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才人達は場所を確認し、なるべく効率的に動く様に計画を立て、移動する
移動自体はシルフィード、今回は、フレイムをシエスタの護衛に投入している
資金も少ない為、宿に泊まる時は木賃宿、食料は狩りと採集にて現地調達
宿が無い時はテントである
「駄目だ、今回もハズレだよ」
「此で3連続だな」
「中々上手く行かないわよね」
「今日の狩り担当はタバサだっけ?」
「…取って来た」
タバサが猪をレビテーションで運んで来る
「デかい獲物だな」
「フレイム達の分、私達は兎」
「うわぁ、ミスタバサ流石です。野草は摘んで有るんで、今から食事の用意しますね。才人さん、解体手伝って下さい。フレイムさん、火をお願いします」
「あいよ」
フレイムは火を吹き薪に火を付ける
「う〜ん、シエスタとダーリンのコンビは凄いわね。サバイバルでも食事が美味しいわ」
「本当、来てくれて助かったわね。シエスタ有難う」
モンモランシーが答える
「こういうのも楽しいですから」
「まさか、デルフがこういう事に役立つとはなぁ。やっぱりお前、剣じゃなくて包丁だろ?」
「…獣を斬る時も有るから黙ってんだが、俺っちは剣だぞ。相棒」
「皆はどう思う?」
「デルフさんは包丁です」
「私もそう思うわ」
「僕もだ」
「包丁の方が役に立ってるじゃない」
「……しくしくしく。俺っちは伝説だぞ。凄いんだぞ。魔法吸い込めるんだぞ」
「今は包丁やってろ。伝説の仕事も、その内あんだろ。お前はナビゲーターとして非常に優秀だ。こんな便利な管制他にねぇぞ」
「ナビゲーター?管制?才人、何だいそれ?」
「戦闘や行動する際に周辺情報を把握して、使用者に逐一教える役割さ。参謀と伝令兼ねてるって思ってくれて良い」
「それって凄いの?」
「例えば誰かを相手取る。後ろから誰かが来ているのを、俺は気付かないのに、デルフは気付く。デルフが一番凄いのは此処だ。魔法吸い込める事なんざ、オマケに過ぎないんだよ」
「へ〜そうなのか」
「相棒、伝説の力より、俺っちの意思のが重要だってのかい?」
「其を含めて伝説さ」
「かぁ〜、良い事言うねぇ、相棒。俺様伝説。俺凄い」
デルフは機嫌が良くなり、上機嫌で喋り出す
「ま、今は包丁やってろ」
「だから、俺っちは剣だって」
「これ終わったら研いでやる」
「おぅ」
「良し、こんなもんかな。シエスタ、後頼んで良い?」
「はい、デルフさんの手入れも大切ですもんね。やっぱり、包丁は切れ味良くないと」
「……しくしくしく」

テントは全員が雑魚寝出来る広さのテントであり、今サイコロを振り賭けが行われてる
賭けの内容は、誰が才人の隣に寝るかである
理由は初日での出来事
「大きいテントね」
「此しか借りられなかったよ」
「じゃあ、皆で雑魚寝ね。ギーシュ、あんたは此方来たら灰にするからね」
「大丈夫じゃないかしら?ギーシュが襲うなら、才人だと思うし」
「其もそうね」
「酷いよ、僕のモンモランシー」
軽く無視されるギーシュ
「じゃあ、才人寝ましょ」
「ま、雑魚寝じゃしょうがないな。村雨には気を付けてくれ。シエスタも、触っちゃ駄目だぞ?」
「は〜い」

翌朝、才人が重みで目覚める
右隣がキュルケ、左隣がモンモランシー、上にはタバサが乗っかって居る
「…こう密着されたら暑くて堪らんな。皆起きろ」
「くぅすぅ」
「何で熟睡してるんだ?」
「其は才人の添い寝だからだよ」
「ギーシュ、起きてたのか」
「此方は、隙間風が酷くて寒くて寒くて」
「シエスタは?」
「ずっと隙間見つけようと、頑張ってたけど挫折したみたいだね。モンモランシーの隣に寝てる」
「あらま」

そんなこんなで才人の意見は無視される為、才人は黙々とデルフを研いでいる
才人の添い寝が、翌日に快調になるのを経験した皆が、才人の隣と言うか、寝ながら身体の上に迄乗って来る為、賭けにしようとされたのである
才人は
「じゃ、俺野宿で良いや」
「「「「却下」」」」
「…デルフ、俺、何かしたかな?」
「全部やっちまわないのが、いけないんじゃね?」
「この件に付いては、本当に敵だな」
「だってよ、面白ぇんだもんよ。で、何で久し振りに研いでんだ?」
「明日はマジだからな」
「オークか」
「あぁ。オークってどんな連中だ」
「豚面で、人間の1.5倍の身長、5倍の体重を持ってる亜人だぁね。頭はあんま良くねぇが、怪力で人を簡単に潰して食う」
「強さ以外は、まんまRPGのオークかよ」
「RPGって何でぇ?」
「ゲームだよ」
「そんなゲームがあんのか」
「まんま、ハルケギニアの世界みたいなゲームもあるぞ」
「面白ぇ共通点だねぇ、相棒」
其処で才人は固まる
「どうした、相棒?」
「い、嫌、何でもない。まさかな」

「…私の勝ち」
「はい、2抜けです」
「…私って、博打には弱いみたい」
「ギーシュ、あんたは一番寒い所ね」
「せめて暖は取らせてくれよ、僕のモンモランシー」
「フレイム、シルフィード、外の見張り宜しくね」
「きゅい」
「才人さん、今日の隣は、私とミスタバサですね。一緒に寝ましょう」
「…はいはい」
才人はデルフの研ぎを終らせ、立ち上がった
「そういや相棒」
「何だ?」
「村雨は研がねえのか?」
「見てみろ」
スラリと抜く
「結構使ったよな?」
「ああ、歯こぼれ所か、研ぐ必要すら無い程鋭い」
「こいつも謎の刀だぁね」
「村雨は架空の刀なんだよ」
「架空?って事は、実在しない代物が何で有るんでぇ?」
「だから、こいつの謎は日本に繋がる。そんな気がするんだよ」
「だから持った時、首傾げてたのか」
「そういうこった。さて寝るか」

*  *  *
才人は、両端からシエスタとタバサにくっつかれた状態で目を覚ます
二人共、ぐっすりと眠っている
他の皆も寝てる様だ
「こんなに地面凸凹なのに、良く眠れるな」
才人は感心しつつ、二振りを持って外に出る
モンモランシーが水を出してたお陰で、水には困らない
水を使って顔を洗い、歯を磨き、伸びた髭をナイフで剃る
「フレイム、シルフィード。見張りご苦労様。眠れたか?」
二体の使い魔は頷く

「さてと、朝の準備運動しますかね」
村雨とデルフを抜き、広い所に向かう
「相棒、おはようだな」
「おはようだ、デルフ。さて、朝練行くぞ」
「おぅ」
才人の音楽無しでの舞姫が、ガンダールヴの速さを使って、木々を観客に舞い始めた

「ふぅ」
「随分速度上げて舞ったなぁ」
「今の内に手に馴染ませないとな」
「俺っちはガンダールヴの左腕だぞ?毎回左腕で持ってるのは、馴染んでるからじゃねぇのか?」
「嫌、偶々だ。気が付いたら持ってた。こう右側で背負ったお前を抜いてよ、そのまま左に握り返してから、村雨抜くからな」
「…てっきり、知らずに伝説をなぞってるかと思ってたのによ」
「どんな伝説だよ」
「憶えてねぇ。ただ左腕に持たれた記憶がある」
「デルフは左腕なのか」
「おはよう才人」
「おはようギーシュ。良く眠れたか?」
「ばっちり…じゃないね、ちょっと」
「ん?…あぁ」
ギーシュが木陰に誘導するので、剣を収め、付いて行くと、いきなりキスされる
クチュ、ヌル
「ふぅ、補給完了」
「俺は燃料か」
「僕のやる気を出すには、必須な要素だよ」
「あらあら、随分積極的になったみたいね」
振り向くと、モンモランシーが、あの笑顔で笑っている
才人は冷や汗を垂らす
「おはよう、僕のモンモランシー。モンモランシーもかい?」
「まさか、ギーシュに先越されるとは思わなかったわ。才人お願い」
ギーシュが離れ、モンモランシーがキスを求め、才人は応じる
「ん、元気出た」
「あんま、他の連中にバレそうな所でしないでくれ。使い魔だって見てるんだぞ」
「「イヤ」」
はぁ〜と、深い溜め息を才人は付いた
「皆さ〜ん。朝食の準備出来ましたよ〜。起きて下さ〜い」
「お、シエスタも起きてたのか。飯だ、行こう」
「才人さんおはようございます。何処行ってたんですか?」
「おはよう、ちょっと朝練だ」
「おはよう、私達は見物ね」
「おはよう。才人の稽古は、見てて飽きないからね」
「キュルケとタバサは?」
「まだ寝てるみたいです」
「解った。起こしてくる」
才人はテントに入る
「キュルケ、タバサ。朝だぞ、起きろ」
タバサは毛布を掴んで抱いている。才人が寝てた時は、才人を掴んでいたので、代わりだろう
ゆさゆさ揺するとタバサは眼を開け、少し不機嫌になる
「おはようタバサ。寝起きは不機嫌なのかな?」
「…居なかった」
「へ?」
「居なかった」
才人が居た場所を差し示す
『ルイズと同じ事するとはね』
「あ〜悪かった、此で良いか?」
タバサを抱き、そのまま撫でる
「ん」
タバサは、気持ち良さそうに身体を預ける
「じゃあ、ご飯出来てるから先に出て、な」
「ん」
タバサは眼をこすりながら、眼鏡をかけ、杖を持ち、外に出た
「さてと、一番手強そうなのが残ったな。キュルケ、朝だぞ」
寝乱れた姿は艶を含んでおり、正視に困る状態になっている
タバサと同じく身体を揺するが起きない
「お〜い、キュルケ朝だぞ?」
耳元で声をかけるが、起きない
「キュルケ〜」
「キュルケは寝てます」
「…おい」
「眠り姫を起こすには、王子様のキスと相場が決まっております」
「あのなぁ」
「キスしてくれないなら、起きない」
「ふぅ」
才人は額にキスをする
「ほら、起きろお姫様」
キュルケは眼をぱちくりさせて起きる
「ちぇっ、かわされた」
「キュルケは何処まで本気か解らん」
「本気になったら、相手してくれるのかしら?」
キュルケは才人に両腕を回す
「キュルケは、俺じゃなくても平気だろ?」
「もう、イケズ」
才人の口に軽く口付けし、キュルケは伸びをする
「さて、今日は本命の一つオーク退治だ。頑張るわよ」
「キスは必要なのか?」
「元気の素よ。私達メイジは感情が魔力に呼応するでしょ?おまじないじゃなくて、強さに直結するの」
「全然気付かなかったわ」
「そういう事。だから大事な場面で、メイジの女のコに求められたら、拒否っちゃ駄目よ」
「りょうかい」
才人は苦笑し、キュルケと共にテントを出た

*  *  *
「大体この辺りよね」
「そうだね、キュルケ。シルフィード、降下して」
ギーシュが言い、タバサが頷き、シルフィードが低空飛行に移る
「デルフ、索敵だ」
「あいよ。オークで良いんだな?」
「食えそうな獣も追加で、こっちはついでで良い」
「おぅ」
暫く低空で、全員で索敵する
「う、何この臭い?」
「この臭い、多分オークね。アイツラ酷い臭いするもの」
モンモランシーが言い、ギーシュが頷く
「それじゃ、臭いの強い場所捜せば良いのか、タバサ」
コクリと頷き、シルフィードに指示を出す
「ここら辺」
「デルフ、どうだ?」
「木々が邪魔で見えねえ、少し離れた場所に降りた方が良いな」
「タバサ、頼む」
コクリと頷き、着陸するとテントを置き、シルフィードとフレイムとシエスタを置いて、才人達は歩きだす
「シルフィード、フレイム。シエスタを頼んだぞ」
「きゅい」
「皆さん。怪我しないで下さいね」
「行って来る」

「さてと、タバサ。気配読めるか?」
「まだ遠い」
「しゃあない、偵察行くか」
「行ってらっしゃい」
「お前ら、行かないのかよ」
「一番速い」
「其もそうか」
才人が一人デルフを握り、一気に駆ける
「臭いの先は此方だな。デルフ」
「そのまま行け」
「ラジャ」
ザザザザ
下草を踏まない様に、土の上を走る
ザッ
「良し、居た。ひうふうみい、7体って所か。でけえ上に臭ぇ。周りはどうだ、デルフ?」
「今の所居ねぇな。遠出した連中も居るかも知れねえが、考えても仕方ねぇ。其処は臨機応変だ」
「良し、一旦戻るか」

「7体か、キツイわね」
「そうなのか?」
「えぇ、オーク一体で、一個小隊に匹敵するわ」
「そりゃ、堪らんな」
「周りに女のコ居なかった?」
「嫌、居なかったぞ。奴ら全員牡だったし」
「じゃ、まだ其処に居座る積もりね。全滅させなきゃ駄目だわ」
タバサはコクリと頷く
「へ?」
才人は、はてなマークを連発させる
「作戦は、フーケ戦の応用で良いわね。ダーリンが前衛、ギーシュがワルキューレを展開して、私達が後ろから魔法をぶつける」
「そうだな、指揮は?」
「モンモランシー、出来る?」
「無理、怖いわ」
「じゃあ、ギーシュ頼む」
「ぼ、僕かい?」
「戦況を逐一読んで指示を下す役目だ。非常に重要だぞ。グラモンなら、きっちりやってこい」
「僕より才人のが」
「俺の隣に、立つんじゃなかったのか?」
「わ、解った」
「ギーシュ、今からお前が指揮官だ。指示を下せ」
「うん、では。トリステイン魔法学院部隊、前進」
「ヤー」
「「ウィ」」
「ラジャ」
5人は静かに移動する
先頭の才人が手を上げ、全員が停止する
「良し発見。数の変動無し」
「ギーシュ、指示」
「うん、モンモランシーは後方警戒。才人が飛び出したと同時にコンボランスを射出準備、僕の指示で目標攻撃、僕はワルキューレを才人と共に飛び出しさせる」
「デルフ、どうだ?」
「上出来だ。色っぺい兄ちゃん」
「良し、ギーシュ。突撃タイミングは任せる」
「うん、解った。おいでワルキューレ達」
ギーシュがワルキューレを作り出し、一体を直衛にし、残りを突撃させる為に準備する
「突撃準備………突撃!!」
才人とワルキューレが飛び出し、一気にオークに向けて走り出す
才人は比較的離れた右手のオークを目標に走る
相手が気付き、構える前に膝を狙って斬り、傾いたオークの首を跳ねる
「一つ、デルフ」
「そのまま左前方だ、ワルキューレが左翼の密集連中を抑えてる、彼処にコンボ行くぞ」
「ラジャ」
更に才人は駆け、才人に向かい二体同時にオークが鎚を振り下ろす
一撃で人間が潰れる威力だ
ギィン
「くぅ〜、両手で受け流しするので手一杯かよ、マジ怖ぇ」
「良くまぁ、流したもんだ。舞姫だ」
「おぅ」
村雨を抜き、二刀でオークの懐で暴風が起きる
巻き込まれたオークの両腕、腹が無くなるが、才人はそのまま隣のオークに向かい、数歩で懐に入り、デルフで心臓を貫き、村雨で鎚を持った腕を断つ
「良し今だ、目標左から2番、撃て」
ヒュッ、ドカン!!
ワルキューレ事、残り4体のオークが粉々に吹き飛ぶ
「作戦成功、かな?」才人が確認するとデルフが叫ぶ
「嫌、まだだ、全員後ろだ!!」
「何だって?モンモランシー、どうして警告しない!?」
見ると、モンモランシーはガチガチ震えている
「……イヤ、怖い。来ないで、助けて才人」
「駄目か、僕のワルキューレは此だけだ、行け。キュルケ、タバサ」
「えぇ、ちょっと間に合わないかなぁ」
二人とも、得意のスペルを詠唱するが、その間にワルキューレがモンモランシーを突き飛ばし、オークに潰される
先にタバサのウィンディアイシクルが完成し、オークの頭部を串刺しにし、キュルケのフレイムボールがトドメとばかりに顔を焼く
モンモランシーが顔を上げると、杖が手元になく、また別のオークがおり、モンモランシーに向けて、勃起させたモノを見せ付け、その豚面から酷薄な笑みを浮かべ、そのままモンモランシーの身体を持ち上げる
「ヤバい」
「間に合わない」
「ヤだぁ!!才人才人才人!!」
モンモランシーが泣きながら抵抗し、正に犯される瞬間、霧が辺りを包み、拘束が解け、誰かの腕に抱っこされる
「え?あれ?」
霧が晴れると、オークの両腕、イチモツが落とされ、心臓に一突きされて、倒れてる最中だ
「ふぅ、間に合った」
「さ、才人ぉ」
モンモランシーは才人の首にかじり付いた
「相棒、使いすぎだ」
「あの状況で何言ってやがる」
「確かにな、まだ一体居るぞ」
「それはお任せ、タバサ、仕留めるわよ」
コクリと頷き、残り一体を仕留める
「今度こそ終了…かな?」
「ギーシュ、聞きたい事がある」
「何だい?」
「オークってのは、人間の女に手を出すのか?」
「オークは牡だけでね、人間の女を拐って子供を産ませる」
「皆、知ってたのか?」
コクリと頷く
「何故、教えない」
「女としては、言い辛いわ」
「次から、そういうのは無しで頼む。対処方が変わるからな」
モンモランシーを降ろし、村雨とデルフを収めると、才人はそのまま倒れた
「あぁ、才人!?私の杖何処?早く!」
モンモランシーは、完全に恐慌をきたしている
「ちょっと、落ち着きなさいモンモランシー、はい杖」
モンモランシーは才人の顔を向け、腰のポーチから薬を取り出し、必死に口移しで飲ませ、一気に治癒を詠唱する
「ごめんなさいごめんなさい。私が足引っ張ったから、才人に無理させちゃった。才人ごめんなさい」
才人の胸で泣き出すモンモランシー
才人は手をモンモランシーの頭に乗せ、撫でる
「怪我、なかったか?」
「…うん」
「なら、良い」
「…うん」
「ちょっと、一体どういう事?」
「才人が使い魔の能力越えて、行使したの。」
「限界越えたの?」
「此でもましになってんだぜ。剣士の姉ちゃんとの稽古のお陰だな」
「才人の猛稽古って、こういう事?」
「そういうこった」
「モンモランシー、貴女知ってたのね?」
「…えぇ、私は才人の主治医だもの」
「まさか、水使いに羨望を抱くとは思わなかったわ」
キュルケは呆れて言い、タバサも頷いた
「さてと、才人はモンモランシーに任せて、僕達は討伐の証拠を回収しよう、やっぱり首かな?」
二人は頷いた

「皆さ〜ん、大丈夫でしたかぁ?」
シエスタが手を振り、周りにオークが2体、炭になっている
「あぁ、何とかなったよ。って、そっちにもオーク行ってたの?」
「はい、フレイムさんとシルフィードさんが、ブレスで撃退してくれました」
「上出来だ、フレイム、シルフィード」
「きゅい」
才人が言うと2体が胸を張る
「やっぱり私のフレイムってば、良い子よねぇ」
キュルケが頭を撫で、活躍の場を与えられた為、フレイムが上機嫌である
「そういえば、オークは食べるか?」
二体共、首を横に振る
「不味いのか?」
二体共、縦に振る
「不味いんじゃ仕方ないな。食って貰って、始末して貰おうかと思ったんだけど」
その言葉を聞き怒ったシルフィードは、才人の頭をくわえ、ぶんぶん振り始めた
「ちょっ、シルフィード、や、止め〜〜」
「あははは」
ギーシュ達はその様子を見、笑う
「あの、才人さん、少し辛そうですけど大丈夫ですか?それに、ちょっと臭いです」
「オークの返り血浴びたからなぁ」
才人を改めて見ると、頭から血糊がべったり付いている
「あ、そっか。今浄化するわね」
全員臭いに麻痺してた為、気付かなかったらしい
「此で報酬は山分けね、シエスタにも配るわよ。異論ある?」
全員首を振る
「え、ですが。私戦ってませんよ?身がすくんで、動けなかっただけです」
「貴女が居なかったら、私達は戦えてないの。シエスタは受け取る権利と義務が有る。ダーリンでもそう思うでしょ?」
「完全に同意だ。シエスタは受け取らないと駄目。シエスタは凄い手柄を立てたのさ」
「そうなんですか?」
「あぁ、本来上空に逃げても良かったんだ。シルフィードなら、硬直してても、無理矢理出来る。でも其処で2体を撃退してくれた。だから、俺達は生還出来た。此は、シエスタとシルフィード、フレイムの手柄だ」
皆が頷く
「…本当ですか?」
「シエスタを、メイドと呼ぶのは此処には居ないよ」
「そうね、シエスタ」
「…シエスタ、助かった」
「私なんかより、ずっと凄いわよシエスタ」
「僕達もギリギリだった。シエスタが2体引き止めたから、誰も死なずに済んだんだ。有難うシエスタ」
「あ、あの」
「何だい?」
「私、今凄く感動してて。えっと、私、何言ってるんだろ?」
「魔法だけが全てじゃないって事さ。俺達を助けてくれた。今シエスタは、俺達のパーティーの要だ」
「…本当…ですか?」
「勿論」
「ご飯も美味しいしね」
「皆、貴女に感謝してるわ」
「あ、有難うございます。凄く嬉しいです」
シエスタは、にっこり笑った
「さてと、今日はどうする?」
「絶対に宿、風呂付きで」
「そうだね、魔力が怪しいから、全員宿だ」
「首は?」
「袋に入れて、固定化しちゃいましょ。臭いも封じてしまえば、良いわね」
「それじゃシルフィード、また仕事頼むな」
「きゅい」

*  *  *
コンコン
「……誰?」
「私だ、アニエスだ。入るぞ」
ガチャリ
「……」
「随分酷い状態だな。才人が言伝残す訳だ」
ルイズは睡眠不足から来る隈が出来、肌もぱさついている。髪の毛の艶も落ちており、全体的に落ち目の感じがにじみ出ている
「此で3日授業出てないらしいな。大丈夫か?」
「…才人は?」
「宝探しと、王政府の依頼代行をしている」
「才人が居ないのに、何でアニエスが居るの?」
「任務だからな」
「…そう」
「祝詞は出来たか?」
「……」
「まだか」
ふぅと、アニエスは溜め息をつく
「ミスヴァリエールは、もっと快活なイメージがあったんだが。才人が居ないと、こうも変わるのか」
「…私、ゼロだもん」
「えっ?」
「サイトが居ない私は、ゼロだもん」
「才人はそんな事言わないだろう?」
「サイトだけだもん。あたしの事認めてくれて、ありのままを褒めてくれるの、サイトだけだもん。私、そんなサイトに酷い事しちゃったもん。サイトは、自分の都合を常に後回しにしてくれてるのに、私はサイトの事、何一つ知らないもん」
「ミスヴァリエール?」
「サイトは、自分の国の事や、技術や使い方は、色々教えてくれたの。あたしは、さっぱり出来なかった」
「理解したのはコルベール先生で、実践出来たのはキュルケとタバサで、ギーシュは数少ない使える魔法を、効果的に使える様になってた。モンモランシーは、あたしすら知らないサイトを知ってた」
「ねぇ、サイトの家族って、何人居るか知ってる?結婚してるか知ってる?子供居るかどうか知ってる?」
「親は?兄妹は?あたし、サイトから家族や生活、仕事を奪ったのに、サイトは一度も其に怒った事無いんだよ?」
「サイトは其が使い魔の仕事だろうと、笑って受け入れてくれたの。私、そんなサイトに何が出来た?」
「サイトは怒りを知らない訳じゃない。事実、メイドから理不尽に対する怒りは、誰にも止められないって聞いた。私の事をゼロって言おうモノなら、才人はその人を絶対に許さないだろうって、断言出来る」
「私はね、そのサイトに対する一番の理不尽なんだよ?サイトが生きてた所から、無理矢理ハルケギニアに喚び寄せたの」
「でもね、サイトはこう言ったの『伝説を喚び出せたルイズは誰よりも凄い。自信持て』って」
「サイトならね、この先、あたしが色々な事で悩んだり、苦しんだりしても、きっと道筋を見付けて誘導してくれる。背中を押してくれる。そして其は物凄く大変だけど、やり甲斐が有るの。そしてサイトは出来たら沢山褒めてくれる、沢山撫でてくれる」
「あたし、サイトの居ない人生なんて、考えられなくなっちゃった。ヴァリエールとサイトをどっちを取るって聞かれたら、迷わずサイトを取っちゃうかも」
「でもね、そんな事したらね、サイトは絶対にこう言うの『俺の代わりなんざ幾らでも居る。だからルイズは家族を大事にしろ。俺なんざ、どうでもいい』って」
「嘘つき嘘つき嘘つき。サイトの代わりなんか居ないもん。あたし、サイトが居ないと、寝れなくなっちゃったもん。サイトの居ない所は、あたしにとってゼロだもん」
「サイトが居ないなら、あたしもう、全部駄目だもん」
「…其所迄にしておけ。才人はそんなブツブツ言ってたら、帰って来ないぞ」
「…才人は帰って来る?…あたし、サイトに一度も謝ってない」
「なら、今度こそ謝るんだな。才人は待ってくれてるぞ。才人が本気なら、既に学院を去っている」
「…うん」
「才人が今迄やってた努力はな、全て主人たる、ルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールの為にある。其以外は、ついでだよ」
「ついでの事なのに、何で皆才人に惚れるの?あたしの使い魔なのに?」
「其は自分自身が一番解ってるだろう?才人は余人を以って、換える事は無理な存在だ」
「…うん」
「だからな、怒るなとは言わん、妬くなとも言わん。ただ素直に、自分の気持ちに正直になれ。其と魅了された女達を、出来れば赦してやれ」
「アニエスも含めて?」
アニエスは微笑みを浮かべる
「そうしてくれると、有難いな」
「…アニエスもなのね」
「才人は麻薬だからな」
「麻薬?」
「あぁ、一番重度に汚染されてるのは、ミスヴァリエールだよ。一度ハマったら、そう簡単には抜け出せない」
「……(確かに)」
「汚染されるのも気持ちが良いからな。私は、今の状態を楽しむ事にした」
「楽しむ?」
「そうだ、楽しめ。喧嘩すら楽しめ、サイトと真面目に向き合う以外にも、やり方はある。サイトはな、中々面白い奴だぞ。稽古の時の話、聞きたくないか?」
「…聞きたい」
「良し、長くなるぞ。覚悟しろよ。アイツの稽古は、面白過ぎるからな」
ルイズは少し、眼に輝きを乗せ、頷いた
そして後悔する事になったのは、深夜迄酒を片手に、アニエスが語りっぱなしになってからである
「…でな、この時は奇襲をかける稽古でな…」
「アニエス、そろそろ帰らないと不味いんじゃ?」
「此からが良い所なんだよ。竜騎士なんざ待たせとけ。でな…」
「……この語り上戸。誰か何とかして……」

竜騎士が配置転換願いを出し、却下されたのは、翌日の事である

*  *  *


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