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Last-modified: 2009-01-09 (金) 06:39:39 (5579d)

ガリア王宮謁見室
居並ぶ重臣達、アンリエッタ、アニエスが見守る中ア―ハンブラ城でタバサ救出の功績
の有った者達の叙勲が行われていた。
次々に略式叙勲が行われ、ガリアのシュバリエに叙勲されていった。
最後に才人の所に来るとタバサは、動きを止めた。
「立って」

 頭の中に?が埋め尽くされながら才人は立ち上がった。
「どうしたんだよ?タバサ」
「シャルロット」
「ごめん、ごめん。シャルロット女王陛下」
「女王陛下は不要」
「へ?でも…シャルロットって呼び捨てにしたら、誤解されるぞ」
 才人が言い終わるや否やタバサは、膝を折り杖を掲げた。

「我、シャルロット・エレーヌ・オルレアン、この命ある限り、サイト・シュバリエ・
 ド・ヒラガに絶対の忠誠を此処に誓うものなり」
 タバサは何の脈絡もなく平然と言ってのけた。

 才人は、慌てて飛びのいた。
「何言ってんだよ?タバ…じゃない、シャルロット女王陛下。お前はこの国で一番偉いん
 だぞ!そんな事したら国中の笑い物になっちまうぞ」

「女王陛下は不要と言った筈。貴方には何度も命を助けられている。貴方に『この命、
貴方に捧げる』と言った。笑い物にされようが、蔑まれようが私は構わない」
タバサの目には何の曇りもない、強い光が宿っていた。この状況でこんな冗談出来る訳
が無い。正真正銘タバサは、本気なのだ。
 どれ程才人が鈍感でもはっきり分かる程に。

「いやまあ…本気なのは分かったけどさ…公の場で言う事無いと思うんだけど…」
 いくら抜けている才人でも、焦っていた。それこそハルケギニアに召喚され事など
 比較出来ぬ程に。

 此処に猛然と抗議する者が割り込んで来た。
「ちょっとタバ…じゃないシャルロット女王陛下、貴女状況って物を考えなさいよ!」
「貴女達は、友人。タバサで構わない」
「じゃあ才人は何なのよ!」
「私の勇者」
 タバサは、ルイズの問い詰めに平然と答えた。

 タバサの返答にルイズは、激昂した。
「あんただって知ってるでしょ。才人は私の『使い魔』なの!」
「勿論、でもそれが何か?」
何の問題が有るのだ?と言わんばかりであった。

「あんたねぇ…。何の考えも無しにこんな事言う筈ないと思うけど、この後どうする
 つもりなのよ?」
 ルイズの中で冷静な部分と怒りに猛り狂った部分がせめぎ合っていた。
 ここは、魔法学院では無い、ガリア王宮なのだ。下手をすれば、アンリエッタ達にも
 累を及ぼす。か、感情的になっては駄目…と
 私の才人に手出したら承知しないからねぇ…である。

「別に…私の決意を表しただけ。彼を助けるのに『状況は問わない』と言ってある」
 口にこそ出さないが、才人がロマリアと戦う決意をした時は、王位を捨てて共に戦う
 事を決めているのだ。この命尽きるまで…。

 だが、重臣達の受け取り方は違っていた。
 彼らにしてみれば「求婚」しているようにしか見えなかった。
 メイジでは無いとはいえ、才人の武勲の数々は、其処らの貴族が束になっても達成不可
能なものばかりだ。王配として何の不足も無かった。
自分達は、噂や報告などでしか知らないが、主君は直接その目で見て来たのだろうから
惚れ込むのも無理からぬ事と考えていたのだ。
障害が多少有りそうだが、ガリアの将来を考えれば、王配の妾にでもすれば、片が付く
そう考える者が殆どであった。

 そしてもう一人の女王は、タバサの誓いに胸が締め付けられる思いであった。
(どうして胸が苦しいの?なぜ?普通は有り得ない光景だけれど、シャルロット殿は、
 今までの御礼以上の意味は無いと言っているのに…心に不安が渦巻いている?どうして
 ?ううん、それだけじゃ無い。もっと別の色々な感情が…一体如何してしまったの?
 分からない…自分の心が分からない…)
 蒼白な顔色に成って行ったのでアニエスが声を掛けた。
「陛下、気分が優れないのでしたら、退出させて頂き、お部屋でお休みになられては…」
「大丈夫です。ちょっと言葉に出来ない気分になってるだけです。体の方はなんとも
 ありませんしね」
 人には相談出来ない様な気持ち…アンリエッタは、己の中で渦巻く感情を持て余しな
がら答えた。

「ご無理をなさいませぬよう。もしもの時は、直ぐお知らせ下さい」
「ええ、分かりました。隊長殿」

(羨ましいわ、ルイズ。そんなに素直に行動出来るなんて…羨ましい?どうして怒って
いるルイズが羨ましいの?本来なら此処は「ルイズ、おやめなさい」と言うべきの筈…
私、怒りたいの?シャルロット殿のことを…別に何も悪い事していないのに…何故怒り
たいの?サイト殿は…焦って戸惑っている…無理もないわね。この様な場所であんな事
されて平気な人はいらっしゃらないでしょうね。あっ、2人を見て笑った。羨ましい…
2人共私の知らないサイト殿を知っているのよね…私の知らない…如何してそんな事
気にするの?もうサイト殿の事は、諦めた筈。あきらめ…られないの?だから私怒りた
いの?…つまり此れは…嫉妬…なの?……嫉妬以外の何物でも有りませんわね。私は、
ルイズやシャルロット殿が羨ましくて仕方ないのね。私は…私は「サイト殿の事が
好き」なのですね。一人の男性として…以前のように頼りたいだけでなく…いいえ違う
わね。もう既にあの頃から好きだったのでしょうね。ウェールズ様の事があったばかり
だからその気持ちを受け入れられなかったのね…。ふふふ馬鹿ね私…今更気付いても、
もう遅いというのに…。今の私に出来る事はただ見てるだけ…見てるだけ…)
アンリエッタは、知らず知らず泣いていた。

「陛下、如何なさいました?やはり部屋に下がらせて頂きましょう…。シャルロット陛下、
 陛下の気分が優れないようなので申し訳ないが退出させて頂きます」
「お大事に」
 タバサがそう言うとアニエスは、アンリエッタを連れて部屋を出て行った。

「姫様大丈夫かなー。随分無理してたらしいけど…ルイズ後で見舞いに行ってやれよ」
「あんたに言われなくても行くに決まってるでしょ。ってあんた行かないつもり?」
「女性の寝室に入るのは不味いだろ?増してや姫様、女王なんだし…」
「それもそうね。まっ、あんたにしては良く気が付いた方ね」

 そんな他愛もないやり取りを暫くしていると、アニエスが戻って来て才人の腕を掴んで
引っ張って行った。
「すまんが、暫くサイトを借りるぞ」
そう言い残して部屋を出て行った。

「アニエスさん、如何したんです?説明して下さい。てゆうか痛いんで離して下さい」
「陛下を慰めてもらう」
「へっ?今何と?」
「陛下を慰めてもらうと言ったんだ。この鈍感の朴念仁が…ったくお前は周りを良く見ろ。
 そうすれば陛下の変化に気付いただろうに…それにしてもお前はとてつもなくでかい
 女難の相が有るんだな…まあ早死にしないよう精々気を付けるんだな」
 そう言って才人は、百メイルは離れた部屋に連れて行かれ

「いいか?陛下の気の済むまでこの部屋を出る事は許さん。ほれっ、さっさと入れ」
 才人は、アニエスに無理やり部屋の中に押し込まれていった。


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