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Last-modified: 2010-12-20 (月) 15:30:33 (4875d)

才人が目覚めてから翌日、才人はベッドに身体を起こしている
食事の後に治癒を掛けて貰う事により、食べた物を急速に栄養として取り込む
此により、現代日本では有り得ない増血効果を伴い、多少は動ける様になっていた
アニエスは才人が動ける様になった為、通常任務と戦後処理に戻っている
「ルイズ、耳貸して」
「何?」
ルイズが耳を寄せると、才人はふぅっと息を吹き掛ける
「いやぁ〜〜〜!?何するのよ、馬鹿犬〜〜〜!?」
ぽかぽか才人を叩くルイズ
「いやいや、ごめんごめん、次は真面目にやるから」
「本当に?」
「本当に本当」
ルイズは怪訝な顔をしながらも、再度耳を貸す
「始祖の祈梼書に何が書いてあったか、教えてくれないか?」
ルイズはハッとする
シエスタがこめかみをヒクヒクさせつつにこにこしながら見てるが、此は確かにシエスタには言えない内容だ
「シエスタ、席を外してくれない?」
「私は才人さんの看病で居るんです。聞けません」
「違うのよ。えっと……」
「シエスタ、真面目な話なんだ。頼む」
「才人さん、本当に?」
「本当」
「解りました。では外で待機してますので、終わったら呼鈴でお願いします」
「済まないね」
「いえ」
シエスタは退出していった
パタン
「じゃあ、ルイズ。教えてくれ」
「うん、解った」
ルイズは祈梼書を持ってきて開くと、命を削る部分以外を才人に教え、才人は唸り出した
「……サイト、どうしたの?」
「参ったな。魔法は素粒子物理学かよ」
「どういう事?」
「魔法すら、科学で説明出来るんだ」
「本当に?」
「本当だ。しかも、ルイズの操る虚無は、素粒子に影響させる、ふざけた魔法だ」
「サイトのカガクで虚無が解るの?」
「あぁ。此で解った。ルイズの放ったのは、初歩の初歩の初歩。エクスプロージョンだな?」
「うん」
「多分、核融合か反物質。核融合だと発動条件が厳しいから、多分反物質か?」
「はんぶっしつ?」
「あぁ、俺達の身体から、全ての形有るもの。空気や風ですら、小さい粒で出来ている。例外は、エネルギー状態の光だ」
「祈梼書にも書いてあったけど、どういう事?」
「つまり、たったの3種類の粒の組み合わせで、全ては出来ている」
「嘘」
「本当だ。そして、虚無に一番近いのはな、土系統の錬金だ」
「本当に?錬金は、一番基本的な魔法じゃない」
「基本こそ、奥義である。全ての仕事の常識さ」
「……どういう事?」
「錬金ってのは、粒の組み合わせを変える事により、望みの物質を創り出す。日本じゃ、未だに研究段階の代物だ」
「うん、それで?」
「恐らく、虚無は粒を取ったり外したりする系統で、粒の組み合わせを変える事迄が、四系統の限界なんだ。加えたり消したりは出来ない」
「うん」
「虚無の系統は、粒同士を衝突させて、新しい粒を作り出したり、性質を変えて、全てを力に変換したりするんだ。日本でも研究段階だけど、作り出す事自体は出来る。ルイズは、其を長い詠唱と魔力により、可能としてるんだ。魔力が、どんな感じで身体を巡るか解るか?」
「んっと、詠唱と共にね、魔力が身体の中をぐるぐる回って、杖と思考で目標の場所に向けたら、発動したの」
其を聞き、才人は顔を青くする
「ルイズ、良く聞け。多分其は、ルイズ自身の粒を使って行う、粒子加速だ。出来るだけ、エクスプロージョンは使うな」
「どういう事?」
「命を削ってるって事だ。効果等を検証する時や実戦以外は、絶対に遊びで使うな。其と使ったら、必ず栄養補給を充分に行うんだ。絶対だぞ?」
「……何で解るの?」
「俺が日本人だから」
『何で……解っちゃうの?才人には、何でもお見通しなんだ……』
「やらないと駄目?」
「駄目だ。そうしないと、胸も成長しないぞ?」
「かかか関係無いじゃない」
「関係有るぞ。ルイズ自身の粒を使うって言っただろ?生命維持の余剰分の粒を使うと仮定した場合、脂肪を構成する粒から使われるだろうな。つまり、使えば使う程、胸が小さくなるとしたらどうする?」
「うぐっ、それはイヤ……もしかして、今迄の失敗魔法が、あたしの背が小さいのと痩せっぽちの原因?」
「かもな。きちんと守りなさい。解った?」
「……解ったわよ」
「良し、良い子だ」
才人はルイズを撫でる
ルイズはほにゃあとなり、そのまま才人に身体を預ける
「……ねぇ、サイト」
「何だ?」
「……トリステイン人になって」
「……考えとく」
ルイズはその言葉に一歩前進を感じとり、取り敢えず満足する事にした

「呼鈴やるぞ」
「やだ」
「何で?」
「ご主人様の言う事聞きなさい」
「デルフと村雨は?」
「持って来てるわよ。私達が使ってる寝室に、置いてある」
「両方持って来てくれ。今の体調だからこそ、試したい事が有る。其と適当な的」
「解ったわ」
ルイズは呼鈴を鳴らし、シエスタを招き入れる
「ミスヴァリエール。何で抱き付いてるんです?お話は終わりましたか?」
「まだ続きが有るの。本当よ。ボロ剣と刀を持って来るから手伝って。刀はあたしが触ると危険だから、シエスタが持って来るの」
「解りました。では行きましょう」
パタン
二人が出て行くと才人は呟く
「……今のまんまじゃ、俺は、何もかも中途半端に終わっちまいそうだ。〇〇〇」
最後の呟きは、ごく小さく言われ、盗聴してるアンリエッタにも聞こえなかった

二人が、デルフと村雨と木の板を持って来、入室する
「有り難う二人共。悪いけどシエスタ、また外に……嫌、違うな、何かつまむ物持って来て。ルイズが好きな奴が良い」
「あたしの好きな物?」
「あぁ」
其で、才人が虚無の検証がしたい事が、ルイズに伝わる
「んとね、クックベリーパイが良い。其と持って来ても、良いと言う迄、入って来ちゃ駄目よ。真面目な話だから、お願い」
「かしこまりました。ミスヴァリエール、才人さん」
シエスタが退出すると、才人がデルフを握り、抜く
「よう相棒。5日振りだあね。すっかり、忘れられてるかと思ったわ」
「実はその通りだ」
「かぁ、冷たいねぇ、相棒………何だ?魔力を感じるぞ?」
「ルイズの魔力じゃないのか?」
「ちげぇな。相棒、俺っちを持って周辺探れ」
「ボロ剣、サイトはまだ完治してないじゃない。あたしがやるわよ」
「嬢ちゃんじゃ駄目だ。魔力が混線して、上手く探れねぇ。だから近付くな」
デルフにそう言われ、ルイズはしぶしぶ部屋の中央に位置し、立つ
才人はデルフを持って立ち上がり、周辺を歩きながら、デルフの言うがまま魔力探知を行う
「おっ、見っけた。こりゃ、盗聴の魔法だな」
「へぇ、盗聴ねぇ」
「ちょっと、盗聴なんて姫様の寝室に誰がやるの?まさかスパイ?」
「何時から掛ってるか解るか?デルフ」
「流石に其処までは解らねぇよ。どうする?」
「吸ってくれ」
「あいよ」
デルフは魔法を吸い、無効化する
「誰がやったのかな?」
「さぁね、流石に解らん」
才人がそう言うと、デルフが小さく、ルイズに聞こえないレベルで喋る
「本当は解ってんだろ?相棒」
「ルイズの前では言えねぇよ」
才人の返事にデルフは沈黙する。自身の相棒は、ガンダールヴとしては欠陥品だが、知力と器用さだけは並じゃない
『この相棒は、まぁた何か企んでやがんな?おもれぇ事なら良いけどねぇ』
「さてと、取り敢えず覗き魔は退治したから、検証やるか」
更に村雨を握り、抜くと、部屋の中央に立ち、舞姫を舞い始めた
「サイト、そんな身体で無理しないで!!」
ルイズが声を掛けるが無視し、小さく詠唱し、身体がぶれ、ルイズには駒が突然一気に送られ、呆然とする
「今の、ワルドの時の?」
「ガンダールヴの加速装置だよ。ふむ、成程ね」
才人は一度武装を解き、膝を付き、肩で息をする
「ふぅ、次だ。ルイズ、最小威力で的にエクスプロージョン。但し、また舞姫舞うから、舞ってる時に詠唱してくれ」
「サイト!?そんな身体で?」
「駄目だ。今だからこそなんだ。頼むよ」
「馬鹿犬!!あんたなんか知らない!!」
ルイズは涙目になりながら、才人の注文に応える為、杖を構える
『サイトに頼られた!こんな時じゃなかったら、飛び上がって大はしゃぎするのに……』
才人はまた抜き、先程よりゆっくりと、玉の汗をかいたまま、舞い始める
ルイズはルーンを唱え出した瞬間、精神力も魔力が足りないのを自覚し、苦しくなり始めた
「エオルー・スーヌ」
才人は舞いに力が入り、足腰にも安定した運びになるのを自覚するが、その瞬間、ルイズが的に向かって杖を振り下ろし、そのままばたりと倒れる
ボン!!
的が爆発し、才人はデルフを床に刺し、慌ててルイズをベッドに運び、村雨をしまうと、ベッド脇に立掛け、自身もベッドに倒れる
ドサッ
暫くすると、ルイズがむくりと起き出した
「…あれ?気絶しちゃった。サイト!?」
「…ルイズ、大丈夫か?」
「あたしよりサイトのが」
「良いんだよ、俺は。自業自得だ。ルイズはどうして気絶したんだ?」
「魔力も精神力も全然足りなかった。でも、詠唱途中でも、弱くても発動したみたい」
「決まりだ。粒子加速による衝突により、反物質を精製して、対消滅反応を引き出してる。詠唱途中で発動するのは、多分加速が足りないか、加速させる粒子の数が少ないかだ」
「粒子加速には莫大ななエネルギーが必要だ。だから精神力と魔力を大量に消費するんだ。爆発はエネルギーが熱と光に変換される事から起きる、副次的な現象だ」
「……そんな事迄、解っちゃうの?」
「ま、ね。核融合の点も捨てがたいんだけど。デルフ、空気の組成が変わったか解るか?」
「幾ら何でも無理言うな、あほう」
「ま、核融合は多分無い。核融合に必要な温度を、発生させて無いからね。一瞬でも振動させるには、プラズマ電界が必要なのに、発生した場合のオゾン臭がしない」
「…それって、どれ位?」
「お日様有るだろ?」
「うん」
「あれを魔法で作るの」
「……絶対に無理」
「解れば宜しい。つまり、ルイズはエクスプロージョンを撃つ度に、無い乳に拍車がかかる事が、証明されました。以上、虚乳のルイズの検証終わり」
ズン
「ウグッ」
「ちっと死んどけ、この駄犬」
ルイズに踏まれて、才人は気絶し、ルイズが呼鈴を鳴らすと、シエスタがクックベリーパイとお茶を持って入って来た
「絶対、ぜぇったい、見返してやる。ぜぇったいなんだからぁ!!」
ルイズの絶叫が、寝室に木霊し、才人を見返すべく、クックベリーパイに噛みついた

*  *  *
才人が完治したのは起きてから3日経った後である
政務の殆どを、マザリーニに押し付けたアンリエッタは、重要書類にサインするのみで、後は才人の元に頻繁に訪れた
と、言うより、当初の宣言通りの治療行為の継続である為、マザリーニも何も言ってはいない
通常のトライアングルより優れた治療行為を行えるのは、王家の杖の助力の賜である為、忙しいスクウェアを呼ぶ必要が無かった為である
スクウェアは、戦後の瀕死の重病人を何人も抱えてる為、才人一人に出すと、助かる命が大分失われてしまう
其に国家機密級の重要人物と見なしてしまった為、必要以上に他者に触れさせられないと云う事情も有る
最後の一つは、恐らくルイズをからかう為であろう事は、その場に居た全員に筒抜けである
当て馬にされた才人には、堪った物では無い
「……あの、何で昨日より悪化してるのですか?ルイズ、使い魔さんに酷い事しましたね?」
「其は違いますわ、姫様。この駄犬が勝手に動いて、症状を悪化させたのです」
「まぁ、なんて酷い主人なんでしょう。使い魔さん、ルイズから私に、主人替え致しましょう。私なら毎日裸同士で寝ても、構いませんわ。其に胸も女王ですの。きっと、使い魔さんを満足させられると思いますの」
「………犬、覚悟は出来てるんでしょうね?」
「…俺は何も言ってねぇ」
才人は毛布を引っ被ると、アンリエッタはその様を見て、慌てて言葉を紡ぐ
「あら、寒気がしたんなら、そうおっしゃって下さいまし。まだ身体が全快では無いのですから、暖めて差し上げますわ」
言うやいなや、さっさとベッドに潜り込むアンリエッタ
「な、犬。あんたもう大丈夫でしょ?姫様を出して差し上げて」
「だから、俺じゃなくて、姫様に言ってくれって」
「あら、やっぱりルイズじゃ、使い魔さんをきちんと看病出来ませんのね」
アンリエッタが頭を出して、ルイズに向けて舌を出す
「ひひひ姫様、ちっとお出になられて下さらない?ってか、出て来なさい!!このアマ!?」
「あら、殿方の居る前で、何とはしたない」
ちっとも出ようとしないアンリエッタ
「あ〜姫様」
「はい、何でしょうか?使い魔さん」
そう言うや、才人に身体を密着させる
「楽しいですか?」
「えぇ、とっても。子供時代に戻ったみたいですわ」
「まぁ、程々にお願いします」
「あら、許して下さいますの?」
「息抜きは必要ですから」
「……そう言って下さるのは、使い魔さんだけですわ」
そう言うと、アンリエッタはルイズに勝利の笑みを浮かべる
「先ずは一勝……ですわね」
「意味……解って言ってるんですよね?」
「あら、どういう意味か教えて下さらないかしら?ルイズ=フランソワーズ」
「うっ」
ルイズは黙ってしまう
『い、言える訳無いじゃない。其って、あたしがサイトの事をすすす好きって言う事よ?』
「あら、教えて下さらないのかしら?ルイズ=フランソワーズ?」
アンリエッタは、にまにましている
ルイズの性格を知ってるからこそ、行える遊びである
「うぅ〜、とにかく離れて下さい!!」
そう言うと杖を引き抜き、詠唱を始めようとする
「虚乳」
才人がぽつりと呟くと、ビクッとして、ルイズは固まる
『使えば使う程、胸が小さくなるぞ』
才人の言い分を信じると、エクスプロージョンの無駄使いは、痩せっぽちを更に進行させる
自身のコンプレックスに拍車を掛ける事を思い出し、躊躇する
やきもちを妬いてるのは恐らく才人にも伝わってる。でも、其以上に、ルイズの命の心配もしてるのが、伝わって来る
どうにも、ムカつく伝え方では有るが
「あら、唱えないのですか?ルイズ?」
「う、此は、その」
「なら、杖をしまいなさい。簡単に抜いてはいけませんよ?」
ルイズは杖をしまい、実力行使に出る事にした
「こここ此はあたしの使い魔です。あたしが看病しますから、姫様は治療魔法のみお願い致しますわ」
そう言うと、ルイズは才人の反対側に潜り込み、才人越しにアンリエッタを睨む
「まぁ、怖いですわ、使い魔さん」
アンリエッタは怯えて見せ、才人に絡み付く
「馬鹿犬、ああああんた解ってんでしょうね?」
「嫌、何をだ?」
「ひひひひ姫様に手を出したら、どうなるかって事よ?」
「どちらかと言うと、俺が手を出されそうなんだが?ってか、姫様の遊びなんだから、付き合ってやれよ」
「許せるモノと許せないモノがあるのよ。姫様の常套手段なのよ、それ。子供時代はそのせいで、あたしがいっつも悪者扱いされてたんだからぁ!!」
「クックックック、あっはははははは!?そっか、子供時代からか。クックックック」
才人は笑いが止まらない
「姫様」
「何でしょうか?使い魔さん」
「存分に遊んで下さい」
「喜んで」
「ああああたしはどうなるのよ?」
「たっぷり遊んで差し上げろ。友達なんだろ?」
「………友達、辞めたくなって来た」
「姫様、どうも俺の主人は薄情で申し訳ない」
「本当に薄情ですわね。ルイズから私に主人を変えません事?」
「検討の価値は有りますね」
「あら、では本日より新しい主人の寝室で、寝泊まり致しましょう」
「不肖、この犬。犬の如く舐め回させて頂きます」
ガスッ!!
才人の顔面に拳が入り、才人はまたKOされる
「……全く、才人さんの冗談は際どいから」
一部始終をシエスタは見ており、二人が居なくなる隙を伺ってたのだが、どうやら今日も駄目そうだと、溜め息をついた

*  *  *
才人がやっと普通に動ける様になると、謁見の間にルイズと才人は通された
謁見の間には女王アンリエッタと宰相マザリーニ、其にゼッザールとアニエスのみである
「おんや?近衛隊長が居る?」
「グラモンは遅番だ」
アニエスが答える
「使い魔さん、やっと完治して下さいましたね。では、シュヴァリエ叙勲の儀を行いたいと思います」
「シュヴァリエ?誰が?」
「あんたに決まってるじゃないの」
「はぁ?何で?」
其を見て、ゼッザールは親しげに語りかける。お互いに空の上で顔を合わせてる為、才人も気付く
「おいおい、冗談は止めてくれ、副長殿。嫌、今は解任されてるから使い魔殿だな。そなたの戦果は竜騎士26騎撃墜、ロイヤルソブリン級戦列艦レキシントン中破だ。そなたに騎士位を授けずに誰に授ける?」
「ん?姫様、じゃなかった、女王陛下でしょ?陛下が指揮を下したんだから、陛下がシュヴァリエになるべきだ」
その瞬間、謁見の間に笑いが巻き起こる
「俺、何か間違い言ったか?」
「い、いえ。その発想は有りませんでした」
アンリエッタは笑いながら答え、アニエスが後を繋げる
「陛下のみシュヴァリエを叙勲出来る。陛下自身には出来ぬのだよ」
「ちょっと、恥かいたじゃない?」
「恥?何が?指揮を執った最高責任者を称える事の何が悪い?」
才人の言葉に裏は無い
だからこそ、全員が好意的に捉えた
「使い魔殿。宰相のマザリーニと申します。良く聞いて下され」
「ん、ああ」
「陛下に対しては、即位と云う叙勲を行っております。また、論功行賞の観点から、貴殿に叙勲せねば、軍部の不満を抑える事が出来ぬのですよ」
「どういう事だい?」
「貴様一人で戦局を一変させた。全員が目撃しており、其を何も賞しないのでは、誰もやる気を出さなくなる」
「ちっ、余計な事しちまったか」
才人は舌打ちする
「サイト……嫌なの?」
「興味無いな」
才人のモノ言いに、皆が唖然とする
「使い魔殿。騎士位は欲して手に入るモノでは無いぞ?考え直せ」
「そうだぞ、才人。騎士位になれば、生活も楽になるぞ?年金が出るからな」
「全員何か勘違いしてないか?俺は稼ぐだけなら、別に誰にも頼らずに生きていけるんだが?其こそ、ルイズに頼る必要すらない」
「なっ」
マザリーニは絶句し、ルイズは沈黙する
完全に事実だからだ
確かに才人は、職人として腕を振るえば食うに困らない
しかも、ツェルプストーも雇うと言ってるし、流浪の剣士としてもやっていける
とにかく、生きて行く為に此方の知識を詰め込んだのだ
学院に召喚されたのは、ある意味幸運だった訳である
「あの、使い魔さん。既に触れを出してしまいました。私に、恥をかけとおっしゃるのですか?」
「俺に承諾無しで勝手にやるのは、近衛副長任命迄にして下さい。はっきり言って迷惑だ」
明確なる拒絶。そして、王権に対する明確な否定
当然、王家に忠誠を誓ってる者には、痛烈な侮辱だ
「き、貴様、陛下に対してなんたる侮辱。王権と国法に逆らう気か、使い魔?」
30年以上トリステイン王家に奉公してたゼッザールには、たまらない侮辱である。当然激昂する
「侮辱も何も、俺は異邦人だ。トリステイン人でも何でも無い。王家の忠誠なんざ、どうでも良いね。異邦人で有りながら、勝手にそちらのシステムに組み込もうとしてるんじゃないか。あんた達も、使い魔召喚されてみろ」
才人の物言いに、全員押し黙る
「解ったか?俺が此所に居るのは偶々だ。あんた達からすると、俺は異端なんだよ。だから、国に干渉する気は無い」
「……サイト」
才人はつかつかアンリエッタに歩み始めるとゼッザールが杖を構える為、アニエスにデルフと村雨を放り投げ、アニエスが受け取り、害意が無い事をアピールする
「害意は無い。杖を下げてくれ。姫様に話だ」
そう言って、玉座に座るアンリエッタに歩み寄り、耳元に囁く
「謀をするのも構いませんが、覗きの趣味はどうかと思いますよ」
アンリエッタは青醒めると、才人はアニエスからデルフと村雨を受け取り、謁見の間から出ようとするが立ち止まる
「あ、そうだ。これ返すわ」
パーカーのポケットに入ってた武装許可証を、丸めてアンリエッタに放り投げる
「俺は帰るけど、ルイズはどうする?姫様に話有るなら、先に行くぞ」
「……待て、使い魔」
「ん?何?」
「決闘だ」
「は?何で?そもそも近衛隊長が幾ら平民相手と言えども、禁を破るのはどうかと思うよ?さっき、国法云々言ってたじゃないか」
「なら、訓練なら構うまい」
「嫌だと言ったら?」
「今、この場で殺す」
「何でさ?」
「彼処迄侮辱されて、黙って居られると思うのか?」
「じゃ、どうぞ。此処で殺してくれ。既に二回死んでるんだ。三度目の正直って奴だな」
才人はデルフと村雨を放り投げ、両手を広げる
本当にやる気が無い事をアピールしてる
「馬鹿野郎ふざけんな!!俺っちは認めねぇぞ!!今直ぐ俺を抜きやがれ!!」
デルフが騒ぐが才人は言う
「短い付き合いだったが楽しかったぜ、デルフ」
「潔いな。せめて、苦しまない様にしてやる」
ゼッザールが杖を構えると、ルイズが杖を構えてゼッザールに言う
「サイトを殺すなら、あたしはあんたを殺す。あたしの使い魔に手を出すと言うなら、覚悟するのね」
虚無の魔力が立ち上がり、髪が逆立ち、魔力が空間に浸透して行き、発動に充分な魔力が満ちるのが解る
「おやめなさい!!」
「……陛下」
「この方は私達トリステインの発展をさせる事の出来る、唯一のお方です。我々より、遥かに優れた知識と技術を持っております。其こそエルフよりです。此処で死ぬ選択を取ったのは、自身の知識が持つ危険性を熟知しているが為、自ら死ぬ事で封印する積もりです」
「で、ですが、陛下」
「この方に礼を尽さねばならぬのは、我々の方なのです。ゼッザール、控えなさい!!」
「ははっ」
「ですが、ゼッザールの忠誠にも報いねばなりません。使い魔さん、シュヴァリエにはなって頂けませんの?」
「だから言ったでしょう。興味ない」
「仕方有りません。訓練に、付き合って頂けませんか?」
「何で?わざと、やられるかも知れませんよ?」
「アニエス、ルイズを拘束しなさい」
「はっ」
アニエスは一気にルイズに近寄り、杖を取り上げ、あっさり拘束する
「ちょっと、アニエス。離して!!」
「済まんが命令だ」
「流石だね、姫様。王の貫禄充分だ」
才人の目に剣呑な光が宿る
一番の弱点を突かれた
「付き合って‥‥頂けますわね?」
「姫様、ルイズは友達ですよね?」
「勿論、今でも一番のお友達ですわ」
「御立派。マジで尊敬出来るわ」
才人は肩をすくめた

*  *  *


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Last-modified: 2010-12-20 (月) 15:30:33 (4875d)

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