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Last-modified: 2010-10-13 (水) 10:38:39 (4942d)

ルイズ達が、アルビオンから脱出した時点迄遡る
兵士達が隅々迄捜索した王党派の拠点を、男女二人が歩く
「ちっ、奴らの遺体が無いな」
「どうやって、逃げおおせたんだろうねぇ。にしても、良かったじゃないか、腕くっついて。直ぐに冷気魔法で、保存して正解だったね」
「治療担当の水使いが驚いていたな。切口が鋭利過ぎて、逆に接合出来たと。普通は繋がらないって、呆れて言ってたからな」
「才人の腕に感謝するんだね。此でアタイの言った事は、真実だと証明された訳だ」
「ふん、次はやられん」
「無理だよ。才人は以前遭遇した時より強くなってた。また遭遇した時は、スクウェアだろうと鴨にされかねないね」
「そんなに人間が急成長するものか」
「アタイは良く知らないが、伝説の使い魔なんだろ?なら、能力の使い方知れば、どんどん強くなるんじゃないか?」
「…確かにそうだな」
「もうアタイは才人とはやらないよ。良いね?」
「契約はそういう条文無いだろう?」
「何言ってるんだい?もう傭兵契約は一旦終了している。さっさと払ってくれないか?支払いしてから、更新するかどうか決めるよ」
「ぐっ、確かにそうだった」
フーケは手を出す
「支払いは?」
「ちょっと待ってくれ」
「嫌なこった」
「今回ので、トリステインの子爵領も剥奪されてしまうから。レコンキスタから支払い出る迄待ってくれ」
「そんなの、アタイの知った事じゃないよ」
「ならば、兵達と一緒に此処から取れば良かろう」
「…ワルド、アタイを馬鹿にしてるのかい?アタイは、まともな仕事と聞いたから承けたんだ。略奪がまともな仕事ってのは、初耳だねぇ。貴族の誇りと言っても、そんなもんか。軽蔑して良いかい?」
ワルドに言葉の槍が痛烈に刺さる
「ぐっ」
「早く払っておくれ。冗談抜きで、おさらばしたいんでね。たかが一敗まみれた程度で、其処まで堕ちる奴なんかと、付き合って居られるか」
「これはこれは、ワルド子爵では有りませんか。こちらに居る、美しい女性を私に紹介して頂けないかね?一応僧籍なので、声をかけられぬのだよ」
「クロムウェル閣下。こちらがトリステインで、その名を知られた盗賊、土くれのフーケでごさいます」
「元盗賊さ。もう廃業したんでね」
「成程、此方がミスサウスゴータですね。御見知り置きを。私はオリヴァー=クロムウェル。レコンキスタの総指令をしています」
「何で知っているんだい?その姓は、捨てたんだけどねぇ。アンタがワルドに、あたいを繋げたのかい」
「えぇ、私はアルビオンの貴族は全て把握してますからな」
「そうだ、アンタはワルドの上司だろ?」
「上司ではなく同志ですよ、ミス」
「どっちでも良いさ。ワルドが契約を不履行してるんだ。アンタが代わりに支払ってくれないかい?同志なら、同志の不始末にケリ付けてくれないかい?」
「金額は如何程でしょうか、ミス」
フーケが答えると、クロムウェルが眉をしかめる
「其は本当でしょうか?ミス」
「ほい、契約書」
クロムウェルは目を通し、溜め息をつく
「本当の様ですな。財務官を呼んでくれ」
「かしこまりました」
取り巻きに指示を下し、暫くすると金貨の袋を持って、財務官が現れる
「ミス、確認をお願いする」
「はいよ。ひうふうみい……確かに受け取った」
「では、ツケはワルド子爵に付けさせて頂きましょう。宜しいですね?子爵」
「……分割払いで頼む」
「ではミスサウスゴータ。改めて、我々レコンキスタの同志になって頂けませんか?」
「お断り。興味ないね」
「我々の敵に回るのですか?」
「敵にも味方にもならない。アタイはまともな仕事探して、地味に生きるだけさ。今回は、偶々雇われただけだよ」
「では、我々が雇う分には、問題有りませんね?」
「ま、そうなるね」
「では、レコンキスタが雇用主になりましょう。改めて、傭兵として働いて頂けますか?」
「条件が一つある」
「何でしょう?」
「才人と遭遇したら、逃げても良しとする」
「才人とは誰でしょう?」
「ワルドの腕を叩き斬った、凄腕の剣士だよ」
「遭遇したら勝てぬと?」
「アタイじゃ、勝てない所か、玩具にされるね」
「本当かね?ワルド子爵」
「事実です、クロムウェル閣下。実際に玩具にされました」
「土くれと言えば、音に聞こえたメイジでしょう?其を玩具とは。解りました。その条件で良いでしょう」
「支払い条件は?」
「月極めで宜しいか?で、半年更新、支払いはこんな物で」
「奮発したねぇ。良いね、此で良いや」
「では書記官、契約書を」
「かしこまりました」
「閣下、気前が良いですな」
「貴方が値段を吊り上げたせいですよ。閃光殿」
「私は疫病神か」
報告致します」
兵士が一人割って入る
「申せ」
「はっ。ウェールズ王子の遺体を収容しました。それと、大陸外に繋がる人間一人分が通れる穴を発見致しました」
「物資と捕虜は?」
「宝物庫と武器資材庫は確保しました。硫黄と硝石を発見、但し、それ以外は兵の略奪で」
「それ位は構わないでしょう」
「寛大な処置、感謝致します。捕虜は王党派の婦女子やお付きのメイド。男性は全滅してました」
「それはワルド子爵の手柄ですね。この件で、先程のツケを帳消しにてもお釣りが来ます。報奨を出しましょう」
「有り難い御言葉、感謝致します閣下」
ワルドが答える
「では、私の友人を増やさなくはなりませんね。ウェールズ王子の遺体を此方に」
「ははっ」
ウェールズ王子の遺体を持って来させ、クロムウェルは語る
「さて、ミスサウスゴータ。失われた虚無をご存知ですかな?」
「あんなの伝説だろう?」
「そんな事は有りませんよ、ミス。虚無とは生命すら覆す、素晴らしい物なのです。では、御見せ致しましょう」
杖を持ち、何やら不可解な言葉を詠唱するクロムウェル。僅かに指輪がきらりと光る
そしてウェールズ王子の遺体の傷口が修復され、むくりと起き上がった
「な!?」
「ご機嫌は如何かな?ウェールズ王子」
「すこぶるご機嫌だよ。我が友、クロムウェル」
「此からは、レコンキスタの為に働いて頂けますか?」
「勿論だとも」
「では、友人達の列に加わって頂けますかな?」
「良いとも、我が友の願いは聞き届けよう」
ウェールズは付き従った者達の列に加わる
「……あれ、まさか」
「そうですともミス。敵や味方で素晴らしい活躍をしたモノの、志半ばで絶えた者達ですよ。全員素晴らしい使い手達です」
「……此が、虚無」
「伝説を信じる気になりましたかな?」
フーケは頷く
「此が、アンタ達の切札かい」
「私は心成らずとも、この始祖の力、虚無に目覚めてしまいました。ならば、聖地を奪還する為に、また、始祖の力を後世に伝える義務が有ると、確信したのです」
「ではミス、不躾なお願いなのですが、始祖の力を後世に伝える為に、協力をお願いしたいのですが?」
「……ふん、とんだ生臭坊主だね。そんな事は契約書には書いてないからお断りだ。どうしてもってなら、アタイもアンタのお友達にしてからするんだね」
「おっと、此は嫌われてしまいました。まぁ、良いでしょう。ではワルド子爵、副官として、ミスサウスゴータを付けますので、委細任せます」
「…アタイはこいつ嫌いなんだけど?」
「此は契約に添ってますよ?」
「…確かにな。承知したよ」
「そんなに私の事嫌いか?」
「アンタはアタイの神経逆撫ですんだよ。別に嫌いたくて嫌ってんじゃない」
「…気を付けよう。で閣下、今後の方針は?」
「先ずは地上の拠点を築かないといけませんね。其はトリステインのラ・ロシェール以外有り得ません。ですが、今の時点では大陸が移動してしまった為、無理が有りますね。外交はパンと杖。先ずはパンをくれてやりましょう」
「和平を持ち掛けると?」
「取り敢えずと、言って置きましょうか」
「ほう、その時が楽しみですな」
「では、私はまだまだ用事が有りますので」
クロムウェルは去って行く
「…成程、伝説をこの眼で見たから、伝説の使い魔の主人が欲しかったんだね?」
「そうだ。何れ目覚める。今は時じゃないだけだ」
「ふん、そんなんだから女がなびかないのさ」
「私は力が欲しいんだよ。今よりももっとだ」
「既に、スクウェアの癖にかい?」
「まだだ、聖地に繋がるモノが見付かれば、まだまだ力が手に入る」
「アハハハ。才人の言った通りだ。アンタじゃ、伝説の力は手に入らない。才人一人に負けた位で、立場すら危うくした癖に、どの路で手に入れる積もりだい?」
「くっ、奴一人で何が出来る?」
「多分、アタイ達には出来ない事さ。…所で、あの女の事、愛してたのかい?」
「……忘れたよ」
「そうかい」

*  *  *
クロムウェルが向かった先は寝室、一際大きい寝台が有る王子の部屋で、取り巻きは二人、全身を黒の装束で隠し、顔にヴェールをし、全容が解らない女と、ウェールズ王子
兵士が二人、見張りで立って居る
「ご苦労。首尾は?」
「はっ。選りすぐりの者を、5人用意して有ります。勿論、全員貴族です」
「杖は?」
「取り上げて有ります。また自害せぬ様、魔法の轡もはめております」
「宜しい。残りは兵士達で楽しむが良い。最後は何時も通り、オークやトロルに回せ。奴らを使う上での、契約だからな」
「流石閣下。話が解る。貴族を楽しめるなんざ、滅多に有りませんからな」
「傷付けたり殺すなよ。必ず最後迄、有効利用しろ。殺した者は斬首にしろ。オークやトロルが暴れだしたら厄介だ」
「解ってまさあ。では楽しんで来て下せい」
ギィ、パタン
「ほぅ、これはこれは。本当に選りすぐりを選んだ様ですね」
ベッドの上で震える5人
「安心して下さい、殺しはしませんよ。其に、その轡は喋る事が出来た筈です」
「…ウェールズ王子。生きて居たんですね?」
「私は、サークロムウェルによって蘇ったのさ。今は彼の親友だよ。君達には、大事な仕事をお願いしに来たんだ」
「仕事とは?」
「実はサークロムウェルは伝説の虚無の使い手でね。その気高き始祖ブリミルの御使いの血を、後世に伝えないといけない。君達には、其を手助けして欲しいんだ」
「つまり、この男の子を身籠れと。王子が蘇ったのも?」
「そう、虚無のお陰だよ。だから私は、レコンキスタに与する事にした」
「い、嫌です」
「嫌ならしょうがない。オークに引き渡そう。サークロムウェル、宜しいか?」
「まぁ、そうなりますな」
「ひぃぃぃぃ」
「さて、返答は行動で願おうかな。イエスなら、服を脱いで貰えないかな?其と、一つ教えようか。一番安全なのは、サークロムウェルのお膝元だよ。少なくとも、兵士達の慰みモノよりずっと良い」
その言葉で、女達は自身の身が、此でもマシなのだと理解する
「わ、解りました」
一番年長の女が答え、全員が服を脱ぎ始める
全裸になった女達が、胸と股間を隠しながら、クロムウェルに向いている。
「実に素晴らしい。さて、最初は只の行為にしましょうか。お互いに楽しむのは次からで。では全員、獣の様に、此方に尻を向けなさい」
全員ベッドの上で従う。丸い尻が五つ並び、クロムウェルを誘う
クロムウェルはいそいそと全裸になり、少々小さい自身のモノを、端の尻にそのまま突き立てた
「いっ、ぎっ、痛」
女と繋がると指輪がほんの僅かに光る
その瞬間、女はとろけだした
「あ、あぁぁぁ。閣下、素敵ぃ」
腰を打ち付けるクロムウェルに合わせ、女も腰を振る
「ふっふっふ。最初はそのまま出しますよ。後がつかえてますからね」
「はいぃ、閣下早く出してぇ」
「ふっふっふ、さぁ出しますよ」
「あああぁぁぁぁ」
女が絶頂し、その間はクロムウェルは射精で腰をきっちり掴み、離さない
暫くしたら抜き出すと、クロムウェルのモノはきちんと勃っていて、精液で濡れている
「さて、次ですね」
隣の女に、また無造作に挿入する
「い、いきなり。酷い。あ、ああぁぁぁぁ」
パンパンパン
「ふっ、いきなりでも、皆喜ぶので、敢えてしないんですよ?理解しましたか?」
「はいぃぃ。もっとぉ」
「ふぅふぅ。では出しますよ」
「あはぁぁぁ」

その後、他の三人にも同じ様に挿入し、三人とも絶頂させ、今は5人が、クロムウェルに奉仕している。クロムウェルのモノは、ずっと勃起したままである
「さて、もう轡は要りませんね。外しましょう」
クロムウェルが合図をすると、全員の轡が外れ、女達は我先にクロムウェルにキスを求め、あぶれた女はイチモツに奉仕する
「ふふふ、では次々とやりますか。楽しみましょう皆さん」
「「「はい」」」
奴隷の笑みを浮かべ、女達は我先にと、クロムウェルのイチモツを挿入し、快楽の波に溺れていった

女達が失神するまでクロムウェルは抱き、其でもイチモツは上を向いている
「やはり、足らないか。おい」
「はい」
黒装束の女が脱ぎ、見事な金髪が覗き、耳が尖っている。そして胸は規格外の大きさで有りながら、形が崩れず、正に奇跡の形状を保っている
「エ、エルフ。いやぁああああ」
「君達、落ち着きなさい。あれも私の友達だよ。君達はこれ以上無理だからね。解るだろう?」
「閣下を満足させる事が出来ない私達を、どうかお許し下さい。そして、見捨てないで下さいまし」
「勿論だとも。だから彼女とも、仲良くなってくれるかね?」
「閣下の仰せとあらば」
悲鳴で起きた女達が頷く
「では良いね。来なさい」
「はい」
エルフの女はクロムウェルに寄ると、無造作にクロムウェルのモノを飲み込む
その瞬間、クロムウェルの顔に今までとは違う、快楽に歪み、快楽に耐える表情に切り替わる
「おっおっ、流石にお前は具合が良い」
「嬉しいですわ、クロムウェル様。私を思う存分味わって下さい」
「出すぞ」
「はい」
ドクンドクン
クロムウェルは座位のまま、エルフの女に出す
「ふぅ、まだだ」
「はい」
エルフの女は一度離れ、尻を見せ、顎をベッドに付け、腰を軽く振り、クロムウェルを誘う
「来て下さい」
「うむ」
ぬる
「おおお、お前のこの姿勢は本当に堪らないな、もう出そうだ」
「我慢しないで下さい」
「出る」
ドクンドクン
クロムウェルは散々射精したにも関わらず、勢いが衰えない
「ふぅふぅふぅ。このままだ、このままでまだ出すぞ」
「はい」
エルフの女が締め付け
クロムウェルはまた悲鳴を上げる
「うぉっ、強い」
「もっと下さい」
「うぁぁぁぁ」
クロムウェルが射精し、流石に疲れたか、エルフの女に上から覆い被さる
まだイチモツは、勃起したままだ
「駄目ですよ。まだまだ元気じゃないですか。更に出して下さい」
「うぁ」
エルフの女が膣を動かし、動けないクロムウェルから、更に射精させる
クロムウェルは快楽から逃げず、腰を密着したまま、射精を繰り返す
「ふぅふぅふぅ、流石に疲れた、最後はお前の胸で」
「解りました、何時も通りに」
結合を解かず、体位を変え、正常位でクロムウェルはエルフの女の胸を枕にし、眠り始めた
「あら、寝ながら出してらっしゃる。可愛いお方。貴女達も体力回復させる為に寝なさい。食事も取るのよ」
「あの、貴女は食事は?」
「私は大丈夫よ」
エルフはそんなモノかと勝手に解釈し、見張りに食事を要求した後、食事が来る迄、まどろみ始めた

*  *  *
翌日、クロムウェルは起床した後湯編みをし、女の匂いを落としてから会議に出る
女達には移動を告げた
会議は特に問題無く進行し、不可侵条約締結の使者を送る事を決定し、会議を解散した
秘書がクロムウェルに付いて行き、書斎に入る
「では、閣下。委細閣下の望み通りに」
「シェフィールド殿。うむ、宜しく頼みますよ。彼方の方にもね」
「えぇ、ですが」
ダン!!
「あがっ」
足の甲を強かに踏まれ苦悶する
「……ちょっと、使い過ぎじゃない?この豚!!」
「も、申し訳有りません。あれは、虚無の力を後世に伝える手段と云う、カモフラージュでして」
「ふん、アンドリバリの指輪をあんな風に使うとは、ゲスのやる事は本当に感心するわ。私じゃ、思い付かないもの。第一、誰の血統と言う事にする訳?一応、聞いておきたいんだけど?」
「ロマリアのフォルサテです」
「成程。司祭のアンタがやるなら、一番格好つくわね。にしても、あの女達も哀れね。虚無の血統かと思ったら。只の生臭坊主にやられてるなんてね」
「私は」
「お黙り!豚はさっさと腰でも振ってなさい。あのエルフの死体に随分執心だけど、情報は手に入ったの?」
「いえ、アンドリバリの指輪でも、名前一つ教えて貰えず」
「流石、エルフと言った所かしら?先住に対する耐性が高いわね。良いサンプルになるわ」
「其と、今の様な絶倫と快楽洗脳程度なら問題無いけど、完全洗脳は止めるのね。あっという間に尽きるわよ」
「心得ております。最初の3度程度で、身体の方が馴らされ、勝手にその状態になるみたいです」
「つまり、洗脳為なくても、勝手に反応しちゃう訳ね?」
「はい」
「貴重なデータ提供は感謝するわ。でも、くれぐれも使い過ぎは止めるのよ」
「解っております」
「じゃあ、女達が待ってるんでしょ?さっさと腰でも振ってなさい!」
尻を蹴られ、部屋を追い出されるクロムウェル

「主様。はい、全ては順調に進んでます」
シェフィールドは、恍惚とした表情を浮かべ、宙に視線を泳がせた

*  *  *
トリステイン王宮。アニエスが、学院に来る前である
「殿下」
「何ですか?マザリーニ」
「アルビオンからの使者が、不可侵条約の締結を求めて来ました。国号をアルビオン神聖帝国と改称し、クロムウェルを初代神聖皇帝と称しました。殿下の結婚式にも、艦を出し、参列すると」
「締結する益と、袖を振る益は?」
「現在のトリステインでは、一国でアルビオンには対抗出来ません。其が故に、殿下がゲルマニアに嫁ぎ、同盟を締結する必要が有ります」
「…その通りですね」
「袖にした場合、常にアルビオンと戦をする覚悟が要ります。現時点では、得策ではないでしょう」
「選択肢は無い訳ですね」
「さようで」
「小国とは辛いモノですね。締結しましょう。使者を丁重にもてなして下さい」
「かしこまりました」
「アニエスは?」
「現在、諸任務の引き継ぎを行ってる最中ですな。副隊長のミシェルが、現在隊を取り仕切っております」
「解りました。衛士隊は?」
「グリフォン隊の隊長代理に、マンティコア隊隊長のド=ゼッザールを採用しました。彼なら、2隊を束ねてくれるでしょう。何せ、スクウェアメイジは少ないので、隊長の替えは中々効きませんので」
「ヒポグリフ隊の様に、トライアングルでは駄目なのですか?」
「ヒポグリフ隊は、幻獣の扱いがグリフォンやマンティコアと違い、比較的優しい為に、トライアングルでも仕切れるのです」
「隊長のド=グラモンの力量を、2隊より下に見てる訳では有りません。気性の荒いマンティコアやグリフォンでは、隊長がトライアングルでは、難しいでしょうな」
「中々、上手く行きませんね」
「人材も不足気味ですな」
「銃士隊を編成して正解でしたね」
「殿下の慧眼、恐れ入ります」
「私が輿入れすれば、少しは楽になるでしょうか?」
「殿下がド=ミランに命じた、使い魔はどうですかな?」
「あらゆる布石を惜しまず。としか、まだ言えません。其に、私のルイズに悪い事してますね」
「今は国難の時です。殿下」
「ラ=ヴァリエールと烈風カリンの協力が得られれば、随分と楽なんですが」
「烈風カリンは退役した後、現在の消息は親しい者にしか教えておらず、その者達も口が堅く、知られておりません」
「ラ=ヴァリエールに於ては、後継者の問題が有り、積極的には関わらないでしょうな」
「長女は毎回婚約を失敗してますし、次女は持病で子供を産む事すら怪しいかと。三女はワルドの離反で、婚約が解消されましたし、下手すればヴァリエール自体、存続が怪しいかも知れません」
「ヴァリエールが無くなると、非常に困ります。あの領地一体を治める事の出来る貴族は、国内にはヴァリエールのみです。モンモランシも、湿地干拓失敗の後遺症から、まだ抜け出ていないのですよ?クルデンホルフは?」
「今度、娘をトリステイン魔法学院に留学さる手続きをしており、好き勝手してますな。国内貴族の主だった者で、クルデンホルフに金策をしてない者は、無いに等しいかと。一応独立国で有るので、余り強い態度に出るのは無理でしょう」
「ガリアとゲルマニア、ロマリアは?」
「ガリアは大国で有り、その外交姿勢は国王ジョゼフの気まぐれも有り、余り真剣には付き合えませんな。ですが、それ故に警戒を解けません」
「世間では、無能王とけなされておりますが、此方と外交を交した反応は、なるべくしてなった器かと。態度で推し量る愚は、すべきでは有りませんな」
「ゲルマニアは今回の結婚で、同盟を結べば産業と兵力を、多少は融通してくれるやも知れません。但し、ゲルマニアは地方領主の寄せ集めの側面が非常に強い為、不透明な部分が大きいですな」
「其に、ゲルマニアで一番産業の強いツェルプストーは、ヴァリエールの宿敵ですので、軋轢が予想され、難しいでしょうな」
「ロマリアは、新教皇聖エイジス32世は今の所、目立った動きはしておりません。ですが、此方の情報網に入っていないだけの可能性も、否定出来ないかと」
「此処でも人材不足ですか」
「はっ」
「貴族だけでは、もう無理なのではないのでしょうか?」
「極潰しなら、沢山居るのですがね」
「困ったものです。高等法院のリッシュモンにも、まだまだ働いて頂かないと困りますね」
「そうですな」
「いっそのこと、サハラのエルフやロバ・アル・カイリエと国交を開くと言うのは、どうでしょう?エルフ達は、非常に洗練された技術を持ってるのでしょう?」
「我々の宗教上の敵がエルフで、エルフの敵が我々で有る以上、非常に難しいかと」
「戦争より、交易の方が宜しいのに」
「全面的に賛成ですな」
「シルクが中々手に入らないので、市場で高騰してます。此だけでも、交易の価値が有るのですが」
「ロバ・アル・カイリエ産でしたな」
「えぇ、只でさえ交易自体が少なく、殆どがガリアで消費されてしまう為、トリステインには殆ど来ないですし」
「まぁ、駄目で元々で、サハラに使者でも出しますか?」
「ガリアを出し抜く方法が、無いですね」
「広大な国土は、それだけで脅威ですな」
「長駆出来る空船が有れば、随分楽になるのですがね」
「風石が持ちませんね」
「風石も、サハラに大量に埋蔵されてるとか」
「ふぅ、八方塞がりですね。何とか、歩み寄る機会は無いモノでしょうか?」
「やってみる価値は、確かに有りますな。ですが、まだその時では無いでしょうな。一つずつ、課題を克服すべきかと」
「結局の所、一番の問題は」
「「金」」
「…ですね」
「…ですな」
「そういえば、旧金貨の回収と、改鋳の状況は?」
「財務卿に一任してますが、芳しくないと報告が入っております。純度が下がる為、商人達が出し渋ってる模様ですな」
「本当に、内憂外患」
「心労、御察し致します」
「貴方が頼りですわ。マザリーニ」
「この鳥の骨で良ければ、喜んでトリステインの礎になりましょう」
「貴方には、苦労ばかりかけますね」
「殿下、勿体無うお言葉。このマザリーニ、トリステインの為に、命を惜しまぬ所存ですぞ」

*  *  *
「お母様、お呼びですか?」
「此方にいらっしゃい、アンリエッタ」
「はい」
アンリエッタを呼んだのは母親のマリアンヌ
其所に居るのは中年の女性、年齢を重ねても美しく、若さの代わりに円熟した色気を持っている
アンリエッタと同じく栗色の髪、アンリエッタ以上の出る所は出て腰はくびれ、清楚の中に魔性の魅力を放っている
若い時はおろか、今でも男が放っておかないだろう
「貴女には、苦労掛けてばかりでごめんね」
「なら、お母様が戴冠なされば宜しいのに」
「私は、喪に服しておるのですよ?アンリエッタ」
「嘘ばっかり。お父様の事は愛してたかも知れませんけど、他の殿方の事を想っていたのでしょう?」
「あら、どうしてそう思うのかしら」
「お母様、葬儀の時またって言ってたじゃないですか?」
「その人は、私達を守って、消えてしまったの」
「誰なんですか?」
「内緒」
「ずるいですわ」
「だって、約束ですもの。きちんと守れば、必ず再会出来るって。大人になれば、こういう楽しみも有るのよ?」
「私にも、そういう相手出来るかしら?」
「えぇ、絶対に出来るわ」
「…私、ゲルマニアに嫁ぎたくない。あんな脂ぎった男、嫌」
「ごめんなさいね、アンリエッタ。でも、仕方ないのよ。トリステインでは身を守るのが難しいの。軍事強国のゲルマニアなら、貴女の身を守ってくれるわ。こんな事しか出来ない、無力な母を許して」
「申し訳ありません、お母様。私は幸せです。だって、生きて結婚出来るんですもの」
「アンリエッタ」
「女の幸せは、結婚して子供を産む事だと、お母様が言っておられたじゃないですか」
アンリエッタは微笑む
「想った人と結ばれるのは非常に難しい。ならば、子供を産んで愛情を注ぐ方が、ずっと良いって。お母様の体験なんですね?」
「貴女のお父様は、私を沢山愛して下さりましたよ?」
「ド=オリニエール」
ぴくりとする、マリアンヌ
「私、もう子供じゃないんです。国内各地の状況を調べてたら、痕跡が有りました」
「…お父様の事、軽蔑した?」
「いいえ、人間らしくて良いと思います。私、お父様の事、完全無欠かと思ってました」
「なら、安心ね。殿方はそういうモノよ。どんなに最愛の人が居ても、他の花にも興味を示してしまうのよ。其を含めて、愛してあげなさい」
「はい」
「貴女には恋した方は居て?」
「…もう、戦火で」
「なら、此からすれば良いじゃない」
「結婚するのにですか?」
「心は自由よ、アンリエッタ」
「それ、不倫のすすめですか?お母様」
「さあ?」
くすくすと、二人は笑った

*  *  *


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