33-459
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:08 (5635d)

犬竜的日常 スカトロ編  205

・注意!
 このSSには、小学生レベルの下ネタが含まれます。

 

 

 魔法学院学生寮の物陰に座り込み、才人は一人悩んでいた。
 今日の朝、食堂で、ルイズの誕生日が近づいてきたが、プレゼントは用意してあるのか、
とギーシュから聞かれたためである。
 用意もなにも、そのとき初めてその事実を知ったため、才人は非常に驚いた。
(ああそうか、それでルイズの奴、なんか最近そわそわしてやがったのか)
 まずい展開である。才人は動転しつつも、近いってどのぐらいだ、と、ギーシュに聞いた。
 そしたら、
「何だ知らないのか、もう一週間後だぞ」
 という答えが返ってきたので、思わずギーシュの色男面を殴り飛ばしてしまった。
 その後彼と殴り合いをしてシュヴルーズに説教食らったりして、今に至る。
「参ったなあ、何買ったらいいのか分からんし、そもそも何か買う金もないし……」
 騎士としての年金は、いろいろあって使い果たしてしまっている。しかも、なんとなく
格好悪い気がして、そのことをルイズに伝えてはいない。
 彼女のことだから間違いなく「支給された給料でわたしへの誕生日を買ってくれるだろ
う」と決めつけているだろうし、ここ最近のどことなくそわそわしたルイズの様子を思い
出すに、
「サイトったら、わたしを驚かせるためにわざと誕生日のこと話題に出さないでいるのね」
 だとか、
「敬愛するご主人さまであるわたしへの、初めてのプレゼントだもの。きっと素晴らしい
ものに違いないわ。そうでなかったら蹴る。砕く。すり潰す」
 だのと考えているに違いない。
(えらいこっちゃ)
 思わず股間を押さえて顔をしかめながら、才人は必死に打開策を探る。
(どうする、誰かに金借りるか?)
 頭に浮かぶ友人たちの顔。
 ティファニア。普通に金がないし、あったとしても彼女から借りるのは心が痛む。却下。
 ギーシュ、モンモランシー。ダメだ奴等の実家は貧乏だ、ルイズを満足させられるほど
のプレゼントを買える金を、貸してくれるとは思えない。
 タバサ。ダメだ、国から追われてる身の女の子から金を借りるなんて、どう考えても人
間のやることじゃねえ。
 キュルケ。確か先生に珍しい実験材料貢いでるって噂があるから、多分金なんか持って
ないだろう。
 シエスタ。ある程度は持ってそうだがさほど大金ではないだろうし、彼女から金なんか
借りたら「10倍にして返してやんよ」とか言って競馬でスッカラカンになるダメ男みたい
な気分になるのは間違いない。無理。
 マリコルヌ。論外。奴に金なんか借りたら人間として終わりだ。
(参ったなあ、他に頼めそうな奴なんか)
「あれ、サイトじゃないか」
 少し驚いた声に顔をあげると、そこに眼鏡をかけたやせ形の少年が立っていた。才人の
友人であり、主に水精霊騎士隊の経理を担当している真面目な少年である。
「おお、レイナールか」
「なにやってるんだい、こんなところで」
 不審そうに眼を細める彼に事情を説明しようとしたところで、才人はふと思いつく。
(そうだ、こいつに借りればいいじゃん)
 堅実そうなレイナールならそこそこ金を持ってそうだし、真面目だから口も堅いだろう。
そう踏んで、才人はレイナールに事情を説明した。
「……というわけで、金を貸してくれないか」
「……サイト」
 レイナールは、暗い表情で眼鏡を押し上げた。
「悪いことは言わないから、人から金を借りるのだけはやめておいた方がいい」
「え?」
「僕の親戚の話なんだがね。家の金を家族に無断で使い込んだ挙句、金貸しから借りま
くって利子が膨らんでとうとう破産して、最後は魔法実験の実験台にされた挙句その肉は
竜の餌に」
「分かった、もうその辺にしておいてくれ」

 聞いている内に気が滅入ってきたので、才人は無理矢理レイナールを止めた。深く、溜
息を吐く。
「お前もダメか。となると、どうするかなー」
 唸る才人を見て、レイナールがまた眼鏡を押し上げた。
「別に、人から借りなくてもいいだろう」
「と言うと?」
「労働せよ、ということさ。そうだな、君の場合腕っ節が強いし、用心棒なんかどうだい?」
「時間はあと一週間しかないんだぜ?」
「ふむ。それなら魔物退治なんかはどうだい? 近くにオーク鬼が出没したから退治して
ください、なんて話は、辺境の村なら結構あると思うが。まあもっとも、そういうのは」
「それだ!」
 才人は話の途中で駆け出していた。なにせ時間はないのだ、善は急げである。

 そして六日後。才人は野菜がいっぱいに詰まった籠を抱えて帰還した。
「どういうことだ!」
「そう言われても」
 水精霊騎士隊の詰め所に怒鳴り込むと、中にいたレイナールが困ったような声で言った。
「なんでそんなにたくさん野菜ばっかり持ってきたんだね? 畑仕事の手伝いをしろとは
言ってないが」
「バカ野郎お前、この6日間で俺がどんだけの数のオーク鬼切り倒したと思ってんの! 
100や200じゃ数え切れんぜ!?」
「さすがアルビオン戦役の英雄、噂に違わぬ大活躍だね」
「おうともよ。群がるオーク鬼を千切っては投げ千切っては投げ……じゃない。とにかく、
なんでそんな苦労した報酬が野菜なんだよ!?」
「だから、そういうのは実際あまり金にはならない、と六日前に云いかけたんだがね……
貧しい村だったんだね」
「そうなんだよ。ありがとうごぜえますありがとうごぜえますとか、よぼよぼの爺ちゃん
婆ちゃんが目に涙溜めてお礼言いながらこれ差し出すもんだからさ、今更『こんなもんい
らねえから金出せ』とは言えなくてよ」
「それ言ったらマリコルヌ以下だぜ君は」
「だから言えなかったんだよ」
「しかし野菜か……金にはなりそうもないな」
「そうなんだ……しかも試しに食ってみたらやたらうまくて、尚更複雑だぜ……」
「万策尽きたねこれは」
「そんな! このままじゃすり潰されちまうよ!」
「何を」
 才人は頭を抱えてその場に蹲る。レイナールの言うとおり、万策尽きたらしい。
「こうなったら、何か売るしかないな」
「売る?」
 レイナールの言葉に、才人は顔を上げる。経理担当の友人は、またも眼鏡を押し上げな
がら重々しくうなづいた。
「君もシュヴァリエで、いろいろ功績立ててる身だ。なにか、金になりそうなものを持っ
てないかい?」
「いや、これといって何も」
 才人は即座にそう答える。こんなことだけは頭を捻らなくても即答できる自分の身の上
が少し悲しい。
「うむ、そうだな、それなら」
 顎に手をやって難しげな顔で考え込んでいたレイナールが、ふと妙案を思い付いたよう
に指を鳴らした。
「そうだ、竜だ」
「竜?」
「うむ。竜の体の一部ってのは、結構な高値で売れるんだ。わかるか?」
 レイナールの瞳が、眼鏡のレンズ越しに煌めく。才人は即座に理解した。
「そうか、シルフィードに頼んで何か分けてもらえばいいんだな!」
「そういうこと。ただ、僕もそういった物品の取引については詳しくないから、図書館で
でも調べてから動いた方がいいだろうな」
「なるほどな。ありがとよ、レイナール!」
「いいってことさ。君には騎士隊の評判を高めるために、まだまだ働いてもらわなければ
ならないからね」

 レイナールは眼鏡を押し上げて不敵に笑ったが、覗き騒動で地に落ちた騎士隊の評判を
回復するのは絶対無理だろ、と才人は思う。世話になった手前、口に出しては言わなかったが。
「それより早くした方がいい。もう時間がないぞ」
「お、おう、そうだな!」
 レイナールの言うとおり、もう時間がない。才人は早速図書館へ直行した。

 学院内の図書館にて、図鑑などを調べること三十分ほど。
(ふむ、なるほど。竜関連の商品は、それを専門に扱うギルドが存在するんだな)
 竜肉ギルド、というらしい。なんとなく不吉な名前である。
(一番高く売れるのは、竜の脳髄竜の目玉竜の肉……ダメだな、そんなもん分けてもらえ
るはずねえし)
 時間がないことに焦りつつ、さらに読み進めていく。そしてある記述を見つけたとき、
才人は思わず立ち上がった。
(これだ! これならきっと、大量に分けてもらえるぞ!)

 森の木陰でうとうととまどろんでいたシルフィードは、不意に目を覚ました。首を振っ
て頭を起こし、空を見上げるとすでに夕暮れ時である。
(お昼寝、ちょっと長引いちゃったのね)
 予定ではもっと早く起きだして、空の散歩を楽しむつもりだったのである。
 しかし、今彼女の胸に後悔の感情はない。さっきまで見ていた夢が、それはそれは素晴
らしいものだったからだ。
 夢の中のシルフィードは、思う存分魚を食べまくっていた。しかも、湖やら川やらを探
してそこから魚を捕まえて……という面倒な行程は完全に排除されていた。というのも、
にこやかに爽やかに微笑む才人が、小脇に抱えた大きな袋から、際限なく魚を取り出して
はシルフィードに食べさせてくれていたのである。至福の夢だった。
(うふふ、今もあの味が舌に残ってるのね)
 口の端から垂れかけている涎を、じゅるりとすすりあげる。
(でも本当、なんていい夢だったのかしら。正夢だったら良かったのに)
 なーんてね、とシルフィードは少し苦笑いする。いくら才人がただの人間にしては規格
外に強いとは言え、魚が無限にわき出る袋など持っているわけがない。
 と、思っていたら、
「おーい、シルフィードーッ!」
 なんとびっくり、才人がこちらに向かって走ってくるではないか。しかも、手に大きな
袋を持っている。
(え、そんな、まさか本当に正夢……!?)
 期待に胸を膨らませるシルフィードの前で立ち止まった才人は、爽やかな笑顔を浮かべ
ながら手に持った袋を突き出し、こう言った。
「シルフィード、お前のウンコ分けてくれ!」

「……いや違うんだよ、俺は『竜の糞は堆肥としては最高級である』という記述を信用し
てだな」
「いきなり窓を突き破って僕の部屋に突っ込んできて何を言ってるんだね君は」
「いや聞いてくれよギーシュ。いくらなんでも『サイトのスカトロマニア! 死んじゃ
え!』は酷いと思わないか?」
「とりあえず毎度毎度窓ガラスの修繕費を払ってくれない君は酷い奴だと思う」

 こうして才人は金を工面する手段を完全に失った。
 が、もらってきた野菜をシエスタと一緒に調理して、ルイズも感涙するほどウマい飯を
作り、「この六日間はお前のために野菜を育ててたんだぜ! そう、お前だけのため
に!」とかごり押ししてたら割と大受けだったので良しとした。シルフィードもその飯
食ったら機嫌直したので、とりあえずめでたしめでたしである。

 

URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:08 (5635d)

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル