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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:55 (5645d)

15 名前:1/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:01:26 ID:pocecTU4

あたしは静かに泣き続けていた、あれほど馬鹿にしていたのに、あれほど軽蔑していたのに、
何も言わずにあたしを守り、自分を馬鹿にした、別の女を守って死んだ。
ミスタ・コルベール。
手の中で段々冷たくなっていくような気がする、末期のその時に、自分を仇と狙う相手に会ったというのに……どこか落ち着いた死に顔だった。
「ミスタ……。」
致命の傷の他は、僅かにローブが焦げている程度。
あたしとタバサ、二人がかりでも勝てなかった相手に、傷一つ……
「強かったんですね……ミスタ。」
そっと、頬に触れる。
生きていたら、生きていてくれたら喜ぶかもしれないと、その唇に口付ける。
「邪魔。」
えぇ?
いきなりタバサが声をかける、幾らなんでもそりゃないんじゃない?親友。
振り返ると、タバサが杖を構えている。なぜ?
「………。」
無言のまま魔法を開放するタバサ。
ミスタの身体が震えだす。
「タバサっ、なにをっ?」
「キュルケ、モンモランシーの部屋。急いで。」
タバサは黙ったままあたしを見てる。
モンモランシーの部屋?
あ、やっと繋がった、タバサは風をミスタの肺に送り込んで、同時にミスタの心臓も押している。血が噴き出さないのも、傷口の圧迫止血……
なら、後要るのは……
「秘薬、若しくはその代用品!!」
そして、あたしとタバサは知っている。
『フライ』を詠唱、魔法を解き放つ。
全速でモンモランシーの部屋を目指す。
自分でも驚くほどのスピードが出ているが……もどかしい……
部屋の前まで着く、『アンロック』部屋に飛び込むと同時に机の周りをあさる。
無い。
クローゼット。
無い。
手当たり次第に、辺りを掻き回す。
有ったっ、化粧品と一緒に鏡台の前……
掻き回しといてなんだけど、モンモランシー、薬ビンの置き場所としてここはどうよ?
取り合えず、望みの物……惚れ薬の解除薬の残り素材を掴むとタバサを目指して窓を叩き割る。
こっちの方が近いっ。
落ちるようなスピードでタバサの元に、そして、『水の精霊の涙』の薬ビンをタバサに見せる。
「お願い。」
魔力の微妙なコントロールのために、流石のこの子も冷や汗をかいてる。
火の方が得意なんだけどね。
急いで魔法を唱える、まずは傷ついた臓器の修復……、完了。止血、微妙。
……できれば、失った血液と体力の……無理だ……
手の中の薬瓶はあっという間にからになる。
………流石にちょっと怖い……
「どう?」
タバサに恐る恐る尋ねる。
「成功。」
タバサが笑ったような気がする。
緊張の連続から開放されたあたしは、そのまま力尽きた。
「ごっめ〜〜んタバサ、後お願い。」
満足感と共に、意識を手放した。

16 名前:2/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:02:07 ID:pocecTU4
あたしが目を覚ましたのは自分の部屋、タバサがこっちを見てる。
「どれくらい寝てた?」
「ほんのしばらく。」
ミスタ助けるのもそうだけど、その前も緊張の連続だった。
あの傭兵の見えない目を思い出しゾっとする。
起き上がる、煤まみれの服のまま。
そのまま脱ぐ、下着まで代えてタバサのほうを見る。
無言、無感動……男の子なら襲い掛かってきそうなシュチュエーションだけど、タバサにとったらいつものことだ。
「ミスタは?」
「空いてる部屋。」
……確かに、ミスタのあの研究室に、本人とはいえ病人は寝かせられない。
「おつかれさま、……ありがとう。」
無言でタバサが首を振る。
「キュルケを助けた。」
……ミスタ助けたのって、その前に私を助けたから?
うわータバサ可愛い。
「キュルケ……痛い。」
思わず頭をぐりぐりと撫でてしまう。
「みんなは?」
「あのあと、点呼、各自解散。」
無事を確認した後はひとまず解散か。
「生徒に死者なし。」
よかった……
「教師、少なくとも死者一名。」
え?あの後誰かなくなったの?
「炎蛇のコルベール。」
……ミスタ?
「タバサ、あんたさっき……」
「生きてる。」
……は?
「生きてるけど、死んでることにしたの?」
「見つからない所に隠しただけ。」
……?
「なんで?」
「銃士隊、隊長。」
……あの女が居たからか……でも大丈夫そうな気が……
「私なら……復讐は止めない。」
……この子も復讐したい相手がいるから……気を使って隠してくれたのね。
「ありがと、タバサ。」
「先生、隣」
……隣?ヴァリエールの部屋……確かに空いてるし、大公家令嬢の部屋ならそうそう捜索もされないでしょうけど……
「ヴァリエールが知ったら怒るわよ。」
ベットを男に勝手に使わせたなんて聞いたら、絶対怒り狂う。
「内緒。」
タバサがちょっと笑ってるのを見て、あたしはやっと一息ついた。

17 名前:3/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:02:39 ID:pocecTU4
ヴァリエールのベットで眠るミスタ。
部屋の主が見たらなんて言うかしらね。
意味のないことを考えながら、ミスタの側による。
浅い呼吸、ぐったりとした体。
傷は取り合えずふさがっているようだけど、要安静って所かしら?
文字通り、死んだように眠っている。
少なくとも彼は一度死んだ、それでも致命傷を負った彼が気にしたのは。
「……大丈夫か?」
……人の事だった。
馬鹿じゃやなかろうか?
少なくとも、ほんの少し前まで、あたしのこの男に対する評価はとても低かった。
……そう、低かった。過去形。
「……おや、お早う御座います、ミス・ツェルプストー。」
気配を殺していた私に気付いて目が覚めた?
つくづく見かけ通りではないこの教師にまた驚かされる。
「おはようございます、ミスタ。」
「……起き抜けに、こんな美人が見えると言うことは、此処は地獄ではないようですね。」
ミスタにお世辞言われるとは思わなかった。
「えぇ、ヴァリエールの部屋ですわ、ミスタ。」
「……死に損ないましたね、私は。」
溜息と共に呟く。
「……助けなければ良かったですか?」
声が堅くなっているのがわかる、いっちゃあなんだが、苦労した。
「いいえ……貴方が?」
「あたしとタバサが、です。次は見捨てることにしますわ。」
本気で言う。
助けた命を粗末にするような人は、助けた人間を軽視している。
「いえ……ありがとう御座います。……感謝していますよ、ミス・ツェルプストー。」
ほんとかしら?
「今日の授業はどうなっておりますかな?」
この男、あんな騒ぎの後で、普通に授業をする気らしい。
肝が座っているのか……単に浮世離れしてるだけか?
たぶん後者だ。
「聞いて来ますから、ここで寝てなさい、ミスタ。」
ここまで世話しているのだから、切の良い所までは面倒見るとしよう。
「あと、彼女の居場所を聞いてきていただけますかな?」
彼女?
「銃士隊の?」
「えぇ……会わないとなりませんからな。」
「……会ってどうするつもり?」
生きてると知れば、復讐に来るかもしれない。
「彼女の望みどおりに。」
………死ぬ気かしら?
「私はそれに見合うだけの事をして来たのですよ、それが望みなら、抵抗しませぬよ。」
にこやかに、だが強い意思がこもっていた。。
「私には夢がある、先に進むべき道も見えた。」
いきなりミスタが語りだした。
「20年かけた研究も、進むべき道がやっと見え始めた、手がかりも掴んだ。成し得る可能性は今や数え切れぬ。」
うれしそうに、夢を語る。こんな男は嫌いじゃない。
「だがね……、だがね、君。私は昔、そんな夢を大量に摘んだのだよ。」
ダングルテール?だったかしら?
「だから彼女が望むなら、私の夢を摘まれるのも、私に相応しい物なのだろう。」
……この男、強いのか弱いのか分らない……
「聞いとくわ。」
それだけ言って部屋を出る。
これ以上聞くと、自分の足元の何か、が崩れそうだった。

18 名前:4/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:03:10 ID:pocecTU4
食堂は水を打ったように静まり返っている。
初めて間近に触れた殺意達、傭兵の集団によってもたらされたショックが、未だ消えていなかった。
ま、しょーがないわよねー皆お坊ちゃん、お嬢さんだし。
席に着くと、モンモランシーが静かに泣いていた。
「おはよ、モンモランシー。」
「……おはよう、キュルケ。」
く、暗い。
「………コルベール先生……助けられなかったわ。」
いきなりモンモランシーが語りだす。
いや、死んでないし。
「私が……私がもっと水の扱いに長けていたらっ……。」
……ヤバイ、早く言い出さないと言えなくなりそうだ。
「あの傭兵達、私の部屋まで引っ掻き回して秘薬を漁ってたみたいだったわ。」
あ、ごめん、それあたし。
「自分達は助かろうとしたのね……許せない。」
……傭兵達が水の魔法使いのあんたの部屋、正確に知ってるわけないじゃなーい。
言えない。
「決めた、キュルケ。」
「え?何を?」
「私もっと勉強する。」
……そりゃよかったわね。
「私の周りに悲しみがあるのを許さない、そう決めたの。」
決意を込めた目で、あたしを見つめるモンモランシー。
……しまった、もう言えない。
「そ、そういえば、銃士隊は?あの人たちも怪我しなかった?」
話を逸らす、……折を見て話そう、ミスタのことは。
「え?えぇ、彼女達のうち重傷者は治療中だけど、もうすぐ補充が来るらしいわ。」
「補充?」
「アルビオンがここも狙う以上、警備を固めるってことらしいけど、……あ、あの人がその取りまとめの隊長らしいわよ。」
……イヤな予感がする。
モンモランシーの指差す方向には、矢張りあの女がいた。
「彼女はここに泊り込みですって。安心よね。」
……どうしましょう?

19 名前:5/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:03:41 ID:pocecTU4
黙々と食事をするタバサに、こそこそと話しかける。
「ミスタを動かすわよ。」
無言で頷く。
目は銃士隊の女を追ってる。
それだけじゃないんだけどね。
「火の塔、シルフィード。」
「了解。」
そのままあたしはヴァリエールの部屋に向かう。
何故か廊下でミスタに会った。
「……ミスタ?」
「おや、ミス・ツェルプストーごきげんよう。」
すっとぼけた男。
「寝てなさいって言いませんでしたっけ?ミスタ。」
「いや、まぁ、もう動けますし……。」
呆れた男、血が足りないのかふらふらしてるくせに。
「で?どちらにいかれるんですか?ミスタ・コルベール。」
頭痛がする気がした。
「いえ、彼女の所に……どちらですかな?」
学院中をうろうろしてます、ともいえないわねー。
「まだ探している途中ですけどミスタ・コルベール。」
ずいっと近寄る。
「病人は大人しく、安静に!」
「いや、しかしですね。」
おろおろと答える……これがさっきと同じ人間だろうか?
「大体、会ってどうするつもりです?」
「けじめをつけるつもりですよ、ミス・ツェルプストー。」
「……まぁ、まぁまぁまぁ、男が女に会ってけじめをつける?」
「え、えぇまぁ……なにか?ミス・ツェルプストー。」
「ミスタ、プロポーズでもなさるのかしら?」
「は?」
「だってぇ、ミスタ独身ですしねぇ、浮いた話の一つも無いし。」
全力で誤魔化そう。
「彼女、美人でしたしねぇ、ミスタああいうタイプがお好み?」
「いえ、そうではなくっ。」
「あら?彼女、美人じゃありませんこと?」
「いえ、確かに綺麗に育っておりましたが。」
「ほら。」
「ですからっ、ミス・ツェルプストーほら、では有りませんぞ。」
ちょろい。
「まぁ、考える所は有るのでしょうけどミスタ。」
「ですからミス・ツェルプストー貴方は何か誤解を……。」
何とかなるかしら?
「まぁまぁ、ミスタ重要なことですし、ここはちょっと落ち着いて。」
「おぉぉぉ、落ち着くのはミス・ツェルプストーですぞ、私は決して……。」
「まずはちょっと距離を置いて考えを纏めませんこと?外にタバサのシルフィードを待たせてありますの。」
「で、ですから落ち着くことなぞ何もないのですよミス・ツェルプストー。」
あたしは黙って、ミスタの腕に絡みつく、もちろん胸は押し付ける。
「ミミミミミミス・ツェルプストーーー。」
吠えてる、ふっ、これで冷静だった男は居ない。
「さぁさ、ミスタ、こちらですわ。」
「ででででですからっ、ミス・ツェルプストーあぁぁぁぁなたはぁぁ。」
とかいいながら、視線が谷間ねミスタ。
もうちょっとおしつける、あ黙った。
抵抗しなくなったミスタをそのまま外に連れ出す、楽勝。

20 名前:6/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:04:13 ID:pocecTU4
タバサがシルフィードに荷物を括り付けていた。
「な、ウィンドドラゴン?いったいどこまで行くつもりなんですか?」
あ、決めてなかった。
「城下で良いかしらね?」
「却下。」
「なんで?」
「戦時中、構成が怪しい。」
……美女に美少女にさえない親父………確かに怪しすぎる。
「き、君達、何故どこかに行くことが前提なのかね?」
ミスタが何か喚いてるけど、無視。
「トリスティンの中はみんなそんな感じか……、国外…ゲルマニアか、ガリアか……ってどこも同じじゃない。」
「うち。」
あぁ、実家とかなら大丈夫か。
「いいの?」
「シルフィードなら一日。」
まぁ、馬車でも2,3日の距離だしウィンドドラゴンなら早いだろう。
「……いや、時間の問題じゃなくて。」
「説明、任せる。」
いや、でも……
「私も助かった、一つ借り。」
義理堅い子、いいか、良い機会だから全部説明しちゃって味方を増やそう。
「あの、ミス・ツェルプストー話が見えないのですが?」
ミスタがおろおろしてる。
「まぁまぁ、ミスタ、こちらですわ。」
シルフィードの方に押す。
「お二人とも私の話を聞いておりますか?」
シルフィード浮上
「あぁぁぁぁ、そもそも先ほどの彼女は。」
「まぁ、ミスタ彼女だなんて、焼けますわね。」
「ちがっ、ミス・ツェルプストーまだその話引っ張りますかー。」
ばたばた暴れている、なんにしろ距離さえとればこっちの物だ。
「あらー、おちてしまいますわ。」
ぴったりとミスタに身体を寄せる。
「ミミミミミス・ツェルプストー。」
初なミスタ。
「いや、私は、ともかく、戻って、話が。」
「あら、お話ならここでも出来ますわよ。」
「ですから、貴方にではなく、彼女に。」
「まぁ、あたくしではご不満かしら、ミスタ・コルベール。」
更に密着する。
「でででで、ですからっ、そのようなお話ではなくですね。」
しっかり抱きしめていると、いきなりミスタが脱力する。
「あら?」
「怪我、直ってない。」
…………無理してたのね。
「ま、丁度いいわよね、静かになったし。」
無言でタバサは本を読んでる。
シルフィード勝手に飛ぶからいいけど、器用だ。
「ま、近づいたら起こして貴方の実家の説明でもしましょ。」
「まかせる。」
どう説明しようかしら?
悩むあたしの腕なのかで、ミスタの体温が下がってる気がする。
うーとか、あーとか言ってる、体力本気でギリギリでしたのねミスタ。

21 名前:7/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:04:44 ID:pocecTU4
「うぉぉぉぉん、そんなっ、そんなことがあったのですなっ。」
ミスタが号泣してる。
「つらかったですな、タバサさん、いやミス・オルレアン。」
「こっ、これからは私を、父と思っても……。」
「いや。」タバサはにべもない。
「もーすぐつくわよー。」
空から見るのは始めてとはいえ、一度は通った道だし。
もう夕方だけど、見通しはなかなか良い。
「ど、どこにですかな?」
「ですから、元オルレアン公邸ですわ。」
銃士隊の女が学園から居なくなるまで、ミスタにはここで大人しくしてもらおう。
「な、ななな何故いきなりそんなことに?」
理由決めてなかったわね……
「疎開?」
「何故疑問系?いえ、そもそも授業がありますゆえ。」
「看病?」
「オルレアン夫人のですかな?誰も看病する者はいないのですかな?」
「……だめ?」
おっ、ナイス助け舟タバサ。
「い、いえ駄目ではありませんが。」
「……だめ?」
「………わかりました。」
……甘いわねーミスタ。
「んじゃ、そゆことで。」
「ミス・ツェルプストー、ですから何故そんなに行き当たりばったりなのですかな?」
タバサの指示でシルフィードが、降下に入る。
「きゃあぁぁぁぁぁ、ミスタァァァ落ちますわ。」
問答無用で抱きつく。
「ミミミミミス・ツェルプストーーーー。」
おほほほほ、ミスタが私に口答えなんて、10年早い、
若しくは20年遅い、若い頃は格好良かったのかもしれませんもの。
でも今は赤くなってるハゲ親父、タコの様。
追及をかわすため、ぐいぐいと身体を押し付ける。
ミスタは既に真っ赤になって声もない。
「降りる。」
まもなくシルフィードが着地するようだ。
しっかりと抱きつく、衝撃。
「ぐえ。」
あら?今の泣き声何かしら?
「キュルケ、傷口。」
「あら?」
抱きついた所が傷口だったみたいね。
「血が出てる。」
「……着地の衝撃で傷口が開いたようね。」
うん、きっとそう。
タバサも何も言わないし、そうに決まってる。
「何事ですかな?」
わたわたとミスタ・ペルスランが出てくる。
まぁ、いきなりドラゴンが着地したら慌てるだろう。
「私」
タバサがひょいっと、目の前に着地した。
「お、お嬢様、お帰りなさいませ。」
とりあえず挨拶、驚いてても礼を忘れない、良い執事ね。
「お客。」
私を手で示すタバサ。
「はぁ〜い。」
ひらひらと手を振るあたし。
ミスタ・ペルスランは驚いたようにこちらを見た後、
「ではお部屋の用意をいたしますゆえ、これにて。」
引っ込んでいった。

22 名前:8/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:05:17 ID:pocecTU4
通された応接間で、ミスタが泣いてる。
「うぅぅぅ、流石にちょっとひどいですぞ、ミス・ツェルプストー。」
確かにちょっとひどかったかも。
「ごめんなさい、ミスタ。」
こういう時はしおらしく、上目遣いに相手を見る。
もちろん目は潤ませる。
「あたしったらつい……、ごめんなさいミスタ。」
ここで目を伏せる。
「い、いいえミス・ツェルプストー分っていただければよろしいのですよ。
ちょろっ。
ガチャリとドアが開いて、ミスタ・ペルスランが入ってくる。
「皆様、お部屋の準備が出来ました。」
ミスタが、すっと立ち上がって一礼した。
「始めまして、私トリスティンで教師を務めております、
炎蛇のコルベールと申す者でございます。
本日は急な来訪に部屋まで用意していただいて、感謝の念に絶えませぬ。」
ミスタ、馬鹿丁寧ね。
「これはご丁寧に、私こちらで執事を勤めさせていただいております、ペルスランと申す者です、いつもお嬢様がお世話になっております、今後ともよろしくお願いいたします。」
挨拶しに来たわけじゃないのに……、
「タバサ……シャルロットは?」
ほっとくと、いつまでも続きそうなので、遮った。
「……お嬢様は……奥様の所です。」
「私もご挨拶に伺いたいのですが?」
……ミスタにもタバサの母親が会話できる状態じゃないのは言ったはずだけど?
「申し訳ありませんが……」
「いや、少々思う所ありまして、ミス・オルレアンとミセス・オルレアンがいらっしゃる所にぜひ立ち会いたいのですが。」
……どういうつもりかしら?
「分りました……こちらです。」
ミスタ・ペルスランが案外素直に頷いた。
案外彼もずっと何とかしたかったのかしら?
廊下を進んでいくと、物音が聞こえ始める。
何かが割れる音や、壁に物がぶつかる音、慌ててあたしは駆け出した。

23 名前:9/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:05:55 ID:pocecTU4
「下がりなさい、私のシャルロットは渡しません。」
細身の女性が、タバサに……自分の娘のシャルロットに物を投げつけている。
タバサは避けもせずにじっと耐えていた。
「……っ」
私が踏み込もうとする所を、ミスタ・コルベールが片手で制した。
「失礼いたします、ミセス・オルレアン。」
驚いた夫人が、一瞬止まった隙にミスタは言葉を滑り込ませる。
「私、トリスティンで教師を務めておりました、コルベールと申す者です。」
「きょう…し……?」
「はい奥様、魔法の名手と名高い、オルレアン公のご息女がこちらにいらっしゃると伺いまして、家庭教師などいかがかと?」
「か……てい……きょうし?」
「はい、お嬢様もそろそろ、学園に来られる頃かと思いまして、僭越ながら足を運んだ次第。」
「……シャルロットはどこにもやりませんっ。」
夫人が怒鳴った、
「えぇ、ですから家庭教師に参ったのですよ、この屋敷から出ずに、大公家令嬢として相応しい教育を身に着けるため……ですな。」
「あのひとの……むすめに……ふさわしい?」
「えぇ、オルレアン公の英名は遠くトリスティンまで届いておりますからな。」
「……まぁ、トリスティンまで?」
驚いた、会話してる、もっと混乱してると思ってた。
「えぇ……今すぐにお返事をいただこうとは思っておりませぬ、また後日お返事いただけますかな?」
「……。」
ミスタが少し間をおいて、
「ところで。」
タバサの背中をそっと押す。
「こちらは、お嬢様がお気に入りだという、タバサちゃんではありませんかな?」
驚いたように、自分の手の中のタバサと……、ミスタの示すタバサを比べる。
「ミス・オルレアンは片時も、貴方のプレゼントしたお人形を離さないとか。」
「え、えぇ……そうね……シャルロットはアレが……おきにいりで……。」
「ここにあるのは、おかしいですな、そちらにお持ちしますゆえ、シャルロット様にお渡し下さい。」
ミスタはなにをするつもりなんだろう?
タバサを、夫人の手が届かない所に、そっと押しやった。
そしてミスタが十分下がると、夫人は慌てて……
タバサを抱き取った。
…あ、
タバサの顔が泣きそうに崩れている。
……母親に抱きしめられるの……あの子何年ぶりなのかしら?
「ではこれにて、お返事の方はまた後ほどうかがいに参りますので。」
タバサを置いたまま……ミスタが部屋から立ち去った。
「行きますよ、ミス・ツェルプストー。」
部屋を聞いて、そちらに向かうミスタ・コルベールにミスタ・ペルスランはいつまでも頭を下げていた。

24 名前:10/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:06:26 ID:pocecTU4
あたしのために開けられた部屋で、ミスタのことを考える。
正直ここまでつかみ所がないとは思わなかった。
ここに着いた直後くらいまでは、今朝のことが夢だって言われても、信じたと思う。
でも……さっきのミスタはちょっと格好良かった。
さて、興味があったら取る行動は決まってる。
今は人も減っているとはいえ、大公家、客室に備え付けの浴槽が有った。
水を張って、杖を一振り。
あっという間に、お風呂完成。
手早く服を脱いで、旅の埃を落とす。
お湯を浴びる。
ゆっくり温まってから、
髪を洗う。
念入りに肌を磨く。
ミスタの好みのシュチュエーションが分らないけど……
まぁ、大丈夫でしょう。
だって、あたくし魅力的ですもの。
隅々まで綺麗になる、ばたばたして着替えも持ってきていないので、部屋付きのバスローブを羽織って、姿見に向かう。
うん、問題なしっ、魅力的ね。
さあ〜って、ミスタの部屋に向かいますか。
もちろん、髪は適度に濡れて、身体は十分火照ってる。
ふっふっふ、これに抵抗できたら男じゃないわよ、ミスタ・コルベール。

25 名前:11/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:06:58 ID:pocecTU4
気配を殺して音もなく、窓からミスタの部屋に滑り込む。
「誰ですかな?」
あら、ばれた?
「あたしですわ、ミスタ・コルベール。」
言いながら、ベットの方ににじり寄る。
「今日はありがとうございました、お礼がまだでしたので。」
「いいえ、ミス・ツェルプストー私も助けていただきましたし、おあいこですよ、何より私は学園の生徒諸君の役に立つことがうれしいのですよ。」
ニコニコと言葉を続けるミスタの方にそのまま近づく。
「こういった、お礼はお嫌かしら?」
ミスタの視界に入ってるのを確認にて、そっとローブをずらしていく。
「ミミミ、ミス・ツェルプストー!」
そのまま、脱ぎ捨てて、ベットの上のミスタににじり寄る。
「ミスタ、あたしをはしたない女だと……」
いきなり布団が被せられた。あら?
「いいいいい、いけませんぞ、ミス・ツェルプストー、まずですな、私と貴方は20以上も離れておりますしですな、なによりも教師と生徒、このような不埒な行いは成りませぬ。」
「いいえ、ミスタ全ての障害は情熱の前には無力ですわ。」
「じょじょじょじょ情熱ですと。」
「ええ、ミスタ、私の二つ名は『微熱』つまり情熱、全ての問題を押し流して、運命に身を投じるのですわ。」
布団をかぶったままにじり寄る。
「しっ、しかしですな、ミス・ツェルプストー貴方は毎週、運命の恋とやらで授業を休んでおりませんでしたかな?」
案外手ごわい。
「キュルケ……と、呼んでは下さらないのかしら?」
「しかしですな、ミス・ツェルプストー。」
「それとも……ミスタあたしに興味ございませんの?」
「興味ですと?」
「えぇ、興味、あたしはミスタのことが知りたいですわ。」
布団をかぶったまま、にじり寄るあたしをミスタは手で制した。
「ミス・ツェルプストーは興味でこちらに?」
「あたし、貴方に恋してますの、それを興味と呼ぶのなら、確かにそうですわ。」
もっとガツガツしてると思ったら、思いのほか手ごわくて楽しい。
「ミス……たしかに貴方は『微熱』のキュルケですな。」
静かにミスタが呟く。
「ミス・ツェルプストー、今日は帰りなさい。」
驚いた、拒否されるとは思わなかった。
「貴方のそれは、情熱では有りませんよ、ミス・ツェルプストー。」
どういう意味かしら?
「男は独占欲が強い、ミス、いつか貴方の見出す男が、そうであったとき、貴方を傷つける。貴方が言うほどの情熱に身を焦がしたとき、後悔しないとも限りません。」
……
「あたしの情熱を否定なさるの?」
あたしは怒りを覚えていた、生まれて初めてかもしれない強い怒りを。
「貴方か御自分で仰ったのですよ、『微熱』とね。」
私が誇りとする二つ名を軽んじられてまで、ここに居る理由はない。
かぶっていた布団をミスタ・コルベールにぶつける。
「うわっ、」
もがいてるが、知ったことか。
脱ぎ捨てたバスローブを拾い、そのまま部屋を出る。
「おやすみなさい、ミス・ツェルプストー。」
ミスタの声が聞こえたけど、無視してあたしは自室に駆け込んだ。

26 名前:12/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:07:30 ID:pocecTU4
ひたすら夢見が悪かった。
瞳のない目が、あたしを焼き尽くそうとじっと睨んでる。
そんな夢だった。
「あぁ、もうっ……。」
イライラする、昨日はなかなか寝付けなかった。
髪を纏めながらベットを出る。
折角なので気分転換に入浴。
着替えがいつの間にか用意されている辺り、恐るべしミスタ・ペルスラン。
やっと人心地付いて、部屋を出る。
廊下でミスタ・ペルスランと会った。
「お早うございます。ミス・ツェルプストー。」
朗らかに笑う、ミスタ・ペルスラン…始めてみたかも。
昨日のことで機嫌が良いんだろう。
「タバサ……シャルロットは?」
「奥様とご一緒です、先ほどミスタ・コルベールが一度奥様にお会いして、お嬢様を引き離し、食事を召し上がっていただきました。」
……そうか、タバサのままじゃ食事も出来ない。
「……元気?シャルロット。」
「えぇ、えぇ、それはもう、嬉しそうで。」
自分のことのようにミスタ・ペルスランは笑み崩れる。
……邪魔もしにくいわね。
「食事は部屋に運んでいただけるかしら?」
「承知いたしました。」
昨日の効果かしら?前に来たときよりずっと腰が低い。
シャルロットがその調子だと、シルフィードも使えない。
あたしも暫くここに足止めか……
様子を見に夫人の部屋に行って見る。
意外なことに笑い声が聞こえる。
「えぇ、そうですのよ、主人は人望も厚くって。」
「そうでしょうなぁ、シャルロットさんを見ていれば分りますよ。」
げ、ミスタ。
こっそり覗くと、タバサ……シャルロットを抱いた夫人とミスタが談笑してる。
タバサは人形のようにじっとしているが……
あーあれは、にやけてるわね。
あたしはあの子の表情が読める。
そのまま暫く廊下で聞き耳を立てる……
…よく相手できるわね、ミスタ。
ずっと聞いていると、話は破綻しているし、同じ話も繰り返している。
ミスタは我慢強く相手しているけど……
あたしには無理ねー。
もう一度こっそり覗くと、今度はタバサがあたしに気付く。
そっと手を振って、合図する。
…おぉ笑ってる。
身動きできないタバサが、表情だけで返事してくれた。
………そんなに急ぐ理由もないし、ここで邪魔するのも野暮よね。
しばらくここでのんびりすることに決めて、あたしは部屋に引き上げた。

27 名前:13/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:08:00 ID:pocecTU4
何もないまま、2,3日が過ぎた。
相変わらず寝つきは悪いし、ろくでもない夢を見る。
タバサとはたまに折を見て話す、段々明るくなるあの子が嬉しい。
ミスタとはあれから一度も話していない。
話しかけては来るけど、無視。
こんな美人に言い寄られて、断る馬鹿にかける言葉なんかない。
とはいえ……
「退屈ねー。」
はっきり言ってやることがない、出会いを求めて外に出ようとも思ったけど…
「タバサの実家の客人が、……ってのは外聞悪いわよね。」
そういうわけで、自主的に軟禁状態だ……。
日に日に元気になっていくタバサを見ていると、立ち去るのも気が引けた。
最近の日課は、屋敷内の散策。
これくらいしかやることがない。
向こうにミスタとタバサが居る……
あら?タバサが頭を下げている。
驚いて、そっと忍び寄る。
「お願いします、先生。」
「しかしですな、ミス・オルレアン……。」
タバサまで告白してるのかしら?
「でも、母さまこの二、三日でずっと元気になりました。」
タバサがこんなに喋ってるの見るの始めてかも。
「お願いです、母さまにずっと付いていてくれませんか?」
え?
「話をする相手もいないので、老け込んでいただけですよ。」
ミスタが答える。
「毎日、誰かと話したりすれば、少しはましに成るのではありませんかな。」
「でも、そんなの先生しか……。」
タバサがミスタにすがり付いてる。
「お願いです、先生。なんでもしますから、ずっとここに居てください。」
タバサが必死だ。
「いや、しかし………。」
ミスタが悩んでる……私の誘いには乗らなかったのに…ムカムカする。
「どうすれば……いいですか?」
タバサの目が涙で濡れていた……かわいー
あたしが男なら、既に美味しくいただいてるに違いない。
「ミス・オルレアン、女性が軽々しくなんでもする、等と言うものではありませぬよ。」
このヘタレハゲがっ。
「ミセス・オルレアンについては、おいおい考えましょう。」
「でも……」
「大丈夫ですよ、急に出て行ったりはしませぬよ。」
タバサが黙って頷いた
「さ、ミセスがお待ちでしょう、行きますよ。」
ミスタがタバサを連れ出していたらしい、食事か何かだったんだろう…
でも…
自然に伸ばされた手を、おずおずと取るタバサが可愛くて……
胸の奥がなぜか痛かった。

28 名前:14/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:08:33 ID:pocecTU4
今日もまた寝付けない、ここに付いてから何故か深く眠れなかった。
窓の外を眺める……
あら?
何か動いた、寝巻きのままそっと窓に近寄ると、ミスタだった。
濃い灰色のローブを着たミスタが、庭を走っていた……
こんな夜中にどこへ?
興味がわいたあたしは、こっそり後を付け始める。
十分に距離をとって……ばれない様に、ミスタがかなり鋭いのは実証済みだ。
……こんな夜中に、どこに行くのかしら?
………まさか、昼の告白聞いて、逃げる?
それとも……タバサが抵抗できないのをいいことに……いや、それはないか。
暫く走っていたミスタが唐突に立ち止まって、庭木の陰に隠れた。
なにかしら?
あたしも物陰に隠れる。
暫くすると、数人の人影が庭を屋敷の方に向かって歩いていく。
走らない、足音を立てないように。
何より暗闇では早く動く方が目立つ……プロかしら?
目的は……帰省しているタバサ?
いきなり、最後尾を歩いていた人影の片手が、炎に包まれる。
「こんな夜分に何用か知れませんが、引いていただけませんかな?」
ミスタの声……内容も、どこまでのんきな……
侵入者たちが散開する、メイジ相手に密集しない……やはり手馴れている。
ミスタのほうが聞こえたであろう方向に、バラバラの方向から二つの人影が殺到する。
……あぶないっ、声が出そうになる。
が、それらしい茂みには誰も居ない。
確かに声はそこから……風の魔法!
まったく違う所に居た、人影がまた炎に包まれる。
……利き手だけ、この上ミスタはまだ手加減をしているのね。
片手を焼かれた男が、何か指示を出した……
雑魚を無視して指揮官だけ狙ったのねミスタ……
だがそれが裏目に出た、指揮官が示したのは魔法が飛んできた方向……
ミスタはそこに立っていた。
「引いていただけないのですかな?」
喋った、幻でもなく確かにミスタはそこに居る。
無傷の侵入者がいっせいにミスタに向かう。
詠唱する暇がないっ。
「残念です。」
それだけ呟くと、杖を小さく振った。
呪文なし?
違った、単にさっきの魔法が終了していなかった。
指揮官の腕を包んでいた炎が伸び上がり、踊るように次々と侵入者の腕を焼いて行く。
まるで、闇夜に炎蛇が踊るようだった。
「……人を殺したくありません……引いていただけますね?」
無言で、よろよろと侵入者達は去っていた。
格の違い……とでも言うのだろうか?
幾らやっても無駄なのは、傍から見ててもよく分った。
全員立ち去るのを見守ってから、ミスタが屋敷の方に向かう……
その、無表情な目を見たあたしは……
あの恐怖を……自分に向けられた杖を思い出し……
後ろも見ずに駆け出した。

29 名前:15/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:09:15 ID:pocecTU4
ここ数日見続けていた夢を思い出した。
メンヌヴィルと呼ばれた男が、あたしに杖を向ける所で目が覚める……。
ここ数日ずっとそうだった、自覚してしまった今、迂闊に寝ることも出来ない。
身体がじっとり汗ばんでいる。
部屋はまだ暗い、……闇の向こうにあいつが潜んでいる気がする。
あわててあたしは、ランプに火を灯す。
あんな恐怖は初めてだった……
落ち着いてしまった今、思い出すだけで身がすくんだ。

結局眠れず、朝になった。
ミスタが廊下を歩いていた、こちらに気付くと、
「おはようございます、ミス・ツェルプストー。」
「昨日はご活躍でしたわね、ミスタ・コルベール。」
……多分気付かれているから、見ていたことは隠さない。
「……暴力は嫌いなのですがね。」
見ていたことを知っているから、否定もしない。
「あれはなんですの?」
「……ミスタ・ペルスランによると、帰省中にはたまに有ったようですな……」
「どうしてですの?」
「ミス・オルレアンが応戦していたらしいのですがね……
目的は、ミセス・オルレアンです。」
?どういう事?
「ミス・オルレアンが夜中に魔法で暴れるのが、彼らの目的です。」
「なぜ?撃退されるのが目的なの?」
「それなりに魔法を使って、ミセスが目撃したら引くのですよ、後の残るのは破壊された跡と、魔法を使ったミス・オルレアンです。」
「……じゃあ……刺客扱いされてるのって…。」
「彼らの努力の賜物ですな。」
吐き捨てる様に言った。
「ミスタ・ペルスランから話を伺っていたので、先制させて頂きました、これで暫くはこないでしょうな。」
こともなげに……タバサ相手に、誰も脱落せずに引ける集団だったのだ、それを…
やはり、底が読めない男だ。
「しかし、ミス・ツェルプストー、レディが夜中に出歩くのは感心しませんな。」
「あら?この屋敷で何か危険が有りまして?」
「そういう問題ではありませんよ、嗜みとしての……」
何か続いてるけど、無視。
昨夜とは打って変わった様子のミスタをじっくり観察する。
確かに、ぱっと見は冴えない親父のまま……
でも、タバサのために一生懸命動き回ってる……
ちょっと悲しくなった……あれ?なぜ?
「聞いていますかな?ミス・ツェルプストー。」
「えぇ、もちろんですわ、ミスタ。以後気をつけますので……。」
内容分りませんけどね。
「よろしい、では私はミセス・オルレアンの所へ……。」
「まあ、こんな朝早くから……ミスタ、未亡人好きですの?」
「ミミミミス・ツェルプストー。」
茶化す
「まぁ、タバサの母親だけ有って、磨けば光りそうですものね。」
「いえ、決してそのような……」
「タバサも可愛いし……親子丼ねらいかしら?」
「なぁっっっっ、ちがっ、」
「あらぁぁぁ、ミスタ意味分るんですのねー。」
パクパクと口を開閉、喋れなくなった。
ここ暫くの鬱憤を晴らすように、あたしはミスタをたっぷりからかった。

30 名前:16/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:09:47 ID:pocecTU4
「キュルケ、大丈夫?」
タバサがあたしに問いかける。
「んー、ちょっと寝付けなくてね。」
夢を自覚してから数日、あたしは一回も熟睡してない。
「そんなことより、あんたの方は?母さまに甘えてる?」
最近この話を振ると、嬉しそうに笑うタバサが見れてうれしい。
「そんなこと、じゃないっ。」
あら?いつもと反応が違う。
「自分ばっかり嬉しくて……キュルケの様子が変なの、先生に言われるまで気付かなかった……」
え?
「言われて見たら、キュルケ……疲れてる。」
「ミスタが?」
無言でタバサが頷いた。
「大丈夫よ、あたしは。」
「……学園に……帰る?」
おずおずと、タバサが聞く。あたしの答えは決まっている。
「いやーよ、あなた置いていくのも、あなたを母さまから引き離すのもね。」
じっとタバサがあたしを見てる。
「大丈夫よ、本当に寝付けないだけだから。」
この子はあたしのためだと判断したら、久々の幸せを捨てかねない。
そっと、タバサを抱きしめる。
「今は自分のことだけ考えなさい。」
タバサが困っている。
「ね?」
ぎゅっと抱きしめる。
「あなたが私を心配してくれるみたいに、あなたが幸せだとあたしも嬉しいの。」
「……気付けなかった……。」
「……ほら、きっとあのスケベ親父、私の事うかがってたから、気付いたのよ、ね?」
…………タバサが悩んでる。
でも……私の不調をミスタが気付いてくれててたって事に、胸の奥がじんわり暖かくなってるような気がした。
「……何か有ったら……相談。」
タバサが私を見つめる。
「OK、タバサ、相談するわ。」
タバサの頭をグリグリ撫でた。
「キュルケ……痛い。」
ひとしきりじゃれてから、タバサと別れた。

31 名前:17/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:10:18 ID:pocecTU4
ここ数日ろくに寝てないので、流石にそろそろ限界だ。
部屋を暗くする、ベットに潜り込んで、目を閉じる……
睡魔は訪れるけど、心のどこかが眠ろうとしない、つらい。
それでもじっと耐える、眠らないと……タバサが心配する。
…………眠る……
…………………
……………

ぬっと、白い目が現れる、にやりと頬を上げて笑うと詠唱を始める……
闇の中から炎が迫る。
「やだぁぁぁぁぁぁ。」
飛び起きる、身体の震えが止まらない、あたしこんなに臆病だったのかな?
いきなりドアが開いた、あたしの身体が恐怖にすくむのが分った。
「ひっ……」
「ミス・ツェルプストー」
ミスタだった。力が抜ける。
まだ震えてるあたしを見たミスタが、そっと抱き寄せてくれた……
……しんぞうのおとがきこえる
「すまない、ミス・ツェルプストー……私が気付くべきでしたな。」
おちつく……
「あんな男と、戦って……平気だと思っていたなぞ……教育者失格ですな。」
ミスタ……心配して側で待っててくれたのね。
「ミス・ツェルプストーがしっかりしていると思って、安心しすぎました。」
うれしい
「あなたも、他の生徒と同じ、女の子だということを、つい忘れてしまいますな。」
ここは……きっとあんぜん
「体調不良でなく、眠れなくなっていたとは、ミスに言われるまで気付きませなんだ。」
温かい身体を、そっと抱き寄せる。
「ミ、ミス・ツェ……」
身体の力がゆっくり抜けていくのが分る。
「落ち着きましたかな?」
ミスタが立ち上がろうとするのが分った、やだ。
「いやっ。」
「ミス・ツェルプストー?」
ミスタの服を掴む…
「行かないで……」
何も言わずに座りなおしてくれた。
「眠るまでここに居りますよ、ミス・ツェルプストー。」
「……やだ。」
「?」
「朝まで。」
ミスタが背中を撫でてくれる。
きもちいい
もそもそと首が落ち着くポイントを探る。
逃がさないようにしっかり抱きしめる。

あたしは、どうやら久々に熟睡できそうだ。

32 名前:18/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:10:49 ID:pocecTU4
意識がゆっくり覚醒する、頭がすっきりしている。
……目を開く
………ミスタが居た、横にならずに、ベットに座ったままだ。
背中に当たる手が気持ち良い。
…………だんだん昨夜のことを思い出す……
顔に血が昇る……しまった……幾ら眠かったとはいえ……
ハズカシイ
思い出す一言一言が、人生の恥のような気がする。
「起きましたかな?ミス・ツェルプストー。」
「はっはいっ。」
うぁ、はいってなにかしら……つい返事してしまう。
「よかった、大丈夫そうですな。」
そのまま、すっと立ち上がった。
「あっ。」
え?
何か凄い喪失感に、声が勝手に出た。
「なんですかな?ミス・ツェルプストー。」
「なんでもありませんわ、ミスタ。」
そう、なんでもないはず。
「では、しつれいいたしますぞ、ミス・ツェルプストー。」
ミスタが部屋を出て行くのを見つめる……
お礼を……言おうと思った……でも…声がかけられなかった。

33 名前:19/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:11:23 ID:pocecTU4
そわそわと落ち着かない気分。
何故かミスタの姿を探す。
「キュルケ。」
いつの間にかタバサが居た、声をかけられるまで気付かなかった。
「……タバサ、あなたミスタに何か言った?」
「……キュルケ寝不足。」
……おかげでよく寝れた、一応感謝
「ミスタは?」
「母さまと一緒。」
何故か……寂しいと思った。
「そう……」
タバサが黙ってあたしの横に座り込んだ。
「タバサ?」
「母さまに先生が必要。」
タバサが私を見つめながら続けた。
「キュルケ……先生好き?」
……息が詰まる……
「ここに来た日に、ミスタの寝室に忍び込んで断られたわよ。」
「……キュルケ、返事してない。」
「……タバサ………」
「?」
「もしそうでも……先生、多分あたしが嫌いよ。」
きっとそう、だって断られたし。
「でも、キュルケしかもう止められない。」
なにをかしら?
「先生、学園に帰るって。」

「母さまの治療法探してくれるって。」
「……良かったじゃない。」
タバサは喜ぶはずだった……でも、首を横に振っている。
「一緒に……居たい、母さまも先生もキュルケも。」
………この子…
「先生が居たら、母さま笑う……私も……嬉しい。」
「……それだけ?」
「………。」
「タ〜バ〜サ〜、へんじしてなぁーい。」
ちょっと復讐、おぉ赤くなってる、貴重な瞬間だ。
「でも……学園に戻ったら、たぶん先生……もう……。」
確かに、教師とか授業に、あれだけ拘っていたミスタがまたここに来るかは怪しい。
「私じゃ、止められなかった。」
多分あたしでも無理だろう。
でも……
「話だけはね。」
きっと、きっかけがないと素直になれない自分のために、ミスタと話しをする事にした。

34 名前:20/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:11:54 ID:pocecTU4
夜、ミスタの部屋を訪ねた、ベットの上で旅支度をしている……
「ミスタ。」
「おや、ミス・ツェルプストー、なんですかな?」
この前みたいな格好はしない……多分怖くて出来なくなった。
「学園に帰られるのですか?」
「……えぇ、水魔法の影響を除去するか……いっそ全て消す方法を探すつもりです。」
「全てって……タバサ…シャルロットの事もですか?」
話がそれてるのは分っていたけど、聞かずには、いれなかった。
「えぇ、もちろん施術はミス・オルレアンの許可を得ないとしませぬが。」
……何故?
「忘れた方が、幸せな過去というものもあるとは思わないかね?」
「それは、ご自分のお話ですか?ミスタ・コルベール。」
「どうでしょうね、ミス・ツェルプストー。」
「……もし、あたしが……行かないで下さいと言ったら?」
身体が震える、怖い。つい先日まで軽蔑していたこの人に、たくさんの恋人達のことで軽蔑されていたら……、それがとても怖かった。
「何故?ミス・ツェルプストーが、私を止めるのですかな?」
不思議そうに……聞かれた。
………はっきり言わないと分らないようだ。
「好きだからです、ミスタ・コルベール。貴方と過ごしたここでの時間が、
守ってもらった学園での記憶が、あたしにとってとても大事に成ったからですわ。」
ミスタが驚いている。
「………今回は『微熱』では無いようですね。」
……鋭いのか鈍いのか、まったく分らない変な男。
「では、私も真面目に答えましょう……ミス・ツェルプストー。」
「はい。」
「私は幸せに成ってはいけないのですよ。」
「何故?」
断られているのは分る、でも理由を聞きたかった。
「人殺しだからです、たくさんの、幼い命も、男も、女も等しく殺した人でなしだからです。」
「でも、それはっ。」
「騙されていたとか、任務だったとかは、自分に対する言い訳にしかならないのですぞ、ミス・ツェルプストー。」
どこか遠くを見る視線のまま、ミスタは続けた。
「私はたくさんの幸せをこの手で絶った、だから私も幸せには成れない、それだけのことですな、ミス・ツェルプストー。」
ずるい……そんな言い方されて、なんと答えればいいのかしら……
「ミス・ツェルプストー貴方なら、これから幾らでも良い相手が居るでしょう、その相手を大切になさるのが良い選択ですぞ。」
……悲しかった
「ミスタ、結局今回も、本気だとは思っていただけなかったようね。」
視界がぼやけていた、でもそんなことどうでも良かった。
「ミスタはあたしが幸せかどうかなんて、どうでもよろしいのね。」
「ミス・ツェルプストー……」
「貴方が好きです、ミスタ・コルベール真面目な所も、強い所も、優しい所も見ました、こんなに真面目に人を見たのはきっと初めてです。」
「…………」
「いっそ、学園に恋人が何人も居るような女は嫌いだと、はっきりおっしゃって下さいなミスタ……。」
きっとそれで諦めが付く。
「ミス、嫌いならそう告げるだけで良いのですよ、私とて傭兵に勇敢に立ち向かう所も、怖くて泣き崩れる所も、友達の境遇に怒る所も、全て魅力的に見えましたぞ。」
…………ミスタ…
「だからこそ、私などではなく、きちんと幸せに成って欲しいのですよミス・ツェルプストー。」

35 名前:21/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:12:26 ID:pocecTU4
「あたしは、貴方が良い、ミスタ。」
貴方以外は要らない。
「……どうしてですかな、我ながら冴えない親父ですぞ。」
「……貴方が魅力的だといって下さったところを、褒めてくれる男はめったに居ませんもの。」
「………どうも私は、他の人と感性がずれとるようでしてな……。」
「身体で誘って、見向きもされませんでした。」
随分プライドが傷ついた。
「……我慢してただけですぞ。」
「我慢できるの、きっとミスタだけですわ……だからあたしは貴方が良い。」
「私は……。」
「ミスタ、貴方が幸せに成ってはいけないのは、貴方の都合ですわね?」
「そうですな、たしかにそうです。」
「では、あたしは、あたしの都合で、貴方のそばで幸せに成りますわ。」
「ミス……それは……。」
「キュルケ……です、ミスタ。」
「キュルケさん、貴方は美しいし、まだまだ若い、こんな親父につりあう物では有りませんぞ。」
「いいえ、ミスタ全ての障害は情熱の前には無力ですわ。」
つい先日と同じセリフ……でも、意味はきっと違う。
あの時のあたしでは、込められなかった思いの結晶。
「ミスタ、あたしでは貴方を救えませんか?」
「救う……ですと?」
「えぇ、貴方が止まっている20前の不幸、はっきり言って、どんな事かあたしには分りません。
でも、貴方が幸せに成らないことでは無く、あたしを幸せにすることで埋め合わせてもらえませんか?」
「……私には……そのような事……。」
「出来るかどうか……あたしと試してほしいですわ……」
怖い……今までの男の子達も、こんな思いで告白してきたのだろうか?
彼らをいっせいにちょっと見直した。
「………あたしでは……駄目ですか?」
ミスタに一歩近寄る。
「……キュルケさん…。」
さっきから名前で呼んでくれている……嬉しい、でも。
「キュルケ、です、ミスタ。」
「……キュルケ私の罪は重い、決して許されない類の物だ、私はいつか一人で地獄に落ちるべきなのだよ。」
「…ご一緒させてはいただけませんこと?ミスタ。」
息を呑むミスタ
「どこまでも一緒に行きたい、今のあたしはそう思っていますわ。」
「貴方と幸せに成るのが罪なのなら、その罪を背負いたいのですミスタ。」
ずっと、一人を選び、一人で居たミスタをそっと抱き寄せる。
「ここに居ていただけませんこと?ミスタ。」
「……キュルケ………私は………」
「ミスタ、お願いがあります。」
「……なにかね?」
「どうすべきか、ではなく、どうしたいかで答えて下さいな……あたしはそれに従いますわ。」
「………しかし………」
「貴方が私を側に置きたくないのなら、私は貴方の居ない所に行きましょう。」
「……学園はどうするつもりですかな?」
「………失恋した相手を見ながら通えるほど、図太くありませんわミスタ。」
「………………」
「でも、ミスタ、貴方があたしを側におきたいのなら、あたしの全力を持って、あたしは貴方の側に居場所を作ります……だめ……ですか?」

36 名前:22/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:12:57 ID:pocecTU4
ミスタがそっとあたしの身体に手を回す。
「キュルケ、聞きなさい。」
………腕に込める力を増す、聞いてる事を示す為に。
「私に付いてきてくれるのだね。」
「……はい。」
もう決めた。
「なら、今更罪の事は言うまい、覚悟の上のようだから。」
「随分年上だが良いのかね?」
「知らなかったんですけど……そっちの方が好みみたいですわ。」
「教師と生徒だがね。」
「……黙ってましたけど、教師に告白されたこともありましてよ……」
「……それはけしからんね、誰のことかね?」
「聞いてどうしますの?」
「決闘でも申し込むかね?」
「……幾らなんでもそれは……、それに。」
「それに?」
「告白した相手全てと決闘するのだとしたら、ミスタ大忙しですわ。」
「……私の妻は随分もてるのだね……」
身体が震えた。
「…………妻……ですか?」
「……私はそのつもりだったが……やめるかね?」
直ぐには言葉が出ない、
「いいえ、私は貴方の妻になりますわ、ミスタ。」
「帰ったら、オールド・オスマンに妬き殺されそうだね。」
「………では、帰る前に……。」
そっと、ミスタに口付ける。
「妬かれる理由を作りませんと、理不尽ですわね。」
「……その理屈はどうかと思うが……理性はともかく本能が賛成しておるね。」
ふわりとあたしを持ち上げるミスタ。
「きゃっ」
ベットの上に投げ出される。
「ミスタ……」
心臓が高鳴っている。
優しいキス。
身体が熱くなる……そして……胸の奥が甘くなる。
……こんなに幸せなキスは初めて。
「ミスタ……」
今度はあたしから貪る。
ミスタがあたしの舌を吸い上げる。
「んっ、あぁっ。」
今度はミスタの舌が、あたしの唇を愛撫する……上手い。
「ミ、ミスタ……なんで……そんなに……」
「教師になる前は、それなりに有名な軍人でしたのでね……相手には困りませんでしたな。」
…………若い頃のミスタの相手が妬ましかった……
「腕が落ちて無い様でよかったですな、キュルケ。」
………身体が熱くなっているのをミスタは感付いてる。
そっとあたしの身体を触りながら、ゆっくりと服を脱がせてゆく。
……ただそれだけなのに、あたしの身体はどんどん高まっていった。

37 名前:23/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:13:31 ID:pocecTU4
ミスタがあっという間にあたしの服を脱がしていく、
いや、正確に言うと気が付いたらあたしは全裸だった。
「ミ、ミスタ?」
まったく主導権が握れない
「キュルケ、本当に私にはもったいない、綺麗な身体ですな。」
ミスタがあたしの身体をゆっくり見ていた、一瞬で頭に血が上る。
「ミ、ミスタ、明かりっ、明かり消してください。」
明かりを消しに行く機会がなかったため、今も部屋はランプの明かりで煌々と照らされている。……私の身体も…
身体がどんどん熱くなる、いつもならまったく気にしない、自慢の身体……
「綺麗ですな、キュルケ。」
またキス。
あ………、…ズルイ、ミスタはそれだけであたしが抵抗できなくなるのを分っている。
慌てて跳ね起きる、こんなのあたしらしくない。
が、ミスタは起きたあたしの身体を、そっと手で触った。
「ひゃぁっ。」
胸を触りながら、もう片方の手を背中に回す。
「ミ、ミスタ……あ……たし……も…」
ぞわぞわと全身を這い回る快感に耐えながら、ミスタに触ろうとする。
「くぁんっっっ。」
ミスタが両手で乳首をつまみあげる、力が抜けた一瞬の隙に、またベットに押し倒される。
両手で胸を苛めながら、ミスタが胸の谷間に顔を埋める。
次の瞬間身体が跳ねた、両手で胸を揉み上げながら、ミスタが舌で心臓の上を舐め上げる。
日頃自慢のおっぱいの奥で、刺激の受けない所を舐められて、訳が分らなくなった。
もちろんその間にも両手は止まらない、痛くない範囲で、乱暴に揉み拉だかれる。
一瞬でも反撃しようとするたび、ミスタは乳首を摘み上げた。
「ミ、ミスタァ……。」
あたしはだんだん快感に流される、気持ち良い事しか考えられなくなってきた…
胸だけで十分感じさせられたあたしを、そっとミスタは抱き起こす。
ぐったりとしたあたしに、キスを……舌を貪る。
「ん、んっっんっっっ。」
ミスタの手が、今度はお尻にあった、ゾクゾクと期待が背中を這い上がる。
でも……ゆっくりとミスタの手は太ももを這い回っていた……
気持ち良い……けど……
「ミ……ス…タ……」
おねだりしようとする口を、無理やり唇で塞がれる。
どんどん高まっていく身体……でも、ミスタは中途半端な刺激しかくれない。
自分で触ろうと、そっと手を伸ばす。
「いけませんな、キュルケ私を感じて欲しいのですがね。」
しっかりと押さえられる。
ぽろぽろと……、涙が出てきた……
「ミスタァ……もっと……もっと……下さい。」
あたしの哀願を無視して、ミスタは両手を押さえたまま、舌だけであたしを高める。
唇を、胸を、陰核を、ゆっくり舐め上げ、吸い上げる。
でも………
「ミスタ……あとちょっとぉぉぉ、お願いです……ミスタァァ。」
決して逝かせてくれない。

38 名前:24/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:14:02 ID:pocecTU4
頭の奥が、胸の奥が、子宮の奥がそれぞれ熱い塊になったようだった。
あたしは鳴きっぱなしだった。
「うあぁぁぁぁ、んぁぁ、くあぁぁぁ。」
既に意味のあることを考えられない、逝く事だけが頭を占めている。
ミスタは楽しそうに、あたしをいたぶっている。
もう何をされても逝く……そんな状態でミスタが急に動き出した。
手を押さえたまま、強くキス、唇に気をとられている間に、ミスタがあたしの奥までいきなり突き込んできた。
「ひあぁぁぁぁぁ。」
軽く逝った。
でも……ミスタは休まなかった。
腰をゆっくり動かしながら、私の手を開放して開いた両手で胸を絞る。
「やゃぁぁぁぁぁっ」
まったく落ちることのない官能が、知らなかった高みへ押し上げられる。
頭の中が真っ白になった……でも……
ミスタはまだ止まってなかった。
「だめぇぇぇぇ、ミスタ……もう……」
「ねぇキュルケ……」
「?」
「私はまだ逝ってませんのでね。」
一瞬止まったミスタは、刺したまま私をひっくり返した。
「きゃっ。」
中を強く擦られる感触と共に、あたしは後ろから貫かれる形になっていた。
「ミ、ミスタ……」
「こちらの方が動きやすいので……ちょっと本気で行きますね。」
……本気って………今までのは?
疑問を纏める暇もなく、激しい快感があたしを襲った。
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴を上げるしか出来なかった。
後ろから、胸を強く握りながら、狂ったようにミスタが動いている。
結合部が、ぐちゅぐちゅと激しく音を立てている。
ベットとミスタの手でしっかり固定されたあたしの身体は、動くことも出来ず、ただミスタが送ってくる快感に、溺れていた。
中でミスタのが一回り膨らんだ気がした。
「いやぁぁっぁぁ」
快感が増す、壊れる……そう思った。
何かが身体の奥にぶつかる感触と共に、あたしは今までで最も深く逝った。

ミスタがゆっくりと、あたしの身体を撫でている。
「……ミスタ……」
「おや、キュルケ起きたようですな。」
「………ひどい……」
「…………おや?」
「休ませてくれなかった……」
心地よい余韻に包まれながら、ミスタに苦情を言う。
「……ふむ、次は気をつけましょう。」
「…ん、お願いね。」
ぐったりと身体を伸ばしたあたしの胸を、ミスタが触る。
あれ?
「では、もう一度…」
え?

結局日が昇るまで寝れなかった。

39 名前:25/25[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:14:34 ID:pocecTU4
「こ、腰が……」
足が立たないなんて、本当に成るとは思わなかった。
「キュルケ、大丈夫ですかな?」
……こ、この男……ばけものかしら?
「……ミスタ……手加減って知ってます?」
「ふむ……確か失礼に当たる行為でしたな。」
……ちょっと違う。
ドアがノックされる、え、あぁぁぁぁあたし今全裸。
布団を引き寄せようにも……激しかった行為の名残で……ベットの下だ。
「先生……」
しかもタバサっ。
………無表情にあたしを眺めている………恥ずかしい。
「あー、ミス・オルレイン、その……用件は?」
「………」
「私にかね?キュルケにかね?」
「……キュルケ?」
あぁぁぁ、ミスタの馬鹿……まぁ言い訳の効く状況でもない…か
「呼び方変わってる。」
「あ、いえ……それは……。」
「……親友、泣かさないで。」
「………はい。」
……昼間はなんてしおらしい……
「学院へは?」
「……暫くここに滞在ずるわね?ミスタ。」
言いながら、ミスタを見る、タバサも見つめていた。
視線に押されるように、ミスタは頷いた。
「は、はいキュルケが納得するまで……お邪魔します」
……極力昼のうちに主導権を握ろう……次から。

タバサが拾った布団をあたしに掛けてくれた。
「ありがと、タバサ。」
「……キュルケずるい。」
ぼそっと呟く。え?

ミスタに向き直ったタバサが
「シャルロット」
と自分を指し示す。
「はぁ?」
不思議そうなミスタ
「いつか呼んで。」
それだけ言うと、部屋を出て行った……
理解していないミスタはともかく……
結構前途は多難かもしれない。

40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/09/18(月) 03:18:27 ID:pocecTU4
長文失礼しました。
今回ぽつぽつ書いたのですが、まとめて書かないと全体的に纏まらない気がしました。
文章書くの難しいですね……。
コルベール好きで、新刊出てはっきりする前に書きたいから書いた、そんな作品ですが。
読んで貰ったら嬉しいです。 ではっ


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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:55 (5645d)

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