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Last-modified: 2012-03-15 (木) 07:07:06 (4418d)

「アイツが相手だなんて聞いてない。アタイは降りても良いかい?」
「まぁ待て、しかしなんなんだ、あの男は? 非常識な動きと発想だ」
「アタイは、絶対にアイツには勝てないんだよ。これで解ったかい?」
「この前言ってた奴とはあれか?」
「そうだよ。以前も軽くあしらわれた」
「あれが使い魔では非常に厄介だな。しかも、支援したメイジも相当な使い手だ。……待てよ? 人間の使い魔だと?」
男は思考に耽る
『確かに強いのに、小物っぽいのは何でだろね? 更新無しで、おさらばが良いかね? 才人の傍のがずっと良いや。アッチも上手だし』
二人共、内心の思考に耽る
「……そうか、そういう事か。とにかくアルビオンに向かうぞ、フーケ」
「はいよ、着いたらきちんと報酬払っておくれよ」
「解っている」
二人も港に向かう

タバサの風竜で皆で乗り合いしようとワルドが提案したのだが、シルフィードがそれを聞いて逃げ出してしまった為、徒歩で向かう事になった
「軟弱な風竜だな」
「…まだ、幼竜」
「それもそうか」
タバサはシルフィードをけなされた為、非常に不機嫌になっている
「なぁ、ギーシュ」
「何だい、才人」
「やっぱり使い魔って、メイジに取って大事なモノなのか?」
心底驚いた表情をギーシュは見せる
「才人、君は自身の事を何だと思ってるんだい?」
「只の便利屋だな」
即答で答えられ、ギーシュは溜め息をつく
「良いかい才人。使い魔と言うのはメイジに取って唯一無二、生涯を供にする非常に大切な存在だ」
「例えハルケギニア全てが敵に回っても、使い魔だけは味方になってくれる。そんな使い魔を馬鹿にされて、笑ってられるメイジなんて居やしないよ」
「ふ〜ん。死んだら換えが効く程度の、便利な存在だと思ってたわ。俺、扱いが微妙に酷い気がするし…」
「あぁ、まあルイズだからねぇ」
ギーシュは肩をすくめる
「所で、港に向かっているんだよな?」
「そうだよ」
「何で山に向かってんだ?」
「アルビオンに行くからさ」
「港って言ったら、普通船で海路だろ?」
「船は使うよ、但し空路だけどね」
「はい?」
「勉強会でやらなかったっけ?」
「ありゃ、魔法の講習じゃないか」
「あ、そうだった。アルビオンは空に有るんだよ」
「はぁ?」
「まぁ、百聞は一見に如かずって事で」
「さっぱりだなこりゃ」

「船が出ない?」
「戦争中で風石が足らないんですよ。それに、戦闘空域下に近い危険な航空になるんで、運賃も跳ね上がってるんですわ」
「戦争中だなんて聞いて無いぞ、おい」
「あら、ダーリン知らなかったの? そんなの常識じゃない」
「…皆、俺が異邦人だって事忘れてないか?」
「「「「忘れてた」」」」
ガクリとうなだれる才人
「……で、どういう戦争だ?」
「…レコンキスタと名乗る、共和主義者と王党派の内戦、レコンキスタ優勢」
とタバサ
「俺らが渡す相手って確か……」
「うん、王党派の真ん中の人」
と、ギーシュ
「……一体何考えてやがるんだ、あの姫様」
「恋は盲目ね」
「はぁ〜。一個質問。アルビオンの識字率ってどれ位?」
「平民含めて? 貴族だけ?」
「平民含めてだ」
「貴族は全員読み書き出来るよ。平民は出来る方が少ないね。何処も似た様なもんだよ」
「成程ね。じゃ、レコンキスタは、例え勝利しても失敗するな」
「何で、そう思うのサイト?」
「簡単さ、共和制にしたいなら、最初にするのは全員が読み書き出来る様にしないと駄目。情報が解らないと判断が出来ない。つまりレコンキスタと呼ばれる連中が、貴族として振る舞う様になるだけさ」
「何故そう思う? 使い魔」
交渉をまとめたワルドが、会話に参加する
「俺の国は似た様な制度だし、共和制を実施してる国もある。基本的な判断を民衆に任せる為には、全員に読み書きそろばんが必要なのは自明なんだ。此処にはそれが足りないから、失敗すると言ってる」
一人、軽く身じろぎするが才人は続ける
「本当にしたいなら、下地から作らないと駄目だ。それをやって無いんだから、只の熱狂か、貴族に取って代わりたいかのどちらかだよ」
「サイトの国って、平民でも読み書き出来るの?」
「識字率なら90%以上だったっけ? 病気等で判断出来ない人を除外したら、ほぼ100%じゃないかな?」
全員目を丸くする
「才人の国って凄いんだ」
「離れてみると、解る有り難み」
「それでもやってみないと、解らんのではないか? 使い魔」
「ほぅ。どっちの味方なんだい隊長殿。俺らは王党派なんだろう?」
「…勿論、王党派だ」
「だよねぇ。交渉はまとまったかい、隊長殿」
「ああ。私が風石代わりになる事でまとまった。物資の関係で、乗せるのは3人迄だそうだ」
「選抜はどうする?」
「先ずは私とルイズ、後は使い魔だな」
「タバサのが、応用範囲広いぞ?」
「貴様の方が強いと、全員が認識してる。私もその判断は正しいと思う」
「買い被りだって」
「ダーリンって、本当に謙遜するわよね」
「俺なんか、一人じゃ何も出来ないよ。皆がサポートしてくれるから動けるんだ」
「い、犬」
「わん」
「ご主人様を守るの………嫌?」
「滅相もございません」
「じゃ、ついて来なさい」
「あいあいさー」
『やっぱり、あたしを避けてるの? 今もタバサに耳打ちしてるし……サイトが居なくなったら、どうしよう?』『そういえばあたし、サイトの事何も知らない。家族とか何人居るんだろう? サイトから話してくれる事って、無かったな』
『サイトの軽口、あたし向けにはめっきり減った。ワルドが居るから、婚約者に遠慮してるのかな?』
『そういえば、ワルドが来てから、撫でて貰ってない。タバサは撫でて貰ってるのに。む〜』
3人は船に乗り込み出発した

「行ったわね」
「あれ? 何をしてるんだい? 僕のモンモランシー」
「何って寝るのよ。あの馬鹿、またボロボロになるに決まってるんだから、魔力と体力を温存するの。見張り宜しくね。 きゃっ、何?」
モンモランシーの傍の地面が盛り上がり、モグラが顔を出し、辺りを見回す
「あれ? ヴェルダンデじゃないか? 来ちゃ駄目だよって、言ったじゃないか」
ギーシュを確認するも、更に辺りを見回すヴェルダンデ
「もしかして、探してるのは才人かい?」
愛嬌のある仕草で肯定する
「君迄僕をナチュラルに無視かい? 主人として悲しいよ。才人なら船に乗ってアルビオンに向かったよ。て、ちょっと、聞いた瞬間に帰る仕草は、酷くないか?」
「きゅい」
タバサがシルフィードを呼んで乗り込む
「あらタバサ、何処に行くの?」
「…アルビオン」
「ヴェルダンデ!? なんでシルフィードに乗り込むんだい? まさか才人に会いたいだけで此処まで? 僕の事はどうでも良いのか」
凹むギーシュ
「タバサ、私も乗るわよ」
「私も乗るわ」
「僕も行く、そういえば、重量オーバーは大丈夫なのかい」
「…全員乗っても平気」
「さっきは逃げたじゃない、なんで?」
「…才人と私の考え」
「シルフィードを温存しろって事?」
コクリ
「でもダーリンは、アルビオンは空に有るの、知らなかったよね?」
「…退却用」
「成程ね、そしたらタバサ、一人でも軽くする必要有るんじゃなくて?」
皆の顔を見回しぽつりと喋る
「…キュルケは私と共に迎撃、モンモランシーは治療、ギーシュは使い魔に指示。モグラが役に立つかもしれない。全員必要」
「あらあら、才人みたいね、タバサ」
タバサは胸を張る
「…出発、気付かれない位置で尾行する」

「空賊だ!! 逃げろ!!」
「空賊だって?」
一気に船内が慌ただしくなる
「貴族の旦那、迎撃してくれませんかね?」
「残念ながら、この船動かす分で打ち止めだ」
ワルドは肩をすくめる
「タバサやキュルケなら、迎撃出来たろうに。やっぱりミスったなぁ」
ブツブツ呟く才人
「サイトは迎撃手伝わないの?」
「手伝わない」
あっさり言う才人に対し
「何故だ? 使い魔」
「隊長殿が打ち止めじゃないなら任せたけどね、今は自分達だけで精一杯だ。向こうにメイジが居ない期待は、しない方が良いだろ?」
「確かにその通りだ。成り行きに任せるしかないか」
空賊が停船信号を発する。ルイズ達を乗せた船は無視して逃走するも、砲撃を一発喰らった時点で停船。賊が乗り込んで来る
「全員武装を解除して持ち場を動くな。抵抗しないならば命迄は奪わない。積み荷を改めさせて貰う」
「今私は杖を手放せん、この船の風石の代わりをしている」
「本当か?」
賊が船長に問い正す
「本当でさぁ」
「それは失礼した。船体維持に精励頂きたい」
「何かやけに礼儀正しい賊だな」
「其処の君は、何故武装解除に従わない?」
「可憐なる姫を、むざむざ賊に明け渡す程、人間出来てないもんで」
そう答えながら左手で鯉口を切り、村雨を何時でも抜ける様にする
何か有れば、抜き打ちを即座に出来る姿勢で相手を見据える
「成程、此方の姫の護衛か……ミスヴァリエール?」
「ウェールズ王子!?」
「へ? 王子………様?」
今度は才人が仰天する番らしい
ウェールズ王子の知己と言う事で、船体維持の為のワルドを残し、彼方の船にウェールズ王子と共に二人は乗り込む
「まさかウェールズ王子が空賊をなさってるなんて」
「あの船はレコンキスタ側に送られる物資だからね、……おっとこりゃ当たりだ、硫黄と硝石が大量に入ってる」
目録に目を通しながら喋るウェールズ王子
「硫黄に硝石、火薬の原料か」
「そうだよ、どちらも不足していてね、彼方も風石不足で物資はカツカツだろうし、此は大収穫だ」
「王子自ら略奪ねぇ。昔の私掠船か通商破壊って所か」
「此方も台所は厳しいのさ」
ウェールズ王子は肩をすくめる
「兵力も……だろ?」
「……何でそう思う?」
「王子自ら汚れ仕事をやるには訳がある。神輿は綺麗じゃないと、皆が担げない代物さ」
「君の慧眼には感服するよ。名前は?」
「才人。平賀才人だよ。其処におわす方の不肖の使い魔だよ、王子様」
「ふむ、人間の使い魔なんて初めて見たよ。所でミスヴァリエール、こんな政情不安なアルビオンに、どんな用が有るんだい? 出来る事なら、このまま帰る事をお勧めするけど?」
「その事ですが、姫様より手紙を預かって来ております。これをどうか御読み下さい」
ルイズは懐から手紙を差し出し、ウェールズ王子に手渡す
「あぁ、それは受け取れない」
ウェールズは渋る
「何故ですか? 姫様が私達を頼って迄、送った物ですよ?」
「内容は解りきってるからね」
「解るんですか?」
「あぁ、何度も同じ内容の手紙を貰った。多分今回も同じだろう。もっと酷いかもしれない」
「受け取って貰わないと困るんですがね」
「何でだい? 才人君」
「俺達が仕事として承けた上に、気持ちも伝わると応えたからですよ。多分、王子様の予想通りなのかも知れない。それでも、それを読んでから、きちんと応えて欲しいんです」
「じゃないと、俺は嘘吐きになる」
「君の心情は関係無いのでは無いか?」
「えぇ、その通りです。ですがこの手紙を届ける為に、此処には居ませんが、仲間が命がけで働いてくれました。その仲間達に仕事を達成したと、報告する義務が俺達には有るんです」
「本当かい? ミスヴァリエール」
「はい」
「そうか、解った」
ウェールズは手紙を受け取り、封を開けて手紙を読む
そして溜め息をつく
「やはり……か」
「どうでした?」
「予想通りだ」
「何て書いてあったんです?」
「アルビオンを捨てて、トリステインに亡命しろと。民が居るのに出来る訳無かろう」
「立派な覚悟ですが、レコンキスタに任せる訳にはいかないのですか?」
「無理だ。奴らがやっているのは収奪だ。女子供には特に酷い。オークやトロル迄、兵力として使ってる」
「其処まで酷いのですか?」
「女子供がどうなるか、知らん訳ではあるまい」
「……はい」
「俺、知らんのだけど?」
才人の呟きは無視される
「まぁ、そういう訳だ。残念ながら応じる事は出来ないが、この手紙はきちんと私に気持ち含めて伝わった。アンリエッタにはそう伝えて欲しい」
「それで宜しいのですか?」
と、ルイズは聞く
「もう一つ伝えて貰えるか。私の事は忘れて欲しい。君に愛されて嬉しかったと」
「過去形ですか」
「あぁ」
「其処まで戦局が厳しいと」
「実はこの船が唯一残った戦力でね。粗方やられてしまったのさ」
努めて明るくウェールズ王子は言う
ルイズも才人も黙るしかない
「では残った拠点に案内するよ。客人招いて騒げる最後の機会だ。宴には是非とも、参加してくれたまえ」
二人共頷く

船は商船を曳航しながら、一つの港に入る
其処は大陸の絶壁の下から入る形で、偽装されていた
「スゲーな。本当に陸一つ浮いてるよ。ラピュタって、本当に有ったんだなぁ」
「ラピュタって何よ?」
「俺の国のおとぎ話」
「今度聞かせてよ」
「バルス位しか憶えて無い」
「それでも良いわ」
「はいな」
桟橋に着くと、出迎えが立って居る
「これは王子。おかえりなさいませ」
「喜べ爺。何と硫黄と硝石を積んでたぞ」
「其は大収穫ですな」
「それに客人も来ている。今日は宴だ」
「左様ですか、皆、宴の準備じゃ。客人は此方に、運悪く捕まってしまった船員の方々にも振る舞えよ」
「「「応!!」」」
収穫を聞いた者達が物資を運ぶ為に散り、宴の準備をする為に散る
久方振りの戦果に、皆表情が明るい
「やっぱり、王子は一味違うな」
「このまま、逆転の狼煙を上げたいもんだ」
「可能かもしれんぞ」
「確かに、向こうは火薬不足だが、今回ので此方は火薬に問題無くなる。こりゃ朗報だ」
「客人が福を招いてくれたかね?」
「これぞ始祖ブリミルのおぼし召しだろう?」
「ほぅ。皆明るいな」
「ウェールズ王子の戦果が、それだけ大戦果だったみたい」
「これなら、追加部分は伝えなくて良さげかな?」
「だと良いわね」
「それなら、有り難く宴に参加出来るという物だ」
「そうだね、隊長殿」
「所で使い魔」
「何だい、隊長殿」
「何時になったら私を名前で呼ぶ?」
「さぁ? 隊長殿も俺を名前で呼んで無いだろ?」
「貴様がそう呼べと言ったからだ」
「そうだね、隊長殿」
「……呼ぶ気が無いのだけは解った」
「気付いて頂き光栄の至り」
「貴様と話してると調子が狂う」
「皆さん、そう仰います」
才人はとぼけた口調で話す
『才人、からかってるの……かなぁ? 何考えてるんだろう?』
『ワルドと私の事に関しても触れて来ないし。う〜』
『私、才人に嫉妬して欲しかったのに。才人は事も無げに振る舞うし』
『皆が気付いてたのに、私一人が気付かなかった事って、なんなんだろう?』
ルイズは一人悩みが尽きない

「きゅいきゅい」
「…しまった、見失った」
「タバサ、見失ったの?」
「…雲に隠れた所で見失った」
「大体の場所は解る?」
「きゅい」
「…シルフィードが憶えてる」
「そうか、なら大体の場所迄近付ける?」
「…出来るけど何で?」
「ヴェルダンデに行って貰うよ。ヴェルダンデ、才人の傍に行きたいかい?」
首肯するヴェルダンデ
「それじゃ、このハンカチの匂いを良く嗅いで、これ才人のハンカチだから匂いが付いてるよ」
匂いを嗅いで頷く
「じゃあタバサ、宜しく」
「解った」
タバサがシルフィードを絶壁に横付けする
「行っておいで、ヴェルダンデ」
ヴェルダンデは大地を掘り始め、進んでいった
「ふうこれで一安心かな?」
「所でギーシュ」
「何だい? 僕のモンモランシー」
「何で貴方が、才人のハンカチ持ってるの?」
「そりゃ、才人がメイドから貰ったハンカチを、借り受けたからさ」
「才人に内緒で?」
「勿論そうだと…………しまった!?」
「後で詳しく聞きましょうか? ねぇタバサ」
コクンとタバサは頷き、周囲に冷気を撒き散らす
「あ、あの、出来れば穏便に」
「ギーシュ、貴方本当にそっちの趣味も有るの? てっきり、出来の悪い冗談かと思ってたわ」
「あはははは」
キュルケの言葉に、苦い笑いを返すギーシュだった


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Last-modified: 2012-03-15 (木) 07:07:06 (4418d)

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