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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:37 (5644d)
『ギーシュ・ド・グラモンの最後』 後編 (しまったぁぁぁぁぁっ) 頭からシャワーを浴びながら、モンモランシーは冷静になり始めた頭を抱えた。 ……それは良いのだ。 ただ…… 『今日はわたし達と休む?』 二人にしたら当然の提案だったのだろう。 が、モンモランシーは無言のまま首を振り断った。 (うあぁぁぁぁぁっ) 思い出したくないのに、自動的に脳内で自分の声が再生される。 『ギーシュから離れるのやだぁっ!』 (し……死にたい……) あの場には、水精霊騎士の主だった面々が揃っていたし、聖女二人どころか…… (陛下までいらっしゃった様な……) そんな人たちに囲まれたまま、モンモランシーは必死にギーシュにしがみつき、離されるように掴まっていたのだ。 引き離されるのが怖くて、かたかたと震えながらギーシュの腕の中に居ると、 (あ、あ、あ、明日っからどんな顔してみんなの前に出ればっ……) 今にして思うと、なんだか皆、妙に祝福する表情で二人を見ていた気がするが、あの時は、そんな皆の表情もなんだか嬉しくて、掴まったままのギーシュにもっとぴったりと身体を押し付けてしまった…… ……後ろから見ていた皆には、二人がどう見えただろう? そう考えるだけで顔から火が出そうになり、温めにしたシャワーが気持ち良い。 『シャワー浴びたい』 ――二人きりで部屋に着いて、シャワーを浴び始める女に、ギーシュはどんな期待をするだろうか? (っっっきゃぁぁぁぁぁぁっ!) モンモランシーの悩みは尽きない。 触られたところを中心に、モンモランシーは念入りに身体を洗う……が、 この状況で『念入りに身体を洗う』事が、何かを『期待』してる様で、またも彼女をフリーズさせる。 (違うのよ、ちがうのよ、チガウノヨ、チガウノヨ、……) 湯に浸かっている訳でもないのに、真っ赤に茹で上がりながら身体を磨くモンモランシーは、ふと気づいた事実に慌てて浴室から出る支度を始めた。 この状況でギーシュが中の様子を覗くとは思わないから、ギーシュにとってモンモランシーがお風呂で何をしているのかは時間で判断するしかない。 (で、出なきゃ、早く出なきゃ……) 一通り良く室内を片付けたモンモランシーは、そのまま外に…… (……も、もう一回だけ身体洗お……) ――彼女が部屋に戻ったのは、3回ほど身体を洗った後になった。 「お、お先に……」 ギーシュの部屋に女物の服の用意等有る筈も無く……もっともそんな物が有ったら、モンモランシーはそのままルイズの部屋に泊まることに成ったかも知れないが。 ギーシュに用意できたのは、洗濯した所の自分の下着と制服のシャツ……それに念の為パンツも置いてあった。 「モモモモモ、モンモランシー、そのっ、刺激的な格好だね」 シャツの裾が翻るたびに、ギーシュの視線が不自然に踊っていた。 「そ、そう? だって、着る物他に無かったし」 気まずい空気が数秒流れた後、ギクシャクとギーシュは立ち上がり、 「僕も、シャワーを浴びさせてもらうよ、少々汗をかいてしまってね」 棒読みの台詞の様な言葉に続き、ギーシュが不自然な挙動で浴室に向かう。 ……ギーシュの背中を見送りながら、寂しくなったモンモランシーは、ぽつりと呟いた。 「早く、帰ってきてね?」 ドアの向こうでギーシュがこけた。 けたたましい音を立てている脱衣所の方を見るとはなしに見ながら、モンモランシーはベットに倒れこんだ。 (……ギーシュの……匂い……だ……) 枕に顔を埋めたまま深呼吸した。 (ル、ルイズがうつったぁぁぁ、へ、変態になっちゃった!?) ばたばたとベットから飛び降りながら、危険この上ない場所を見つめた。 (だ、だめよ……あそこは危険すぎるっ) 眠っているのなら、まだ良かった。 (ギーシュが帰ってきたときに、『準備OK!』とかって、わたしどんな女の子なのよっ) 年中女の子を追っかけてるギーシュでも引く。 (って、この部屋、どこもかしこもギーシュの部屋だぁぁぁぁっ) 見覚えのある服がかかっていたり、自分のプレゼントがそこかしこで使われていた。 (ひ、卑怯だぁ……) 冬眠前の熊のように部屋をうろついていたモンモランシーは、ぺたりと床の上に座り込む。 (うー、どうしてくれよう……あれ?) ふかふかの絨毯の上でごろごろと転がっていたモンモランシーの視界の端に、何かが映った。 (? 靴下?) ベットの下に丸められたソレが、ちゃんと自分が知っている男の子の名残のようで側まで寄って拾い上げてみた。 (……な……に? これ……) ソレは、体力の限界も、日頃のペースも、一切無視して動き回った結果。 ――じったりと血を吸って重くなった靴下を見つめたまま、モンモランシーは泣きそうに成っていた。 (し、しみるぅぅぅぅ、死ぬ、死んでしまうぅぅ) シャワーを浴びながら、ギーシュは一人悶えていた。 部屋に入った直後の呆然としていたモンモランシーに気づかれなかったのを幸いと、ギーシュは血が固まって脱ぐだけで再出血する靴下を剥がし、 (せ、石鹸を使ったら、死んでしまうかもしれない……) お湯に当たっただけでこの激痛である。 だが…… (き、貴族として、紳士として……身体も洗わず、モンモランシーの所に帰れないっ!) 斜め上を見上げながら、男泣きに泣いたギーシュは、覚悟を決めてタオルの上に石鹸を乗せた。 「ギーシュ?」 不意を付かれたギーシュは、妙な声で返事をしてから、すり硝子の向こうに見えるモンモランシーに返事をした。 「ど、どうかしたのかい? モンモランシー?」 硝子の向こうに見える、モザイクの様な肌色にギーシュは先の彼女の姿を思い出して、真っ赤に成って俯いた。 (同じ石鹸のはずだよなぁ) 自分がいつも使っている石鹸の匂いとは絶対違った。 「……わたしの杖……知らない?」 硝子の向こうの肌色が、ゆらゆらと誘うように揺れる。 あんな怖い目にあった後だから、手元に武器が無いと不安なんだろうなぁ…… (け、警戒されてる……) 良い雰囲気だと思ったけど、今日もまた、手は出せないようです。 始祖のこんじょーわる ギーシュはしくしく泣きながら、身体を洗う覚悟を決めていたが、 「ギーシュ」 泡立てたタオルを見ながら、ギーシュは返事をする。 「入るわよ?」 ギーシュは悲鳴を上げながら、浴室の一番奥……といってもそんなに距離を取れるわけではなかったけれど。 「なななななぁっ」 仰向けのまま四つんばいという、いささか器用な体勢で壁際まで逃げたギーシュの足の裏は入り口のほうを向いていて、 「ばか」 つかつかとギーシュに近寄ったモンモランシーは、そっとその場に座り込んだ。 「ちょっ、ご、ごめん、モンモランシー……その、しんぱ、うひゃぁっ」 モンモランシーはギーシュの足を手に取ると、傷口を見つめる。 ……つまり、視点がとても低くなり……モンモランシーのタオルが非常に気になった。 (み、みちゃらめぇっ) アワアワのタオルをしっかりと股間に押し付けながら、ギーシュは必死で関係のないことを考えようと…… 「……なんで……こんなに成るまで……」 小さな小さな声が響いたその後に、ギーシュの視界は真っ白になった。 「んっ……」 モンモランシーの舌が、ギーシュの足の裏に触れていた。 「ちょっ、まって……モンモランシー、だめだ、そ、そこはちょっと……」 口論する気は無いとばかりに、続きを始めるモンモランシーの恐る恐る当たる舌は、ギーシュに意味のあることは一切しゃべらせないほどの快感を与え始めた。 傷の治る気持ち良さや、痛みの引く安堵だけなら、ギーシュはまだ抵抗出来たろうが。 背中には壁。 与えられる刺激はあくまでもソフトだが、行動の自由が無い状況下ではもどかしさが感覚を増幅させる。 爪先から踵に向かい、また爪先に戻る舌先は、触れるか触れないかの距離でギーシュに魔力を送り込み続ける。 「まって……モンモラ……ンシ……ちょっ……ふあっ……」 小さく開かれた唇の中に、ギーシュの親指が隠されて温かい口の中で何度も舌が踊る。 「っ! って、モンモ……休ませ……っ……」 舌を這わせるより、確実に治癒が確認できる事に気付いたモンモランシーが、愛しそうに口付け、丹念にギーシュを狂わせる。 何も考えられなくなったギーシュは、両手で床を支え喉が枯れるまで叫んだ。 隠すものの無くなったギーシュの股間は、モンモランシーにその興奮を伝え彼女の口撃は、治癒した後もギーシュの気持ち良い所を責め続けた。 肝心なところには指一本触れていないため、ギーシュは達することも無いままに小一時間ほど弄られ続けた。 「……モ……ラ…………シー……恥ず……かしぃ……」 ビクビクと脈打つギーシュの分身は、モンモランシーの指先を求めギーシュの意思に反してその手の中に向かって腰を使わせた。 加減の分からないモンモランシーによって、やわやわと包まれるとギーシュの倦怠感は一瞬で晴れた、 「っ……たぃ…………」 (モンモランシ……こんどは僕がっ) そう伝えるつもりだったギーシュの手の中で、カルロに縛られていたモンモランシーの手首の傷が滑った。 「ご、ごめん」 さっきの悲鳴は、無かった事にするつもりらしい。 「見せて……」 ギーシュの中の『男の子』は、女の子の怪我を放って置く事が出来なかった。 「痕が残るといけない」 そう言って、自分の杖を向けたギーシュの耳に、(残ったら、もう貰ってくれない?)そんな声が小さく届いて、頬を染めながらモンモランシーがさっきまで使っていた魔法を唱える。 「ちょっ、ギーシュ?」 自信は無かったが、思ったより簡単に魔法が成功したギーシュはお返しとばかりに傷跡に沿って舌を這わせた。 「ひぁっ……まって、ギーシュ。これっ、なんか変っ」 身体を捩って逃げ出そうとするモンモランシーを、ギーシュは腕力だけで留めると、 「……こんなに早く治るのに、モンモランシーはあんなに時間を掛けてくれたんだ?」 両の手首はすっかり完治していたが、ギーシュの舌は手首から肩に向かってにじり進む。 「ひぅ……まって、ギーシュ、そこ怪我してないっ」 その場に倒れこんでしまったモンモランシーを逃がさないように注意しながら、ギーシュは純白の肌を味わい続ける。 ギーシュの動きが止まった。 「な、に?」 タオルが解けた瞬間、さっきまで有った甘い雰囲気は払拭され、ギーシュの顔に浮かぶ真面目な表情にモンモランシーは怯えた。 無言で身体に乗っていたタオルをむしり取るギーシュに、モンモランシーは抵抗も出来なかった。 (あっ……) モンモランシーは思い出した。 ――モンモランシーの胸には、カルロが力任せに掴んだ事による痣が浮かんでいた。 (……き、嫌われ……る?) モンモランシーは恐怖に震える。 目の前のその痕は、ギーシュ以外の男が触れた証明に他ならず、最後の一線は無事だったとはいえ、ギーシュが…… (し、信じてくれなかった……ら?) 杖を取り戻した時、ギーシュの怪我のことしか考えられなかった自分の愚かさにモンモランシーは泣きたくなった。 モンモランシーの考えているような事はまったく無かったが、 もし、自分の助けがもうほんの少し遅れたらどうなっていたのかを、ギーシュにまざまざと感じさせた。 自分に対する目の眩む様な怒りが、ギーシュの行動を停止させていた。 狂おしいまでに見ることを望んだ胸に刻まれた痣を睨みながら、ギーシュは深呼吸を繰り返す。 次いで感じたのは絡みつくような感情。 ギーシュが他の娘に声を掛けることで、モンモランシーが嫉妬することは有った。 ――ギーシュはカルロに嫉妬していた。 大切な大切な相手に自分より先に触れた相手を、今から殺しに行きたいほどに嫉妬していた。 そして、渦巻く殺気はさらにモンモランシーを怯えさせた。 「あ……あの……ギーシュ? あの……あのねっ」 ギーシュは無言のまま、モンモランシーを引き起こすと裸のまま彼女を抱き上げた。 「きゃっ、ギーシュ? ちょっ……まって……ねぇっ、聞いて……きいてよぅ……」 徐々に小さくなっていくモンモランシーの声を聞きながら、ギーシュは自分ではどうにも出来ない苛立ちを感じていた。 「ちが……の……なにもされてないからっ……、だからっ……」 『嫌いに成らないで』腕の中で泣くモンモランシーを無言のままベットに横たえる。 二人きりでベットの上に全裸でされるがままに成る、大好きな彼女。 だからこそ、他の『雄』の痕跡にギーシュの心は狂おしく燃えた。 せめて怒りの理由を隠そうと胸の前で重ねられたモンモランシーの震える腕を、ギーシュは無言のまま力に任せて引き剥がした。 そして、ギーシュと二人きりなのに彼が怒っている以上、悪いのはきっと自分だと愚かな自傷を始める。 彼女に罪はないというのに、攫われてしまった自分が悪いと。 ぐるぐると、頭の中がそんな考えで一杯になった。 カルロに取り押さえられていた時に遥かに勝る恐怖が、彼女の行動を縛り、掠れて聞こえない声が喉から流れていた。 (ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……) 好きな人に嫌われたかもしれない恐怖が、彼女に心を壊す寸前、 ギーシュはのそりと動き出した。 モンモランシーの腕にかかっていた圧力が消え、ギーシュがその手を開放したのが分かったが、彼女はぴくとも動かなかった。 もし、彼がこのままこの部屋を出て行ったら? そんなところまで追い込まれているモンモランシーの上で、獣が獲物の柔らかい腹部を狙うかのような動きでギーシュの口がモンモランシーに迫る。 喰いちぎられる。 モンモランシーがそんな覚悟を決めてしまうほど、ギーシュの表情は鬼気迫っていた。 (……っ……ギーシュ?) 驚いて目を開くモンモランシーの目に映るのは、無心に胸を舐め上げるギーシュだった。 「あ……の……?」 突き出された舌が痣に重ねられ、正確になぞり、もう一度同じ動きが繰り返される。 「ギーシュ?」 その言葉に、ほんの一瞬動きが止まる。 「ちょっ……あのっ……ギーシュ?」 ギーシュの行動の理由を尋ね様としたモンモランシーは、下ろした視線の先で自分の痣がかすかに薄くなっているのに気付いた。 「……殺してやればよかった……あの……男っ!」 自分を怒っているわけではなかった事に、気付いたモンモランシーはようやく心に余裕が出来き、 ギーシュが自分に向けていた怒りはすっかり息を潜め、胸に刻まれた痣を通してその向こうに何かを見ていた。 そして、それは何時もならモンモランシーがギーシュに向ける感情だった。 ――妬いてくれたの? 喉まで出掛かった言葉を、モンモランシーは飲み込んだ。 ――ギーシュが浮気する理由……分かったかも…… 子犬でも抱くみたいに、胸の中にあるギーシュの頭に優しく触れると、たとえようのない幸福が満ちる。 「こ、これからはっ、ぼ、僕以外に……見せたり、触らせたりしたら……相手と決闘するからっ」 ギーシュはようやくサイトの心境を理解していた。 穏やかな時間がゆっくりと流れたが、5分もするとモンモランシーに次の苦難が訪れた。 (……っ…………ぁ……) 喋る事が出来たのはほんの暫くの間だけで、それからは声が漏れるのを必死に絶え続けることになった。 胸に刻まれた指の痕は、乳首までは届かず外れていたが、その為にギーシュの舌は肝心なところを避けたまま延々と往復を続けた。 (やぁっ…………ギ、ギーシュ……はっ、真面目に治してくれてるのにっ……) ギーシュの舌が先端に近づいたとき、身体が無意識に捻られそうに成るのを必死に押しとどめる。 (あっ……あぅっ……やあっ…………やだっ……) いっそ、さっきまでみたいに押さえつけてくれれば良いのに。 全身を強張らせ、与えられる刺激に耐えようとすれば耐えようとするほど、身体は勝手に暴れだしそうになる。 刺激を繰り返された胸の奥がじんわりと熱を帯び、そのまま蕩ける様に身体を滑り堕ちて行く。 クチと小さな音がモンモランシーの耳に届いた。 ギーシュの舌が胸に当たる音ではなく、もっとずっと下のほうから聞こえてきた音の正体に思い当たった瞬間、 そして、羞恥は与えられていた快感を数倍に跳ね上げる。 いつの間にかギーシュの頭を支えていた手は、自分の身体を支えるためにシーツに置かれていたが、その手に力が込められギュッとシーツが握りこまれた。 (ダ、ダメッ……こえっ……声……がっ……) いつの間にか降り始めた甘い嬌声に、ギーシュは自分の行動がどれだけ際どいのか、その時になって理解した。 自分の色欲などより、痣を消すほうが遥かに重要だと感じられていたのだ。 殺しているつもりらしい声が、どれほど甘くなろうとも。 まだ集中することは出来た。 が、実はもうとっくに彼女の胸は純白を取り戻していた。 それは、毎夜毎夜狂おしく求めたもので…… そして、とめる機会を逸すると、今更に 『終わった』 その一言は伝えられなくなった。 ビクンと、目の前で白魚が跳ねた。 その二人の体重を支えていたモンモランシーの腕が、崩れるように力を失ったのだった。 支えを失ったギーシュは、飛び込むようにモンモランシーの胸に顔を押し付ける。 が、浅い谷間の底でギーシュはこの上ない幸せに包まれた。 押し付けられる間際に、ギーシュの頬を熱い塊が通っていった。 「ひぁっ……」 僅かに与えられた、望んでいた刺激にモンモランシーの思考は閉じかけたが、自分の脱力の結果胸に押し付けられたギーシュの頭に、思わず謝っていた。 「ご、ごめんな……さひっ……」 クッションと背中の間でギーシュの指が蠢く度に、体温が上がっていく。 ――このままだと、おかしくなっちゃう。 その思いが、彼女に問いを紡がせる。 「治っ……た?」 ギーシュと一つになりたい。 「……まだ」 そんな錯覚にとらわれているギーシュにとって、『治った』等とは口が裂けても言えなかった。 甘い香りの立ち込める中で息を整えようとするギーシュだったが、呼吸すればするほどに甘い香りが彼の魂を縛った。 堪えきれない衝動に押されるようにもう一度モンモランシーの胸に舌を這わせるギーシュ首元を、何か暖かいものが包み込んだ。 ほんの少しでも接触面積を増やそうと、無意識のうちに首元に回されたモンモランシーの腕は、 何時の間にかカラカラに乾き始めた喉を、胸元の汗で潤そうとしているかのように、 何時まで続ける。 痛いほど膨れ上がった自分は、次に進みたがっていたが、未知への好奇心よりも今そこにある快感に抗えなかった。 繰り返し繰り返し、貪っているギーシュに、お気に入りの角度が出来始める。 右も左もモンモランシーの熱を感じながら、視界に侵入する乳首を観察する。 筋肉が有る訳ではないのに、ピクピクと震え続ける先端突起に軽く息が掛かったときのモンモランシーの狼狽も好きだ。 彼女は気付いていない。 「ひあっ、いやぁっ……、……っあああああ」 首に回されていた腕に、ぎゅっと力が入る。 (はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……) 荒い息をつきながら、ギーシュがまた胸の下に潜り込もうとすると足元に何か違和感があった。 そう悟った頃には、こすり合わせるように白い脚が絡み付いてきていた。 (うぁっ……) 柔らかな太腿が、ギーシュのお腹に当たりお尻のほうに向かって脚がぴったりと絡みついた。 快感への予感に震えながら、ギーシュが姿勢を低くするとギーシュの身体に、何か熱く湿ったものが当たった。 ――部屋にモンモランシーの悲鳴が響く。 やっと触ってくれた! 望んでいた箇所への刺激に、モンモランシーは必死でギーシュにしがみ付いた。 だんだん開いていったとはいえ、片足が絡むまではギーシュは跨る様にモンモランシーに触れていた。 首元で彷徨っていた腕は、ギーシュの頭を胸に押し付け、 本能に導かれるままに、ギーシュはじっとモンモランシーを見つめる。 自分からギーシュに抱きつき、大切な所を押し付けている事に気付いたモンモランシーは、 全ての仕草が、ギーシュに点いた火に油を注ぎ…… ――そしてギーシュは獣になった。 モンモランシーの手に逆らわないようにするだけで、ギーシュの唇は一番感じるところへと運ばれる。 唇を軽くあて乳児の様に吸いたてると、悲鳴の様な声と共にギーシュの頭を抱きしめてきた。 ギーシュを捕らえていたモンモランシーの手足が、ギーシュの動きを邪魔しないように僅かに緩む。 ギーシュが身体を離せるほどではないが、ギーシュの行動を妨げるほどではない。 触れられると、自分がどんな反応をしてしまうか分からないモンモランシーも、 人差し指が触れるか触れないかの位置に来たとき、胸に密着していたギーシュは早鐘のような心音に気付いた。 頬には柔らかいおっぱい。 そして舌より遥かに思うままに動く指が、つ、と乳首に触れる。 硬さと柔らかさを同時に味わおう。 その程度のつもりだったが、限界まで感度が上昇した乳首を自身の柔らかい胸で受け止めることを強制されたモンモランシーはそれ所ではなかった。 先端を弄られる鋭い感覚と、胸に対する柔らかなタッチ。 不規則に彼女に訪れる痙攣の、小さな波をいくつか越し、最後に来た大きな波の後ぐったりと動かなくなったモンモランシーを見ると、 薄明るいランプの光で、うっとりと脱力した恋人を心行くまで観察する。 一刻も早く繋がりたいと、ギーシュの下半身が暴れ始めていた。 脱力仕切ったモンモランシーの脚を開き、 もしこの指が、アレだったら? それまでぐったりと動かなかったモンモランシーが、ピクリと微かに反応を返したが、ギーシュはまったく気付かず、念入りに入り口を確認したギーシュはおもむろにモンモランシーに圧し掛かる。 敏感な亀頭が僅かに熱を感じただけで、ギーシュは腰が引けそうなほどの快感を感じた。 外れ。 はずれ。 ハズレ。 『い、入れたい……いれ……たい……イレタ……イ……』 入り口に僅かに潜り込む感触が、事の及んだ際の期待を煽り、ギーシュは荒々しく動き始めるが、結果に結びつく様子は無かった。 ――すい、とギーシュの背中に手が回され、軽い力が加えられた。 「モ、モンモランシーそ、そのっ……ごめ……」 情けない気分で謝ろうとするギーシュの唇が、キスで塞がれる。 「ギーシュの意地悪……わたしの『初めて』の思い出、独り占めするつもりだったの?」 酔った様に潤んだ瞳が、じっとギーシュに向けられて、目を逸らせないままのギーシュの身体を、モンモランシーは自分の身体に重ねた。 「モンモランシー?」 ギーシュが落ち着くまで、モンモランシーは抱きしめた。 ほんの少しの間、ギーシュはモンモランシーが主導権を握るとこを期待したが、彼女にその様子は無かった。 「んっ……」 粘膜同士が擦られたときの、モンモランシーの声にギーシュは二人で事に及んでいることを理解した。 襞の間をかき分けているギーシュの背中に、モンモランシーの脚が回されそっと位置を調整する。 「「あ……」」 先が僅かに潜り込む。 「あの……こ、これで……」 ギーシュは無言で頷くと、浮かせたモンモランシーの腰が辛くない様自分の手で支えた。 指で感じていた感触が、ギーシュを包み込む。 火照った身体がギーシュの下でくねる。 ――初めては痛いって聞いていたのに。 モンモランシーは混乱していた。 感じたことのない違和感が、徐々にお腹からゆっくりと這い上がってくる。 (っ! っくぁ……うっ…………ぁ) 腰と腰が密着したときに、何かが捏ねられる感触にモンモランシー何度目かの悲鳴をかみ殺す。 快感にもがくモンモランシーの腕の中に、ギーシュの身体が滑り込み二人は固く抱き合った。 何度も弄られた胸がギーシュの身体を直接感じ、そのまま動き出したギーシュによって胸から絡められた足まで、満遍なく擦られる。 そして、目の前には真っ直ぐに自分を見つめるギーシュの顔。 擦られた部分ではなく、胸が奥から熱くなる。 ――初めてなのに感じで恥ずかしい。 そんな事はどこかに吹き飛んで、無心に彼にしがみつく。 ……いきなり反応が良くなり、飲み込むようにうねり出した肉体に、 ギーシュはあっさりと果てた。 お腹の奥に何かを注がれる生まれて始めての感覚に、モンモランシーの動きがしばし止まる。 自分の身体で好きな人が果てた。 ギーシュもわたしに、気持ち良い事沢山してくれて……それだけで満足…… 「……モンモランシー……逝った?」 自分でするときより、ずっと気持ちが良かったから、 昔キュルケが何か言ってたような…… 女の子同士の話を思い出して、慌てて頷いたが時はすでに遅し。 「が、がんばるからっ、がんばるからね、モンモランシー!」 硬度を保ったままだったギーシュは、歯を食いしばりごつごつと奥を突付く。 初めてのモンモランシーにとって、それは適度な甘い刺激になっていた。 「っ……ま……って……いっ……」 程なくモンモランシーの身体は仰け反り、飲み込んだままのギーシュを強く握り締める。 「……うっ」 感度の上がっていたギーシュはそれだけでまた果てる。 「……ギーシュ……気持ちよか……」 たよ。そう言う前に、いきり立ったギーシュはもう一度腰を動かしだした。 「逝ったフリなんか要らないんだぁぁぁぁ、モンモランシーィィィ! 僕で気持ちよくなってくれぇぇぇぇっ!」 モンモランシーは何か言い募ろうとするが、ギーシュによって強引に奪われた唇は言葉を紡ぐのを禁じられた。 (まっ……て……ギーシュっ! ちょ……つらいのっ……休ませ……てぇ) 「うおぉぉぉぉぉっ!!!!」 ギーシュはとても頑張った。 あまり寝ていないはずなのに、ギーシュの目覚めは良かった。 そっと隣を見ると、モンモランシーがぐったりと眠り込んでいる。 (夢じゃなかったんだ) ほっと一息ついた。 間近で見ることの彼女の寝顔が、昨夜の行為を思い出させて、寝起きだというのに局所に血液を集中させ…… 生唾を飲み込んだギーシュは、かろうじて彼女の身体を隠している布団をそーっと捲ってみる。 (って、だめだぁぁぁ、眠ってる所を襲うとかしたらっ) 最悪怒られて、昨日のことはなかった事に…… 彼女が目覚めるときには側に居たいが、昨日の誘拐劇は彼女を相当疲労させたらしく目覚める様子はまったくなかった。 (疲れてる彼女の邪魔をしないようにしないと……) このままだと起きる前にモンモランシーに襲い掛かってしまいそうなギーシュは、静かに服を着ると起きたときの彼女のために食堂へ何かを貰いに行った。 不機嫌そうなレイナールが、食堂に入るなりギーシュに毒づいた。 「昨日は一晩中地震で、よく寝れなかったな! ギーシュ」 無邪気にギーシュは答えた。 「ギーシュ、おめでとう」 何人かがそう言って、ギーシュの肩を叩く――ちょっと強めに。 「ギーシュ、モンモランシーと結婚するのか?」 浮気性の友人の気まぐれを、密かに皆気にしていた。 しん……と、静まり返った食堂に、ギーシュの声が響いた。 「うん……そのつもりだよ」 起きて、彼女の顔を見たときに……ひょっとしたらもっとずっと前に、 なにより……昨夜の彼女を……他の男に見せたくなかった。 「おめでとう」 一斉に祝福の声が溢れ、ギーシュは仲間たちに笑顔を返した。 そんな中、一人だけギーシュに否定的な目を向けるものが居た。 「……いいのか? ギーシュ」 レイナールは、眠そうな目でギーシュに聞いた。 「も、勿論だよ、レイナール、結婚するからには、浮気とかもね、そのね、しないでね」 ? ――モンモランシーが目を覚ましたのは、昼前だったが目を覚ましたとき最初に見たものはギーシュの顔だった。 「おはよう、モンモランシー」 立ち上がろうとして、自分が何も着ていない事に気付くと真っ赤に成って固まった。 「……昨日、全部み……」 ギーシュは殴られた。そのままベットから転げ落ちてしまったギーシュはよろよろと立ち上がると、真剣な表情でモンモランシーの手を取った。 「モンモランシー!」 真面目な表情で見つめるギーシュの真剣な表情で、モンモランシーは彼の用件を想像して、胸を高鳴らせる。 ――『責任』を取ってくれる。そんなつもりで身体を許して訳ではなかったが、それはとても嬉しいことで…… 「僕を……」 「お婿さんにしてくださいっ!」 「……っ、空気読めっ、ばかぁぁぁぁぁっ!!!!」 モンモランシーはその時の事を、延々彼に怒り続ける事になってしまったが…… レイナールは言ったのだ。 |
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