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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:17 (5643d)
新婚さんごっこ(ルイズVer) ぎふと氏
「サイトさん、よかったらまた新婚さんごっこしましょうね。
たっぷりサービスしちゃいますよ?」
そう言ってにっこりと笑ったシエスタは、手を振る代わりにボリュームたっぷりの胸を
ぽよんぽよ〜〜んと弾ませながら、食堂の手伝いへと消えて行った。
残された才人と、桃色髪のご主人様の間に、なんとも気まずい空気が流れる。
わずかに皮肉をきかせた声で、ルイズが尋ねた。
「ねえ。た〜っぷりのサービスってどんなサービスなのかしら。サイトは知ってる?」
「い、いや……、俺にはちっともわかんないな。なんだろうねそれ。……おいしいのかな?」
「たぶん私が思うに、それはとっても甘くて、柔らかくて、すっごくおいしいものだと思うわ」
「そ、そうか。それはぜひ食べてみた……あ、いやじゃなくて、そうだ俺辛党なんだよ。
甘いのは苦手でさ。はは」
「それは初耳ね。じゃあこれもサイトはいらないってわけね。どうしよう捨てちゃおうかしら」
これ? ……っていったい何? と思っていると、
ルイズはいきなり立ち上がって、クローゼットから何かを取り出した。
そしてそのまま扉の陰でいそいそと何かしている。しばらくして恥ずかしそうに現れた。
(こ、これは……)
ルイズの着用しているのは、いかにも新婚ほやほや若奥様が装備していそうな、
ふりふりレースの純白エプロンであった。短い裾からはすらりと形のいい脚が伸びている。
上から下まで艶々のナマ脚だ。というか全身エプロン以外には何も身につけていない。つまり。
(で、伝説の裸エプロン、括弧ルイズVerっっ!!!!!!)
うしゃあ!と才人は胸の内でガッツポーズした。偉いぞルイズ!お前にしちゃやるじゃないか!
シエスタの裸エプロンも見事であるが、ご主人様のだってなかなかに破壊力がある。
花の種類は数あれど、各々に違った味わいがあるのであった。
さて。若奥様ルイズは、もじもじと顔を赤らめながら聞いてきた。
「え、えっと……、お帰りなさいサイト。疲れたでしょ?」
「あー、まあ疲れたっていえば、そうかな?」
「ちち違うでしょ! まずは『ただいま』じゃない!」叱られた。
「そ、そっかごめん」
「もう一度いくわよ? お帰りなさい。お仕事大変だったでしょ?」
「ただいまルイズ。ふう疲れた疲れた。今日はほんと大変だったよ」
なんかシエスタの時とは随分違うな、と才人は思った。何かが足りない。萌えない。
これじゃごく普通の中年夫婦の会話だ。
頭の中でシエスタとの時のをおさらいしてみる。
あれだ!
『あ・な・た(はぁと)』で頬を染めてぷはぁ!
あれが足りない!
ぜひともルイズに言わせなくてはと思ったが、いつのまにか新婚劇は進行していた。
「それでご飯にする? それともお風呂?」
「……………」
「どっち?」
「……あのう、選択肢はそれだけ?」
「他に何があるってのよ」
あるじゃないか大事なのが!
「あ、そうね。忘れてたわ!」
「そうそう。それそれ」
「ご飯? お風呂? それとも……お酒?」
切ない気分で才人は「ご飯」と答えた。
まあいいか。いそいそと食事の支度をする裸エプロンの新妻を前後左右から
鑑賞するのも……って、台所ねえじゃん!! 料理ねえじゃん!!!
ルイズはう〜んと考える素振りの後で、声を張り上げた。
「誰かーー! 旦那様にお食事のお支度をーー!」
パチパチと手を鳴らす。使用人でも呼んでるつもりなんだろうが、
部屋には才人以外は誰もいないので、当然返ってくる返事もない。
そのまま静寂の時間が流れた。
「や、やっぱりご飯はいいから。お風呂……いやお酒……いや……」
「うんっ」
ルイズは可愛らしく待っているが、
いくら懸命に考えても「たっぷりのサービス」が思いつけない。
新婚だぞ。新妻だぞ。しかも裸エプロン!!!
ああ、それなのに。……才人はこほんと咳をして言った。
「あールイズや。じゃなくて、新婚ほやほやの奥様や。
実はな。新婚の時にサービスするのは、奥さんじゃなくて旦那の方なんだよ」
……1分と経たずに。そのレースのエプロンは用なしとなって、
床の上に丸まるはめとなった。