41-30
Last-modified: 2010-10-01 (金) 16:52:42 (4955d)

〇月×日
才人さんが怒った
は、初めて見た
何時も笑ってかわしてるのが才人さんなのに、その才人さんが怒った
事の起こりは午後、メイドのミミが学院生に悪戯されたんです
いえ、本当に悪戯で、性的な意味は有りません。メイド服がズタズタにされたんです
「あ〜!?私の服」
ミミは干してたメイド服の前で、へたりこんでしまいました
其処に、才人さんが洗濯物を取り込みに来た時に見たそうです
「替えの服は有る?」
「此だけなんです。ううぅ」
「そうか」
才人さんが赤い巻き毛の頭を撫でると、そのまま才人さんに寄りかかって泣き出したそうです
「使い魔達。誰か居るか」
ガサガサ
出てくる出てくる
「犯人探しだ。万が一お前達の主人が犯人でも、お仕置きするからな。自身の主人が同じ事されたと思え。解ったら全員に伝達。行け!」
ザッ
使い魔さん達が散ります
才人さん、メイジより使い魔さん達を使ってませんか?
「それじゃ、これ、直せるかな?」
「無理です、此処までズタズタじゃ。一から仕立てた方が早いです」
「そっか。仕立てるのにどれ位かかる?」
「私、家族に仕送してるから、そんなお金有りません」
「そっかぁ。こりゃ参ったな」
「才人さん、どうしたんですか?何でメイド服がズタズタに?」
「今、犯人探し中だ。其よりシエスタ。ミミのメイド服を仕立てたいんだが、金が無い。何か良い案無いかな?」
「なるべく安く済ませるなら、私達で仕立てるしか無いですね。但し、生地代だけはかかりますから、マルトー料理長に立て替えて貰うのが、一番かと」
「良し、其で行こう。仕立て出来るメイド達全員集めてくれ。俺で良ければ参加する」
「解りました。ほら立って、マルトー料理長にお願いした後、皆に協力して貰いましょ」
「はい。有難うございます才人さん。シエスタ」
「礼は俺にじゃない」
「え?」
「犯人にきっちりしないとな」
こ、怖い
その時の才人さんの顔、とてもじゃないけど見られなかった

マルトー料理長に説明すると快諾してくれました
「我らの剣が犯人探しか。一番学院で使い魔使えるから、案外早く見付かりそうだな。生地はきちんと、良いの買って来い」
料理長が金貨が詰まった袋を、渡してくれました
「有難うございます、マルトー料理長」
「良いって事よ。俺も久し振りに腸煮えくり返ってるわ。平民が何れだけ頑張っても、台無しにしやがって」
マ、マルトー料理長も怖い
二人が本気で怒ってる
「ほら、今からトリスタニアに馬で行けば、まだ間に合う。シエスタ、馬乗れたな?一走りしてこい」
「はい」
私が飛び出すと、シルフィードさんが降りて来ました
「乗せてくれるんですか?」
「きゅい」
「有難うございます、シルフィードさん。ミミ、一緒に行くわよ」
「はい。有難うございます、シルフィードさん」
私達二人は生地を買いに、シルフィードさんの背に乗り、飛び立ちました
マルトー料理長の厚意に甘え、其なりの生地を仕立て屋で仕入れた後、トンボ帰りで戻ると、才人さんが三人の貴族を連れてました
貴族は使い魔さん達によって抑えられ、身動き取れません
「もう見付かったんですか?」
「あぁ、珍しくモートソグニルが、あの時以来で協力してくれたからね、あっさり捕まったよ」
「さてと、一応言い分は聞こうか。やったのは間違い無いな?使い魔が見てるから、言い逃れは無理だぞ」
「喋れない連中の証言なんざ、意味ないだろ?」
「俺も使い魔だって事、忘れてんだろ?使い魔同士は、意思疎通出来るんだよ」
「うっ」
「さて、一応貴族の誇りが有るなら、決闘してやる。杖でも素手でも好きなの選べ。逃げるなら、この場で斬り捨てる」
才人さんが実際に腰の剣に触れ、一気に周りを威圧します
う、動けない
「「「ひっ」」」
「さぁ、どれだ?今更ごめんなさいで済むと思うなよ?ミミが今まで懸命に働いたモノを、テメーらは汚したんだ。貴族が名誉に死ぬなら、今がその時だ」
もう、歯の根が合わずガチガチ言ってます
才人さん、逃がす気無いですね
私もミミも、固唾を飲んで見守ります
とてもじゃないけど、口出せない
「つ、杖だ」
「良いだろう。全員離してやれ」
使い魔達が離れて様子を見守ります
私達も下がります
「さぁ、まとめて来い。お仕置きしちゃる」
「ふ、ふざけるな。たった一回メイジに勝った位で、いい気になるな」
炎と風と土の魔法を詠唱し、才人さんに向けます
ザッ
「何だ?このとろいフレイムボールは?」
ヒュカカッ
才人さんが腰の剣を振ったと思ったら、霧が舞って杖と服が斬り裂かれ、三人とも全裸になってしまいました
何て粗末なモノ持ってるんでしょ?
見て損した
「ウワッ」
その場で崩れ落ちます
「勝負有りだな。其とも名誉の為に死ぬか?介惜してやるぞ」
「わ、解った。負けを認める。だから頼む。剣を向けないでくれ」
「駄目だ。テメーらは肝を冷やす必要が有る。少しでも、おかしな真似したら斬る」
「ひっ」
「さて、何故あんな事をした」
「…魔法の標的だ」
「ふざけてたのは認める」
「でも平民の服だろ」
スパッ
「痛ッ」
「おい、おかしな真似してないじゃないか」
「今しただろうが。何が『でも平民の服』だと?もう一度言ってみろ」
貴族の首に刃を当て、怒りを発散する才人さん
「た、頼む離してくれ」
「もう一度言ってみろ」
「だから、止めッ」
「失神したら、次に会うのは生首だぞ。餓鬼」
「止めてくれ。許してくれ。ぼ、僕らが悪かった」
「反省したか、手前ら」
「「「し、した」」」
「なら、あの娘にこの場で土下座して謝れ」
「土下座って何だ?」
「正座した状態から、頭を地面にくっつけて、平伏すんだよ」
「そ、そんな真似平民に出来るか。僕らは貴族なんだぞ」
「なら、誇りを持って死ね。介惜してやる」
才人さんが刃を上段に構えます
本気だ。才人さんなら、一振りで首を落とせる
見てる私達も怖い
でも、才人さんならギリギリでやってくれる筈
其を信じられないなら、お嫁さんは務まらない
我慢だ私
そして、沈黙の恐怖に負けた貴族達は、私達に向け土下座し、謝りました
「「「すいませんでした」」」
「弁償しろよ」
「「「解りました」」」
「シエスタ、領収書を写して渡してやって」
「はい」
「ちょっ、何この値段?」
「手前らがした代償だ。理解したか?」
「「「わ、解った」」」
「良し、帰れ。後は此方で何とかするから、金の工面でもつけてろ。言っとくが、俺が回収すっからな。逃げられると思うなよ?」
「「「そんな怖い事出来るか!!」」」
見事な位、脱兎の如く走り去りました
マルトー料理長が言ってた、我らの剣は真実だった
「才人さん」
あ、抱きついちゃいました
まぁ、しょうがないです
「本当に、本当に私達の剣だ。才人さんは私達平民の剣だ!」
「きちんと、お礼出来たかな?」
「はい」
才人さんが頭を撫でてます
あぁ、ミミも転んだかなぁ?
でも、凄かったもんなぁ。しょうがないかぁ
才人さんは私がやられても、絶対に同じ事するもんなぁ
「さてと、気持ち切り替えて、メイド服を仕立てなきゃね、何処でやる?」
「結構場所が必要ですから、個人の部屋だと厳しいですよ。アルヴィーズ食堂なんかどうでしょうか?」
「じゃあ、夕食終わったら其処に集合だ、裁縫道具は?」
「全員持ってるから、大丈夫です」
「解った。皆協力してくれるから、ちゃっちゃと仕上げような」
才人さんを抱き締めてたミミが、にっこり微笑みます
「はい」

食堂で夕食を取るミスヴァリエールと才人さん
私達メイドは給仕です
「サイト。もう、何処に行ってたのよ?戻って来たのは夕食前じゃない。あんたは私の使い魔なんだから、私の傍に居なきゃ駄目じゃない」
「あぁ、ちょっとメイド達の仕事、手伝ってた」
「本当に手伝いだけでしょうね?」
「焼きもちか?ルイズ」
「ああああんたなんかに、焼きもちなんか妬かないもん」
素直じゃないですね
才人さん居ない時は、構って欲しい子犬の目をしてる癖に
「才人、ちょっと良いか」
「何だ?レイナール」
「ルイズ。悪いけど少し才人借りるぞ」
「長いの?」
「そんなに長くならんと思う」
「なら良いわよ」
才人さん達が廊下に出ます
私は給仕しながら聞耳です。大丈夫です、きちんと仕事してますよ
廊下側に立ったのは、間違い無いですけどね
「才人、お前一年坊に何をした?」
「何の事だ?」
「男子寮に一年が三人素っ裸で戻って来てさ。『使い魔怖い才人怖い』って、ガチガチ震えてんだわ」
「あぁ、あの三人か」
「何をやったんだ?」
「酷い悪戯したから、お仕置きしただけさ。きちんと貴族の作法に則り、決闘迄したんだが?」
「一体どういう事だ?」
「つまりこういう事だよ」
才人さんが説明します
「…成程ね。常に何人かは跳ねっ返りが居るもんだが、よりによって才人が居る時とは。運が無いな、一年坊も」
「あいつらが悪い」
「その通りなんだが、普通彼処迄怯えないぞ?どうやればそうなるんだ?」
「何、ちょっと名誉の為に死んでこいって、言っただけだ」
「…もしかして、けじめ付けなかったら、本気でやったかい?」
「此処は、そういうルールなんだろ?貴族なら、それに従わないとね」
「……君を怒らせる事は、絶対にしない事にするよ」
……本気だったんだ

ひいお爺ちゃん
才人さんは有言実行の人です
言動に表裏が有りません
才人さんが怒りを覚えたら、私達には止められません
でも、だからこそ、私達の剣なんですね
才人さんは滅多に怒らないけど、怒らせたら、私でもお仕置きされちゃうだろうなぁ
あはんうふんなお仕置きなら、大歓迎なんですけど
さてと、これ書いたら仕立てに行かなきゃ

〇月×日
は、反則です
才人さんは存在自体が反則です
何ですか、何々ですか?
何でちょっと教えただけで、私以上に仕立て出来るんですか?
私、此でもメイド内じゃ、一番の自負が有ったんですよ?
夕食が終わった後のアルヴィーズ食堂に、メイド達が集まります
「さてと、皆集まってくれて有難う。ミミのメイド服がズタズタにされてさ、犯人はきちんとお仕置きしたから大丈夫だ。其で皆には、大事な自由時間をミミの仕立てに使わせて欲しい」
「全部聞きました。才人さんが私達の剣として、決闘してくれたのも聞きました。才人さんに、協力しないメイドは居ません」
皆が頷きます
「じゃあ、この中で一番仕立てが上手い人は?」
「シエスタですね」
皆が頷きます
「じゃあ、シエスタ。指示してくれ」
「はい、解りました。人数居るから、交替制でやるわよ。根つめちゃ、明日の仕事に支障出るからね」
「「「了解」」」
「じゃあ、採寸と鋏は私がやるから。後は、各々分担決めてね。各部出来たら合わせて試着して、詰めるわね」
「「「はい」」」
「俺は?」
「見てて下さい。才人さんの場合、見てるだけで、仕立て出来る様になると思います」
「シエスタ、そうなの?」
「初めて持った針糸で、私より速くて綺麗よ」
「才人さんって、凄いのねぇ」
「じゃあ、採寸するわね」
「はい」
採寸した後、生地に下書きして、鋏を入れます
チョキチョキってより、シャーって直断ちです
うん、気合いが乗って良い断ち具合だ
「へぇ、生地って上手く切れるもんだなぁ」
「これ位やるのは、かなり難しいですよ」
「やってみて良い?」
「才人さんなら、私より出来そうで嫌だなぁ」
「じゃあ、まだ見てようか?」
「いえ、才人さんなら私より速いかも知れないから、やってみて下さい」
「解った」
才人さんに鋏を渡すと
あれ?左手が輝いてる
そういえば、包丁や縫い針握ってた時にも輝いてた様な?
私の予想は的中です
シャーシャッシャッ
「こんな感じで如何でしょうか?先生」
「…完璧です」
仕立て職人級じゃないですか
皆驚いてます。ふっ、才人さんの妻なら、こんな風に驚かされるのは、当たり前なのです
ぐすん
後は皆に各々を渡し、仮縫いしたモノを一度形にし、着せて各部の調整を行います
時間が無いから、着せたまま、調整です
「ふむふむ、成程ねぇ。やって良い?」
「…やってみて下さい」
ぷちっ、ちくちく、ぷち、ちくちく
「こんな感じでどうかな?」
姿見で見せてみました
か、可愛いです
「えっと、前着てたのより可愛いんですけど?」
「そりゃ、着てるコが可愛いからさ」
才人さんがさらりと言い、ミミが真っ赤になってます
「動き難くない?」
「はい、大丈夫です」
「先生の評価は?」
「私じゃ、此処まで出来ないです。何でですか?」
「鉄を縫うのと、同じ感覚でやっただけだよ」
「鉄って縫えるんですか?」
「あぁ、言葉の綾ね。実際には溶かしてくっつける。ミリ単位や更に小さい単位で加工すっから、感覚としては硬いか柔らかいかの違いだけだね」
「以前の職業の応用ですか?」
「そういう事」
ふわ、驚いた。一流の腕は、何にでも応用効くんだなぁ
「ミミも気に入ってくれたし、この後は?」
「本縫いです。一度バラしますね」
私がバラして皆に渡し、才人さんには私と同じく大変な所
ちくちくちくちく
「ほい、此で良い?」
「才人さんなら大丈夫です」
実際に、ちっとも乱れてない。プ、プレッシャーがぁ
「ふぅ、疲れた」
「じゃあ、交替するわ。休憩してなさい」
「ほい、お茶」
才人さんがお茶を運んでくれます
此は厨房に有った、ロバ・アル・カイリエ産の緑茶です
珍しいんですよ
「あ、美味しいです」
「そりゃ、良かった」
「私達が入れた奴より、美味しいですよ」
「緑茶は俺の国にも有るからね」
「今度煎れ方教えて下さい」
「私も」
「私もです」
「喜んで」
才人さんが参加したせいで、あり得ない位仕事が速いです
各部が出来たので、もう一度合わせて、最終確認
「どうかな?」
「はい、大丈夫です」
「それじゃ、仕上げかな?先生」
「そうですね。此処からは私が全部やります」
「え?それじゃ悪いって」
「良い悪いの問題じゃないです。此処からは、一人でしか出来ません」
「そうなの?皆」
皆が頷きます
「それじゃ、皆は上がって貰って大丈夫かな?」
「はい、朝迄かかるので、片付けお願いします。此でも、ずっと速いんですよ」
「そうですよ。才人さんが居なかったら、こんなに速く出来てないです」
「それじゃシエスタ、後は宜しくね。明日は休んで良いわよ。私達が全部やっておくわ」
「才人さんも上がって良いですよ」
「いやいや、たまには世話させてくれ」
「解りました」
私は集中して縫います
ちくちく、ちくちく

「……シエスタ、シエスタ」
……はっ、寝ちゃってた。あれ?此処は私の部屋?
「何?ミミ」
「シエスタ有難う。才人さんが、最後迄シエスタが頑張ってくれたって」
ミミが仕立てたメイド服を着ています
え?私、途中で寝てたよね?なんで、服が出来上がってるんだろう?
「何で私、部屋に居るの?」
「自分で戻ったんじゃないの?寝惚けてるんでしょ?」
「だって私、途中で寝ちゃって」
「才人さんが全部シエスタがやってたって、証言してるもの。寝ながらやってたんじゃない?」
う、朦朧状態だったとしたら、そうかも知れない
「ちょっと、良く見せて」
私は縫い目を確認する
あぁ、この縫い目は、そういう事か
才人さん、何でこういう事しますかね?
有り難く頂戴しましょう
「ちょっと大変だったわ。私も朦朧としてたみたい。記憶が曖昧なのよね」
「やっぱりか。本当に有難うねシエスタ。今日はシエスタと才人さんの分迄やるから、寝てて良いわよ」
「ありがと。才人さんは?」
「一晩帰らなかったから、ミスヴァリエールにお仕置きされて、ぼろ雑巾になってる」
「……何で説明しないのかなぁ?」
「何でだろうね?」
「ねぇ、ミミ」
「何?」
「才人さんの事、どう思う?」
「イーヴァルディみたい。私の憧れ。お嫁さんは難しいかなぁ。ああいうお兄さん欲しかった」
「この前言ってたじゃない。弟妹の兄になって欲しいって」
「私には振り向いてくれるか難しいもの。才人さん、私じゃなくても同じ事するし」
「其でも希望は捨てないのね?」
「頑張るのは、止めないよ」
「ミミのお菓子、美味しいもんね」
私達は笑います

ひいお爺ちゃん
才人さんは、自分自身の手柄をひけらかさない人です
本当に、ひいお爺ちゃんの教えみたいな人です
どんどん好きになっていきます
でも、せめて裁縫や料理は、私より下手でいて欲しかったぁ
才人さんのお嫁さんへの道は、険し過ぎます
其でも頑張るぞ、おー

〇月×日
やった〜
才人さんと、えっちな事出来た〜
よっしゃ〜、一歩前進
でも、まだきちんとは抱いて貰って無いです
でも、此で希望が持てました

私がサウナ風呂にトコトコ歩いて行くと、才人さんが、風呂に行くのを発見したんです

その瞬間、私は才人さんに向かって方向転換。多分、端から見たら気持ち悪かっただろうなぁ
才人さんがお風呂に入る前に薪割りして、松明で火を付けました
何で、薪割りにデルフさん使うんだろう?
「相棒、俺っちの事、斧と勘違いしてねぇか?」
「鮪包丁の間違いだろ?」
「鮪って何でぇ?」
「海に居る、全長3メイルは有る魚だな」
「…相棒。俺っちはな、此でも長い長い間、剣として生きて来たんだ」
「所詮人斬り包丁だろうが。魚斬るのも変わらねぇだろ」
「相棒相手じゃ、身も蓋もねぇな」
デルフさんと喋りながら、身体を洗って湯船に入りました
良し、此で才人さんは逃げられない。突撃だ
「才人さん。奇遇ですね」
「…シエスタ。奇遇なら、着替え持ってる筈無いよね」
「私も、お風呂に入ろうかと思ったんです」
「…そりゃ、奇遇だ」
信じてくれてない。い、良いもん
パパパって脱いで、身体を洗って、湯船にざぷん
「さ・い・と・さ・ん」
「はいはい」
「お風呂って、気持ち良いですよね」
「そだね。日本人に生まれて良かったって思える事の一つだよ」
「日本ってどんな国なんですか?」
「そうだなぁ。都市は夜でも消えない灯りが空を照らし、空には金属で出来た竜、飛行機が飛び、海には巨大な300メイル位の鉄の船が浮かび、物資を運ぶ」
「陸では馬車が連なる鉄道が列を連ね、道には馬が引かない馬車と鉄で出来た馬が走る」
「家では、水汲みせずとも水が四六時中使え、ランプに頼らない光が部屋を照らし、薪を使わずとも火を起こせる」
「星々の海を渡る為に、空より高く船を打ち上げ、光すら届かない海の底を探る為に、潜る船を作る」
「娯楽や遊びが溢れ、人々は自由を味わい、自分達が何かに守られてる事にすら気付かない」
「季節は春夏秋冬とあり、春には桜が咲き乱れ、夏には蝉が大合唱し、海に山に人々は繰り出し、秋は作物が実り、秋の虫が鳴き、冬には木枯らしが吹き、雪が降る」
「男達は夜を徹して働く事をいとわず、女達は着飾り、日々の噂に興じる」
「ま、こんな感じかなぁ」
「……夢みたいです」
「…そうだね」
「才人さんの家族は?」
「…ルイズかな?」
才人さん、はぐらかした
「日本での家族ですよ」
「……もう、夢だからな」
「どういう事ですか?」
「俺は事故に遇って、吹き飛ばされた時に召喚されてさ。どう見ても死亡事故だったからね。向こうじゃ、死体が出てこないだけで、死人扱いだよ」
「…そうなんですか」
才人さん、目を閉じてる。思い出してるんだなぁ
きゅんときた。アソコが熱い
私は、この人のモノになりたい。この人の家族になりたい
才人さんに身体を寄せます。胸が当たった瞬間にぴくんとした
「……シエスタ」
「今、才人さん泣いてましたよ」
「格好悪い所ばっか見せてるな」
「才人さん、何で家族の事、教えてくれないんですか?」
「…余計な心配かけさせるだけだからさ。それに、さっきも言ったろ?もう、俺は向こうでは死人なんだよ」
「嘘つき。なら、何で帰りたいんですか?」
「ゾンビは、生前に執着するものさ」
また、かわされた。駄目だ、才人さんのガードは堅い
私の想いをぶつけるしかない
「私が家族になります」
「シエスタ?」
「才人さんが何処に行こうと、何をしようと、私は才人さんの家族として、才人さんを信じます。才人さんの格好良い所も悪い所も、全て受け入れます」
「才人さんが出ていくなら、私も一緒に行きます。才人さんの子供は、私が産みます」
「才人さん、だからそういう顔しないで下さい。私は此処に居るんですよ?私じゃ、才人さんの家族にはなれないんですか?私は、やっぱり子供ですか?」
「…そんな事無いよ。凄く可愛いし、魅力的だよ」
「なら、証明して下さい。私は、才人さんのモノになりたいんです」
私から、才人さんの唇にキスをして、舌を入れます
チュッ
才人さんからも舌が絡んでくる
えっ、やだ、嘘、才人さんの舌、凄く気持ち良い
こんなの我慢出来ない、もっともっともっと、私の口を才人さんの舌でねぶって
私は才人さんに力一杯抱きつき、股間を才人さんに押し付けます
だって、気持ち良すぎて、身体が勝手に動くんです
何か来る
「ふぅぅぅぅぅ!?」
口から声が漏れて、身体が痙攣します
やだ、何か気持ち良い、身体が脱力する
私は口を離し、才人さんに身体を預けます
あ、才人さんがおっきくなってる
「シエスタが魅力的だから、勃っちまったよ」
「嬉しいです。才人さん、このまま抱いて下さい」
才人さんは首を振ります
「何でですか?」
「まだ、駄目」
「今は駄目でも、希望を持って良いんですね?」
「ああ」
「なら、我慢します。でも欲しいです、さっきからうずいて切ないです」
「じゃあ、サービスだ」
才人さんは私を釜の縁に寄りかからせ、腰を湯の中で浮かし、私の大事な所に顔を埋めました
ピチュ
「あひっ」
才人さんが舐めてる
「やっ。何これ、激しっ。もっと優しく、やあぁぁぁぁ」
才人さんの執拗な攻めで、また、いってしまった
何か、身体がビリビリする。身体から力が抜ける
才人さんが其を抱き止めてくれた
私の顔、今どんな顔かな?
才人さんから見て、どう写ってるのかな?
私、才人さんしか見えてない
才人さんは微笑んで、キスをしてくれた
其が風呂の終わりの合図
私達は、風呂から上がって各々の部屋に戻りました

ひいお爺ちゃん
才人さんが、少しだけ心を開いてくれました
才人さんの格好悪い所は、本人が言うよりずっと素敵です
私の身体が、キュウって、切なくなります
才人さんの日本の家族は、絶対に悲しんでます。だって、こんなに素敵なんだもの
せめて、私がハルケギニアの家族になるんだ
才人さんのお嫁さんの道は切ないです
こんな私に、力を貸して下さい
いくぞ、おー

〇月×日
才人さんが、ミスヴァリエールの外出に同行するらしいです
仕事の合間に作ってた、ハンカチを渡しました
「これ、使って下さい」
「有難う。シエスタは、本当に出来たコだね」
「嬉しいです。今度は、私と一緒にタルブの村にも来て下さいね」
「お邪魔じゃ無いかな?」
「そんな事無いです。だって、旦那様を連れて行くんですもの」
「……どういう事かしら?馬鹿犬」
「えっと、ルイズがどうして此処に?」
「あんたが何時まで待っても来ないから、迎えに来たのよ。で、覚悟は良いの?犬」
「何のでしょうか?」
ぼぐっ!!
「かはっ」
才人さんが、ミスヴァリエールの下からのパンチが顎を捉え、宙を飛びました
何処に、あんな膂力有るんでしょう?
あ、才人さんがズルズル引きずられて、行っちゃった

才人さんが居なくなってから、使い魔さん達の集まりが悪いです
シルフィードさんは付いて行きましたけど、ヴェルダンデさんは、何処に行ってしまったんでしょう?
才人さんが来る前の状態に戻ったと思えばそうなんですけど、こんなに静かでしたっけ?貴族達も、以前の状態に戻りつつ有るような?

ひいお爺ちゃん
才人さんの存在は大きいと、居なくなってから気付きました
才人さんの傍にずっと居たいです
早く帰って来て欲しいな

〇月×日
う〜ん、やる気が起きない
只今テンションだだ下がり中
才人さん、何処で何してるかなぁ?
私、このままじゃ怠け者になっちゃうよ
ガシャン
「くぉらシエスタ。此で何枚目だ!?しゃんとしやがれ」
「す、すいません」
タルブの村の家族が待ってるから、頑張らないと
私から才人さん分が抜けていく〜
早く帰って来て〜
ぐすん

〇月×日
やった〜
才人さんが帰って来た〜
シルフィードさんに乗って、皆で帰って来た〜
才人さんを見付けた途端、仕事放り出して駆けて行って才人さんに突貫
そのまま抱きついちゃいました。才人さん、軽く抱き止めてくれました
かなり勢い付けたのに、逞しくなってませんか?
「才人さん、お帰りなさい」
「只今、シエスタ」
才人さんが頭を撫でてくれる。気持ち良いなぁ
汗と男の才人さんの匂い。私が欲しかった匂いだぁ、全力全開で補給補給
「ちょっと、メイド」
「シエスタです。ミスヴァリエール」
「シエスタ。ああああたしの使い魔に何やってるの?」
「お帰りなさいの挨拶です」
ぞわり。冷気が辺りに漂います
あれ?冷気?何で?
見ると、ミスタバサから冷気が出てます
辛うじて我慢してる様で、いつ詠唱してもおかしくないですね
こ、此は危険だ。でも離れたくない。どうしよう?
すると、才人さんがそっと離してくれました
「どうしたんだい?シエスタ」
「だって、才人さんがずっと居なかったんです。学院の雰囲気も、以前みたいになってくるし。あの空気は堪りません」
「そっか。悪かったな」
「良いんです。きちんと、帰って来てくれました」
私は満面の笑みで答えます
才人さんは、いつかふらりと居なくなる
そんな気がするから、帰って来てくれるだけでも嬉しい
早く、才人さんが振り向いてくれる様に頑張らないと
「あ、才人さん」
たたたた、どん
「おっと、ミミもかい。只今」
「お帰りなさいです、才人さん」
「プッ、クッ、アハハハハハ」
ミスツェルプストーが爆笑を始めました。えっと何で?
ミスモンモランシは、ポーカーフェイスで何考えてるか解りません
ミスタバサは、また冷気出してます
ミスタグラモンは、苦笑してます
状況を打開(破壊?)するのはやっぱり
「…馬鹿犬」
「…わん」
「何で、ご主人様以外の女を抱き締めてるのかしらぁ?」
「抱きつかれたから、返してるだけですが。問題ですか?マイロード」
「えぇ、とっても」
「妬かない妬かない」
「あんたみたいな、盛りの付いた犬に妬く訳無いでしょうがぁ!!」
ボグッ
股間を強烈に蹴られた才人さんが、白眼を向いて気絶しちゃいました
「ルイズ、あんた才人を不能にする気?」
「いいい良いのよ。此位やらないと、懲りないもの」
「才人が子供作れなくなったら、あんたのせいね」
「うっ、モンモランシー。才人を治して」
「料金取って良い?」
「何で?」
「才人に全く否が無いからよ」
「うぐっ。お、お願いします」
「毎度あり」
「アハハハハハ。本当に寝取られの血筋は大変よねぇ、ヴァリエール」
「ツツツツェルプストーの血族が、寝取ったんでしょうが」
「あら、寝取られるのが悪いんじゃないかしら?」
「う〜。あんたは敵!絶対に敵!今、決着付ける!!」
「才人が居ないルイズに、何が出来るのよ?」
「…手足なら、何とかなるわよ」
「あんた、本当に貴族?拳闘士の間違いじゃないの?」
「で、やるの?」
「…上等」
私達の目の前で、キャットファイトが始まりました
貴族の喧嘩も魔法使わないんじゃ、平民の喧嘩と変わりませんね
二人共美人なのに、髪引っ張ったり、掴みかかったり、美人が台無しです
私達は、顔を見合わせ、
「…仕事に戻ろっか」
「…そうだね」
トコトコ仕事に戻りました

ひいお爺ちゃん
才人さんが帰って来ただけで、学院内が明るくなりました
私の気持ちが明るくなっただけかも知れませんけど、やっぱり明るいです
居るだけで、影響与えるんだから、やっぱり才人さんは凄い
才人さんのお嫁さんの道は、険しい道すら楽しいです
頑張るぞ、おー

*  *  *


URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2010-10-01 (金) 16:52:42 (4955d)

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル