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Last-modified: 2010-11-12 (金) 11:40:54 (4912d)

昼過ぎにタルブに降下し、約3000の部隊を徐々に編制しつつあるアルビオン軍を、アルビオン竜騎士隊が進路を確保する為、村に火を放つ
焼き付くされる迄、進軍は無理だろう
「平民を逃がしたか、まぁ良い。進路の邪魔しなければ問題は無い」
ワルドはそう呟き、追撃の要求をした騎士を押し留め、空を差す
騎士達は真なる獲物が現れた事に興奮し、逃がした平民の事なぞ、直ぐに忘れる
其処には、トリステインの竜騎士隊が2個小隊6騎が飛び、漸く自身に取って不足無しの相手に沸き立ち、攻撃命令を要求する
村を焼くなぞ、竜騎士に取っては退屈な命令だ。やはり、空戦出来る相手の方が良い
「ふむ、良かろう。損害は無しで完封してみせろ」
ワルドは風魔法で、各騎士に命令を伝達し、竜騎士達は我先にと上昇を始めた
アルビオンの竜騎士は強い
特に火竜の火力と数に任せた一斉ブレスの前では、例え相手が竜騎士と言えど、早々遅れは取らない
だが、今回の相手は変だ
偵察目的で風竜に乗って居る。其はまだ良い、理解出来る
だが、離脱もしないで回避と牽制攻撃に終始し、アルビオンの竜騎士達に苛立ちが募り始める
一番先に気付いたのはワルドだ
「ちっ、奴ら時間稼ぎだ。さっさと撃ち落とせ、援軍が来るぞ!!」
ワルドの命令に竜騎士達は本気になり、隊列を組み、編隊飛行で魔法攻撃も含めた攻撃を浴びせる
数には勝るので、着実に一騎ずつ、高空から落とせば良い
一つの隊が格闘戦を行ってる間に、別の隊が上昇し、高空からブレスを浴びせる
流石に回避が困難になったのだろう。少しずつ、トリステインの竜騎士達が削られ、遂に撃墜される者が出る
だが、何時まで経っても援軍は来ない
「どういう事だ?」
ワルドが怪訝な顔をして考え込む間に、竜騎士達がトリステイン竜騎士達を、着実に一騎ずつ撃墜していく

既に空戦を始めて数時間、トリステイン竜騎士達は防御に努める
時間稼ぎなのは明らかなのに、攻めきれないし、時間ばかり過ぎる
流石に竜騎士達にも疲労の色が出始めた。此は潮時かと思い始めると、トリステイン国軍が地響きを立て、タルブの村の前に展開する、数は約2000
その内、騎兵が先に到着し、歩兵が列を連ね、編制中だ
配下の騎士に攻撃を指示すると、首を振る
ブレスを使い過ぎて、もう放てないと
空にはまだ一騎トリステイン竜騎士が残って居るが、損害無しでこの戦果なら先ず先ずだと思い直し、全隊に退却を命じる
「後は艦砲だな、全隊退却」
ワルドが命令し、全隊を先導する為、先にアルビオン艦隊に戻ると、竜騎士達が続く
次の出撃は明日だ
竜騎士達が離脱すると、レキシントンは容赦なく艦砲を放つ
通常では有り得ない射程にトリステイン軍はパニックを起こしながら後退し、混乱が生じ被害が出るが、何とか後退に成功し、布陣を敷き直す
が、制空権が奪われた為、為す術が無い
アルビオン軍は布陣と進路確保の為、トリステイン軍は艦砲の射程の為、睨み合いのまま、翌日に持ち越しとなった

*  *  *
「整列!!陣を構え〜!!」
ド=ゼッザールが号令を出し、付いて来た衛士隊と騎馬が先に整列し、その後を銃士隊が馬車から降り、次々に整列を始める
歩兵連隊はまだ後続に続いており、補給部隊も砲兵と共にやや遅れている
そして本陣に百合の旗を掲げ、アンリエッタが陣を構えた事を誇示する
恐らく、近くの森に避難してる平民達にも、目立つだろう
王族は、決して平民を見捨て無かったのだと
彼らに、一抹の希望を見せられるならと、アンリエッタは身体を震わせつつ、ユニコーンの馬上で毅然と振る舞う
「戦場は初めてですかな?殿下」
「はい、マザリーニ。タルブの村が燃えてしまってます」
「上空では竜騎士が時間稼ぎしておりますな。来ますかな?例の平民は?」
「現物を見たのはアニエスですね。どう思いますか?アニエス」
「来ます。必ず。才人が、約束を違える訳が無い」
「カガクとは、強力なのでしょうか?」
「竜より速いのは本当です。この眼でしかと見ました」
「ならば、我らの副長殿が来る迄、醜態を晒さぬ様にせねば。ド=ゼッザール。竜騎士の迎撃は出来ますか?」
「駄目ですな。2500〜3000メイル辺りで戦っております。せめて、2000メイル迄降りてくれなければ、迎撃出来ません」
「では、敵戦列艦を制圧は?」
「距離が有りすぎますな。せめて、後1リーグは縮めないと、近付く前に艦砲の餌食です。同じく、集結中の敵揚陸部隊も艦砲の支援範囲におり、攻めいるのは得策では有りません」
「つまり、今は指を加えて見ていろと」
「その代わり、こちらの陣容が整うとお考え下さい。集まらねば、力を発揮出来ませぬ」
「その通りですね。流石はド=ゼッザール。私が逸り過ぎた様です」
素直にアンリエッタは、ド=ゼッザールに頭を下げる
「有り難きお言葉。ですが、頭をお上げ下さい。殿下は考える事が多すぎるのです。戦うのは、我らにお任せ下され」
「ド=ゼッザール殿の言う通りですな、殿下。殿下はこの後の戦勝の宴会で、選りすぐりの花を用意して下さる事に、頭を悩ませて頂きたい」
グラモンの言い分に、皆から笑いが起きる
「我らでは花が足りぬか?ジェラール殿」
アニエスが言い、そうだそうだと、銃士隊から不満の声が出る
「アニエス殿。銃士隊の花は、棘が沢山飛んで来てしまってね」
思わず首をすくめるジェラールに、皆がまた笑う
「クスクス。貴方達が配下に居る事を、頼もしく思いますわ」
アンリエッタは笑い、こんな時でもユーモアを忘れない部下達に感謝する
『やはり、グラモンを衛士隊に引き抜いて正解でした。其に、アニエスも以前と違って、柔らかくなりました。使い魔さんのお陰ですね。その代わり、艦隊には悪い事をしましたが』
艦隊指揮官としても非常に優秀であり、空軍が非常に渋ったのを、無理を通してしまったのを悼む。グラモンが居たなら、まだ艦隊は無事だったかも知れない
彼らにも、報いなければ
アンリエッタは決意し、歩兵が整列しつつ有るのを見ていると、上空のアルビオン竜騎士が撤退していく
「どうしたのでしょうか?」
「稼働限界に達したのでしょう。艦隊を焼き、村を焼き、更に空戦で無駄にブレスを撒き散らしておりました。あれでは、火竜と言えども限界を迎えます」
ド=ゼッザールが冷静に評する
「成程。では、我が竜騎士隊は、防御戦を達成したのですね?」
「その通りです、殿下。並大抵の働きでは有りません。一騎だけに、なってしまいましたが」
「充分に報いましょう。撤退指示を」
「了解です。殿下」
マザリーニが指示を下し、発光信号で撤退指示を伝えると、竜騎士が降下を始める
ドドーン!!
その時、一番前のレキシントンから火を噴き、整列中の歩兵に着弾する
「な!?」
「届くのか!?」
近衛隊長達が全員驚く
「殿下、後退指示を。此処ではやられます!!」
ド=ゼッザールが具申する
「逃げるのは」
「落ち着いて下さい、殿下。逃げるのでは有りません。攻撃を行う為に、助走距離を取るって考えれば、楽ですよ」
ジェラールが、敢えてお気楽に言い放つ
「そ、そうですね。では、攻撃をする力を温存する為に、後退!!」
「ウィ!!総員後退だ」
次々に命令が伝達され、近衛は整然と、集結中の連隊は少々慌てて後退し、ラ=ロシェールに陣を敷き直す
日が傾き、本日はお互い睨み合いで終わった

「夜襲を警戒。総員交代で休息しろ」
指示をグラモン,ゼッザール、アニエスが下し、アンリエッタの天幕で会議が開かれる
「ミラン殿」
「何でしょう、ゼッザール殿」
「ヒュドラの勇者は来られますか?」
「主役は遅れて来ると、相場が決まっているんですよ」
「其もそうですな」
あっさり、才人の事を思考の外に捨てる。今居ない人間に、期待するのは間違いだ
「しかし、参ったな。あのレキシントンに近付くにはどうすれば。アルビオンの国情を表した、完全空戦仕様の艦だぞ?艦底に迄、砲が有る」
ジェラールが唸る
「上しか無かろう」
アニエスが答える
「その上には、竜騎士がな。高高度からブレス吐かれたら、逃げるしか無い」
グラモンが応じ
「全くだ。此方の空戦高度迄、先ず下がって来ないだろうな。来れば、竜騎士とて怖くないのだが」
ゼッザールが評する
「ゼッザール殿。カッタートルネードで何とかならぬか?」
「せいぜい一個小隊だ。大勢には余り影響せん」
グラモンとゼッザールが、何とか打開策を打とうと議論を交わす
「なら、俺が上空から支援しよう。ジェラール、引き付けてる内に、錐で揉んでくれ」
天幕に竜騎士が入って来る
「アベル。お前単騎じゃないか」
「良いのか?ガイド殿」
ジェラールがしかめ、アニエスが確認する
「俺はよ、まだ奴に名乗って無いんだわ。だから、死ぬ気は無いんでね。じゃないと、奴の要請承けて張り切って出ていった連中に、顔向け出来ないんだよ」
「竜の羽衣、運んで来た連中か?」
「…全員、撃墜された」
「そうか」
アニエスは口をつぐむ
「宜しいのか?ガイド殿」
ゼッザールが確認する
「まだ奴が来てない。俺の承けた要請は、まだ達成されてない」
「徒に死を選ぶのは許しません。貴方は貴重な竜騎士なのです。解っていますね?アベル=ガイド」
「勿論です、殿下。持ってるロングランスを、使う機会が欲しくてね」
学院にアニエスを送迎してた竜騎士、アベル=ガイドはニヤリと笑った

*  *  *
「ほぅ、本陣にアンリエッタがな」
ボーウッドは報告を受け、考え込む
命令はトリスタニアを落とす事、アンリエッタを生きて確保する事
今回は、死体では駄目だと念を押されてる
「ワルド卿。サークロムウェルの命令を、どう解釈する?」
「私が思うに、始祖の血統かと思われます」
「ふむ。自身が虚無でも、やはり欲しいか」
「更に強力な力が、得られる可能性が有るのでは?」
「成程な。ならば始祖の血統であれば、多少は問題は無いと解釈しても構わぬか」
「生け捕りを放棄するのですかな?サーボーウッド」
「サージョンストン卿。戦場に出た相手を生け捕りするのは、非常に難しいです。だから、保険を考えるべきかと」
「成程。では、アンリエッタの母マリアンヌとヴァリエール家の子女。それにクルデンホルフの子女が該当しますな」
「では、兵を勢い付かせる為にも、手加減抜きでやりますぞ?」
「委細はサーボーウッドに任せると、陛下の申し出である」
「イエス・サー」
ボーウッドは敬礼し、会議を終了させ、各自の部屋に戻る
ワルドが部屋に戻ると、フーケが部屋で待っていた
「珍しいな」
報告が有るからね。竜の休息は、夜明け迄休息させれば大丈夫だと。その代わり、栄養補給に大量の肉が必要なので、普段の1.5倍食わせてる」
「了解した。騎士にも、夜明け迄休息取らせろ。飲酒も泥酔しなければ許可する」
「あいよ」
フーケはそのまま出ようとするが、ワルドが押し留め様として、フーケが杖を向ける
「言ったろ?アタイは、あんたが嫌いだ」
「…悪かった。もう少し、居てくれないか」
「何だい?珍しいね。アタイに触れないってなら、付き合ってやるよ」
「其で良い」
「で、何だい?」
「自分の目的と、今の頭の目的がかち合ったら、フーケならどうする?」
「アタイはアタイの考えで生きている。アタイの目的を邪魔する奴は、全部土くれにしてやるよ」
「フーケらしい答えだな」
「まぁね。だからアンタも、アタイの邪魔すんじゃないよ」
「頭の隅に入れておこう。で、今のフーケの目的は?」
「ある相手に借りを返す」
「フーケに、貸しを作る相手が居たのか」
「失礼しちゃうね。此でも、アタイはモテるんだよ?レキシントンに乗ってから、声かけられっぱなしさね」
「ほぅ、初耳だ」
「一々言う必要無いからね。仕事にゃ、関係無い」
「かっちりしてるな」
「仕事をやる上じゃ、大事な事さね」
「そうだな、楽になった。私も酒飲んで寝る」
「きちんと飯食ってから寝なよ。おやすみ」
「あぁ」
パタン
「…まぁ、アンリエッタを捕縛出来れば、問題無いか」

*  *  *
ルイズは明後日に迎える結婚式の為、一人部屋に篭り、祝詞を考える
未だに祝詞が出来ない為、授業は此方を優先させ、今日は許可を取り、休んでいる
でも、浮かんで来るのは自身の使い魔の事ばかり
アンリエッタのアの字も出ない
「なななな何で馬鹿犬のこここ事ばかり思い浮かぶのよ?ああああたしって、こんなにサイトの事、すすす好き?」
「ち、違うもん、使い魔だから好きなんだもん。こここ恋とかしてないもん。だから関係無いもん。だから早く姫様の祝詞………頭の中が真っ白。どどどどうすれば?」
完全にテンパり、最早ルイズ自身も何をしてるか理解してない
「だから、姫様の事……姫様とキスするサイト………うがああぁぁああ!!」
アンリエッタに間違えてキスした事を思い出し、頭をわしゃわしゃ掻くルイズ
「……サイト……モンモランシーと、一夜を過ごしたサイト………むきぃぃいいぃぃ!!」
天井を仰ぎ、叫ぶルイズ
「あたしとの喧嘩中に、皆でサイトにそそそ添い寝……ゆゆゆ許せなぁぁぁぁい!!添い寝はあたしのなのぉぉぉぉぉ!!」
更に雄叫びを上げるルイズ
「ぜぇ、ぜぇ、アニエスとディープキスするサイト。い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
遂にベッドに飛び込み手足をバタバタさせるルイズ。端から見ると、どう見ても頭の可哀想な娘である
一応、公爵家三女。桃色がかった金髪と鳶色の瞳。少々胸が足りないが、其すらも魅力として通用する(極一部に於いて)自称他称問わず、天下の美少女………の筈
才人の影響か、はたまた頑だった部分が剥げ落ち、地が出始めたのかは、恐らくルイズ自身にも解らない
だが、どんなに考えようとしても、全てが才人に行き着いてしまう
「ななな何これ?色々考えても、全部サイトに行ってしまうって何?あたし、何時からこうなったの?ちょっと、検証の必要有りね」ルイズはベッドにうつ伏せになり、考える
「えっと、喧嘩中は……サイトの事しか考えてない」
ズンと落ち込む
「喧嘩の前は………サイトの事しか考えてない」
ズズンと落ち込む
「惚れ薬の時は……サイトと結婚する事しか考えてない」
ズズズンと落ち込む
「ワルドの後は………サイトと星になる事しか考えてない」
ズズズズンと落ち込む
「アルビオンの時は……サイトに嫉妬して貰う事しか考えてない」
ズズズズズンと落ち込む
「フーケの後は……サイトに、あたし自身を見て貰う事しか、考えてない」
ズズズズズズンと落ち込む
「だだだ駄目だもん。あたしの頭から、サイトを取ったら、何も残って無いもん」
改めて、自身の頭の空っぽぶりに呆れるルイズ
「あたし、沢山勉強したよね?サイトは、テストで良い成績見せると、褒めてくれたよね?だから、勉強も出来たもん。絶対に空っぽじゃないもん……多分」
「で、でも、サイトに褒められる迄は、勉強嫌いだったな。だって、幾らやってもゼロだったし、魔法は一個も成功しなかったし。其でも、皆を見返したかっただけだし」
ゴロンと仰向けになる
「でも、サイトが来てから、本当に楽しくて。こんな見方はどうだって、あたしに教えてくれて。そんなサイトの発想が大好きで。サイトが来てから、更に成績上がったなぁ」
えへへへと、にんまり笑いを浮かべるルイズ
「サイトにテストの点数見せると、良く頑張ったって、頭をくしゃりと撫でてくれて。あれが有るから、あたしは次も頑張れる」
「サイトがはなまるくれる時は、滅多に無いけど、はなまる欲しくて頑張れる。だって、サイトがはなまるくれたのは、ワルドの時だけだもん」
「はなまるは、本当に出来た時だけくれるんだもん。貴族の誇りを間違えず、最高の選択出来た時だけ。タバサもギーシュもまだ一個だって。聞いた時は頭来たけど、あたしが更に貰えば良いんだもん」
「サイトの私達への見方って、本当に先生かお兄ちゃんみたい。でも、あんな先生居ないもん。あたし、やっぱりサイト居ないと駄目だなぁ」
「サイトが来てから、魔法を使えない事にも、あんまり気にならなくなったなぁ。サイトが言うには、失敗魔法も魔法には違いないって。だって、俺には出来ないだろ?だって」
「言われてみればそうよね。サイトが伝説の使い魔なんだから、あたしはもしかして四系統じゃなくて、失われた伝説の系統、虚無かも知れないじゃない?」
「ま、幾ら何でも、其は都合良すぎよね?サイトがガンダールヴなだけで、あたしは充分に幸せ。だって、あたしの使い魔は、ハルケギニアで最高の使い魔なんだもの」
「あぁ、此でサイトが伯爵ならなぁ。何も問題無いのに」
自身の妄想にイヤンイヤンと頬に両手を当て、首を振る
ギィ
ガバッとベッドから飛び起き、扉を見ると、キュルケが生暖かい目でルイズを見ている
「どどどどうしてキュルケが居るのよ?授業中でしょ?」
「……忘れ物を取りに戻って来たのよ。ほら、これ。きちんと許可貰ってるわ。フライ使って、時間短縮してるもの」
「いいい何時から其処に?」
「うがぁぁぁ辺りかしら?」
殆ど可哀想な所、全部である
「ななな何で黙って見てたのよ?」
「一応祝詞考えてるんでしょ?ゲルマニア人としちゃ、邪魔しちゃ悪いじゃない。ウチの皇帝との結婚祝いと、同盟締結祝いなんだもの」
正論を、棒読みで読み上げるキュルケ
「ああ、其とね。ルイズの妄想、実現する方法有るわよ?」
「……嘘?」
「本当よ。ダーリンがゲルマニアで爵位を持つ。其で障害が無くなるわね」
「ゲルマニアなら、爵位持てるの?」
「平民でも、金払えば持てるわよ。此で、問題無くなるんじゃなくて?ヴァリエールなら出せるでしょ?何なら、ツェルプストーも協力するわよ」
「ななな、何か裏が無い?」
「別に、条件が有るだけよ」
「…何?」
「ダーリンの浮気を許す事。其だけよ」
「ままままた、ツェルプストーの記録更新する積もり?」
「其も有るけど、言っておくけど、ダーリン凄すぎるわ。あんた、ヒュドラとタイマンはれる人間に心当たり有る?」
「…有る。身内に一人」
「…ヴァリエールは相変わらず、化物の家系ね。先代や先々代との戦話は、ツェルプストーじゃ、恐怖の対象よ?」
「ツェルプストーの戦話も相当よ。其に寝取りは、ヴァリエールじゃ、恐怖の対象ね」
「ヴァリエールには政治や経済にも一通り通じて、技術者としても相当な人材って居る?」
「父さまが近い…かな?」
「他には?」
「…考えつかない」
「ウチは技術者は沢山居るけど、政治経済はあんたの所と似たりよったりね。父様におんぶに抱っこ。私のは、お遊びレベル」
「でもね、ルイズ。どちらの問題も、ダーリンが居るだけで解決しちゃうのよ?ダーリンは人に教えるのが上手いし、伸ばす術も心得てる。其は、私達が一番知ってると思わない?」
ルイズは深く頷く
「ねぇ、先代達迄の遺恨も、私達の代で水に流せるかも知れないのよ?やる価値有ると思えない?」
「其が、サイト?」
「そうよ。私ね、本気になっても良いかなって、思い始めてる。でもね、タバサの本気相手に本気になりたくないの。此も本当」
「…タバサも?」
「あんたとは違った境遇だけど、やっぱりダーリンが、タバサの心を変えてる。あんな事出来るのは、ダーリンだけよ。だから私は、タバサの本気相手には、本気になるのは躊躇してる」
「タバサも、何か抱えてるの?」
「脳天気なのは、私だけよ」
「珍しく、おちゃらけるのね」
「事実だから、しょうがないわね」
キュルケは肩をすくめる
「ま、今のはあくまで一案だけど、トリステインにこだわる必要は無いんじゃない?私が言うのも何だけど、男が、一人の女にこだわる必要も無いと思うわ。私の父様も妾居るし、全然気にならないわね。ヴァリエールには妾居ないの?大貴族じゃない」
少し考えて、ルイズは答える
「少なくとも、あたしは知らない。母さまがあれだから、隠してるだけかも知れないし。…サイトはどう思うかな?」
「価値有りと認めた訳だ?」
「かかか可能性は、常に考慮すべきよね」
「前向きで宜しい。多分、ダーリンは嫌がるわね。地位が大嫌いなタイプよ、あれ」
「じゃあ、意味無いじゃない」
「そういう方向に、追い詰めれば良いのよ」
「……酷くない?」
「ダーリンの帰る場所を作るって、考えてみたら?」
「……成程、発想の転換ね」
「後これ、ダーリンには内緒ね。感知すると逃げるわよ?」
「わわわ解ったわよ」
「じゃ、授業に戻るわ。祝詞、期待してるわよ」
キュルケは手をひらひらとし、廊下の窓からフライを詠唱し、飛び去る
「サイトが伯爵………伯爵!うぇへへへへへ」
口から涎を足らし、その後は妄想に突入するルイズ
目の前に有るのは才人が使ってる枕、才人の匂いがたっぷり染み付いている
以前は自分で使ってた物だが、才人の腕枕より良いものが無い為、才人に明け渡してしまっている
才人は香水とか一切付けない為、素の男の匂いで、汗と混じり、ルイズの鼻腔を常に刺激する
『この匂いを嗅ぐと、どうしようも無くアソコがウズいて、安心するのよね。どうも、サイトの匂いはあたしには禁断の匂いみたい』
枕に抱きつき、くんかくんか匂いを嗅ぎながら、股間を擦り付ける
『ワルドには感じなかった。父さまにも感じない。執事にも感じない。学院の男子学生達には、感じない所か、気持ち悪くなる』
「あたしは、何時でも良いのに、ずっと刺激してるのに。サイトの馬鹿馬鹿馬鹿」
ルイズは自身の陰核が明確に勃起し、皮が剥けて、ぐしょ濡れなショーツに当たり、その刺激に枕が追撃をかけ、腰の動きが止まらない
「はっはっはっ、サイト、サイト、んんん〜〜〜〜!?」
軽く絶頂するが、物足りない気分をルイズは味わう
「あの時、惚れ薬飲んでた時の、あの刺激が欲しいの。サイトじゃないと出来ないの。あれ以来、何か敏感な所が直ぐに剥けるの。サイトにイジって欲しいの。サイトに、恥ずかしい格好で交わって欲しいのぉ」
ルイズは切ない声を出し、涙を溜め、才人が要求した時の格好になる。頭をベッドに付け尻を持ち上げ、才人が来るのを今か今かと待ち構える
ルイズにとっては、才人が興奮を覚える格好は、自身にとっても興奮する格好になっている
「もっと酷い事してよぉ。あたしを星にしてぇ」
そのままの姿勢で手を伸ばし、自身で慰め始めた
陰核に手を伸ばし、布ごしに触れる
「あん、あっあっあっあっ」
でも、才人のもたらす刺激には、遠く及ばない
才人の猛り狂ったイチモツを思い出す
硬くて、何かグロテスクで、其でも目を離せなかった、とにかく欲しいモノ
あれが、自分の中にゆっくり入り、蹂躙する様を想像すると、猛烈に子宮と膣がウズき、つい手を入れてしまいそうになるが、入口でぴたりと止める
「ふぅ、危ない。サイトが入る時迄は駄目。とにかく、駄目」
もう、完全に祝詞を忘れ、自慰に没頭するルイズ
「サイト、今戻って来て。そしたらあたし、そのまま星になっちゃう」
才人に四つん這いのまま、獣の如く犯される様を想像し、その想像だけで、心臓がはち切れん程に高まり、ひたすら陰核をこね、尻を振る
「あたし、子供じゃないよ?こんなにえっちだよ?サイトが欲しくて、こんなになっちゃったよ?サイトサイトサイト、ああぁぁぁ」
また絶頂し、才人の匂いに顔を埋める
「サイト、早く来てよ」
ルイズは、また枕を抱き締め、腰を振り始める
「はっはっ、サ・イ・ト、んく」

ずっと自慰に没頭し、気が付いたら日が傾いている
昼食を取るのすら忘れてたらしい
「あれ?」
幾ら何でもおかしい
「サイトがいつ来ても、良い様にしてたのに」
洗濯物を取り込んで来た才人の前で、恥ずかしい様を見せ付けて星になる作戦が、不発に終わった事で、異変を感じる
才人は、日課をサボる事は、先ず無い
コンコン
「誰?」
「メイドです。才人さんの代わりに、洗濯物をお届けに参りました」
服装を直し、慌てて机の椅子に座る
「入って」
「失礼します」
ガチャ
赤毛で巻き毛の、自分より、ちょっとだけ背の高い、年下のメイドが洗濯物を届ける
「何でサイトがやらないの?」
「サイトさんは、出撃準備だそうです」
「出撃準備?」
「アルビオンが攻めて来ました」

*  *  *


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