていた。
……………………長く長く、甘ったるく犯される。
ベッドに伏せた女体は、覆いかぶさってくる少年の下で悶えつづけていた。
肌は甘汗に濡れて、生まれたての動物の赤子のように、卑猥にぬらぬらと光っている。
薔薇色に染まった少女の体は男の四肢の内側にすっぽり囚われ、嬲られる快楽のため淫らにくねり、ときおり痙攣ぎみに震える。
肉情をこめた呼吸がはっ、はっとこぼれる。やや荒く、湿った熱い吐息をつむいでいた。
「……お乳が溶けてしまううっ、切ないからもうやめてくださいましぃ! くぅっ、んっ」
「はー……おっぱい、やーらかくてほかほか……
かまやしねえって、またお乳イキしちまえよ」
重みたっぷりの汗ばんだ乳房は、色づいて張り詰めるほどに手で愛されつづけていた。
両乳の横に手のひらをあてられ、谷間を埋めるように寄せて圧迫される。
きめの細かい乳肌が、汗に濡れてぬめらかな感触となっていた。その乳房の根元をくびるようにつかまれ、先端へ向けて何度もニュコニュコとしごかれる。
美麗な乳丘をほぐすようにマッサージされるたび、出るはずのない母乳が出てしまいそうなほど、柔肉が内部の乳腺からうずいていく。
「やああぁ、こんな、ううっ、くる、こらえられないぃっ……!」
過敏になった膣壁が、少女の体を狂わせていた。
張り出したカリで柔ひだを押し分け、掻き戻されるたびに、痴呆になりそうな快美感がかけめぐる。
乳肉への責めと重なって、軽い絶頂がもう何度おとずれたことだろう。
「おま○この奥のほう、ち○ぽで掻かれるのがすっかりお気に入りですね。
でもあんまりお尻振ってたら、今度もすぐ自爆しちゃいますよ。ああ、それでいまイクとこか」
言いながら指を伸ばした才人に、つつぅと背筋を尾骨の上までなぞられて、裸の美尻をヒコッとはねあげる。
「ふぅぅっ、イク、ぅぅん、ぁぁぁっ、ぁーっ……
やぁ、腰がとまらないぃ……!」
乳房と蜜壺から流れこんでからみあう甘悦に、アンリエッタの下半身は完全に恥を忘れきっていた。別の生き物のように腰がうねり、尻をゆるゆる左右に振ってしまうのだ。
彼女は、優しい責めは場合によっては激しく突かれるより怖い、ということを肉に教えこまされてしまっていた。
こんなふうに、自分の体の狂いようをあらわにしてしまうことが度々あるのだから。
「姫さまはそうやって恥ずかしくお尻ふりながら、がんばって俺をイかせてちょっとでも『借金』返そうとしていればいいんですよ。
でももう返すのは手遅れかな。ずーっとこねてただけで、胸もすっかり敏感になっちゃってさ。
もう先っちょの感度なんて、下のほうのお豆ほどじゃないけどそれに近くなってねえ?」
のどと背をそらして強調するように突き出された乳房を、背後からつかまれる。
豊かな乳肉を手のひら全体でねっとりこねまわされて「やぁ……あっ……あっ」とアンリエッタはうめく。
「腰っ……動かすのはっ、おなかの奥トントンするのをとめてっ……お乳からも手を離してえ……っ」
浅い絶頂だったが、――こんどは、甘美な余韻が下降してくれない。
才人がそのつもりで責めを継続させていることもあるが、惜しみなく長時間をかけて感度を引き上げられていることが大きかった。
射精するほど長持ちするようになる男と真逆に、アンリエッタの肉体は続けるほど快楽神経がどんどん目覚めていくのである。
もとより、ひとつひとつの要素はけっして嫌などではないのだ。背にのしかかってくる重みにも、鼻腔に届く少年の匂いにも、肌と肌とがすりあわされる感触にも、アンリエッタの体は好ましげな反応を返す。
「ほらよ……乳首好きだろ?」
「あっ、ひいいっ、ちくびだめっ、ちくびぃっ」
「ほらな。乳首クリクリ可愛がるたびにおま○こにダイレクトに震えがきてますよ」
「ばかっ、ばかあっ、あくっ、ゃうんんんっ!」
脳が蒸発しそうになっているのに、快楽装置になった豊かな乳球の先端をつねられた。
濡れそぼつ少女から淫艶な香気が立ちのぼり、室内に充満していく。
それは妖しくくゆり、壁や天井に結露して部屋をしとしと濡らしていくかと思えるほどだった。
「やすませてっ、ものごとには限度が、うううっ、もうサイト殿などっ、ひいんっ、あぁっ、
いや、おちちが、ちくびばかりはだめええっ、ああ、あ、胸で狂ってしまうっ」
「そう何度も休ませたりしませんよ。最初はアンのほうから誘ったんだから、途中で降りたりなんて許すわけねーだろ」
そう言う才人は腰を小刻みに使いつつ、乳肉を揉みしだき、乳首をしごいて少女をぐちゃぐちゃに追い込んでゆく。
そうしながらも、少年自身も射精欲求を懸命にこらえる表情になっている。
才人は忍耐の汗を流しながら笑った。
「今夜はとことんしてやるからな。どれだけ泣いて子供に戻っちゃったって、勘弁したりは……」
少年の言葉の途中で、アンリエッタの尻がビクンとはねあがった。
クッションを抱きしめ、上体を這わせて高々と桃尻をかかげた姿勢で、若い牝が硬直する。
雄の精を子宮に受けて、子を孕むためにもっとも適切な体勢。
「あああ――イクうううぅぅっ!」
「っ、うわ、くー……強めにイっちゃったんですね、いきなりお尻上げておま○こ絞って……すげ、おま○このお肉がブルブルしながら入り口から奥へ向けて順繰りに締まっていく……
っふー、あ、危なかっ……ってうわぁ、無理っ、こ、これすげえ、っく、今度は奥からぞわぞわってして俺のをおしゃぶりしてくるっ、
姫さまどんどん味よくなりすぎてる、こっちが我慢できねえっ、激しく動かせてもらうからなっ」
非道な通告とともに、才人は身をおこしてアンリエッタの腰のくびれをがっちりつかんだ。
すぐには突かず、少年は腰をいったん引き、肉棒を半ばまで引き出してためを作る。
さきほど突入した激しい絶頂にひたらされて総身をブルブルとおののかせながら、アンリエッタが怯えた声をあげた。
「まって、はげしくするなど、せ、せめて終わっひぇからぁっっ!」
「いいや、そっちがイキ終わるまでなんて待ってられませんよっ」
精液を流し込まれる姿勢をとったその尻が、いっそう濃艶に紅潮し、なめらかな二つの球面にぶわっと熱い汗を噴かせて、灼熱の快楽にビクビク悶えている。
アンリエッタの肉体は、絶頂のため無意識に緊縮と弛緩をくりかえしていた。きゅっと力がいれられて双の尻房が寄り、次の瞬間にはほどけるように力が抜け、どこまでも柔媚な牝尻になる。
その弛緩した瞬間を狙って才人の腰が突き上げられた。肉棒が蜜壺に根元までめりこみ、ぐちゃっと深く子宮まで衝撃を叩きこむ。
柔艶な尻たぶの表面が、男の下腹と激しくぶつかってぱちゅんと波立った。
「いやっ、いやっ、いやああああッ!」
アンリエッタは目を白黒させて鳥肌を立て、淫叫した。
絶頂の波のなか、鐘を突くように子宮を叩かれて、重ねて達してしまったのだった。
さらにグチュグチュと奥を叩かれる。肉が蕩けながらもプリプリに充血して過敏になった膣壁を、苛烈にカリでこすりあげられる。
灯火に照らされて薔薇色に照り輝く桃尻をかかえこまれ、背後から雄に力強く犯される。
猛る雄の本能をぶつけられ、ぐちゃぐちゃに嬲られる女の肉が哀しいほどに反応して、受け身の快楽を脳に無理やりたたきこんでくる。
アンリエッタの絶頂の悲鳴がよじれる。達し続けて過敏になっていく蜜壺を、どこまでも追い込まれていた。
そして絶頂にとろけた蜜壺はさらに雄を悦ばせる性能を高め、優しくも熱情的に肉棒を絞ってしまう。
それが連鎖的に男の反応を呼び起こし、わが身にまたもや何倍にもなって返ってくるのだった。
にゅるにゅるに蕩けた秘肉といっしょに、頭の中までかき混ぜられているようだった。
「とまって、とまっ、これ、これいじょうはっ、
あああ、頭のなかが焼けてしまう、焦げるぅっ、ああああああっ!!」
貪婪に女をむさぼる雄の動きに翻弄され、溺れるほどの肉悦のなかでアンリエッタは悲痛に鳴き狂った。
徹底して、男の性欲処理のために存在する極上品の肉穴として扱われる。
それでいながらも、なまめかしくくねり悶えるその裸体は、少年から情欲と賛美の念をあらたに引き出しつづける。
這ったまま達する一回ごとに、牝としての至純の美を極めていくのだった。
アンリエッタの尻に手をかけて双丘をそれぞれ爪をたてるようにわしづかみ、美尻を揺さぶりたてて突き上げながら才人がうなった。
「くううっ、俺もっ……!」
亀頭が子宮口にめりこみ、びゅくんっ、びゅくんと精液をぶちまける。その瞬間、少女の声がほぼ消えた。
「こふっ……
ぁっ……? っ……っ……ぁっ……」
ビュルビュルとほとばしる精液の熱さ濃さを、まるで頭の中に直接注がれているのかと思うほど、深い絶頂とともに脳裏にすりこまれている。
だというのに、最初アンリエッタは叫べなかった。限界まで呼吸を吐ききり、吸うことを忘れて顔を真っ赤にしていた。
射精された瞬間に大量の唾液をふきこぼした唇は、ぽかんと開きっぱなしになっていた。
ドクドク注がれて、射精のリズムに肉が感応しているのに叫び声を出せない。
「ぁっ……へぁ……ぅぅっ……」
硬直の続いているその状態も、時間にすればほんのつかの間のことだった。
「射精されて深イキしちゃってるんだ? ちゃんと声を出せよ」
――パチィン、と音がした。才人の平手を振り下ろされ、かかげた桃尻にくっきりと赤い手形をつけられたのだった。
その奴隷を扱うような屈辱的な一撃がきっかけになってしまった。
スパンキングの痛みに乗せられたように、アンリエッタの五体にわななきが波となって伝わった。
子宮に注がれる熱とリズムが、脳裏でグチュリと粘着質にからみあって結びつく。そして急激に爆発した。
「ゃ…………いや……あっ、
ぁぁあ、あああぁあああああああああああぁああっ!!!」
才人の腰がぐぐっといっそう桃尻に密着し、射精する男の肉が蜜壺を深くうがった。
魂を消費しているかとおもうほどの叫び声を発したアンリエッタを、少年は精液を放出している肉棒でなおも責め立てる。
円運動に才人の腰の動きが変わる。アンリエッタの子宮口まで貫く肉棒をすりこぎのように回して、卑猥に∞の字をえがき、亀頭で精液をすりこむようにねっとり蜜壺をこねまわしていく。
絶頂したばかりの少女の熱い膣肉が、くわえさせられた男の肉を美味しそうににゅぐにゅぐとねぶりたてた。
肉体の嬉しそうな反応とは裏腹に、少女の悲鳴が弾ける。
「ああぁああああっ、……とめなさっ、……ばかぁっ……いく、イクイクうっ、ああぁぁっ、ああああぁ……っ!!
やめへぇ、イくぅ、さっきからイっておりまふっ、びゅくびゅくしながら奥ぐりぐりしないでぇっ、
そんらことされたらイくのがまた終わらないれしょうっ、それがわからないのっ!」
「じゃ、そのまんまずっと終わらなくなっちまえ。ほら、またこうしてしっかり行き止まりまで入れて、隠れた弱いとこをもっとち○ぽで掻いてやる。
子宮で大好きな精液もっと飲めよ、こってりごちそうしてやってるだろっ」
才人は腰のくびれをつかみ、美しくぷるんと実った尻をぐいっと引きよせた。高貴な生まれで純粋培養された若い牝の肉壺を、執拗に犯しぬく。
「ふぐっ、ひっ、イク、あぅ、やめなひゃい、やめてくださいっ、
あん、ふぁあああぁぁあっ、あーっ、おねがいいっ、やすませてぇっ」
シーツに横顔を押し付けるアンリエッタの泣きゆがんだ麗貌から、よだれと熱い涙がこぼれ、支離滅裂に言葉が乱れる。
精神の上の層がはがされて数年ほど幼くなり、我の強い一面が出ていた。けれどその精いっぱいの強がりも、懇願にすぐ変わる。
絶頂のなかでもトプトプ子宮に精液を注入されて、本能的な牝の幸福感を味わわされながら、アンリエッタは体を灼熱させられていた。
精を女の芯に受けるたびに、前の射精のときより肉悦が純度と濃度を高めてはねあがっていくのだった。美貌を真っ赤に火照らせて泣き叫びつづける。
温められてほかほかと湯気をたてるバターのように、官能の熱で女体が溶かされていく。
背後から、才人が低い声で言った。
「もうちょっとこのまんまグリグリしててあげますよ。
それが終わったらまたおま○こ綺麗にフキフキしてから……そうだな、今度は座って前から抱っこしながらしてあげますよ。
気はしっかり張っとけよ、こんど気絶したらお仕置きにしますからね」
…………………………
………………
……
たおやかな一輪の百合が、夜のなかにかぐわしく咲いている。
アンリエッタはあお向けになって体を二つ折りにされていた。
M字に開脚して後ろにころんとひっくり返った格好。頭より尻の位置がずっと高い。
蕩け泣きの表情で、耳たぶに真っ赤に血の色を透かし、男に強烈に欲情をもよおさせる声をあげていた。
「あひ……やン……やぁっ……
いやあ……こんな格好っ、こんな格好で……おしりを、たたかないでくださいまし……んんン……っ」
頭のほうに折りまげた脚は、自分でかかえこまされている。
腰の下にはクッションが押し込められ、桃尻の位置を高めたままにしていた。まろやかな尻を艶美にくるんと丸めて、陰部ごと高々と強調している。
赤ん坊がおしめを換えてもらう格好より一段すすんだ、きわめて破廉恥な格好といってよかった。
その姿勢で、スパンキングを尻に受けている。
「へたっちゃ駄目ですよ」
才人がそう言うと、差し出された美姫の尻にピシャンとやや強く平手を打ち下ろした。
綺麗な尻たぶにはっきり赤い手形をつけられ、アンリエッタはひくんと首をそらして、のど奥でくぐもった叫びをもらした。
火照りながらも柔らかく弛緩した体が、女らしい脂ののった美麗な尻房をヒクヒクと悶えさせる。
そのなめらかな肉丘をなおも楽しむように叩きながら、少年は「まったくもう」と口にした。
「気を張っとけって言ったのに、けっきょくまた気絶……寝ちまうんだから。
流しこまれるたびにイっちゃってるから早く疲れるんですよ」
「ふぁぁ…………」
アンリエッタははにかむようにまつ毛をしっとり伏せた。
牝の本能的な欲求を何度も、無理やりに満足させられたのである。溢れかえるほどににじんだ涙で視界がぼやけていた。
あれから、どこまでも嬲られた。
射精はすべて膣内にそそぎこまれて、子宮で濃縮した快楽を味わわされた。敏感の度を増していく膣内は、一回終わるごとに布でぬぐわれ、すぐにまた犯された。
どこまでいっても許されず、鮮烈でありながら芯にからみついてくるような粘着質の絶頂の渦にのみこまれ、肉の悶絶を何度となく味わった。
けっきょく、少年が七発目の射精を終えるまでに、アンリエッタはまた二度も意識を途絶えさせてしまったのだった。
「おま○こ、指でするけど、その前にまた軽く拭きますからおとなしくしててくださいよ」
「ひふぅううんっ……!」
叩くのとは別の手で、才人が蜜壺にグチュとハンカチを巻きつけた指をさしこんだ。
それがぬぽっと抜かれた瞬間に、蜜壺の粘膜が収縮してびゅっと白濁した液を噴き、才人の手を汚す。
膣口からふきこぼす濃い愛液が美尻を濡らして、とろりとろりと下半身を逆さまに流れ落ちていく。尻の球面にまで液は飛び散って、剥いた桃に蜂蜜をかけたような淫艶な光景となっていた。
クリトリスや陰唇、会陰部にいたるまで秘部の表面も丁寧にぬぐわれながら、アンリエッタは気だるく濡れた声を発した。
「……ゆびでって……もしかしてまだ、わたくしの……そこ……に、なにかしようというのですか……
そ、そろそろ、満足していただけませんか……わたくしは今夜はもう、じゅうぶんにしていただきましたから……」
と、才人が尻の双丘のそれぞれに手をかけてきた。なまめかしい尻たぶをむにりと大きく割って、ヒクつく可憐なアヌスを強調させる。
こんどアンリエッタの唇からこぼれたのは、悲痛な涙声だった。
「いやぁ、そこはいやぁっ……!」
「おま○こされるのが嫌? なら、またこっち使おうか?
縛り上げるか床に手をつかせて、牝ちんちん指でシコシコしつづけて、前みたいにお漏らししちゃうまでお尻でイかせてやろうか。
真っ赤な顔で『おしりイクッ、おしりイクッ』って泣く姫さまも見たいので、俺はほんとにどっちでもいいですよ。
さっきのアンの言葉からすると、これは気絶しちゃったお仕置きだって今ひとつわかってないみたいだしな」
「……やめてぇっ……、お、おま○こでします……おま○こに罰をうければよろしいのれしょうっ……」
「わかればいいんですよ。だいたい、どうしてもお仕置きでお尻の穴をされるのは嫌って姫さまがぐずるから、こういう軽い罰にしてあげてるんですよ。
だからほら、言うことあんだろ、お礼はどうしたよ?」
「ぁふ……お、おなさけをかけていただき、ありがとうございますぅ……
……ああ、おしりピシャピシャしないでぇ……、ちゃんとお礼をいっておりまひゅのにぃ……」
これ以上なく屈辱的に扱われているのに、弱々しくまつ毛を震わせて哀訴するしかできなかった。
けれど、許しを乞う声をどれだけあげても、赤くなっていく尻に振りつづける平手の雨がやまない。
たまらず逃げたそうに裸の尻をくなくな揺すっても、責める少年が容赦してくれるはずもない。むしろ責め手の嗜虐心を刺激してしまうのか、ますますお尻叩きの手数が倍加する。
「動くなってば。その格好を崩したら、本当にお尻を犯しますよ」
そうまで言われては、この姿勢を解除することなどできない。
より酷い罰を与えられることへの怯えで、アンリエッタは自分自身の脚を必死にかかえこむ。実質的には縛られたのと同じことだった。
淡く桃色めいた被虐の淫気をたちのぼらせつつ、少女は鼻を鳴らして瞳を儚くうるめかせた。
才人が安心させるように尻を撫でる。
「心配いりませんよ。罰といったって、ちゃんと気持ちよくしてあげるから。
お尻ペンペンしながら、まず浅いところから指でたっぷりクチュクチュ、な」
蜜壺に指をさしこんだ才人の手は、ごく微妙に、手首から先を細かく震わせるように動きはじめている。指ならではの、繊細な刺激を送りこむ責め。
あお向けでやや上方に差し上げた股間から、アンリエッタの体にじんわり根をおろすように、甘く濃い肉悦が降りてくる。甘やかな切れ切れのすすり泣きは、いつ止むとも知れなかった。
最初、夕方に口で愛撫されたときと似たような種類の、ただし何倍も濃厚な甘悦だった。それがやはり延々と続いているのである。
男の指をずっぷり根元まで蜜壺に埋められ、そのまま優しく震わされる責めに、自我がほろほろと散っていきそうだった。
同時に、汗で光沢を放つなめらかな双丘を、休みなく優しく叩かれる。
男に指二本で支配されながら平手を美尻に受けるたびに、肉情が悶えたくなるほどに煮立てられ、アンリエッタの思考と視界がぼやけていく。
しつこく子宮がうずき、ずきずきと脈打ち続けた。
さきほど犯しぬかれて連続絶頂を味わわされた体が、被虐の官能を冷却させてくれないのである。
「ひふ……ふうっ……んんー……」
余韻が一定の高さを保ったまま下降しない。
淫猥にほころびた膣肉が痙攣し、クチャクチャとおいしそうに指を咀嚼する。
送りこまれる指による震動が、ゆるやかに官能を沸点に届けた。
「……ひぅん……ひぅん……ィ……き、ます……」
「やっぱり、このへんがいいんですね? じゃ、ここをもっとしますよ」
反応を見せてしまったとたんに、弱いポイントをいっそう重点的に指に責められる。
スパンキングの下で全身をヒクヒク震わせながら、アンリエッタは浅く達しっぱなしの状態になってしまっていた。ピシャピシャと鳴る音のなか、ごく薄く軽い絶頂が持続してゆく。
少女の目から、弱まっていた理知の光がふっと消えた。淫痴の情がそれに取って代わる。
夕刻、椅子の上でやったように脚を自分で引きつけ、体をちぢめて、叩かれる桃尻の丸みをますます強調してしまう。
茹だったアンリエッタの脳裏で、おぼろに自分を非難する声が聞こえる。
忠実な犬が腹を見せるよりもっと恥辱に満ちた姿勢をとり、幼児にお仕置きするように尻をぶたれ続けている。
「奴隷みたいなもの」と言われたが、まさに愛玩奴隷の扱いだった。
レディの自尊心を否定されているこの状況で、自分の体は屈辱に反応して燃えあがり、隷属の悦びを得てしまっている。
(わたくし……こんな、女……)
持ち上がったまま弱々しく震えている柔らかい牝尻を、弾ませるようにリズムよく叩きながら、少年が声をかけてくる。
「指でされながらお尻ぶたれるの気に入っちゃった? 綺麗な顔をそんなにトロけさせちゃってさ。
可愛いもんですね。足の指にぎにぎして、おま○こで俺の指を夢中で食いしばって。
次いきましょうか……この場所ですよ」
胎内で才人の指が鉤状に曲がり、恥骨裏にぴとっと指の腹を当ててきた。
クイクイと尿道にそって内部から指で刺激されはじめる。
「ふゃぁんっ、だめ、うっ、ああっ」
少女が、ビクンと白いのどをそらして甘鳴きを高めた。
「もう見つけるのがほんとに簡単だなあ。この壁がしこってちょっとザラついたところだろ。
何されるかわかってるだろ。いまから、そんな格好でお尻ペンペンされながらお潮ぴゅくぴゅく飛ばすんですよ。
また溜まってきてるでしょう?」
「ひっく、あうっ、だめと言っているれしょう、やぁ、イク、いやぁっ……!」
とたんに、かかげた股間から残り少ない潮がピシュッと漏れ、ななめ上方に飛んだ。紅潮した美貌に、ぴっぴっと潮がふりかかる。
自分自身の体の機微を、すっかり少年に熟知されてしまっていた。
「またおま○こ、きゅうんって締まってきた。
強くない程度にいっぱいお尻叩いててやるからさ、イくのゆっくり楽しみなよ。それと今からは、お潮ぴゅっぴゅお漏らしするときはちゃんと報告しろよ?」
またも平手を降らされだす。
汗と潮液と蜜にぬめる桃尻が、秘部を玩弄されながら宙で悶え、叩かれて赤みを増していった。
…………………………
――そんな目で。
優しく嬲るような愛撫をほどこしながら才人は思う。
ひっくり返った隷従の姿勢をとるアンリエッタの美貌には、ほつれた栗色の髪が汗ではりつき、艶かしくうるんだ瞳が才人を見つめている。
溺れるあえぎが悩ましく、情を孕んで少年の耳にいざり寄り、今を盛りのレモンの花が枕元から甘く香りを届けてくる。
男の胸を妖しくうずかせる、艶なる風情だった。
(女王様なんていっても女の子で、こうしてるとこんなに『女のひと』なんだもんなあ……怖いくらいに)
冷静をたもって責めているかに見える才人の面にも、興奮の色が静かににじみ出ている。内実は、彼もたぎるほどに血が熱くなっているのだった。
まっとうな情欲だけではないそれは、アルコールが気化した蒸気が頭蓋骨内で燃えているような昂揚だった。酒など一滴も飲んでいなくとも人間は酔えるということを、いま才人は実感している。
自分の状態を冷ややかに客観視することはできるのに、少女を虐める手を止めることはできない。醒めていながら猛っているという異常な両立だった。
それをもたらすのは眼前の彼女だった。
才人が手をかけると、少女の肌は熱く息づく。牝の脂が皮膚の下で溶けて、極上の肉をさらに熟れさせていくのかと思うほどに。
ベッドの上でさまざまな姿勢をとらせるたび、アンリエッタは口では哀訴や恨み言をこぼしながらも、才人のなすがまま従順に、くにゃりと体を柔らかく折り曲げていく。
そして泣き叫んでいるときでさえ常に、才人を見つめているその濡れた瞳には、えもいわれぬ妖しい深みがあるのだった。
情感をあふれさせた双眸がぞっとするほど美しく、畏怖さえ覚えて思わず逃げたくなる。
けれど少年は、もう彼女のこの瞳から逃げられない、と心のどこかで知っている。
行為のときに主導権をにぎっていないと気がすまない理由の一つは、その畏れの裏返しだった。
「……奴隷みたいなもん、じゃなくてさ。
ほんとに奴隷になっちゃいますか?」
だから才人がそう口にしたのは、行き着くところに行き着いただけのことだった。
狂わされて責めに夢中になり、畏怖を払おうとしてこの高貴な少女を泣かすことにのめりこんでいくのだから。
見開かれた彼女の瞳に、まるで水晶の檻に閉じこめられたように才人自身の姿が映っていた。
「え……?」
「イクの我慢できた?
何回イった? また数えてないんかよ?」
「そんなぁ……が……がまんしたり、かぞえたりなんて、もうわたくし……
ああ、おねがい、おしおきは……」
「ん……今夜でわかっただろ、自分でもよく。
姫さまは、いじめられたら気持ちよくなるのを我慢できない、こらえ性のない早漏の子なんですよ。
もうどうせ『借金』返せないだろ。だからこの先、ずっと奴隷ってことです。
『一生、あなたの奴隷です』って言ってみなよ」
「…………あーっ……ああぁ、……ひっく、ふぁ、ああん……ぅぅ……
ああ、ほんとうにひどい方ぁ……言うものですか、そんなことぉ……っ……ゃうぅんっ」
「かまわねえよ……言わせてやる。とりあえず、またお潮ぴゅっぴゅ見せろよ」
そう言うと才人は、アンリエッタを嬲る指の卑猥なうごめきを加速させた。
蜜壺をクチョクチョ鳴らし、加えて官能味ある尻を平手で叩いて、少女に悦びに泣きむせぶ声をあげさせていく。
「ゃぁぁ、らめ、だめよ、ひぐ、
……やっ、ゆびが、そんなゆびづかいするからっ、んう、イクのぉ、おもらし、またしてしまうぅっ」
アンリエッタの瞳や表情とおなじく溶けかけて熱っぽい、甘くうつろな声。
その声が、あえぎとすすりあげを混じえて夜を震わせ、そして感極まっていく。
「んーっ、んーっ、ぴゅっぴゅしてイクぅ、みないで、ん、でます、あぁん、んんんんんーっ……!」
…………………………
それからアンリエッタを待っていたのは、女を官能の奴隷に堕とすための快楽の時間だった。
どこまでも優しく執拗に追い詰められてすすり泣き、甘鳴きし、よがり叫んで、かすれ声で絶頂を報告させられる。
どのように感じさせられ、どのくらいの濃度の絶頂を与えられ、官能を天国と煉獄のどちらに送り込まれるかは完全に男のなすがままなのだった。
最初のうち、指はわざと快楽ポイントから微妙にずれたところを責めてきていた。それでも性感を引き上げられた少女は、達する寸前まで容易に追い詰められる。
そうなってから指はようやく恥骨裏にもどってきて、潮を噴かせるための動きに変わる。
締まる蜜壺をクチュクチュと鉤状にまがった指でほじられると、なすすべもなく泣き叫びながら何度も潮液を尿口から漏らしてしまうのだった。
内ももまで紅潮させ、どろどろの股間からピチュッと潮をほとばしらせるたび、アンリエッタは「イくのぉ」「おもらしぃ」と甘くえずきながら報告していった。
めぐる愛欲の狂おしさのなかで、刻一刻と体力が尽きてゆき、理性が退化して、言葉づかいまでもが幼くなっていく。
溶けた語尾が伸びて、甘える幼な子同然の舌足らずな口調になってしまっている。
ひとつ絶頂に達するたびに気概がぽろぽろとこぼれ落ちていって、心まで裸の剥き身にされていくのである。
潮が出なくなったというのに、今度は恥骨裏のポイントだけを責められるようになると、ゆるい絶頂から降りてこられなくなった。
とっくに出し切ってしまった潮液をさらに要求されるように、膣側から尿道をこってりと揉みぬかれ、終わりなく潮を噴かされているような妖しい絶頂感を持続させられる。
同時にスパンキングで悩ましい尻の双丘を赤く焼きあがらされ、屈辱なのに蕩け泣きで許しを乞うてしまう。
しまいには脚を自分でかかえこんだ羞恥体勢のまま、へこっ、へこっと宙で美尻を頭のほうにしゃくり、恥ずかしすぎる空腰を使いだしてしまった。
肉悦のまどろみの中で濃淫な痴態をさらしながら、才人の笑いを遠くからのように聞いた。
「あは、指動かすたび、おしっこの穴パクパクしてら。
お潮無くなっちゃったのに空撃ちしてるんですね。そんなに自分の顔にもっとお潮射精ぶっかけたいんですか?」
「だってぇ、うぅっ、イクのぉ……ふぁ、体がかってにイって、うごくのれひゅぅ……ひっ、うっ、
は、はずか、しい……………………」
男の視線にさらされた陰部のすべてがヒクつく。膣肉で才人の指を、尿道で潮液の残り汁をクチュクチュかみ締めている。
淫靡な水音のなかで、アンリエッタの羞恥が快楽とともに限界まで煮詰まっていく。この先どんな顔で生きていけばいいのかさえわからなくなる。
とうとう少女の錯乱の声がほとばしった。
「はずかひい、はずかひいいっ、腰なんかうごかしたくないのお゙っ…………やぁっ、はずかしい、
もぉ気をやらせないでぇ、もどっ、戻れなくなってしまううっ……!」
「なんだ、まだ普通の子に戻れるとか思ってたんですか? とっくにえっち狂いの変態のくせに。さっさと奴隷になるって誓っちまいなよ。
誓えますよね?」
「そ、それ、はぁ………………」
「やれやれ、とっくに似たようなもんなのに、なんでこの期におよんでぐずぐずためらうんだか。
つまりもっと後押しされて、ドロドロになってからでないと言えないんですか。
それじゃもっと奥、触りますよ」
そう言いつつ、拳の部分までが蜜壺に入りそうなほど、才人が指をぐぐっと進めた。
子宮口に伸ばした指先が触れた瞬間、水妖の断末魔のように女体が艶かしくうち震えた。
「ひぐぅん、そんなところ触られたらぁ……っ!」
一拍遅れで子宮の痙攣が才人の手に伝わる。
「子宮こんなに下ろしちまって……奥のほうの子宮口のふくらみ、指先で撫でまわせるくらいせり出してますよ。
精液すすりたいって発情したカラダが、興奮しすぎてこんなになっちゃったんですね。
触ってみると、子宮口っておもしろい感触……この中央のくぼみが子宮の入り口? 指、入れちまおうかな」
「ひいいッ、ゆびなんてはいりまへぬから、やや子の部屋をさわらないでくださいまひぃ、
ひふッ、やぁ、お腹のおくで指うごかさないでぇっ、んーっ、あぁぁっ……
…………やめて…………とけ、ます…………こわい………………」
肉棒ではとても及びもつかない器用さで、指先がまさぐってくる。子宮口のふくらみにそって周回してくる。
膣のもっと浅い部分に点在する快楽ポイントを探られたときと同じように、女の源まわりの性感帯を、極めて細かく精緻にまさぐられ、じっくり反応を確かめられていく。
優しく、愛情さえ感じられる繊細な手つきで。
今日まで開発されてきた膣奥の性感が、いまだ目覚めていなかった領域まで強引に引きずり出され、おずおずながらこれまでより大きく花開いていく。
「温かい……不思議なもんだな、子宮触ってるだけでなんだか安心する感じ……
そっちはどう、奥でいっぱいイけてますか? ほら、子宮口のななめ下のこのへんとか、触るとおま○こ肉がすごい反応してきますよ。
こうして指先でコリュコリュ掻いてもらうのがイイんだろ?」
クッションの上で、腰が抜けた。
「……はふっ、あうううっ、奥っ、らめ……くるっ、ちゃう……」
先ほどからの細かい絶頂が、少年の指が子宮口周辺でうごめくたび、静かなままねっとり深いものに移っていく。
腰が液状化して温かいクリームスープにでもなったようで、蕩けた幸福感さえ満ちていた。それこそ、通り越して恐怖をともなうほどの。
「もともと好きだったもんな。
奥のお肉使われてち○ぽをしごかされて、恥ずかしい格好で精液流し込まれて、何度もイクのが大好きでしょう?」
「ひん、ひぅっ……はい、はいぃ……おくがすきれふ……奥れいっぱい気をやらひゃれるのがすきぃ……
……あんっ、はへぇ……イふ、イくう、イくう……」
さんざん緩急をつけながら嬲られつづけた体が、心を巻き込んで甘美に堕ちていく。
「すっかり素直になりましたね。
にしてもえっち呆けしたトロトロの顔しちゃって。おま○こと同じですけべで可愛くなっちゃってますよ。
おま○このほうは……詰め込んであげた精液まで奥から出てきちゃって、ぬるぬるとろっとろで湯気立てそうに熱くなって、痙攣しっぱなしでこんな嬉しそうに俺の手をしゃぶってるや」
揶揄されているのに、アンリエッタはもう屈辱を表情に出すことさえできなかった。
濡れた玲瓏たる美貌は、才人に言われたとおり眉がだらしなく下がって泣きとろけていた。
甘えと淫情をこめて才人をみつめる瞳は、細められて快楽にぼうっとたゆたい、強制的な肉の幸福による涙がまつ毛を重く湿らせている。
打たれる軽い痛みがスパイスになった悦びの深淵のなかで、少女は完全な屈従に近づいているのだった。
あげくのはてに、ようやくスパンキングが止んだかと思えば、才人が口を上向いた股間に寄せてきた。
あおむけに丸まった淫艶な桃尻の股間、恥丘のあたりに少年の顔が深々と埋まってくる。
「そろそろ素直に『奴隷になります』って言えるだろ。いま言わせてやるからな」
柔らかくなりかけていたクリトリスを男の唇にちゅるんと含まれ、半分戻っていた包皮を口の中でむきゅっと完全に剥きなおされる。アンリエッタはビクンと頭をのけぞらせた。
そのまま膣奥に指の刺激を送りこまれながら、少年のもう片手でアヌスにまで指をぴとっと当てられたとき、さすがに高い悲鳴をアンリエッタはあげた。
「おひりはっ……やくそくがちがいま……堪忍ひてくれるとぉ……!」
しかし悲痛な拒否の言葉とは裏腹に、アンリエッタの括約筋は瞬時に緊縮した。蜜壺は指を食いしばり、クリトリスは才人の口の中で桃色の真珠になるまでまた膨れ上がる。
躾けられてきたアヌスでの昏く妖しい悦びが片鱗をのぞかせ、前の穴での快楽水位を押しあげる。
勃起した肉豆を舌まで活用してしゃぶりながら、その合間に才人が悶えている少女に話しかけた。
「お尻の穴の表面をちょっと指でクニクニ触ってるだけじゃんかよ。
ま、組み合わせて責められるのに弱いのは知ってますけどね。これだけでおま○こも牝ちんちんも新鮮な反応。
言えるまで、三点責めを堪能させてやるよ」
刺激クリームをしみこませたまま、また最大限に膨張させられたクリトリスが、男の口唇粘膜での複雑かつ激しい愛撫にさらされていく。
すりへりそうなほどペチャペチャと舐められ、乳首を吸うようにちゅうちゅうと吸われ、ニュルニュルクニュクニュと唇と舌で柔らかくしごかれ、
「〜〜っ、〜〜っ、〜〜っ……
お口だめえ、ぬるぬるしてうっ……イふぅっ…………、……っ……!」
口唇での愛撫という点では夕方の椅子のときと同じでも、それをはるかに上まわった甘さと濃さの性楽だった。
ずっと休みなく責めなぶられ、ほんの少しの愛撫にも反応するよう肉体を燃えたたされてきたのである。
まして少年の両手の指が、二箇所の秘められた性感帯に触れてきている。あの時点とは比べ物にならないほど、官能が大きくなるのは必然だった。
露出しきったクリトリスに吸い付かれたまま、その肉の芽の根元から、唇と舌の粘膜でたっぷり愛撫されていく。
その今日はもう弄りつくされたはずの快楽器官が容赦なく追い込まれ、細胞レベルで振動しているのかと思うほど甘く赤熱する。
女の芯と官能がリンクして、優しくも鋭い絶頂と重い絶頂を同時に味わう。味わわされ続ける。アヌスの表面を揉みほぐされる妖しい感覚がそれに拍車をかけた。
トクトク血流が流れこんで脈動するクリトリスを甘くしゃぶりたてられ、その間も休みなくこりこりと子宮口を指先で刺激され、脳裏が溶けくずれて何も見えなくなり――静かに気がふれそうになって、
「…………〜〜る、なるっ……なりまふからっ……ちかうからっ、しないでえっ……!」
子宮口中央の穴のあいたくぼみに指をまた当てられた。
よだれを吐き出す子宮の入り口をこじあけるようにツプッと指先を挿され、尿口に唇をつけられて潮の残り汁をヂュルルルッと吸われはじめた。
指一本の先だけとはいえ子宮まで犯されたあげく、延々と失禁させられながら達しているような感覚に襲われる。腰が分解していくかと思うほどの虚脱感だった。
アンリエッタのためらいが残らず消し飛んだ。
「いやあああぁッ、なりますっ、どれいになる、どれいになりまふぅぅっ……!」
優しく精神を壊されていくかと思うほどの肉の深みで、少女はついに屈服の言葉を吐いてしまったのだった。
自分自身のなにかを終わらせてしまった気がしたが、女の源まで触られておいて、もう逆らえるわけがなかった。
…………………………
………………
……
才人が頃合よしと見てか、顔を離して蜜壺からぬるりと指を抜いた。水アメのような濃い愛蜜の糸をどろりと引いて、胎内を嬲る手が去る。
けれどもほつれ髪を頬にはりつけたアンリエッタの美貌はうっとり放心し、肉の夢にひたったままだった。
艶美に濡れ光る半開きの唇の両端から、よだれが垂れている。ほころびた蜜壺はクチャクチャと咀嚼し、乳首と股間の肉豆もヒクつきを止められない。
二つ折りの開脚姿勢でひっくり返っているアンリエッタの真上に、才人がのしかかってきても、彼女の認識能力はまだ夢うつつに散っていた。
快楽の温泉で溺れつづけていたのである。
湯に長く漬からされたような状態になっていたのは、アンリエッタの紅潮した肌だけではなく、思考もだった。
けれど、才人の肉棒の先が陰唇を押し分けて秘肉につぷりと埋まると、さすがに瞳の焦点が結ばれた。
「…………ぇ……? うそ……」
まだ続行されている。とっくに腰まで抜けているのに。
その事実が信じられなかった。
信じられなくとも、ゆっくり戦慄が呼び覚まされていく。
「いや、うそぉ……そんなのいれられてはぁ、今度されたら……」
……よく考えれば今夜は、二種類の責めが、おおざっぱに見れば交互に来ていたのである。
とろ火煮込みの焦らすような責めで肉体を燃え上がらされてから、切りかわって肉棒で一気に激しく嬲られる、という流れだった。
けれどアンリエッタは、たった今までされていた手での愛撫までが、性感帯を過敏にさせるための「とろ火」だとは思っていなかったのだった。まさかもう挿入はされないだろう、とどこかで考えていた。
けれど、いま亀頭は発情しきった膣口に飲み込まされている。
真上から挿入されていく少女は絶え入りそうな風情で、ほとんど息も絶え絶えに懇願した。
「……やめて……さっき、い、言ったのに……言いましたわ……」
「だめですよ、あんなんじゃ」
「え、な、なんでぇ……」
呆然としてつい理由を訊いてしまったアンリエッタに、腹の立つ笑みを浮かべた才人が指摘した。
「だって姫さま、まだ『言わされるからしかたなく言うのよ』ってどこかで思ってる。そうでしょう。
ほんとに往生際悪いとこありますね、たった今あんだけはっきり言っといてさ」
「そ……」
そんなことはない、と否定はできなかった。しかたなく言ったということを否定すれば、あの誓いの言葉は自分の本心ということになってしまう。
肉に溺れながらも、アンリエッタは心の最後の部分に逃げ道を残していたのだった。
(わたくしが淫らになっても、それはこのひとが望んでいることなのだから)と。
それを見抜かれても、いまさらその便利な言い訳を捨てられるわけがなかった。
「……そんな……そんらことぉ、言われたってぇ……それが、事実れしょう……」
「そうですね」
「……あのように……むりやりに、きもちよくしてから『言え』とせまっておいてぇ……
どうせ、どうせあれいじょう抵抗しても、いつもみたいに、わたくしが従うまでずうっと嬲ったくせにぃ……嬲ってむりやり、言わせるくせにぃ……」
「たしかに無理やりでしたね……でも、姫さまの体がそのやり方であんなに悦ぶからですよ。
もういっそ、これで押し通します。今から姫さまが心を入れ替えられるまでおま○こを躾けますから。
ここまで体を出来上がらせちゃったのは初めてだろ。ち○ぽでいじめられたらすぐ天国を見られますよ。何回も本気のおま○こイキしながら、奴隷になるってもっと誓ってもらいましょうか」
「やめへぇぇ……! こわい、こわいのお、
おくひれ……おく、おくちで、しまひゅから……だから、もう、おま○こしないで……
おねがい……おねがいいたしまふ、もう気をやりすぎておま○こもあたまの中も溶けそうなのぉ……」
快楽の末にあるものが、本当に怖かった。膣口で亀頭を食いしばっているだけの今でさえ、すでに子宮がざわめいているのである。
奴隷だのなんだの、破廉恥で倒錯した、真っ当な状態で聞かされれば滑稽でさえある言葉。
あえてそれを言わせるのも言うのも、本来は「こういうとき」の遊びだとわかっているはずなのに。
わかっているのだけれど、今夜は責められすぎていた。
このまま続けて責めたてられれば、少年の肉棒に奉仕する専属奴隷になる契約を、遊びではなく本当に心から誓ってしまそうだった。
「おねが……あっ、いれるのはいや、な、なりますぅ、ちゃんとどれいになりまふから、
おま○こズプズプしてこないれ、いやよ、いやああっ、ゆるしてええっ!」
最後に子宮手前でいったん肉棒が止まり、それからのこったわずかな空間を押しつぶすように、一気に腰をズグンと突き下ろされた。
「うあああああっ!」
肉棒を食いしめる大陰唇が淫猥にひしゃげて歪み、肉棒と膣壁の間からぶちゅりと蜜が噴きこぼれた。
男の肉をくさびのように打ち込まれ、詰めこまれた精液でタプッと重みを増した子宮をぐちゅんと揺らされたのである。その一撃だけで、肉の奈落に突き落とされるには十分だった。
あまりに急激にもたらされた責めの切り替わりに、感覚の崩壊にも似た重い絶頂を一瞬で得てしまい、ひきつけを起こしたような震えがとまらない。
「……はっ……あっ……あぁ……」
指でも舌でもなく、本来の雄の器官での責めに、被虐に目覚めきった女体が異常に反応している。舌がこぼれて口が開きっぱなしになる。空気をのみこむかすれた音が響いた。
才人がひどく興奮した声で命令を降らせてきた。
「仕上げですから。心をたっぷりこめるようにして誓ってくださいよ」
言い終わると彼は――真上から腰を激しく使いだした。
限界まで発情しきったアンリエッタの先ほどまでの痴態に触発されてか、攻撃的な雄の動きだった。組み敷かれた女体が、まさに躾けの仕上げとばかりに激しく犯される。
絶頂に震えて引き絞る膣肉をえぐられ、奥の子宮を揺らされて、先ほどまでの深くも穏やかな官能が、みるみるうちに熾烈に炎上していく。
「ぅ゙ぁ゙っ、た、たすけて、はげしいのはいや、もういやああっ、
ひいい、なるといってるれしょう、どれいになりまひゅうぅっ!!」
「それ、しょうがなく言ってるんだよな?
もっと心の底から言えるくらいまで、ずっとおま○この奥でイかせてやるからなっ」
少年の腰とクッションの間でサンドイッチにされた桃尻が、苛烈な突き下ろしピストンを受けていく。
グチュンと一回突き下ろされるたびに、汗で濡れ光る尻の双球がクッションごと男の腰につぶされて、ムニュンと妖美に歪む。男の腰が引かれると、反発してプルンとはねあがる。
ピストンに合わせて、美麗な尻がまりのごとく柔らかく弾み、クッションの上でゆっさゆっさと上下させられるのだった。
「おま○こびくびくしっぱなしだっ、すごくいいですよ姫さまっ」
「うあ゙あ゙ああっ、おねが、やめてえ、イクうううっ、ひぐっ、ひぐっ、ああああっ……
……ど……『どれいになりたいです、うぁぁっ、おねがいっ、ならせてくださいまひぃっ』!!」
凄絶に極めさせられ続け、快楽の質は天国から地獄へと変わっていく。そのドロドロの肉の淫獄に落とされた、嬲られる美しい牝の叫びが流れる。
官能の濁流に耐えきれず、今まで教えこまれてきた卑語の知識を動員して、アンリエッタは男の気に入りそうな言葉を必死につむぎ、はやく責めを中断してもらおうとする。
「『あなたの精をいっぱい飲みますっ、おま○こでもお口でも欲求を解消させますぅ、なるって誓いまひゅ、ならせてえっ』!
もうゆるしへっ、ちかっているのにいいっ!」
「奴隷にしてほしくなってきたんだ? もっと言えよ、そのまんまイきながら誓いつづけてみろよっ」
爛熟しきった蜜壺を貫かれ、過敏な肉で男根を無茶苦茶なほどにしごかされている。
ただでさえ深く感じる最奥の子宮口周辺、そこの潜在的な性感を指で完全に目覚めさせられてから、亀頭に乱打されているのである。
これに比べれば、クリトリスをなぶられ続けたときですら手加減された責めだったと思えた。
膣壁へのひとこすり、子宮へのひと突きごとに絶頂に達して、秘肉が男のものを搾るようにきゅうきゅうと締まる。その締めつけで、少年がよりいっそう肉棒をしごきたててくる。
きつい絶頂のなかでさらに責められて、ひっきりなしに絶頂を重ねられていく。
「『なんでもします、いっしょうけんめいおちんちん搾りまふ、がんばって体中でご奉仕しまふぅ』、
ひぃ゙、あうううゔッ、ごしょうです、ごしょうですうっ、はやくみとめてええっ!
…………いやああ゙ぁっ、また深いの来たあああっ、来ないでえっ、ひっ、おかしくなるゔっ、頭のなかが変わってしまううっ、
あ゙ああ゙っ、あああああぁあぁああああああああッッ!!」
知りたくもなかったが、無数の絶頂の中でも、ときおり他より巨大な山だか谷だかが来るのである。
その絶頂の高度も、新しいものが来るたびに天井知らずにはねあがっていく。快楽の鞭で脳を鞭打たれ、パチンパチンと頭の中で大切な何かが破裂しているようだった。
「ダメえぇぇぇぇっ、あたまがこわれる゙ぅ゙っ……あ゙ーっ……あ゙ーっ……!」
「しょうがねえなあ、自分からもお願いしたんだからそろそろ認めてやるよ、
アンはこれから、えっちのときは奴隷だからなっ、俺のせーえき搾り専用の、さ!
おま○こでもお口でもお尻でも、お肉の穴でヤらしくち○ぽをグチュグチュおしゃぶりして、がんばって精液をヌくんだぞっ、
わかりましたっ?」
性運動で呼吸を荒げた才人の確認に、もう意味のある言葉も返せずガクガクと首を上下させる。
「それじゃ体位変えるから、ちゃんと腕を回してしがみついてなよ」
アンリエッタのひざ裏をおさえて二つ折りの羞恥体勢でかためていた才人の両手が、さらに腰の裏に回ってくる。
少女は背中に腕を回され、太ももごとがっちり胴体を抱きしめられた。
二つ折りのまま、樽(タル)でもかかえるようにして体を力強く抱かれたアンリエッタは、何を考える余裕もなく、言われるまま必死に男の首に双の腕をまわしてしがみついた。
彼女をかかえる才人の腕に力がこもり、結合したままぐいっと宙に少女の体が浮く。
そして一気にアンリエッタの体勢が変わった。男の下から男の上に。
少年がベッドに座りこみ、背中から倒れこんで寝そべったのである。
アンリエッタは自然と才人に密着した騎乗位になる……が、体位の急激な変化にともなう衝撃は、そんな言葉で言い尽くせるような生易しいものではなかった。
「ああああああああ゙ぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!!」
そそり立った肉棒の上に、勢いをつけてぐちゃんと桃尻を深く沈まされたのである。
少年の肉棒は一瞬で秘肉の最奥までを貫き、ぐちゅうぅぅっ――と子宮口を押しあげて止まっていた。亀頭が子宮を歪ませるほど深々と奥をこじる。
膣口の粘膜と肉棒の間から、ブチャッと熱い蜜液が飛び散り、とどめを刺された美尻がビクビクと痙攣した。
「ひぁ……あ……ぉ゙…………あ゙っ………………」
衝撃をともなった凶暴なほどの絶頂を、繊美な肉身に叩きこまれたのだった。
男にまたがって上体を倒れ伏せた形になったアンリエッタの、細くなっていた意志の柱が、完全にべきりと折れた。
体にイキ癖をつけられたのと同じように、いまでは心に折れ癖をつけられていた。
少年の胸板の上で、体のほかの部分と同じく震える舌と唇が、屈服の言葉を従順につむぐ。
「……ひ……ぃ゙……すごいぃ…………
……わた、わたくしぃ……おちんちん、おしゃぶり……いたしまひゅ……
………………ひぐっ…………ぁ゙っ……ぁ゙ぁー……」
「観念したみてーだな……奴隷になれてうれしい?」
満足げに問う真下の少年が、アンリエッタの尻房を両手でこねまわしつつ、ゆっくり腰を回し上げてくる。
膣肉を最奥までねっとりかきまわされ、亀頭で子宮口とその周辺の肉をコリコリ可愛がられる。今度は幸福感をともなう法悦が満ちていく。
白く焼けただれた官能をだめ押しされ、ずっと続いている肉の震えがビクン、ビクン、と大きくなっていく。
「………………ぁー……うれひ……うれひぃぃ……」
「お礼言えよ、『奴隷にしてくれてありがとう』ってな」
「…………ふ……ぁ……はひ……はい……どれい、……に、してくださって……、
………………あり……ありがとう、ございますぅ……」
「よくできました。これからは毎回言わせて確認させるからな。
そのかわり、この先もいっぱい天国を見せてあげますよ」
才人の手に頭を引き寄せられ、下から深くキスを重ねられた。男の舌に美麗な唇をねぶり分けられ、犯すように進入されて、ぴちゃ、くちゅりと舌をからめられる。
アンリエッタの虚ろに蕩けた瞳から、ぽろぽろと温かい涙がこぼれた。
我慢できない体の淫らさを容赦なく指摘され、性処理用の奴隷にすると通告され、責め立てられて無理やりに同意させられ、肉が灼熱して溶けるような官能に負けて自分から「奴隷にして」と懇願してしまい……
そしてとうとうお礼までも言わされた。
直視したら心が壊れそうなほど、屈辱的な状況だった。
だというのにあまりに嬲られたせいか思考が麻痺し、心が肉に引きずられて幸せさえ覚えている。本当に一度壊されて、男の肉に奉仕する奴隷に生まれ変わらされた気がした。
気がつけば口づけに応えて、自分からも柔らかく舌をからませさえしていた。
隷従の誓約を交わすような、深い口づけに溺れこんでいく。
…………………………
………………
……
……ようやくキスが終わると、アンリエッタは体の力を抜いてくてりと上体を突っ伏させた。茹だった体にピクピクと痙攣が走っている。
双の細腕を少年の首になげかけて抱きついたまま、恍惚としきって桃源郷をさまよう声をもらす。
「……んみゅぅ……」
「あは、気持ちよさそうに全身ほかほかに温めちゃって……ほんと、どこもかしこもすっかりトロトロになってる。
そうか、姫さまずっとイってたらこんなふうになるのか……なんか完全にエロ堕ち状態って感じだなぁ。
ほんと幸せそうに溶けてら」
疲労と濃い甘ったるさの中で才人は、抱きかかえたアンリエッタの耳元で感想をつぶやく。
と、そこでとろけきった少女が、かろうじての態で声を発した。
「……………………られの……だれのせいだと、思ってらっひゃるのぉ……ばかあ……
…………こんらにぃ……こんなに好きにされて……終わりがないほど、気をやらされてぇ……、
……今夜などぉ……休まひぇてもくれなかったでは、ありませぬかぁ……
……こんなひどい……きもちよくてひどいこと、ずっとされていたらぁ……女なら、だれだってぇ……」
なじられて才人が少々、ばつのわるそうな顔になった。どうやらさんざんに女体を玩弄しつくして、さすがに嗜虐心を満たしきったらしい。
そうなると本来、彼はわりと常識的な人間なのだった。
「その、あー、なんていうか、案の定というか、俺やっぱりやりすぎましたね。
いつものことだけど、今夜はいつもに輪をかけて」
「…………じぶんで、いってたら、世話ないれひょう……
……あなたが、それにきづくのはぁ……いつも、あとからで……
………………限度というものを、はるかに、とおりこひてからなのですぅ……」
「な、なんていうか申しわけも。
いやあ、やってるうちについスイッチが入りっぱなしになるというか」
「…………ばかぁぁぁ……………………」
恨みがましい内容のつぶやきだったが、アンリエッタの声音は甘く蕩けたまま戻ってくれない。
硬い肉棒がまだ胎内に挿入されたままであり、いまは動かされていないとはいえその感触が少女の肉体から抵抗を奪う。「ふあぁ……」とふやけ声を出す唇は、物憂く濡れてゆるんでいた。
アンリエッタは少年の肩口にことんと頭を落とし、あらためて才人の首に腕をからみつけて抱きすがった。
才人のほうも、いまさらながら壊れ物を扱うように抱きしめる。
彼は、しがみついてくる少女の火照りきって汗に濡れた体を受け止め、肩口にふりかかる乱れた髪を優しい手つきで撫でた。
アンリエッタのむずがるような甘えきったような鼻声が少年の耳に届く。才人は感想をつぶやいた。
「こうなっちゃうと、なんだか赤ちゃんみてえ」
と、その言葉が肉色にぼやけたアンリエッタの意識にとどいた。
少女は緩慢ながら首を起こしてぼんやり才人を見つめる。
「………………んぅン……ふわぁ……………………あかちゃん…………?」
「ん?」
「……やや子……あなたのぉ……? ……さずけてくださるの……?」
「……へ? いや、なんだか話が飛ん」
「……ちょうだぁい……あなたの子が、ほしいのです……ン……」
「さ、さずけてとか言われたって」
「……わたくしぃ、ここまでしました……むりやりきもちよくされて、どれいになるなんて言わせられてぇ……」
「その、あの……実はひっそりキレてたりしますか」
「…………もういいの……奴隷にだってなんだって、もう、あなたの望むとおりになってあげますわ……
だから、そのかわりに、さずけてもらうのです……」
長時間快楽責めを受けつづけ、もう限界というところを何度も超えさせられたアンリエッタは、崩れきった甘え声でおねだりしている。
肉の喜悦に頭からつま先まで惑溺させられ、心までゆるみきってしまっているのである。
ルイズと「どっちが子供を授かるか」という賭けをしたときに「気取られるような発言は厳禁」といましめあったことも思い出せなくなっていた。
狼狽している才人の首を巻きしめたまま、アンリエッタは横から顔を寄せて、少年の肩から横顔、首筋までにキスしはじめた。
愛のしるしを残そうとするやや強めの口づけで、ときおり軽く歯を立てて甘噛みさえしている。
キスマークを付けられていく才人が、くすぐったそうな声で抗議した。
「なあ、ちょっと、自分は『公務があるから人の目につくところに付けるな』って言ってるくせに!」
その抗議が耳に入らない態で、ちゅっちゅっとアンリエッタは唇でのマーキングを続けながらおねだりを繰り返す。
「ねえ、おめぐみくださいまし……きちんとそだてます……」
一方の才人はこのとき、とにかく流される前に何か言うべく、あわて気味に思考を回転させている。
「あなたの子供がほしい」と望まれて、それは感動しないわけではないが、さすがに大ごとすぎないか? と彼は心配したのであった。
相手が相手だけに、行き当たりばったりで子供を作ってしまえば、周囲からの怒声は「計画性がない」くらいですむはずがない。
「あのですね、姫さま、そうまで言ってくれるのはそのー、男としてはうれしいんですが……
コドモってのは急にできちゃったら色々と……、ええっと、どうやって育てるかみたいな問題も考えなきゃ」
表情がとろんとしっぱなしのアンリエッタが、男の頬をついばむ麗しい唇を開いて答える。
「しっております……
ちゃんとまいにち、だっこして、おちちをあげますぅ……」
「い、いや、そういう育て方のことを言ってるわけじゃねえんだけど」
「立場上、いろいろと懸念があるのでは?」と続けようとして、才人は口をつぐんだ。
どのみち水魔法に関連する避妊薬の調合は、アンリエッタ自身に任せているのである。彼が心配してもどうにもならない。
(やっぱり今夜は追いこみすぎたなあ……姫さま、溶けすぎてすっかり正気がトんでら。
……まあ今はいいか。時間を置けばそのうち判断力が戻るさ)
でも今は今で本気で言ってくれてるんだろうなあ、と才人はしみじみした感慨を抱いた。続いて(なら、このくらい付き合ってあげるべきだよな)と考える。
もともと色々とためこんでいるアンリエッタである。こういう時ぐらい、何も考えず酔い痴れることも彼女には必要なのだろう。
そんなことを思いやる少年は、アンリエッタとルイズが互いの家を巻き込んで共謀していることを知らないのだった。
国内第一位と二位の家門が結託して、陰に陽にフォローしあえば、たいがいの無茶は通せるだけの力を持てる。
君主の後押しがあれば、大貴族の三女でも『元平民の成り上がり貴族』との結婚がスムーズになるし、周囲の白眼視も(少なくともおもてだっては)減る。
王その人の結婚ははるかに自由度が低いが、大貴族の筆頭家門が味方につけば、望む縁談がより容易になるのは間違いない。『英雄』の才人となら可能性はある。
そこで幼なじみ同士の二人の少女は、王家とラ・ヴァリエール家の非公式な同盟を強化しがてら、「どっちが先に既成事実を作れるか」という賭けをしたのである。
賭けに負けたほうは、恨みっこなしで勝者が才人と結婚することに協力する。ただし負けたほうも才人を愛人にするか、才人の愛妾におさまるという寸法だった。
計画性がないどころか、ある意味ではこの上なく計画的(と言うより策略的)といっていい子作りだった。
――もっとも快楽にふやけた今のアンリエッタに、そんな思考をあらためてめぐらす余裕はなかったが。
「この人の子供がほしい」という純粋な望みを、心と本能が切実に訴えているだけである。
どうせアンリエッタはいつかは世継ぎを産まねばならないのである。年若い女王には国民の期待を背負い、結婚して王家を継ぐ子供を宿す義務があった。
けれど彼女とて、出来るなら望んだ男を選びたかったのである。今回のことは、これが一生で最後のわがままとまで思いつめてのことだった。
そういうわけで、才人が「姫さま、出すのでゆっくり動きますよ。俺もこれで最後ですから」と呼びかけたとき、アンリエッタは蕩けた美貌をほころばせたのだった。
「おめぐみくださるのぉ……ふぁぁ……うれしい……」
「うん、まあ、とりあえず、最後までしっかり奥で出してあげますから」
「……あぁ、でもぉ……ほんとうに、ゆっくり、ですわ……
いま激しくされたら、しんでしまうぅ……」
「はいはい、今夜はこれ以上いじめたりしません。約束します」
背中を抱きしめていた才人の両手がアンリエッタの下半身のほうに下りていき、双の尻房をつかむ。
彼は引きつけるようにして、上向いた肉棒にさらにぐぐっと少女の腰を沈ませた。
亀頭を子宮口に食い込まされ、のどを反らしてうわずった叫びをあげている少女に、才人が低い声でささやく。
「ち○ぽの先が、コリコリした子宮の入り口にしっかり当たってるのがわかるだろ?
これでゆすゆすしとくから……って、もう?」
かけられた声も耳に入らない態でのけぞって鳴いているアンリエッタの、茹だった汗まみれの全身と男に貫かれた蜜壺に、予兆となる痙攣が始まっていた。
下から男の腰がゆったり動き始めると、声にまじった艶が加速度的に濃度を高めていく。
「……ぁぁぁぁっ……ぁぁあ……イ……く……」
才人がまた頭を引きよせて深く唇を奪った。
少女の腰がブルッと震え、同時に結合部のすぐ上でピュッと液体が弾け、こすれあう恥毛が生温かく濡れそぼった。
ゆるかに絶頂の痙攣を走らせつつ背をくねらせる少女を抱きとめて、さんざん舌をしつこく吸いたてた後で、才人はようやく唇を離した。
「……ぁ……ぁ……」
「キスほんとに好きですね、唇重ねたとたんにちょっとだけお潮漏らしましたよ。出尽くしたと思ってたけど、軽く溜まっちゃってたんだな。
姫さまも自分で動いてみなよ、ん、そう、体を前後にすりつけるようにして」
また白い領域に連れ戻されたアンリエッタの空白になった脳裏に、才人の声が深く浸透した。
彼女はその言葉にしたがって体を動かし、前後に体を揺すりはじめた。
丸太にまたがって伏せる動物のような、四つんばいの騎乗位で動く。
双乳を才人の胸板でムニュとひしゃげさせて、柔らかく押しこねまわす。豊潤な乳肉が少年の胸の上でくんにゃりつぶれ、温かくやわらかな感触をタプンと円く広げている。
(……おちち……おちちも、きもちいいぃ……)
それをむにゅりむにゅりとすりつける一方で、切なく蕩けて堕ちた表情で男に甘え、吸ってとばかりに舌を伸ばしてしまう。
アンリエッタの腰の後ろで才人が両手の指を組みあわせ、しっかり引きつけて逃げられないようにしてから、キスと同時にねちっこく腰を回し上げてくる。股間の密着度が増しているため、クリトリスまで男の恥骨のあたりでこすりつぶされた。
望みどおりに舌を吸われながら男の恥毛に肉豆をズリズリとこすられ、少女はあっさり淫楽の極みに達し、悩乱して男にしがみついた体を揺すりたてる。
豊かな乳房ごと男の肌でこねまわしていた両乳首をつままれ、密着した胸板の左右に引っ張りだされて指でクニクニ嬲られた。快楽曲線が下降しないうちに、両胸からの性感でも官能が灼ける。
「……ィきます…………ずぅっと……どろどろになるぅ…………
………………して……くちづけ……もっと、してぇ……」
連続した絶頂に、唇を重ねられていないときは「イクう」と可愛らしく鳴き続けた。ほどなくアンリエッタは、男の肌とこすれあう体のどこの部分で絶頂を極めているかもわからなくなった。
どれだけ手加減された優しい責めでも、崩落の淵まで性感を煮込まれた少女には十分すぎるくらいだったのである。
白くも濃い絶頂の高波がゆるやかに重なり、くりかえし肉体を洗って心を漂白していく。
全身を薔薇色にして、眠げに瞳をとろりと半分伏せながら、温かい涙をこぼして才人まで濡らす。
「ひぐっ…………ゔー……」
「んっ……ち○ぽの先を子宮口にコリコリなすりつけてたら、俺も腰の裏っかわ痺れるくらい気持ちいい……
もう少しで終わりますから、姫さまがんばって。そのまんま体揺すってイってるだけでいいからさ……」
「……ふぁい……ひふっ、ちゅぴ……」
キスしながらくちゅん、くちゅんと子宮を小突かれ、最奥まわりの肉をカリで掻くように責められる。
そのたびにアンリエッタの瞳の焦点はますますぼやけ、脳裏は灼熱したままどこまでも虚ろになっていく。
いじめられる悦びをしっかり覚えこまされた体が、肉のゆりかごの上でしとどに汗に濡れ、女の高みを静かにむさぼる。
少年に与えられるこの強すぎる快楽に、頭で望もうと望むまいと、アンリエッタの肉体は完全に病みつきになっていた。
才人のなすがままにひざまずき、美しい肌に触れられればとろとろに溶け、身も心も尽くしてしまう。
まだ年若いのに性感神経がすみずみまで発達し、官能の魔力に首輪をはめられてしまっている。
深すぎる悦びに泣き叫ぶのに、一方で中毒しきってしまい、もうこれなしでは生きていけないとさえ感じる。
だから逃げられない。
はじめて抱かれた時からエスカレートしていった末に、いまでは何度絶頂に達しても、気絶してさえも許してもらえないようになった。
この先もきっとどんどん深みに堕とされていく。
それは、ひどく甘美な絶望だった。
それに――肉の悦びだけではなかった。
ふだんは女王の仮面の下に押しこめてある素顔。才人はそのもっとも弱い部分を見せられる相手だった。
そんな相手にぎゅうっと抱きしめられるようなやり方で支配され、自分自身をゆだねきって隷属してしまえることが、深い奇妙な安らぎを生み出していく。
「す、き……」
何度目かのキスの合間に、ぽろっとつぶやき声がもれた。
汗でぬるぬるになった乳房をムニムニとつぶし、才人の首をいっそう強く抱きしめてすべらかな頬をすりつけ、あえぎと共に告白する。
「……あなたにくちづけしてもらうのがすき……だいてもらうのがすき……」
仕事でためてきた心労や重圧すべてが、理性とともに濃密な肉の幸福のなかで溶かされていく。
「……いじめられてもすき……すきぃ…………」
才人の肉棒が射精の予兆をしめしはじめた。
それを胎内の最奥で感じ取るアンリエッタの美尻も、もぞもぞと切なそうにうごめく。熱い汗がなまめかしい二つの球面を伝わる。
「姫さま、出しますよ……」
才人が告げて腰を突き上げ、子宮口の中央のくぼみに亀頭をぴったりと押し付ける。少年は子宮内部へ通じる小さな穴に鈴口を密着させ、最後の射精を始めた。
トクン、トクン、トクンと、心臓の音に合わせるように男の肉が脈動する。
亀頭にヌルヌルクリュクリュ撫で回されて絶頂漬けになっていた子宮が、精液をトプトプと注がれていく。
「ぁぁ――ああぁぁぁぁぁぁ…………」
アンリエッタの恍惚の声が波紋のようにさざめいて広がる。あまりにも濃密で、それでいながら静かで澄みとおった快楽だった。
連続絶頂さえ越えて、官能は白熱の状態でとどめおかれていた。切れ目どころかむらさえない、深く達しっぱなしの状態。肉に感応して魂が、光の色に溶けていく。
精液のかたまりが男の尿道を押し広げて肉棒内部を上ってくるたび、少女の尻は小さくヒコヒコと上下して優しくしごきたて、吸い上げるように放出を助けみちびいた。
種付けされる美しい牝となって、蜜壺で男の肉をねっとりとしゃぶりぬき、本能にまかせて桃尻を揺すり、精液を残り汁までせがんで搾りつくしていく。
少年の上に伏せたなめらかな背から、淫気がたちのぼる。
忘我の状態で、いつのまにか指をからめ合わせて互いの手のひらを重ねていた。
融け合った心と心がかわす、思慕のささやき、
わななく手と手の、触れて圧す力――
ややあって精の放出が終わり、肉棒の脈動が止まりきっても、身動きもならず彼に身をあずけたままアンリエッタは荒くあえぐばかりだった。
「はっ、はぁっ、ひぃ……はふ、はーっ……ンぅぅ……はぁぁ……っ」
夕日の色になった少女の耳たぶを飾る、ガラス細工のレモンの花が、きらめきながら揺れている。枕元の本物の花は風にそよいでいた。
才人もまた深い満足を得て、呆然とした感さえある口調でつぶやいていた。
「すげえ、良かったぁ……」
「…………ぁひ……ぁ……ぁン……ぁぁ……」
火照りきった呼吸で歌をつむぐ少女は、その言葉にまともな返事もできず、男の胸板の上で涙をこぼしてとろけきっている。
その後はもう、二人ともに何も言わなかった。
指一本動かすのもおっくうなほど疲弊しきりながらも、妙に安らかな気分に満たされていた。言葉がこの安息を壊してしまいそうで、ともに口を開かなかったのである。
最後に軽く何度か口づけを交わして、頬をすりあわせてから、目をつぶって快い眠りへと落ちていく。
お互いの肌の濡れた熱さのなかで、くっつけた胸から重なる鼓動が、命そのものの音で子守唄をつとめている。
天使の鳴らす鐘のように、ベッドの上には重厚な余韻と幸福感が静かに響いていた。
…………………………
………………
……
翌朝。
カーテンが開かれ、新鮮な陽光が室内に満ちていた。
とっくに二人とも朝湯をすませて服を着ている。
それはいいのだが、女王は柳眉を寄せ、寝室の中央にずっと立って手にしたものを見つめていた。
それは火種の尽きたらしき香炉である。
ベッドの下にあったのを偶然、起き抜けに才人が見つけたのだった。
首をかしげて受け取り、中身を調べはじめたアンリエッタの顔色がどんどん変わっていったのである。
わなわなと震えて一言も発しない少女に、才人はおそるおそる「何ですか、それ?」と訊いてみた。
頭痛をこらえるような表情のアンリエッタが、嘆かわしげに首をふる。
「……わたくしも初めて見たのですけれど、たぶん王宮秘伝の香でしょう。
代々、製法は離宮のほうにも伝えられていると聞いてはいたけれど、ここで見るとは思わなかったわね」
なんだかおかしい気はしていたわ、と苦々しげに一人ごちているアンリエッタに、才人は続けて注意深く訊いてみる。
「どんな効果が?」
「いえ、それは……結婚した王族のつとめを助けると言いますか……
ええと、世継をさずかるための雰囲気を作り出すと言えばよろしいでしょうか」
「……委細わかりました」
まどろっこしい説明だったが、才人にも即座に理解がおよんだ。
言いにくそうに顔を赤らめるアンリエッタの様子と照らし合わせると、一目瞭然である。
つまりその気になってしまうらしい。発情香とでもいうべきものであろう。
そういえば心当たりはある。
いつからかははっきりわからないが、この寝室で嗅覚がいつもと違うかすかな匂いをとらえていた。
いまにして思えばあれがこの香だったわけである。
その匂いを感じていたここしばらくのことを回想すると、さらに納得できる。
(なんか最近は二人とも頭がエロ色にふやけてたもんな。
それでも、俺は昨日まで四日間ほどこの部屋から離れてたけど、ずっとここで寝起きしてた姫さまはたまったもんじゃなかったんだろうな。だから昼間から求めてきたりしてたのか。
俺もアレとかコレとかして……ちょっとただれすぎてたよなあ、ゆうべとか特に)
つい頬を熱くしてしまった才人だが、手の中の香炉に目をおとしているアンリエッタは、それに気づいていない様子で説明を続けている。
「見たところいちおう竜涎香と麝香がベースのようですが、そのほかにも水メイジのわたくしにも見当がつかないほどさまざまな原料が入っております。
心をあやつる『ほれ薬』とは微妙に違いますが、市中に流出したらやはり禁制品扱いになるでしょう。原料だけでもすでに、いくつか禁制品が使われていますから。
それにしてもあの人たちはなんという……主君のわたくしにこんなものを……」
間違いなく、この離宮でアンリエッタの身の回りにいる者の仕業だった。
おそらく離宮付きの侍女の誰かだろう。
召使たちは女王のプライベート空間に踏み込まぬよう、一日の大部分は離宮中心から遠ざかっているとはいえ、毎日の部屋掃除の時間などにいくらでも機会はある。
その誰かは「陛下の恋を応援してさしあげよう」とでも思ったのだろうか。
発情する淫香を、男といるときにひんぱんに部屋に差し入れるとは、なかなかに素敵な仕事をしていると言えた。
本来なら熟考の余地もなく「探し出してクビ」が妥当な結論である。
だが、とりあえず才人はその誰かのフォローに回った。
「ま、まあまあ、毒じゃないんだしたぶん親切でやったことだし……」
「親切? その親切でわたくしはこの休暇のあいだ、あ、あのような……」
さっきの才人のように、昨夜までのことを思い出したらしく、ぼっと火を噴きそうなほどアンリエッタの顔が真っ赤になった。
自身の痴態を思い返すだに、身の置き所もない羞恥がよみがえるらしい。
怒りと恥じらいを交互に表情に浮かべ、かなりうろたえているのか才人の目も忘れて行儀悪く爪を噛んでいる。
うーん、と才人は考えこむ。
(その前に、おもいっきりバレてるほうが問題じゃねえかなと思うんだけど……
今は置いといてとりあえず、どうやってなだめたもんか)
誤魔化したほうがはやいかな、と思い当たったとき、とっさに言葉が口をついて出た。
「あのようなって、あれほんとに全部そのお香のせいですか?」
才人の言葉に、アンリエッタがきょとんとした。
「え?」
「い、いや……そのですね……」
思いつくまま言ったはいいが、よく考えれば言葉の選択を間違えた気がする。
とはいえ、いまさら後にも引けない。覚悟するように唾を飲みこむと、才人は一歩前に踏み出た。
「あれだけ恥ずかしいことをしちゃったもんで全部、お香のせいにしようとかしてませんか?」
その言葉を受けて、アンリエッタの頬が真っ赤に燃えた。
「な、何をおっしゃるのですか!」
「だってよ、そのお香の効果って『気分を盛り上げる』ことなんでしょう?」
声を低めてそう言いながら、歩をさらに進める。女王のそばに引き寄せられるように足がなめらかに動く。いつのまにか才人は身をすくませたアンリエッタのすぐ前に移動していた。
アンリエッタは固まっている。生々しい指摘とあわせて、急に男に近寄られたことで思考がショートし、とっさにどんな反応をとるべきか混乱したようだった。
その赤い小顔を見ているうちに、才人の胸にさらなる妖しいうずきが起こっていく。
気がつけば手を上げて、アンリエッタの頬に添えていた。少女がびくっと震える。
その反応に突き動かされるように、才人の口は自然と言葉をつむいでいた。
「姫さまから誘ってきたのはそのせいだとしても、えっちのときのカラダの反応はありゃだいぶ地だよな……」
頬を手のひらで包まれて顔を上向かされたアンリエッタは、口を閉じ開きしている。怒ろうとして失敗した表情になっていた。
男にのぞきこまれたその瞳が、見る間に情感をたたえて濡れていく。
伸びた才人の腕におずおずと手をかけ、長いまつ毛を伏せて、アンリエッタが力のこもらない声で抗議した。
「やめて……そんなことは……」
「違うって言うんですか」
そう囁きかけながらも、かすかに才人は自身に違和感を感じる。
少年はこのようなふるまいを、以前よりもずっと自然にできるようになっている。
というより、アンリエッタの見せる「女」の表情を前にすると、いまでは体がなかば自動的に動くのだった。
ほんとうは自分が主導権を握っているのではなく、眼前の少女の瞳に魅入られて操られているのだ、という気になってくる。
室内の空気の温度と密度が高まった気がする。
どちらからともなく顔の距離がせばまっており、唇に互いの息がかかっていた。
ふいにアンリエッタが首をかすかに振った。拒む両手が、少年の胸板を押す。
「サイト殿、い、いけませんわ、もう日が昇っておりますからつつしまなければ……」
「あ。し、失礼しました」
狼狽するアンリエッタの制止は、きっぱりした語調とはとても言えなかったが、目が覚めたように才人はぱっと離れた。
うなりながら彼は、自分の紅潮した頬を軽く叩く。
あのまま雰囲気に流されて唇を重ねてしまえば、それだけでは済まなかったかもしれない。まさに直前で引き返したのだった。
(怒りの矛先をうやむやにするだけのはずなのに、何やってんだ俺)
今でこそ行為の間は嗜虐的な傾向が表に出てきてしまうが、もともと性癖はそう歪んでいなかったのである。自分自身の変化に嘆かざるをえない。
ふと才人は、自分のほうをじっと見ているアンリエッタと視線が合った。
彼女のうっすら染まった頬と、静かに潤んだ美しい瞳の奥に、先ほどの妖しい雰囲気の名残がある。
吸い込まれそうな感覚を覚え、才人は強引に目をそらした。その目を見ていると、また彼女の危ういほどの色香に呑まれかねない。ぐらりと理性がかしぐのである。
情事をかさねるたび、徐々に彼女の色に染められているのは自分のほうかもしれない、と才人は思わざるをえないのだった。
…………………………
その一方。
高まった鼓動がなかなか落ち着いてくれない胸を押さえつつ、アンリエッタも才人に体ごと背を向けた。
もうどちらからも視線を合わせることはない。
室内に恥ずかしく気まずい、けれどなぜかもう少し浸っていたいと思ってしまう、不思議な静けさが満ちている。
その甘酸っぱい沈黙は、恥じらいまじりの情だけではなく、ひそやかで淫靡な雰囲気をはらんでいる。
濃い夜を共有した男女特有の、大人びてしっとり湿った想いを、いまも背中ごしに分かち合っていた。
立ちつくしながらもさまざまな情感があふれ、そのなかに名残惜しさもある。
休暇は今日で終わる。午後にはこの離宮を発つ。召使いたちは今から荷造りにとりかかっているはずだ。
(いろいろあったけれど)と思いながら、少女はあらためて目元をほんのり赤くして、そっと下腹を撫でる。
まだ昨夜の強烈な悦楽の余韻が残っている気がする。
が、それだけではない。彼女にはある予感があった。
あれだけ中に出されたのだ。
もしかしたら……
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余談。
数月後のこと。
アンリエッタの妊娠にともない、「子作りで勝負していました」という予想外の真相をようやく知らされて真っ白になった才人だった。
しかしその横では、ルイズのほうがさらに深い衝撃に打ちのめされている。
八割方勝てると見こんだ「どっちが先にサイトとの子供ができるか」という賭けに負けたのである。彼女にとっては、まさかの敗北だった。
涙目で地団駄を踏んだルイズだったが、彼といっしょに過ごす時間はこちらがずっと多いという有利な立場を生かせなかった以上、言い訳のしようもない。
才人が女王の離宮から帰ってきた後、それまであったぎくしゃくは解消されていたし、以降は夜のいとなみもそれなりにいたしてきたのだが、まだまだがんばりが足りなかったと言われればそれまでのことである。
そして魔法学院の寮、ルイズの部屋。
才人はベッドの上、後ろ手に麻縄でしばられて壁にもたれ座っている。
青い顔の才人のまえで、椅子にルイズが座っていた。運命の無情を罵倒することに疲れきった表情で、目だけが据わって覚悟完了の光を放っている。
ルイズがぼそりと言った。
「わたし、つい先日ちいねえさまに聞いてみたわ。
なんで同じことしてても姫さまには子供ができて、わたしにはできないのって」
「あのなルイズ、こういうのは授かり物だから、ちょっとすぐに出来なくたってしょうがないっていうか……」
ある意味で女の子たちにはめられたためこういう事態を迎えている才人だが、いかんともしがたい。
けんめいにルイズを慰めざるをえないのだった。
ルイズが押し殺した声で答える。
「そうね、ちいねえさまもそう言ってたわ。
……それから、姫さまにも似たようなアドバイスをいただいたわ。
二人ともあんたに『もっと甘えましょう』って」
ルイズは姉だけでなく、妊婦用の揺り椅子に腰かけて満足そうにお腹をなでている恋敵にまで、「赤ちゃんを授かる秘訣」を訊いてきたのだった。
わらをもつかもうと焦るあまり、プライドをかなぐりすててヤケになっていたのである。
いつかも三人で添い寝して語りあった少女たちだったが、話題が微笑ましげながらまったく笑えないという状況はこれまでなかった。
カトレアもアンリエッタもこれにはさすがに困り、なだめつつ「サイト殿にもっと素直に寄り添ってみたらどうかしら」と付けくわえるしかなかったのだった。
無論、もっといっぱいしてもらいなさいな、という意味である。
「さ……左様で……」
「あんたにわかるのかしらこの屈辱。
ほんとはね。あんたなんか今すぐ大きな鳥カゴに入れて、そこの窓から外に吊るして、カラスにつつかせて雨風にさらして、白骨がカラカラ鳴るまで日光で漂白してやりたいくらいよ。
けどね、素直にならなきゃ駄目って言われたもの……これ以上に差をつけられてたまるもんですか……どうしても早く子供つくらなきゃ」
「いや……あの……そんな思いつめなくても、要するに仲良くしてアレをがんばればいいだけで……
ルイズ? ところで気になってるんだが、その小さなテーブルのうえの怪しげな薬品類と香炉はいったい?」
「ちいねえさまから繁殖期のペットに使う薬草エキスをもらってきたわ。妊娠しやすくなるおまじないみたいなものだって。
で、こっちはモンモランシーにもらってきたほれ薬。こうでもしないと今すぐ気分を和らげたりなんてできないからね。
わたしがどんな、その、いかんともしがたい状態になっても調子に乗るんじゃないわよ。今回は前もって解毒薬を用意しておいたから、適当なところでわたしに飲ませないと本当に殺すかんね。
それから最後にこのお香。なんだかわからないけど、姫さまが持たせてくれたわ。王宮特製だっていうから何かの効果はあるのよね」
「ちょっと待てぇっ! 止めろ! 力技すぎるというかほれ薬と香の組み合わせが危険だ! あ、おい、待っ、よく知らないくせに香炉に火を入れるんじゃない!
ああ薬いっぺんに飲みやがった! え? ほれ薬は俺もいっしょに飲むの?
っておまえはバカか、この閉じきった部屋で両方メロったら、このあと誰が俺たちに解毒薬を飲ませるんだよ!? 帰省中のシエスタがここに帰ってくるまで発見されなかったらどうする!
な、なんだよルイズ急に……口移し!? もう効いてる! やめろこら飲ませようとするな!
この部屋からしばらく出られなくなる予感がひしひしとしてきた! 『当たる』までやる気か、おいっ、聞けっての、むぐ、んぐ、んむっ、んく……!」