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Last-modified: 2008-12-11 (木) 22:14:57 (5608d)

虎街道終了後の聖ルティア聖堂

 今、この聖堂には、教皇を始めとするロマリア首脳部他アンリエッタとティファニア、
アニエスがいる。
 そこに、竜に乗っていち早く戦場から戻って来たジュリオが、教皇に報告にやって来た。
「聖下、聖戦の初戦我が軍の勝利で御座います。両用艦隊は撤退、騎士人形部隊は、
 サイトの活躍により全滅、しかしながらミョズニトニルンの捕縛は成りませんでした」

「えっ?」
 アンリエッタとティファニアは、驚きの余り声を発した。
 教皇は、報告を聞いて笑みを浮かべながら
「分かりました。それでは兵の労いに参りましょう。それから夕餉の後、今後の聖戦の
 軍事会議を行う事を各部隊長以上に申し伝えて下さい」
「畏まりました」

「お待ちください」
 退室しようとするジュリオをアンリエッタが呼び止めた。
「今、サイトの活躍、と申しませんでしたか?」
 ジュリオは、アンリエッタの方に向き直って
「はい、確かに」

 アンリエッタは、驚きと困惑と喜びの入り混じった表情で尋ねた。
「聖下、サイト殿は元の世界に帰ったのではないのですか?聖下は、はっきりと彼の故郷
 に帰したと仰ったでは有りませんか」

 教皇は顔色一つ変えずに答えた。
「申し訳有りません。私の説明不足、怠慢でしたね。彼には、世界扉を開き、元の世界に
帰るか、こちらに留まるか選択して頂いたのです。結果彼は、自分の意思で留まる事を
決意なさったのです」

 アンリエッタに怒りがこみ上げて来ていた。
「なぜそのような選択をさせたのです?彼はこの世界の人間ではないのですよ。
元の世界に帰るのが道理の筈」

 やはり教皇は顔色一つ変えず答えた。
「アンリエッタ殿の仰る通りですね。ですが、我々の悲願成就の為には、彼の持つ『力』
が絶対必要なのです」

「それならば彼が帰った後、ルイズに新しく召喚して貰えば良いではないですか!」
 アンリエッタの言葉が批判の色を帯びていく。

教皇は事もなげに言った。
「では、アンリエッタ殿は彼に死んで欲しいのですか?」
 
「なっ!」
 アンリエッタは、絶句した。

「使い魔を新たに召喚するには、今の使い魔が死んでいなければなりません。異世界に
帰っただけでは、出来ないのです」
 教皇の言葉に全く温かみが無かった。

 アンリエッタは、気付いた。教皇達は、もしサイトが元の世界に帰ろうとしたら
 殺すつもりでいた事を。数日前教皇は、「理想の為には手段を選ばない」と言っていた。
 心情はおろか、人の命さえも駒として扱える事を。
「聖下、貴方は本当に恐ろしい方ですわ。とてもでは有りませんが、私のような愚かな
 女王では、全く付いていけませぬ」

「又しても過分なお褒めの言葉を頂き、光栄に存じます」
 教皇は、優雅な礼をよこした。

「すいません。サイトは後どの位で帰ってきますか?」
 今まで蚊帳の外だったティファニアがジュリオに尋ねた。

「あと15から20分程かと。彼は『戦車』と言う鉄の箱に乗っているのですぐ分かる
 筈ですよ」
 ジュリオは、笑みを浮かべながら話した。

 それを聞いたティファニアとアンリエッタは、駆け足で部屋を出て行った。
 その後にアニエスが続く。

「聖下、女王陛下とティファニア嬢は、報告以上にサイトに思いを寄せている
みたいですね」
ジュリオは、笑みを絶やさず話した。

「その様ですね。実に思惑通りです。タキシードと花嫁衣装4着準備出来ていますか?」
「勿論で御座います」
「では、兵を労う傍ら重婚の道筋をつけに参りましょう」
 そう言って教皇とジュリオは、部屋を出て行った。

 才人達は、タイガー戦車でアクイレイアの郊外までやって来た。
 そのまま街には入らず、コルベールは、戦車を止めた。
「如何して街に入らないんです?先生」
不思議に思った才人がコルベールに聞いた。

「この戦車は、重すぎる。このまま何の準備もしないで街に入ったら、石畳の道と戦車の
『キャタピラ』だったかな?両方とも駄目になってしまうからね」
 タイガー戦車の重量は、55トンを超える。無論ハルケギニアには、そんな重い車は、
 存在しない。せいぜい大型の荷馬車程度しかない。(一部に竜が牽引する物も存在)
それ故、タイガー戦車で街に入ったりしたら、あっという間に道路が傷んでしまう。
又、タイガー戦車のキャタピラも信頼性が乏しく、少しでも無理をするとすぐ悲鳴を
上げてしまう。

「仕方ないすっね。それじゃ此処で降りましょう」
 才人がハッチを開け顔を外に出すと、沢山の野次馬がタイガー戦車目指して歩いて来た。
「物好きだな。まっ、ハルケギニアには戦車なんか無いしな」

 ハッチから外に出て、再び野次馬の方を見ると、3人の女性が走ってくるのが見えた。
 一番前が、この世の物とは思えない胸を揺らしながら巫女姿をしている…テファだ。
 次がこれでもか、という高貴なオーラを発している…姫様だ。
 その後ろ影のようにぴったりと付いてくる…アニエスさんしかいないよな。

「如何したんだろ?わざわざ迎えに来なくてもいいのに」
 才人が戦車から飛び降りるとティファニアが抱きついてきた。
「おい!テファ、どうしたんだよ?!」
 ティファニアは、泣いていた。
「テファ、何かあったのか?」

 ティファニアは、徐に顔を上げ、唇を重ね合わせた。
「??????!!!!!!」
 才人は、混乱した。
 何の前触れもなく、いきなりティファニアにキスをされるとは、思わなかったからだ。
 野次馬が大勢いた事を思い出し、ティファニアの肩を掴んで引き離そうとする。
 しかしティファニアは、才人の首に手を回し離れないようにする。
 ティファニアの胸革命が押し付けられ、股間の息子が急成長する。

 ルイズがハッチから外に出て、2人がキスしているのを見て、大激怒した。
「ちょっとあんた達、公衆の面前でなんて事してんのよ!!」
 戦車から飛び降り才人にお仕置きしようとするが、股間攻撃はティファニアまで攻撃
 してしまう可能性が有ったので、杖で才人のお尻を攻撃した。

「この犬ってば、この犬てっば年がら年中サカリまくって!」
 ビシッ、ビシッ才人のお尻を叩く。

「おやめなさい、ルイズ」
 アンリエッタがルイズを止めた。

「でも姫様、サイトがテファとキスしているんですよ。主人として教育しませんと」
 その言葉を聞き、アンリエッタは驚いた。
「ルイズ、貴女サイト殿の記憶消したのでは有りませんか?思い出したのですか?」

 ルイズは、恥ずかしそうに答えた。
「実は、サイトにキスをされたらサイトの記憶が流れ込んで来たんです。そしたら欠落
 した部分がきれいに埋まったんです」

「記憶が流れ込む?そんな事が有るのですか。其れでは全て思い出したのですね?」
「はい、そうです。姫様」
 ルイズは、はにかみながら答えた。

 ティファニアが才人から唇を離し、ルイズの方に向き直り。
「ごめんね、ルイズ。辛い思いをさせて」

 ルイズもティファニアの方に向き直り。
「いいのよ。私が無理言って頼んだんだし、貴女は少しも悪くないわ。そんな事より
テファ、貴女如何してサイトにキスしたの?それに貴女らしくないわよ、こんな大勢の
 前でするなんて、貴女の性格じゃ考えられないわ!」
 嫉妬を多分に含んだ声で問い詰めた。

 ティファニアは、一度俯いた後、顔を上げルイズを見つめた。其の目には強い光が
宿っていた。
「ごめんなさい、ルイズ。私自分の気持ちに気付いたの。『サイトが好き』だって。
多分始めて逢った頃から。貴女がサイトを元の世界に帰したと聞いた後『帰れて
良かったね』という気持ちと、とても寂しい気持ちになったの。そう、心に穴が空いた
ような。そしてサイトが帰らずに此方にいると聞いた時、とても嬉しかった。此処に
来てサイトの顔を見た時、もう抑えが利かなくなったの」

「ま、まあ、あんたの気持ちは、予想は付いていたわ。2カ月近くも一緒に住んで
いたんですものね」
ルイズは、ティファニアの告白を聞き、驚きながらも平静を装った。

 そして、ルイズと一緒にティファニアの告白を聞いたアンリエッタは、才人に近付いた。
 近付いてくるアンリエッタを見て才人は、あせった。以前見せていた甘えるような
 熱っぽいような目をしていたからだ。
 ヤバイ、絶対ヤバイと思った才人は、その場を離れようとした。しかしその背に
 ちくりと刺さるものが有った。振り向くとアニエスが剣を才人の背中に刺していた。

「女王陛下に恥をかかせる様な事をすれば、このまま貴様の心臓を貫く」
 目がマジだった。少しでも動けば躊躇なく実行する。そう確信出来るほどに。

「アニエスさん、この場合姫様を止めた方が…」
 無駄な抵抗と知りつつ才人は言った。

「生憎私は、野暮天ではないのでな、陛下がお決めになった事を邪魔するつもりはない。
 そして邪魔するものは、この剣で成敗する」
 やはり無駄だった。
 そうこうしているうちに、目の前にアンリエッタがやって来た。

 逃げたい、でも逃げられない。そんな状況の中、アンリエッタは、素早く才人の首に
 手を回し、唇を重ね合わせて来た。周囲にはロマリアをはじめハルケギニア各地の
 人々がいた。もちろんトリステインも。
 無論アンリエッタも周囲の状況は、理解している。
 にも拘らず、アンリエッタは、己の衝動に身を任せた。
 ルイズは、2人を引き離そうと思った。しかしアニエスから発する殺気で、身動き
 出来ないでいた。

1分程してアンリエッタは、唇を離した。
「姫様、一体如何したんです?『もう女王の顔しか見せませぬ』って言った
じゃないですか」

 アンリエッタは、目を潤ませながら言った。
「確かに。ですが、私もティファニアと同じ気持ちだったのです。ルイズごめんなさい
 私は、本気に成ってしまいました。もうこの気持ちを止められぬのです」

「姫様…」
 ルイズは、二の句が告げられなかった。スレイプニィルの舞踏会の後、手を出すならば
 相応の覚悟を持って臨むと言った事を思い出した。そして実際に臨んで来た。
 そして自分は、鍵を掛けるのも出すのも姫様の自由と言った事を。

 そして2人が離れると、今度はタバサが戦車から才人に飛び付きキスをした。
「んなっ!」
 暫くすると唇を離し、こう言った。
「私は彼に全てを捧げている。私の全てが彼の物」

ルイズは、怒った。
「キスした理由になって無いじゃない!」

「訂正。嫉妬」
 タバサは、無表情で答えた。

(やっぱりこのちびっ子てばサイトに気が有ったのね。どうしてサイトは、次から次と
 女を落していくのかしら?それも王族ばかり[メイドもいるけど]このままじゃ不味いわ
 全員強敵過ぎる!)

 そこに教皇とジュリオがやって来た。
「やあ、サイト、君は凄いね。王族のハーレムを築き上げるとは」
「失礼ですよ、ジュリオ」
 教皇が窘めた。
「サイト殿、此度の勲功に教皇として重婚の許可を与えます。そうすれば何方も悲しい
 思いをしなくて済むでしょう」

「いいんですか?そんな事して」
 才人は、困惑しながら言った。

「勿論です。しかしながら本日聖戦を発動しました。聖戦終了まで結婚を延ばされたら
 何時になるか分かりません。ですので明日、聖堂で結婚式を執り行います」
 教皇は唐突に宣言した。

「ちょっと待って下さい。幾らなんでも急すぎますよ。特に姫様は、女王ですから
 国のお歴々と相談しなければいけないんじゃないですか?」
 才人の言っている事は正しい。が。

「確かにそうですね。しかしゆっくりしている余裕は無いのですよ。明後日には、兵を
纏めてガリアに攻め込みますので」
つまり明日以外無いという訳だった。
「サイト殿の懸案を取り除く為に私が結婚式の神官を務めましょう。これならば誰も文句
 は、仰らないでしょう」
 教皇は、自らの権威を利用して反対意見を封じる手を打って来た。反対すれば異端
 と成っては、誰も文句は言えない。

「でも、婚礼衣装とか如何するんです?」
「ご心配には及びません。我が国の花嫁衣装は、花嫁の体型に自動的に合う魔法の衣装
 ですので」

「すいません。一番肝心な事を忘れていました。皆の気持ち聞いてませんけど」
 才人は、最後の望みを託して言った。

「確かに。ではお尋ねいたします。サイト殿と結婚したく無い方は、挙手願います」
 誰も挙げなかった。

「では、明日10時から執り行います。詳細はジュリオから伺ってください」
 そう言って教皇は、戻って行った。

      ― FIN ―


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