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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:13 (5639d)

青春時代G  ツンデレ王子

 

 ティファニアは一通の手紙を読み返しながら頭を悩ませていた。
 その手紙が届いたのは三日ほど前の事。差出人は、ウエストウッド村で彼
女が面倒を見ていた子供たちの内の一人、ジムであった。
 手紙の内容は至ってシンプルで、近状の報告であったのだが…その中に
彼女も見覚えの無い文字が含まれていたのだ。

「これって何かしら?」

 トリステインに来て新しく出来た友達が、つい先日に覚えたばかりの言葉を
自慢気に話してくれたのだそうだ。だが、それが何を意味するのかは、その
友達に聞いても詳しくは知らないそうで、学校の先生に聞いても教えてくれな
かった様なのである。
 彼女とて子供たちに比べると人生経験を多く積んでいるし、母親から沢山の
事を教わりもした。だが、それは母も教えてはくれなかったし、人目につかない
様にこっそりと生活をしていた彼女にとって独りでは知る事も経験する事も無
かったのだ。

(サイトなら…知ってるかな?)

 翌朝、彼に聞いてみよう。
 そう決心すると、ティファニアは忘れないように手紙の中の“masturbation”と
いう単語に印を付けて抽斗へと仕舞い込んだ。

 ルイズを食堂へと送り出した後、シエスタは室内で独り着せ替えショーを
行っていた。
 昨日の様に朝から借り出された場合、翌日は厨房の手伝いは休みを貰っ
ている。そんな時は、こうやってルイズやサイトが居ない時間帯に箪笥の中か
ら適当に服を拝借しているのだ。勿論ルイズの服はサイズ的に彼女に着れる
はずも無く、ただ鏡の前で身に宛がい妄想を膨らませるだけなのだが。
 一通り終わった後、何時もの様にそれを取り出しルイズの制服のスカートと
併せて着込んだ。この独り着せ替えショーをする日は必ず最後にそれを着て、
見知らぬサイトの故郷で共に街を歩くのを想像するのだ。
 姿見に自分を映し、いつぞやの様にくるりと回ると指を立て――

「お待た…」

 しかし、サイトに教わった魔法の言葉を言い終える事は出来なかった。何故
なら、入口から哀れみを込めた目で見られているのに気付いたからだ。

「み、ミス・ウエストウッド!!」

 果たしてそれは、ティファニアであった。
 彼女は目を点にし、その場で固まってしまっている。
 あたふたと体裁を整えつつセーラー服姿のままに近付くと、ティファニアは
ビクッと身体を震わせて半歩後退る。

「あ、あの…ご覧になりました?」
「……」

 無言のまま踵を返すティファニア。
 そんな彼女の手を取って部屋へと引っ張り込むと、シエスタはドアを閉める。
鍵を掛ける音にティファニアはまたしても身を震わせると、怯えを含んだ目で
シエスタを見つめた。

「あの…」
「ご、ごめんなさい!誰にも言わないから赦して」
「いえ、そうではなくて…」

 このままでは話が進まないと判断したのだろう。
 シエスタは彼女に椅子を勧めると、カップに一人分のお茶を注ぎ差し出す。
そしてティファニアが一口啜るのを見届けると、おずおずと口を開いた。

「申し訳御座いません、変なところをお見せしちゃいまして」
「い、いえ…こちらこそゴメンなさい」
「ミスが謝られる事は無いですよ、ドアが閉まって無いのを確認しなかった
 わたしが悪いんですから」

 二人して頬を染めて頭を下げあう。
 しばし無言の刻が流れ……先に口を開いたのはシエスタだった。

「ところで如何なさったんです?今は朝食のお時間ですよね?」
「あのその…ちょっとサイトに相談したい事が有って…」
「サイトさんなら、昨日から帰って来てませんけど」

 それを聞いてしょんぼりとしてしまうティファニア。
 やがて彼女は立ち上がると、シエスタに礼を述べて部屋を出て行った。

(サイトさん、どこに行っちゃったんですか?)

 廊下に出てティファニアの後姿を見送りながら我が主の事を考えていると、
すれ違いざまに彼女を跳ね飛ばしながらやって来る人物が見えた。
 息を切らせながら掛けてきたのはルイズであった。

「メイド!あんたのその格好、誰に教えたの!」

 シエスタを室内へと突き飛ばし、勢い良くドアを閉めてルイズは尋ねる。
 勿論、鍵を掛けるのを忘れない。

「え、え、え?」
「だーかーらー、あんたが今着てる服よ!
 その服の事、誰に教えたかって聞いてんの!」

 詰め寄り、一気にまくし立てるルイズ。
 その迫力に押されながらも、シエスタは彼女の問いかけにシラを切る。

「な、何なんですか一体」
「とぼけんじゃないわよ!あんた、その水兵の服の事、誰かに教えたでしょ!
 そうでなきゃこの世界で軍服を着る女なんて居るはず無いんだから!」
「言うはず無いじゃないですか。だってこれは…わたしとサイトさんの二人だ
 けの秘密なんですから」

 あくまでもシラを切り通すシエスタ。
 実は数日前、今日ティファニアに見つかった様にアンリエッタにも見られて
いたのだ。女王が自分と同じくサイトに想いを寄せていると知っていた彼女は、
これが彼の世界での服装である事を喋っていたのである。
 だが、言える筈が無かった。いくら相手がルイズとは言え、相手は単なる
一貴族である。この国の頂点に立つアンリエッタから『ルイズには今日聞いた
事は内緒にしてて下さいね』と言われているのだ。たとえルイズが自分の主
のご主人であるとは言え、またどれだけ彼女の迫力があったとしても、女王
との約束を破る訳にはいかないのだ。
 しかし、ルイズはその事よりも、シエスタの放った言葉に反応を示したようだ。

「ふふふ、二人だけの秘密ですって〜〜〜!!」

 逆上した彼女は、手にしていた鞭を振り上げシエスタに躍りかかった。
 何度も何度も鞭を振り下ろし、シエスタの白く肌理細やかな肌に行く筋もの
痕を付けていく。
 相当な痛みを感じているだろうに、シエスタは泣き喚きもせず、彼女に屈し
たりもせず、ただひたすら耐えていた。心の中でサイトの帰還を願いながら。
 ひとしきり痛めつけた後、ルイズはハッと己の行動を顧みる。
 アルビオンでサイトが死んだと思った際、彼の下へと旅立とうとしていた自
分を止めてくれたのは彼女である。そうした恩義やこれまで過ごしてきた日々
を思い返し、とんでもない事をしてしまったと自らの行為に恥じ入った。

「シエスタ、大丈夫!?」

 普段の彼女からは想像も付かないほど悲愴な面持ちで安否を気遣うルイズ。
そんな彼女を気遣い、シエスタは無理に笑顔を浮かべて頷くのであった。

 

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