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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:31 (5638d)

青春時代【11】   ツンデレ王子

 

――パタン

 後ろ手にドアを閉めて室内を横切ると、サイトは大きく息を吐き抱えていた
ティファニアをベッドに座らせる。

(何だか知らねぇけど助かった)

 ご主人さまのお仕置きから逃げるのに精一杯だった彼は、少女が呪文を
唱えているのも耳に入らなかった様である。ルイズの性格を知る彼は、彼女
がこれで諦めたとはとても思えず、しきりに扉を気にしている。

「あの…サイト?」

 ティファニアの呼び掛けに振り向いた彼は、彼女の肩を両手で掴むと真正
面から見据えて早口で切り出した。

「テファ、ロックの魔法使えるか?」
「え?うん、使えるけど…」
「じゃぁ掛けてくれ」
「ど、どうしたの?」
「早く!」

 不思議そうに自分を見上げる彼女の言葉に、サイトはついつい強く促してし
まう。彼の迫力に圧されながらも小さく頷くと、彼女は小さく呪文を唱え部屋に
鍵を掛けた。

「…ふぅ」

 取りあえず暫くはこれで大丈夫だろう。
 安堵の溜息を漏らすと彼はティファニアの隣に腰掛け、そのまま身体を横た
える。ややあって自分を見つめる彼女の視線に気付くと、身を起こしてティファ
ニアに向き直った。

「そういやテファ、どうしたの?」
「ちょっとサイトに聞きたい事が有って」

 言いながら彼女は立ち上がり、抽斗から一枚の手紙を取り出すとサイトに差
し出し、例の単語の部分を指し示す。

「あのね、ジムから手紙が来たんだけど…ここの意味が良く分からないの」

 その文字を見た途端、サイトの頭は真っ白になった。
 タバサに文字を教えてもらって以来、目を走らすだけでそれが意訳されて頭
に日本語として浮かび上がるのだ。ただし、今回彼女が指し示した単語
“masturbation”
は今までに読んだどんな書物にも出てこなかった為に、そのままの単語が出
現している。だが、彼とて年頃の男の子である。その単語が意味するところを
即座に理解した。

「なっ!ちょ…え?マジ?」

 目の前の少女は真剣な面持ちで自分を見つめている。決して冗談や悪戯で
言っている訳では無い様だ。

(どうすんの?どうすんの、俺)

 サイトの頭の中に、三枚のカードが用意される。
 一枚目は『教える』、二枚目は『とぼける』、三枚目は『教える振りして…』。
その三枚を裏返してシャッフルし、適当に一枚を選び――引き当てたのは
『教える』のカード。

(はぁ、しょうがねぇ)

 意を決すると、打って変わって真剣な目をしてティファニアの耳に口を寄せて
いく。

「えっとだな、その“masturbation”ってのはだな、つまり…自慰って意味だよ」
「え?自慰って?」

 決心をしたとしても、やはり恥ずかしいのだろう。サイトは小さな声で囁くが、
それでもなお彼女は意味が分からないのかきょとんとしている。
 どうやって説明すればいいのか悩みに悩んだ末、仕方が無いので実践で教
える事にした。と言っても実物を出す訳にもいかず、きょろきょろと辺りを見渡
していると、円卓に乗ったスプーンが目に入る。

「これを使って説明するな」

 スプーンを股間部分に宛がい、それを男性器に見立てて空いた手で包み込
む。

「これは男の場合だけど、こうやって握って上下に擦るんだ」

 言葉と同時に手を動かしていく。
 と、そこで彼の前に正座したティファニアからストップが掛かった。

「待って、サイト」
「どうした?」
「それ、おかしいよ」

 彼女はサイトの両手を不思議そうに見詰めている。

「おかしいって、何が?」
「サイトの説明だと、そのスプーンをおちんちんに見立ててるんだよね?」

 自慰も知らない少女の口から“おちんちん”等とあからさまな単語が出た事
に面食らってしまうサイト。その明け透け様に、それまで感じていた羞恥が吹
き飛ばされてしまう。

「そうだけど?」
「サイト、嘘吐いてる。おちんちんがそんなに大きいはず無いじゃない」
「……は?」
「サイト、わたしの事馬鹿にしてる?わたしだって知ってるもの、男の子の
 おちんちんくらい。ウエストウッドでジムたちの面倒を見てきたんだから」
「…うん」
「お風呂だって一緒に入ったし、あの子たちが小さい頃はトイレの世話だって
 したんだよ?」

 何を言っているんだ、この胸革命は。あんな僅か十歳程度の子供と一緒に
しないでくれ。
 そう言いたかったが、事の元凶はその僅か十歳くらいのジムからの手紙で
ある事を思い出す。

「えっと…男の子は興奮したら、ちんちんが大きくなるんだよ」

 まさかこんな事、女の子に説明するとは思ってもいなかった。
 穴があったら入りたい、そんな気分である。

「うそ」
「嘘じゃねぇって。ジムだって、もうそうなるんじゃないかな?ちなみにテファの
 知ってるのって何歳くらい?」
「そこまでは覚えてないけど…」
「まぁ、人によって早い遅いは有るけどね。でも男の子なら皆そうなるんだよ、
 成長するとね」

 何とか声を絞り出して説明すると、彼女の目が期待に色付いていくではな
いか。しまったと思ったが既に後の祭り、ティファニアはサイトを上目遣いに
見上げると予想通りの言葉を発した。

「見せて」
「…はい?」
「大きくなるって、信じられないの。だから、見せて」
「だ、ダメだ!女の子が気軽にそんな事言うんじゃありません!」

 ついつい激しい口調になってしまい、ついでに彼らしくない言い方になって
しまっている。
 サイトに怒鳴られたのが悲しかったのか、それとも知的欲求が満たされそう
に無い事に寂しさを覚えたのか、ティファニアは彼を見る目にみるみるうちに
涙を湛え始めたのだ。

「はぁ〜」
(頭痛くなってきた)

 溜息を吐いて頭を抱えると、サイトは目を瞑って考え込む。
 まさかこんな展開になるなんて予想もしていなかったらしい。
 だが、世の男性の大半がそうであるように、彼も女の子の涙には弱かった。
しかも、それが過去に涙を見せた事の無いティファニアなのだから、尚更であ
る。
 彼女を説得する言葉が思い浮かばず、結局サイトはティファニアの要望に従
う事にした。

「わわ、分かった見せる、見せるから泣かないでくれ」

 立ち上がってウエストの留め金を外すと、ファスナーを下ろてジーンズと下着
を一緒に膝までずり下げ…つまり下半身をむき出しの状態にした訳である。

「…やっぱり嘘だったんだ」
「だから嘘じゃねぇって」

「だって、サイトのおちんちん小さいままだよ?少しははジムのよりかは大き
 いかもしれないけど、でもフニャフニャだし…さっきサイトが言ってたのとは
 全然違うじゃない」

 再びベッドに腰を下ろしたサイトの陰部は、確かに彼女の言う通りの状態で
あった。それも仕方ないと言えよう。彼はコート一枚で出歩き、通りかかる少
女に見せ付けてその反応を楽しむ等と言った趣味は持ち合わせていないの
だ。目の前で真剣に見詰められては、緊張して縮こまってしまうのも当然であ
る。
 どうやって息子をエレクトさせよう、さすがにテファに『胸見せて』なんて言え
ないしなぁ。とサイトが考え込んでいると、ティファニアは思わぬ行動に出た。
なんとサイトの陰部に手を伸ばし、彼の陰茎をそっと包み込んだのである。そ
して、自分の物ではない冷やりとした手に、彼女の女性ならではの柔らかい
手に包まれたサイトの分身はむくむくと体積を増していくのだった。

「きゃっ」

 手の中で嵩(かさ)を増すそれに驚き、慌てて手を放して胸元に引き寄せる。

(す、凄い!)

 だが視線はというと、目の前で起きた変化に釘付けになっている。
 彼女の手に包まれたとは言っても直ぐにそれは離れてしまい、刺激が足り
なかったのであろう。彼の陰茎は頭を持ち上げ始めはしたものの、途中で勢
いは削がれてしまう。
 ところが、好奇心からか僅かに顔を近づけたティファニアが感嘆の吐息を漏
らした途端サイトの口から呻きにも似た喘ぎが漏れ出し、同時に勢いを増し
ていくのであった。

「……」
「これで嘘じゃないって信じてもらえた?」

 呆然としている彼女の髪にそっと手を置き、優しく語り掛けるサイト。
 対するティファニアは、首を上下に振って肯定の意思を示してみせながら、
一つの疑問が浮かび上がっており頭を悩ませていた。だが男の身体の事は
女である彼女に分かるはずも無く、おずおずと切り出した。

「うん、信じる。でも…」
「でも?どうした?」

 ここまで晒してしまったからには、もう怖いものは無いのだろう。次にどんな
言葉が来るのか想像は付かなかったが、彼はゆっくりと彼女の髪を撫でながら次
の言葉を促した。それが退路を断つ事になるとは思いもせずに。

「そんなのでズボン履いたら、苦しくないの?」
「……」
「どうやったら最初みたいに戻せるの?」

 眩暈を覚えた。
 彼女の言う通り、このままジーンズを履くとつっかえて確かに苦しいのは確
かである。確かではあるのだが、それ以前に彼女が言葉を紡ぐ際に漏れる
甘い吐息がムスコに直接当たるのだ。この時点で既に苦しい。
 サイトの心を何やら黒いものが寝食し始めたのだが、彼が口を開く前にとん
でもない事をティファニアが言い放った。

「もしかして、さっきサイトが言ってた自慰ってのをしたら戻るの?」

 自慰ってのをしたら…自慰ってのをしたら…自慰ってのをしたら…
 サイトの脳裏に、そのワンフレーズがリピートされる。

(なんでこんなときだけ鋭いんだ、テファ!)

 発生した彼の野望は、瞬時に打ち砕かれた。
 恨めしそうに彼女を見やるも、込められた切ない思いをティファニアが気付
けるはずも無い。それどころか期待に満ちた瞳でサイトを見つめる始末。

(女の子の前でオナらないといけないなんて…)

 俺って不幸、と彼女に聞こえない様に呟いた後、サイトは半ば投げやりな気
持ちで『そうだよ』と涙声で答え――右手で屹立した自身を扱き始めるのだっ
た。

 サイトが自身のムスコに手を添えた頃、彼等が居るティファニアの部屋を目
指して歩いてくる人物が居た。ルイズである。
 彼女はあの後、直ぐに踏み込もうかとしていたのだが思い直したのだった。
というのも、学院の領地はそれなりに広い。下手したら逃げ出したサイトが
着く前に自分が着いてしまう可能性があるからだ。

 体力を回復させる猶予を与えてしまう事にもなりかねなかったが、サイトの
事だ。さすがにティファニアの部屋の窓を叩き割ってまで逃げ出しはしないだ
ろう。入口を押さえておけば逃げ道は塞げる。
 そう考えたルイズは、多少時間をずらして行動を開始したのである。
 音も立てずに廊下を歩き部屋の前まで来ると用心深く辺りを見渡し、人影が
無いのを確認するとドアノブに手を伸ばし、途中で思いとどまる。そして小さく
呪文を唱えると、目前のティファニアの部屋のドアに向かって“アンロック”を
解き放った。
 虚無魔法に目覚めてから使える様になったコモン・マジック。しっかりと開錠
の手応えを感じ取る。
 勢い良く開けて乗り込もうかとも思ったが、サイトの退路を断つために更なる
慎重を重ねようと、音を立てない様にそっと開いて行き――目が点になった。

 目を閉じて気持ち良さそうにムスコを擦るサイト。
 そんな彼の表情と股間を交互に見ている内に、ティファニアは自分の中に
それまでに感じた事の無かった感情が芽生えていた。

(サイト、かわいい♪)

 可愛い――そう感じた事に、彼女は愕然としてしまう。
 彼は自分を連れ出してくれ、世界を見せてくれた人。ロマリアで女王陛下に
言った様に、わたしは彼について行くと決めている。そんな彼に対して、年下
の子に思うみたいに可愛いと思ってしまうなんて…
 ティファニアは気付いていなかった。それが、ウエストウッドで子供たちに抱
いたのとは違う“可愛い”であったのを。慈愛に満ち溢れた彼女だからこそ感
じた恋の始まりであった事を。
 だが、ティファニアはその事に関して深く考える事は出来なかった。何故なら
ロックを掛けたはずの部屋の扉が開いており、そこにサイトの主人であるルイ
ズが立っていたのだから。

(ルイズ!)

 ティファニアが彼女の姿を視界に入れたと同時にルイズの硬直は解けたの
だろう、獲物を追い詰めるかの様にゆっくりと近付いてくる。迫力に圧されて
ズザザザっとティファニアは部屋の隅まで移動するが、快感の途中にあるサ
イトは目を閉ざしてる所為もあってか、彼女の侵入に気付いて無い様である。
 先ほどまでティファニアが座っていた辺りに立ち、使い魔へと振り向く。

「サァァイィィトォォォォ」

 まるで地の底から響いてくる様な声を絞り出す。
 丁度その時サイトは間もなく達しようとしているところでった。ティファニアに
掻けてしまわない様に空いた手を添えて迸りを受け止めようと思っていた彼
は、彼女の声にビクンと身を竦ませた拍子に手を宛がうのも忘れて欲望を吐
き出してしまった。
 結果、白濁はルイズの顔や桃色の髪へと飛び散るのだった。

 

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