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Last-modified: 2012-03-17 (土) 06:40:53 (4416d)

二人乗りはやはり馬を酷く消耗させ、才人は次の駅で馬を乗り換える破目になった。そこでラグドリアン湖の最新の情報を聞く
どうも、湖水の水量が最近増えているらしく、周辺住民が困っているらしい
才人達は更に馬で走る
「此処が、ラグドリアン湖よ」
「デケエ湖だなぁ。琵琶湖位か?」
「琵琶湖って?」
「俺の国の湖さ。これ位有る」
「綺麗な所?」
「綺麗さなら、多分摩周湖や支笏湖のが上だな。でも、ラグドリアン湖はそれより綺麗だ」
「良い所だろう? 才人」
「あぁ、気に入った」
「何せこの湖には、水の精霊が住んでるからね」
「へぇ、精霊迄住んでるのか。でも、此処迄綺麗だと納得だな」
「それでね、このラグドリアン湖の精霊の前で愛を誓うと、その二人は永遠に結ばれるって、言い伝えが有るのよ」
「へぇ、そうなのか。……何で皆、俺を見るんだ?」
「何でかしらね?」
「君の鈍感ぶりには、敬意を表するよ」
ルイズがそれを見、サイトをキツク抱き締める
「えっと、何かした?」
「何もしてないから、イケナイのよ」
「理不尽だ」
「そう思うのは、君だけさ」
「さいですか」
才人は肩をすくめる
馬を木の幹に繋げ、湖畔迄歩く
「さってと。貴女の出番よロビン」
持って来たポーチの中から、使い魔である蛙のロビンを取り出し、自らの指に傷を付け、流れた血をロビンに塗る
「いいかしら、ロビン。貴女の古いお友達と連絡が取りたいの。水の精霊を見付けて、盟約の血に連なる者が話をしたいと告げて頂戴。解った?」
ロビンは頷きポチャンと、湖面に飛び込む
「さてと、後は精霊が呼び掛けに応じてくれるかどうかね」
「運任せか?」
「ええ。モンモランシ家って、昔はラグドリアン湖の水の精霊の交渉役の一族だったんだけど、何代か前のご先祖様が水の精霊怒らせちゃってね。今は別の人が管理してるの」
「へぇ、そうなのか。そりゃ望み薄だなぁ」
「そういう事」
「後は待つだけだし、ランチでも取ろうか」
「そうだな」
「才人と出掛けるって言ったから、量たっぷり持たされたよ」
「最近やたら腹減るんだよな」
「そんな身体してちゃねぇ。来た時より、筋肉で体が一回り以上大きくなったんじゃないかい?」
「ん〜? そうか? 良く解らんけど」
「でも今の方が、良いと思うよ。とてもね」
艶のある表情をするギーシュ
才人はそれを目にし、冷や汗を流す
「あたしのサイトに色目使わないで」
ちなみにルイズは馬から降りた後も、ずっと抱きついたままである
「ルイズ、抱きついてて良いから、大人しくしてなさい。な」
「うん」
才人に顔を埋め、一人うっとりとしている
「ねぇ、才人。そのままでも構わないんじゃないかしら?」
「そうだね。前より切ない仕置き、減ったろ?」
「激しい仕置きされてます。ありゃ、拷問だ」
二人は顔を見合わせた
早めの昼食を食べ終え寛いでいると、ロビンが帰って来た
「ロビンお帰り。どうだった?」
その言葉に反応したかのように、突如湖面に穴が開く、穴はそのまま広がっていき、人が歩いて通れるサイズにまで広がった所で止まる、どうやら湖底へと繋がる通路のようだ
「良かった。話を聞いてくれるみたい」
「じゃ、行くか」
4人は立ち上がり、水の精霊の元に向かう
「湖面が煌めいて綺麗だなぁ」
「本当に素敵」
「ハルケギニアで、水中遊歩道に入れるとはね」
「才人の国は、水の中も歩けるのかい?」
「透明な筒の中を歩くんだよ」
「行きたくなって来ちゃった」
「僕もだよ」
「良い事ばかりじゃ無いぞ」
「何処も変わらないんじゃない?」
「そうだね」
「ハルケギニアには、日本が逆立ちしても、絶対に勝てないモノが有るから心配すんな」
「あら、何かしら?」
「魔法かな?」
「女のコが、皆可愛い事だ」
「……それ、凄い事?」
「凄い事だぞ。右見てら美少女。左見ても美女。歳を重ねても衰えない魅力に溢れてる。おまけに、俺の国の最高レベルの男すら敵わない、美男子迄居るわ。俺なんざ並だもんよ」
「……才人、本気で言ってる?」
「おぅ、本気だぞ」
「一応褒めてるんだよね?」
「絶賛してるんだが」
「何か釈然としないのよね」
「容姿ばかりじゃねぇ」
「自然も綺麗だな」
「取って付けた様に言わないでよ」
「全くだ」
「そうか?」
「そうよ」
クスクスとモンモランシーが笑い、ギーシュと才人もそれにつられ笑う
「さてと、着いたわね」
「へぇ、これが水の精霊かぁ、人型なんだなぁ。オマケに美女」
「僕らと、話易いカタチを取ってくれてるんだよ」
「え、そりゃ親切だな。ルイズ、水の精霊の前だ。礼儀正しくしよう」
「サイトと離れるの、イヤ」
「……駄目か」
「モンモランシー=マルガリタ=ラ=フェール=ド=モンモランシです。血の盟約を結んだ者の末裔として、呼び掛けに応じて下さった事に、感謝致しますわ」
「良い。此方にも用が有る」
「あの、先に此方の話を聞いて頂けないでしょうか?」
「良かろう」
「ええと。精霊の涙を少し分けて頂けないでしょうか?」
精霊が先を促す
「此方におわす者の状態が、おわかりになりますでしょうか?」
「……我が力の影響を受けているな」
「それを治す為なのです。分けて頂けないでしょうか?」
「我が力をどのように使うかは、我には興味が無い」
「ばっさりだな、おい」
「精霊と人間じゃ、価値観が違うもんなぁ」
「では、此方の用件を言って良いか?」
「……はい」
「アンドバリの指輪を取り戻して欲しい」
「アンドバリの指輪とは、何でしょうか?」
「我が力を凝縮した指輪で、我そのものでもある。精神操作や死体の操作等が出来る。以前に、我から人の子が強奪したのだ」
「それは、どちらに有るのでしょうか?」
「知らぬ」
「それでは、探し様が有りませんよ」
「そうなのだ。だから我自身で探す為に、湖の水量を増している」
「済まない。話に割り込んでも良いかい?」
「申せ」
「何で水量を増やすと、探せるんだ?」
「水は我そのものだからな。水が触れれば解るのだ」
「それってつまり、世界全部水没させる気ですかね?」
「時間はかかるが、そうだ」
「……これ、凄く不味くね?」
「……僕もそう思う」
「モンモン、承けるしか無さそうだぞ?」
「そ、そうね」
「例の手の者が来たようだ。我に攻撃する意思を宿している。先ずは撃退して貰おう」
質問ですが」
「何だ?」
「ご自身で戦わないのでしょうか?」
「相争うのは人の子の役目だろう。我には興味無い事だ」
「……駄目だこりゃ」
モンモランシーは完全に脱力している
才人は其を見て、話を続ける
「条件付けて良いですかね?」
「申せ」
「人の子は、仕事を承ける時には、報酬を貰わないといけないんですよ。そうしないと、社会が成立しないんです」
「続けろ」
「とりあえず、今回来た連中は撃退しましょう。その報酬として精霊の涙を、無事指輪を見付けた暁には、モンモランシ家の交渉役復活を要求します」
「良いだろう。但し、今来た者達を撃退してから応じよう」
「成程、腕前を見てからですか」
「そうだ」
「今、敵はどちらに居ます?」
「お前達の反対側から湖底を歩いてきている、二人だ」
「湖底だと力が出せないんで、敵ごと、陸に上げられますかね?」
「それくらいならば良かろう」
精霊は、4人に空気の層を設けたまま、一気に陸迄打ち上げる
「おわっ」
「ちょっと、激し過ぎ」
「勘弁してくれ」
陸に4人纏めて打ち上げられる
「あ〜参った。こんなに手荒いとはね。怪我はしてないか、皆」
「私は大丈夫」
「僕もだ」
「ルイズは?」
「サイトの腕の中なら大丈夫だもん」
「さいですか。さてと、敵さんは大分向こうに飛ばされたみたいだが、相手の気配解るか? デルフ」
「相棒、幾らこのデルフ様でも、そりゃ無理ってもんだ」
「そうか」
ジャケットのポケットからグローブを取り出し、はめる
今回は森の中、下手な動きは手を傷つけ、剣を握れなくなる可能性が高い
「ギーシュ、モンモンには解るか?」
「土の中ならある程度解るんだけど」
「私は水が繋がってないと」
「じゃあ、雨降らすか。ウォーターバレットかシールド、又はフォール」
「私、ドットよ」
「出来る範囲で良い、そうすれば、其処は確認出来る」
「成程ね。じゃあ、行くわよ」
「場所と範囲は?」
「前方に直径20メイル位。範囲広めるから攻撃力皆無」
「上等。頼む」
モンモランシーがルーンを詠唱し、前方に雨を降らせる
ボン
「あら、向こうから教えてくれたわ。バレットに殺傷力有りと思って、焼き払ったみたい」
「良し、行くぞ」
「駄目、サイト行っちゃ駄目」
「ルイズ、今からお仕事だ」
「駄目なの。サイトは、あたしの傍に居ないと駄目なの!!」
「あぁ、もう。ルイズは、俺のお手伝いしたいんじゃなかったのか?」
「お手伝いしたいの」
「じゃあ、今は離れてな、其がお手伝いだ。解った?」
「うぅ〜。イヤだけど解った」
「モンモン頼む。ギーシュ行くぞ」
「解った」
「任せて。ルイズ、私と待ちましょう」
「うん」

「あったぁ、湖底歩いてたら、陸に打ち上げられちゃったわ」
「……追い出された」
「堪らないわ、ん? バレット、ちっ」
キュルケはすかさずフレイムボールを詠唱し焼き払い、そこにすかさずタバサが風を送り、火力を引き上げる
ボン
「威力無い」
「水使いの索敵? しまった、教えちゃった」
「タバサ、あれやるわ。人間相手なら最小で済む」
コクリと頷く
二人で同士に詠唱し、ファイアランスとジャベリンが浮かぶ
「ダーリン直伝よ」
音が鳴る方に向け、射出する
ドカン!!
「良し成功、次」
又、二本の槍が浮かぶ
ザザザザ
まだ音が鳴る
「ち、一発じゃやられないか。タバサ、方向指示」
杖で指す
「ファイエル!!」
ビュッ
ドカン!!
「次」
ザザザザ
「ああ、もう何なのよ? 威力も範囲もトライアングルレベル超えてるのに、何でやられないのよ。タバサ、方向合ってる?」
「合ってる」
「方向」
杖で差し示す
「ファイエル!!」
ドカン
周囲の木が次々爆風に巻き込まれ、薙ぎ倒される
「相手が速い、来る」
「ちっ、ダーリン居てくれたら楽勝なのに」
タバサがウィンディアイシクルで何十にも及ぶ氷の矢を展開、キュルケもまたフレイムボールを複数作り出す
「喰らいなさい!!」
フレイムボールが広範囲に炸裂し、木々や下草が燃える
揺らぎを感知したタバサが、其処にウィンディアイシクルを叩き込む
「くっ」
手応えが無いのに気付き、アイスストームを放つ
ゴォッ!!
雪風にさらされ、延焼が消火される
「駄目、手応えが無い」
「くっ、範囲攻撃も駄目って最悪。最後の一発に賭けるしかないわね」
キュルケがファイアランスを成型し、機を伺う
タバサはブレイドを展開し、突撃するタイミングを伺う
額には大量の汗、今迄でも、最悪クラスの強敵
此処に、あの剣士が居てくれれば
ザザザザ
「そこ!!」
ファイアランスが、キュルケが予想していた威力の半分も出さないままかき消える
「嘘!?」
ザッ
タバサがタイミングを合わせ飛び出し、ブレイドを斬りつける
「峰だ峰」
「どわぁぁぁぁ!!」
キィィィ、カチン
ブレイドにデルフが干渉し、吸い込む
近づくことで相手が判り、デルフを止めようとしたが止まらず、 ならば杖を斬らない様に、とっさに刃を返したが、何とか間に合ったようだ。 才人はホッと息を付く
「タバサにキュルケか。こんな所で何してんだ?」
タバサとキュルケは二人してすとんと腰を落とす
「こ、怖かった〜。腰抜けちゃったじゃない」
「あ〜悪かった二人共。タバサ、大丈夫か?」
ふるふる
タバサは首を振り、一気に涙を浮かべる
「……剣向けた」
「ごめんって」
「剣向けた!!」
「悪かったってば」
「貸し、二個目!!」
「はい」
才人は苦笑して、デルフを納める
「立てるか」
ふるふる首を振るタバサ
「タバサほら」
タバサをお姫様抱っこすると、身体はまだ震えていた。しかし震えをそのままにタバサは首に手を回す
「……怖かった」
「ごめん」
「もう、駄目かと思った」
「ごめん」
「……居て欲しかった」
「ごめん」
「ちょっと、ダーリン」
「何だい? キュルケ」
「差別じゃないかしら? 私も立てないのよ」
「ああ、ごめんごめん」
タバサを抱っこしたまま、キュルケの傍に座る
「悪かったよ、キュルケ」
「許さないんだから」
「ごめんって」
「これ位は良いでしょ?」
キュルケからキスをする
「賠償、ね」
「……賠償になるのか?」
「次やったら、こんなんじゃ済まさないわよ」
「お〜怖っ」
「才人捕まえたかい? あれ? キュルケとタバサじゃないか?」
「ギーシュ、二人を呼んで来てくれ」
「解ったよ」

ウォーターバレットで大体の位置を掴んだ才人とギーシュは、一気に攻め込まずに迂回して駆ける
「ギーシュ、無理すんなよ」
「あぁ、才人の動きには付いていけないからね。だから、ワルキューレを展開するよ。的を分散させる」
「おぉ、助かる」
「おいで、ワルキューレ」
ワルキューレが複数出現。その手は槍を携え剣呑な気配を放っている
「お、槍持たせたのか」
「いやいや、本来こちらが正式」
「やっぱあの時は、手加減してくれてたんだな」
「素手だったじゃないか」
「……マジでお前凄いわ」
ザザザザ
移動で草と低木が鳴る
ワルキューレを扇状に展開させ更に進む
其処に炎と氷の槍が降り注ぎ、派手に爆発。咄嗟に避けた才人と殿のギーシュは無事だったものの、ワルキューレが巻き込まれ全て消し飛ぶ
「な、今のは? ……まさか!!」
「デルフ」
「ありゃ、相棒が提案した、水蒸気爆発だろ?」
「そうだ、そんな事やる奴居るのか?」
「ハルケギニアも広いからねぇ」
「ギーシュ、ついて来るな。あれ食らったら、一発でお陀仏だ」
「解ったよ。確かに僕じゃ、回避出来ない」
「デルフ行くぞ。指示しろ」
「あいよ、村雨は抜かんのかい?」
「こんな障害物だらけで、2刀出来るか」
「そうだねぃ」
一気に才人は駆ける
「相棒、来るぞ」
ドカン!!
「くぁぁ、熱い上に痛ぇ、ちゃんと吸ってんのか?」
「吸ってるから、その程度なんだが」
「悪ぃ、引き続き頼む」
「おぅ」
更に木々の間を走り抜ける
「来るぞ相棒」
ヒュッ、ドカン!!
デルフを爆発の中心に差し出し、被害を軽減する
「くぅぅ、グローブしといて良かったわ」
「相棒の考えは凶悪だねぇ。あれ、相当絞ってるぜ」
「敵に回すと洒落にならんな、使い手に興味出るわ」
「まさかねぇ」
「何か気付いたのか、デルフ」
「いんや、来るぞ!! 手当たり次第だ」
「何?」
息つく間もなく、飛来したフレイムボールが複数炸裂する
「でえぇぇ、洒落になんねぇ」
「相棒!! 前」
「くっ」
氷の矢を斬り払いながら、吸収する
「なんつう、コンビネーション」
「マズイ、アイスストームだ。暴風に巻き込まれる前に一気に走れ」
「糞っ。マジに洒落にならん」
両腕を顔の前で交差し、デルフで吸い込みつつ突破する
「ファイアランスだ」
これを斬り払い、吸い込み、かき消す
「開けるぞ、イケる!!」
「峰だ峰」
「どわぁぁぁぁ!?」
才人の目の前に出たのはタバサである

「って、感じだな」
「ダーリンじゃなかったら、最初の一撃でケリ付いたじゃない」
「みたいだな、ま、デルフのおかげだ」
「……そんな事ない」
「そうか?」
「そうよ。ダーリンが的確な指示を出して無かったら、私達ギーシュを殺してたわ」
「確かに。正直、ワルドとやった時より生きた心地しなかったわ」
「それは此方の台詞よ。まだ震え止まらないわ」
「……私の最強の敵だった」
「タバサが言うんじゃ、余程よねぇ」
「そうなのか?」
「私達の中で、一番場数踏んでるのは、タバサよ」
「お褒めに預かり、光栄の至りって所かな?」
「一つ約束して」
「何だキュルケ」
「もう、剣を向けて欲しくない」
「俺だって、女のコに剣向けるなんざ、ご免だ」
「そういう所が良いのよねぇ」
キュルケがしなだれかかる
「ふぅ、タバサは大丈夫か?」
ふるふると首を振り、才人に引っ付いている
キュルケと同じく、震えが止まってない
「才人、連れて来たよ」
「サイト〜。……何で二人が、サイトにくっついてるの?」
「私も聞きたいわ」
「私達、腰抜けちゃったのよ」
「何で?」
「ダーリンを敵に回したから」
「そんなに?」
「貴女もやれば解るわよ、正に恐怖よ。あんなの二度とご免だわ」
タバサがコクコク頷く
「貴女達が二人がかりでやって恐怖するって? どんだけよ」
「皆揃った所で話を合わせるか。一体どうして、水の精霊を襲ったりしたんだ?」
「任務」
「タバサのガリア騎士の仕事なのよ。ラグドリアン湖の増水原因を絶てってね」
「だから水の精霊を襲ったのか。水の精霊はさ、探し物をする為に増水してるんだと。んで、二人が奪った品の手の者だって言ったもんだから、此方は撃退を条件に精霊の涙をね」
「成程ね」
「タバサ、心当たり有るか?」
「……物は?」
「アンドバリの指輪って奴らしい」
「……初耳」
「ふむ、降り出しか。って事は、誤解も有るんだな。タバサは増水が何とかなれば良いのか?」
コクリと頷く
「水の精霊さんよ。見てたかい?」
ザアァ
湖面に精霊が立つ
「見させて貰った」
「どうやら、精霊さんの誤解も有るみたいなんだが?」
「だが、そちらの方向から奪って行ったぞ?」
「だからと言って、それに全員通じてる訳じゃ無いんだよ」
「そうか」
「誤解を認めるかい?」
「認めよう」
「そりゃ、良かった」
「でさ、改めて依頼を承けるからさ、増水するのは止めてくれないかな?」
「最初の条件と違う様だが?」
「私達の要望よ」
「ならば、お前達も我の要望を承けるが良い。さすれば、元に戻そう」
「良いわ、ね、タバサ」
コクリと頷く
「では、此処に居る全員が、我の依頼を承けると言う事で構わぬな」
「あぁ、構わない」
「では、アンドバリの指輪を探して貰おう」
「期限は?」
「お前達の寿命が尽きる迄で良い。全員死ねば、また増水すれば良い」
「長い刻を生きる精霊は違うなぁ」
其処で、モンモランシーが思い切って話かける
「すみません。一応撃退はしたので、精霊の涙を頂けますか?」
「……ふむ、其処の男。手袋を外して、我に手を見せろ」
「ん? ああ」
才人はグローブを外し、両手の表裏を見せる
「モンモランシの裔よ、受け取れ」
「は、はい」
ガラス瓶を差し出すと、それ一杯に精霊の涙が満たされる
「こんなに」
「面白いモノを見せてくれた褒美だ。このままでは、役割に支障が出よう」
「役割?」
「短い生を生きる人の子では、預かり知らぬ事だ」
「それは?」
「我らは大いなる意思と呼んでいる。其が何かは、我にも解らぬ」
「有難うございます」
「水は、増やした月日と同じだけの時を費やし減らそう。其で構わぬな?」
「タバサ、良い?」
タバサは頷くことで了承とした
「では、次来る時はアンドバリの指輪を持って来るが良い」
水の精霊は、そう言い残し湖底に帰って行った
「ふぅ、何とかなったな。タバサ、キュルケ大丈夫か」
「ん〜、出来れば、まだこのままが良いわぁ」
タバサも頷く
「流石に、三人に引っ付かれんのは、大変なんだけど」
モンモランシーが問答無用で治癒をかけ、二人をしゃんとさせる
「これで良いでしょ?」
「ちぇっ、邪魔が入った」
「……」
タバサは首にかじりついて、離さない
「タバサ、報告が有るんじゃなくて?」
「才人」
「何かな、タバサ」
「この杖、先祖伝来の杖。折らないでくれて、嬉しかった」
「それは良かった」
「また、学校で」
「あぁ、気をつけてな」
コクリと頷き、シルフィードを呼ぶ
二人はシルフィードに乗って飛び立った

「モンモン、此方も何とかなったな。上手くいって良かったわ。量的には足りるか?」
「充分よ。売って儲けられる位」
「そしたら帰るか。な、ルイズ」
「サイト、何で他の女ばかり見るの? あたしだけ見てくれないの? あたしは、こんなにサイトの事が好きなのに」
「そっか、そうだな。でも、何時までも夢心地じゃ居られないぞ? やる事有るんだろ? ルイズの夢は何だ?」
「んとね、サイトが隣に居てね、立派なメイジになるの。でね、お父様の後を継げる位、立派な貴族になりたいの」
「そうか、なら頑張らないとな」
「でもね、サイトが居ないと頑張れないの」
「解ったよ。俺の我が侭なご主人様。さぁ、帰るぞ」
「うん」
そんな才人達を少し離れて見る、ギーシュとモンモランシー
「ねぇ、ギーシュ」
「何だい、モンモランシー」
「良いの?」
「何がだい?」
「意地っ張り」
「惚れ薬飲まないと、本音も言えないルイズよりましだよ」
「あんたも大概よ」
「そうかい、さぁ、帰ろう」

*  *  *

やっとの思いで学院に帰り着いた時には、既に日が落ちてからかなりの時間が経過していた
当初の予定では、日のある内に戻れる筈であったのだが、皆の疲労を計算していなかった為、倍の時間が掛ったのである
厩舎に馬を返した後、食事が有るか食堂を尋ねてみたのだが、案の定無かった。だがそこは才人、得意業の厨房直接が炸裂し、皆、食事にありつけた
「どうしたい、我らの剣、遅い帰りだな。シエスタから聞いたから、夕食に間に合うもんだと思ってたんだが。もう夕飯終わっちまったぞ」
「いやぁ、思ったより時間掛かっちゃってさ。残り物で構わないから、皆に飯食わせてくれないか?」
「っておい、貴族の坊っちゃん嬢ちゃんじゃないか。こんな所で、食わせる訳にはいかねぇよ」
「あの、僕なら此処で良いですよ。軍人になれば、今までの様にはいかないでしょうし」
「何事も経験よね」
「サイトと一緒じゃなきゃ、嫌」
ニヤリとマルトーは笑う
「我らの剣と一緒だと、貴族様も変わっちまうのかね。残り物で良けりゃ今から揃える、ちっと待ってろ。空いてる奴、全員にワイン出してやれ」
「助かるよ、親父さん」
「何、それが俺の仕事だからな」
「流石、料理人」
「さてと、じゃあ俺も何か一品作るか」
スラリとデルフを抜く才人
「ま、待て、相棒。まさか俺っちで料理する積もりか?」
「うるせぇぞ、伝説の包丁。包丁らしい所見せてみろ。てめぇ、人すら斬ってねぇだろうが」
「い、嫌ぁぁぁぁ」
デルフの切ない声が、調理場に響いた
「あれ、デルフをからかってるのよね?」
「そうだね。まぁ実際、野菜切っちゃってるけど」
「使い魔が凄いのか、才人が凄いのか」
「どっちだろうね〜」
「うっうっう、もうお嫁にいけない、責任取ってね」
「お前とは遊びの関係さ、将来なんて考えてない」
「ひ、酷い、騙したのね。こんなにあたいの身体、弄んだ癖に」
「へ、良かったぜ」
ガクリと席から崩れるモンモランシーとギーシュ
「何なんだあの二人は?」
「何時もあんな感じなのかしら?」
「我らの剣、止めてくれ、手元が狂っちまう」
「あ、ごめん親父さん、デルフ」
「おぅ、済まん、おっちゃん」
「おし、待たせたな」
「此方もサラダ出来たぞっと、さぁ食おうぜ」

*  *  *

ぐずるルイズはシエスタに任せ、才人は一人風呂に入り終え、部屋に戻る
「サイト。何で一緒に居てくれないの?」
「ルイズが可愛い過ぎるから」
「可愛いあたしは嫌いなの?」
「そんな事無いよ」
「何でこっち見ながら言ってくれないの?」
『また、破壊力抜群な恰好しやがって』
スケスケのベビードールに同じく、スケスケのショーツ
昨日からのヘビーローテーションに、才人はくらくらする
「ルイズ、それ、シエスタが着せたのか?」
「ううん、あたしが着たの」
「はぁ、可愛いぞルイズ」
「サイト、一緒に寝よ。家族作ろ」
「嫌、それはだな」
「だって、そうしないと、サイトどっか行っちゃうもん。サイトは子供好き?」
「大好きだ」
「じゃ、サイトの赤ちゃん、沢山産むね」
「だけどな」
「あたしはもう結婚出来るよ。ワルドとサイト同い年でしょ? 問題無いよ」
「待て、落ち着け」
「何で? 落ち着いてるよ」
「あ〜ルイズは子供好きか?」
「好き。ちぃ姉さまみたいに接したいな」
「俺の事は?」
「大好き」
「赤ちゃんは?」
「サイトの赤ちゃん? うん、沢山産むね」
「だから待て、両親に何て言う積もりだ。使い魔と子供作ったなんて、言う積もりか?」
「サイトだったら大丈夫だもん。ちい姉さまだって、協力してくれるって言ってるもん」
「ちい姉さまって、いつ会ったんだ?」
「サイトが来る前から、手紙でやり取りしてるよ」
「まさか、昨日送った?」
「うん、さっき返事来たもん。孫見たら折れるから、頑張ってだって」
「……まさか、惚れ薬の影響とは思ってねぇだろうしなぁ」
ガシガシ頭をかきながら溜め息をつく
「サイト、早く服脱いで」
「はぁ、解ったよ」
服を脱ぎ、シャツとパンツだけになるとルイズがすかさず絡み付く
「あ・た・し・の・ば・か・い・ぬ・あ・た・し・だ・け・の・い・ぬ」
首筋を舐め、腕を背中に回し、肌を重ね、太ももを才人の股間に擦り付け、身体をくねらせる
「我慢ばかりする嘘つき。他の女ばかり見る位なら、ご主人様に全部して」
「サイトがしたい事なら、全部あたしがされたいの」
ルイズが才人を押し倒し、才人はルイズを受け止める
「サイトは私の事、大事じゃ無いの?」
「大事だよ」
「サイトはあたしの事、好き?」
「好きだよ」
「女のコはね、好きな人には、えっちな事されたいんだよ」
ルイズがキスを求め、サイトはそれに応じつつも、舌に何かを乗せルイズに飲み込ませる
舌を絡めると、途端に抱きつきが激しくなり、ルイズが股間を擦りつける
「ん〜〜〜〜〜」
軽くいったのだろう、身体がのけ反るのを必死に腕で離れない様にしている
「ぷぁっ、今、何飲ませたの?」
ルイズは目をとろんとさせ、更に股間を擦り付ける
「ルイズが気持ち良くなる薬」
「やっとなのね、嬉しい……………すぅ」
「……気持ち良くお休み、ルイズ。明日には何時も通りだ」
「……相棒、眠り薬なんていつ用意したんだ?」
「風呂帰りにモンモンにストック分けて貰った。今日徹夜で仕上げるとさ」
「香水の嬢ちゃん、そんなの迄持ってたのか」
「普通の作るのに飽きてて、色々作ってんだと」
「やっちまえば良かったのによ」
「うるせー。やるにしても正気の時だ」
「ほいほい、じゃ、その時に嬢ちゃんけしかけっかな」
「ぜってー折っちゃる。お休みだ、デルフ」
「おぅ」
そのままルイズを乗せた状態で、才人は目を閉じた

*  *  *

ドンドン
「相棒、客だぞ〜」
ドンドン
「起きろ〜」
ドンドン
「駄目だ。お〜い、二人共まだ寝てるぜ」
「入るわよ」
ガチャ
ルイズの部屋は、ロックが掛ってないので、直ぐに開く
「お〜、可愛い顔が台無しだな、嬢ちゃん」
「ぅるっさい、黙れボロ剣。やっと出来たのよ、才人起きなさい」
「お〜怖っ」
つかつか歩みより、才人の傍に行く
毛布を剥ぐと、才人の上ではルイズが寝ており、その恰好にモンモランシーは怒りを覚える
「才人が拷問って言ってたのはこれか。ん〜と、してないわね。良し、許してあげないでもない」
「さて、殴るか水をぶっかけるか。水は駄目ね、薬にかかって成分変わったら駄目だわ」
薬を机に置き、深呼吸。才人の耳を摘み、耳元で怒鳴る
「起きろおぉぉぉ、出来たぞ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
才人はベッドの上で跳ねる
「何だ何だ? 何が起きた?」
「薬が出来たのよ」
「え? お、モンモンか。おはよう。凄い顔だな」
「徹夜はお肌に悪いのよ。良いからルイズ起こしてよ。してないでしょうね?」
「やらない為に、眠り薬分けて貰ったんじゃないか」
「ま、信用するわ。あんた本当に堅いもの。全く、ヴァリエールは侮れないわね。キュルケより凄いじゃない」
「淑女のたしなみって言ってたぞ? 母親や姉妹から、貰ったって言ってたな」
「モンモランシでは、此処までしないわよ。母様から、こんなの貰った事無いわ」
「大貴族ってのも、大変なんだな」
「どちらかと言うと、ツェルプストーのせいかも」
「あぁ、先祖代々の正当なる寝取られだもんなぁ。そりゃ、気合いも入るか」
「クス、そうね」
クスクスとモンモランシーは笑う
「そろそろ、起こしてよ」
「モンモンが起こさないのか?」
「今のルイズじゃ、多分サイトじゃないと反応しないわよ」
「そうだな。ルイズ、ルイズ、朝だぞ。起きろ」
才人が身体を揺すりながら耳元で囁くと、ルイズはピクンとした後、寝惚け眼で目を開ける
「ふにゃ、サイト?」
「おはよう、ルイズ」
「おはよう、サイト。何で子供作ってくれないの?」
「ルイズが先に寝ちゃったんだろ?」
「ん〜と、そうだった。朝早く起こしたのは何で?」
「子供作るんだろ?」
「作ってくれるの?」
「あぁ。モンモンが、子供出来易くなる薬、作ってくれたからね」
此処で、初めてモンモランシーに気付くルイズ
「モンモランシー、本当?」
目の下に隈を浮かべ、こめかみをひくつかせ、更に青筋立てて、モンモランシーは応じる
「えぇ、そうよ。机の薬がそれよ」
「ありがとうモンモランシー。サイト、飲ませて」
「はいはい」
ルイズをベッドの上で座らせ、サイトは立ち上がり、机の上の薬を手に取って口に含むと振り返る。 座ったままのルイズを左腕で抱き寄せ唇を合わせ、薬を流し込む
こくんこくん
ルイズの小さな喉が薬を飲み込んだのを確認し、唇を合わせたまま暫く待つ、10秒程経った時、ルイズの顔が一気に紅く染まり、目を見開く
才人は目を閉じており、それには気付かない
ルイズが左拳を握り込む、隙間は僅か10サント
ゴスッ!!
「くぁっ!?」
無防備な肝臓にクリーンヒットし、才人が身体をくの字に折り、ルイズと才人の間に隙間が出来る
ルイズは膝を立て、左拳をフックの構えから、一気に身体中のバネを使い、才人の顎を立ち上がりながら打ち抜く
ガッ!!
「アガッ」
一瞬浮いた才人は、そのままたたらを踏みながら後退、それを追ったルイズは床に立ち、頭が無限の軌跡を描く、そこから放たれるは左右の連打
ガンガンガンガンガン、ガン!!
ドスン
才人は頭から床に叩き付けられた
「嘘、嘘、今までのは、全部うそなのぉぉぉぉぉ!!」
「・・・リバーブロー、ガゼルパンチ、デンプシーロールのが、絶対嘘だ」
才人は小さく呟き、そのまま失神する
「こうしちゃいらんない。早くちい姉さまに手紙書かなきゃ」
「結局こうなるのね、この二人」
「報われねぇなぁ、相棒」

*  *  *


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Last-modified: 2012-03-17 (土) 06:40:53 (4416d)

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