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Last-modified: 2010-11-29 (月) 11:17:36 (4896d)

〇月×日
今、此を書いてるのはテントの中です
えっへっへっへ
念願の才人さんと冒険だ!!
私は非戦闘員として、戦いには出ない様に言われてますが、其でも楽しいです
野草を摘んで、食べられそうな根っこを掘って、茸を選別して採集して
タルブでひいお爺ちゃん達に学んだ術が大活躍です
才人さんと貴族の皆様は、魔法で動物を狩る担当になりました
私が最初、罠を作ろうかとしたんですけど
才人さんが
「なら簡単に弓か、魔法で射撃した方が早いな」
って、言い出しまして
言われて見れば、その通りです
お言葉に甘えましょう
ミスタグラモンが、弓を錬金して才人さんに渡して
皆で狩りに出たら、あっさり獲物を仕留めて来ました
うむ、メイジ恐るべし
「ちょっとダーリン、私達の鹿はともかく、襲いかかって来たからって、熊なんてどうすんのよ?」
「シルフィード、フレイム、全部頼むわ」
「きゅい」
「…鹿の方が良いって」
「じゃあ皆で等分で分けて、余ったら宜しく。其でも余ったら、燻製か干し肉に出来ない?どうかな、シエスタ」
「燻製なら箱を作って、其用のチップを作れば、何とかなります」
「必要な材木は?」
ミスタグラモンが聞きます
「メープル辺りでどうでしょう?」
「成程ね、ちょっと探して来る。才人、斧持って付いて来てよ」
「あいよ」
「ちょっと待て、色っぺい兄ちゃん。斧なんざ無いだろうが」
才人さんとミスタグラモンが口を合わせて言いました
「「デルフに決まってる」」
その瞬間、私達は爆笑しちゃいました
あぁ、この冒険は本当に楽しい
燻製は、一晩ゆっくり燻らせましょう

って、しまったぁ!!
これ書いてたら、才人さんの隣が占領されてるぅぅぅぅぅ!!
早い、早いぞ貴族様
ミスタバサ、軽量活かして上に乗っかるのは反則です

ひいお爺ちゃん
やっぱり敵は多いです
ぐすん

〇月×日
ふっふっふ、冒険二日目です
日記が、あっさりミスタバサの読書対象として、捕獲されてしまいました
操りの魔法で私から強奪って、幾ら何でも酷いですよ!!
そしたら、何て言ってたと思います?
「面白そうな本が有る、だから読む。読書の邪魔は許さない」
「…ミスタバサ、ちょっと論点ずれてませんか?この場合は、人の物を貴族とは言え、勝手に」
「私にとっては、ずれてない」
「…わざとですね?」
コクリと頷き、パラパラ捲ってある場所から読み始めます
彼処からは、私と才人さんのキャッキャッな部分がぁぁぁぁぁ!?
「ミスタバサ。何でそのページから?」
「…情報収集」
「あのですね。人に見せられる物じゃ、ないんですけど?」
あっ、赤くなってる
「……風呂」
「ミスタバサ、真似する積もりですか?」
私の胸を見て、少々考え込むミスタバサ
「大丈夫、真似にはならない。私にはそんなの無い」
杖で胸を、ぐりぐりされてしまいました
「あの、そろそろ解いて下さい」
「まだ」
才人さんとの日記部分を、全部読む積もりですね
はぁ、まさか、ミスタバサにこんな事されるとは、一番常識人かと思ったのに
人は見かけによらないです
読み終えたミスタバサは、パタンと閉じて私に日記を差し出して、魔法を解いてくれました
「面白かった」
「そうですか?」
「やっぱり、間違って無いのが解った」
「何のですか?」
私が聞くと、薄く笑みを浮かべました
まぁ、多分才人さんに対しての事でしょうね
「今回は許してあげます。次からはやらないで下さいね?」
「書き貯めたら、また見せて」
「だから、見せ物じゃ無いです!!」
誰か、この読書中毒何とかして下さい
と、思ったら才人さんがテントに入って来ました
「おんや、タバサとシエスタだけ?」
「ん」
あ、いきなり才人さんに引っ付いて、私に向けて舌出してる。ムカ
「どうした、タバサ?」
ミスタバサの行動に、頭を撫でて対応する才人さん
あぁ、ミスタバサの表情がみるみる崩れて行くかと思ったら、顔を才人さんに埋めてしまいました
「ミスツェルプストー達は狩りです。まだ慣れて無いので、集団でやるそうです。はい、昨日の燻製食べて下さい」
「おっ、有り難う。此でどれ位持つかな?」
才人さんが燻製をむしゃむしゃしつつ、聞いて来ます
あっ、ミスタバサ、才人さんの口にした所を、わざと喰らい付いてますね?
中々の策士ぶり、侮れぬ
「シルフィードさんにフレイムさん、ミスタバサに才人さんと、大食漢が揃ってますから、多分3日で無くなります」
「狩りが一番の仕事になりそうだね」
「はい」
私達は笑って、獲物を取って来るのを期待して待ちましょう
宝探し?
午前中30分で、外れが確定しちゃった上に、魔獣が出たので、序でに掃討したそうです
だから、後は皆だらけてます
「そういえば、魔獣の肉は駄目なんですか?」
「…食べられない種類だった」
詳しいミスタバサが答えます
「あら、残念」
「熊肉取っておいて良かったな」
「はい」
「さて、オヤツも食ったし、植物採集付き合うよ」
「はい、じゃあ一緒に行きましょう」
才人さん達の護衛有りだから余裕です
私が二人に指示して、大量の野菜ゲットです
うん、何れも美味しそうだ
「さてと、食事の準備をしましょう」
私が腕捲りをすると、ミスタバサが水を出してくれました
メイジが居ると、水に困らないですね
「只今〜外れだったわぁ」
ミスツェルプストーを先頭に、ぞろぞろ戻って来ました
「そうなんですか?残念です」
「毎回上手くはいかないわよね」
ミスモンモランシがそう言って、あっさり失敗を認めます
そうしたら、上空から影が落ちて来て、それはシルフィードさんでした
「きゅい」
「おっ、シルフィードでかした」
1メイルはある、大きい魚が手から離れて、複数ビチビチ跳ねてます
「此なら全員分有りますね」
皆で協力して、今日も美味しい食事が取れました
夜になったらまた、才人さんの隣を争ってバトルです。今の内にペンを置きましょう

ひいお爺ちゃん
才人さんと一緒だと、貴族も平民も関係無いですね
学院居る時よりずっと充実してます
この時間が少しでも、長く続きますように

〇月×日
ふぅ、3日目です
昨日の夜のバトルは勝利です!!
見事に才人さんの添い寝ゲットでした。あれ、反則的に熟睡出来ますね。お陰で今日は快調です
ちなみに、後の勝者はミスツェルプストーとミスタバサです
ミスモンモランシが脱落してました
アレをミスヴァリエールは毎日ですか?羨ましいですよ、全く
ふぅ、今日のバトルも勝つぞ、おー

そして、今日はミスモンモランシに、興味を持たれてしまいました
「あら、貴女日記付けてるのね」
「はい、でも見せませんよ」
「あら、そんな事しないわよ。まさか誰かにやられた?才人?」
「才人さんは、見て見ぬフリしてくれてますよ。興味が無いのか、尊重してくれてるのか、ちょっと解りませんけど」
「才人って、意外と本は読むのよね。勉強会で文字覚えた途端、ルイズ名義で図書室で色々借りて読んでたし。稽古前は、授業に付き合う時以外は、勉強会終了後も、図書室で時間潰してたわ」
「へぇ、勉強家なんですねぇ」
「魔法技術とイーヴァルディにはまってたわ。後、ハルケギニアの生物に、関心を持ったみたい」
「平民なのに、何でですかね?」
「才人曰く、傾向と対策だって。才人の国との差異を埋める為に、必要なんですって」
「私達は産まれてからずっとハルケギニアだから、逆に解りませんね」
「全くよ。私達が才人の国に行ったら、そうやって勉強しないと駄目かしら?」
「才人さん位の知識持つ為に、どれだけ勉強しないといけないんでしょう?」
「確か、義務で9年、その後に魔法学院レベルで3年、アカデミー等の研究機関レベルなら、更に4年だって」
「16年ですか?」
「才人は、その内12年で、後は仕事とネットだって言ってたっけ」
「ネット?」
「超巨大な図書館みたいなものって言ってたわ。詳しいのは私も解らないわ」
「はぁ、才人さんの国って、良く解りませんね」
「教えて貰えば貰う程、才人の国のがよっぽど魔法よね。さっぱり想像つかないもの」
「あはは、いつか行ってみたいですね」
「そうよね。…必ず行かなきゃ」
「必ず……ですか?」
「お義父様お義母様に、ご挨拶しなきゃならないじゃない」
澄ました顔のまま、さらりと凄い事言いましたよ
むぅ、ここは引けません
「そしたら、私もご挨拶に行かないと」
「あら、じゃあ一緒に行きましょうね。2号さん」
にっこりと、笑って言われてしまいました
ふっ、返さずにいられませんよ?
「その時は、宜しくお願い致しますね。3号さん」
あっ、ミスモンモランシ、笑いながら亀裂が入った
ふっふっふっ、今回は私の勝利〜!!

「よっし、習った植物採集してきたぞっと。…笑った顔のまんま固まって、どうしたんだよ二人共?」
才人さんがテントに入って来て、私達の硬直が解けます
「お帰りなさい、才人さん」
「お帰り、才人」
「あいよ、ただいま」
才人さんが、微笑み浮かべて挨拶してくれました
あっ、なんか家族っぽくて良いですね
ちょっと、機嫌が良くなりましたよ
「シエスタ、書き物終わったら、チェック入れてくれないか。毒草混じってるかも知れないし」
「あ、はい、解りました」
そう言って才人さんは、また外に出て行きました
才人さんは、フレイムさんやシルフィードさんと遊ぶのも良くやってますね
今はミスタバサが一人で狩りに出てまして、ミスタグラモンとミスツェルプストーが焚き火見ながら、適当に過ごしてます
何かミスタバサ、狩りに覚えが有るから一人で良いと言って、行ってしまったんです
う〜ん、大丈夫でしょうか?
ちなみに宝探しは、今日も外れでした
「…ねぇ、メイド」
「何でしょう、ミスモンモランシ」
「…才人がただいまって」
「えぇ、言ってましたね」
「…どうしよう、何か心が暖かくなっちゃった」
「私もです」
「…才人とずっと一緒って、…こういう事よね?」
「…そうですね」
「…何で平民なのよ?あんの馬鹿たれ」
あ〜ぁ、私と一緒でミスモンモランシも、才人さんから脱け出せませんね
そこで、はたと気付きました
「こう考えてみたら、どうでしょうか?」
「何?」
「才人さんの国は、貴族が居ないんじゃなくて、全員貴族だとしたらどうでしょう?」
あれ?ミスモンモランシ、考え込んでしまいましたよ
「…そういえば、才人は自分は並だって、常に言ってたっけ。……でも、私達から見たら……誰よりも貴族だし。シエスタ、あんた冴えてるかもよ?」
「へ?」
「全員貴族だから、貴族が必要無いのよ。それって、凄い事じゃない?」
「はぁ?どう言う事ですか?」
「解らなくても良いわ。でも、凄い発見よ?」
「…はぁ」
自分で提案したものの、さっぱり解らなくなっちゃいました
う〜ん、やっぱり考えるのは苦手です
私は、才人さんの生活全般をお世話以外は、出来そうに有りません

ひいお爺ちゃん
貴族の皆様は高い教育を受けてるせいか、私よりずっと広い考えを持ってます
貴族が魔法だけで偉ぶってるって訳じゃないのを、才人さんと一緒だと、色々見せて頂けます
そんな貴族が才人さんに夢中になるんですから、才人さんってやっぱり凄いんだなぁと、再確認させられました
才人さんのお嫁さんの道は、ガクジュツ的でもあるみたいです
私、難しい事はさっぱりなんです
こっちの方は、落第決定です
ぐすん

〇月×日
冒険4日目です
今日は大興奮の一日でした
ちなみに昨日は、添い寝独占バトルはしてません
だって、ミスタバサがサイコロ2個と小さい杯用意して、こう言ったんです
「才人が困ってるから、此で賭ける。三回振って、一番数字の高い人二人が添い寝」
「まぁ、それなら公平かな?」
ミスツェルプストーがそう発言して
「細工してない?」
ミスモンモランシがそう言うので、ミスタバサがサイコロをミスタグラモンに渡して、チェックさせました
「土メイジなら解る」
「解ったよ。ディテクトマジックは反応無し。中味は………うん、大丈夫。重心のずれも無いね。ちゃんとした六面ダイスだよ」
ミスタグラモンが、お墨付きしました
「ちょっと、モンモランシー。失礼じゃない?」
「あら、賭事にイカサマは常識じゃない。此は、お互いの為に必要よ。タバサもそう思わない?」
ミスタバサは、コクリと頷きました
「なる、私が甘かったのか。此はちょっと、気合い入れないと駄目ね」
「それじゃ、参加者はどうしましょう?」
私がそう言って、参加人数を確認しようとしたら
「あ〜、ちょっと良いか?」
「何ですか?才人さん」
「俺、野宿で良いや」
「「「「却下」」」」
声を揃えて、私達は即答です
「…何で?」
「私達が熟睡するのに、ダーリンが必要なのよ。ダーリンに拒否権は無いわね」
「以下同文」
ミスツェルプストーとミスタバサに言われて、才人さんは溜め息ついて、デルフさんの研ぎに戻りました
そんな才人さんをミスタグラモンが、おかしそうに見てます
同性として、羨ましく感じないんですかね?
やっぱり、バイなのかなぁ?
ちなみに結果は、ミスタバサ28、私が25、ミスツェルプストーが16、ミスモンモランシが10でした
うん、今回は運が良かった
何時も祈ってない神様、有り難うございます
だって、才人さんの添い寝は、暖かくて凄く安心するんですよ?それに、エッチな気分にもなれちゃいます。キャッ
あんなの味わったら、もう一人寝なんて味気ないです
おっと、そろそろ今日の出来事書かないと
今日は依頼代行の一つ、オーク退治でした
オークは大嫌いな上に、めちゃめちゃ怖いです
だって、男は餌確定だし、女は……日記でも書きたくない!!
捕まったら、そこで人生終了です。それからは……あぅ、気持ち悪くなってきた
止め止め
と、とにかく私の護衛でシルフィードさんとフレイムさんが付いてくれて、才人さん達が森の奥に行ってしまいました
暫くすると、シルフィードさんとフレイムさんが、小さく唸り声を上げたんです
「きゅい」
「きゅるるるる」
「あの、どうしたんですか?」
うっ、あの醜悪な臭いが、私にも解る感じで漂って来た
此は近いです、怖いです。だって私には、オークなんかに対抗出来る手段は、有りません
身体がガタガタ震え出して止まりません
「怖い、怖いよう。才人さん、帰って来て…………あ、いけない、才人さん達にあのオークが後ろから迫ったら、どうしよう?」
私の声で、フレイムさんとシルフィードさんが視線を合わせて、何かやり取り始めました
「きゅい、きゅい」
「きゅるるるるる」
「きゅい!!」
「きゅる!!」
「…あの、何か決めたんですか?」
そうだ、私には才人さんが付けてくれた、頼もしい護衛が居るじゃないですか
でも、怖いものは怖いんです
身体はさっきから、震えが止まりません
そして、臭いが強くなり、オークの姿が見えると私は硬直しちゃいました
「ひぐっ」
もう涙目で、一杯一杯です
「って、えっ?あれ?シルフィードさんフレイムさん?何処に行ってしまったんですか?」
私が硬直してた時に、居なくなってました
「シルフィードさんフレイムさん、ひ、酷いです。後で才人さんに言いつけてやるぅ!!」
私が大声を上げたら、オークが私に気付いて接近して来ました
もう、やだ、足が動かない
「怖いよう、オークなんかにオークなんかに」
ガタガタ震えて、何も出来ません
あぁ、私の人生は、ここで終わりか。才人さんごめんなさい
そう思いながら、もう、オークなら後数歩で届く所に来た途端、其は起きました
「大地よ、我らに仇為す者に戒めを与えよ」
オークの足が突然止まり、動かなくなりました
「………何?」
私は、何が起きたか解りません
オーク達も走って来た形で固まって、ピギィピギィ騒いでます
そしたら、私とオーク2体の間に、空からシルフィードさんが降りて来て、フレイムさんを掴んでたのを離して着地
口をガパッて開けて、二体で全開のブレスを、オークにぶつけました
ブフォォォォォ!!
「……此が、シルフィードさんとフレイムさんの、……全力ブレス……」
私は、呆気に取られて見てるだけです
今迄の、ちょこっとお手伝いで使ってた、ブレスの比じゃ無いんですもの
一分位吐いていて、吐き終ったら、炭になったオークが2体転がってて、シルフィードさんが私の顔をべろりと、舐めてくれました
「きゅいきゅい」
「きゅるる」
「…もしかして、ごめんなさいですか?」
「きゅい」
「きゅる」
二体が、頷いてくれます
シルフィードさんが才人さんの行った方を指して、何とかバツの字を両手で作りました
「…もしかして、才人さん達の方に行かない様にする為に、私を囮にしたんですか?」
二体が頷きます
「……あ、私が言ったからか……二人共、有り難う」
シルフィードさんとフレイムさんが、身体を擦り付けて来てくれて
あぁ、使い魔持つのも良いなぁって、ちょっぴりメイジが羨ましくなっちゃいました
「…所で、さっきの声って何だったんでしょう?突然オークも動かなくなったし。不思議ですねぇ」
そしたら、突然シルフィードさんが私の頭をがぷりとくわえて、軽く振り始めたんです
「きゃあ!?ちょっと!?シルフィードさん!?止めてぇぇぇぇ!?」
散々振られて目を回した後に、今度はやたらと舐められました
「はぇ、頭が回るぅぅぅ。一体、なんなんですかぁ?もぅ」
何か、どうでも良くなっちゃった
舐められた頭を拭ってシルフィードさんに抗議したら、更に舐められちゃいました
駄目だ、何かお茶を濁された。後は同じ事の繰り返しだ
「何か解らないですけど、解らない物は解らないって事ですか?」
「きゅい」
シルフィードさんが頷きました
…絶対、なんかやりましたね?
今度才人さんに聞いてみよう、うん

そんなこんなで待ってたら、一時間位ですかね?
皆が戻って来たので、手を振って歓迎しました
その後は合流して、話をしたら、才人さん達もギリギリで、ヤバかったって
其で、皆で宿に泊まるのを決めた後、飛び立つ前に私が此方の顛末を話したら、ミスツェルプストーがフレイムさんを褒めまくって
ミスタバサはシルフィードさんに、冷たく言い放ちました
…才人さんが来る前の、あの雪風の表情で
「…シルフィード」
「…きゅいぃぃぃ」
シルフィードさんは素直に頭を伏せてその頭を両手で押さえ、折檻に耐える姿勢になりました
えっと、何でですか?
ガンゴンガン
「……タバサ、何があったか知らんけど、その程度にしてやってくれ。他人事に思えねぇ」
皆がぽかんと見守る中、才人さんが、頭を抱えてひたすら耐えてるシルフィードさんに、助け舟を出しました
勿論、後ろから羽交い締めしてますよ
確かに、才人さんの立場だと、ミスヴァリエールに折檻される自分と同じに見えちゃいますよね
「ふー、ふー」
「タバサ落ち着け、な?」
「駄目。お仕置しなきゃ、駄目」
「タバサ、シルフィードが何か言いつけ破ったってのは解った。でもな、其はシエスタを、そして俺達を助ける為にやった事位、タバサも解ってるだろ?」
「其でも、駄目」
「つまり、タバサはシエスタが拐われても良かったんだな?」
才人さんに言われて、ミスタバサが硬直しちゃいました
「タバサ。確かにシルフィードは大事な言いつけを破ったかもしれない。でもな、今回は命が掛ってた。緊急避難だ。其位にしてやれ」
「…足らない」
「じゃ、俺が払う」
「…キスして」
「解った」
才人さんがミスタバサを振り向かせて、おでこにキスしました
「…何で、おでこ?」
そのまま、ミスタバサの両肩に手を置いて、才人さんは視線をミスタバサの高さに合わせて、話始めました
「今のタバサは駄目だ。内情知らないけど、とにかく駄目。良いか、良く聞け。言いつけ破るなら、確かにお仕置きが必要だ。でもな、状況を省てやるべきだ。タバサが命落としても、守らないと駄目な言いつけか?」
ミスタバサは少し涙を溜めて、ふるふる首を振りました
「其が解ってるなら大丈夫。偶々感情的になったんだよな?そうだろ?タバサ」
暫くジッとして、ミスタバサは頷きました
「やり過ぎな部分は謝ろうな。使い魔だって、感情は有るんだぞ?」
暫く立ち止まったミスタバサが、そのままの姿勢で、シルフィードさんに声をかけました
「…シルフィード」
「…きゅい」
「少しやり過ぎた。ごめん」
「きゅい」
立ち上がった才人さんが、ミスタバサの頭に、ぽんと手を乗っけました
「此で終わり。じゃ、宿を捜そうぜ」
コクリと、ミスタバサが頷きます
息を詰めてた皆が、ホッとした雰囲気を出しました
はぁ、才人さんに掛かると、上手く治まるなぁ

ひいお爺ちゃん
才人さんは、多分教師にもなれちゃいます
ミスタバサの扱いなんて、まるで娘か妹ですよ
はぁ、私もあんなお兄ちゃん居たらなぁ
は、いけないいけない
私が欲しいのは、ああいう旦那様だった
さて、お風呂入ったら、ミスツェルプストーがお酒を宿の主人からせしめて来たので、其で宴会だって騒いでます
此でペンを置きますね

〇月×日
はい、5日目です
昨夜は雑魚寝になってしまった為に、賭けは行われてません
でも、大変びっくりな事件が起きました
な、なんと、ミスタグラモンが女性だったんです!!
しかも、自ら才人さんの愛人だって
うわきゃあ〜〜〜〜〜〜!?
いきなり、思い切り飛び越された気分ですよ
えぐえぐ
愛人って、その、勿論、そういう関係ですよね?って聞いたら、ミスグラモンはあっさりと
「そうだよ」
ですって
私が散々色仕掛けしても落ちなかった才人さんを、どうやって〜〜〜!!
勿論聞きました
「簡単だよ。僕の命を賭けた」
「は?」
「だから、僕の命を賭けた。本気だから、才人に女として見られないなら、もう生きる積もりなんかないって言って、実際に実行した」
「実行したなら、何で生きてるんですか?」
「ん、才人がきちんと杖を取り上げてくれたよ。才人の真剣な顔と安堵した顔は、もう濡れた濡れた」
「…才人さんを騙してません?」
「…僕の気持ちを侮辱するなら、其なりの覚悟が有るんだろうね?」
「すいません、失言でした」
「解れば良いよ」
あっさりと許してくれました
「あの、要するに才人さんとそういう仲になるには?」
「命賭ければ、才人は観念するよ。才人はなんだかんだ言って、女のコに甘いからね」
「でも、紙一重ですね?」
「じゃあ聞くけどね、才人の居るハルケギニアと才人の居ないハルケギニア。どちらで生きたい?」
「勿論居る方です」
「ほら、答えなんか簡単に出る。後は実行に移すだけだ」
「…シンプルですね」
「そんなもんだよ、実際。今迄悩んでたのが、才人に抱かれてから、馬鹿みたいに思えたからね」
「あの、愛人って、はっきり言ってましたけど?」
「正妻は他の女らしい人に譲るよ。僕は才人と一緒に居られて、才人の子供を産めれば良いや。貴族の第四子は、お気楽なのさ」
「じゃあ、私が正妻になっても、構わないんですか?」
「その時は宜しくお願い致します。お姐様」
そう言って、ウィンクしてくれました
「ミスグラモンの秘密は、絶対に守ります」
才人さんを挟んだ状態で、意気投合しちゃいました
「お互いの未来に」
「「乾杯」」
才人さんは、そんな私達の会話を聞いてた筈なのに、何も言わずに飲んでました
只、ミスタバサを撫でるのは、ずっとやってましたね
ミスタバサは、才人さんに座りっぱなしで、ちっとも動かず、本の代わりにきちんとお酒を持って、両手でくいくい飲んでましたよ
ミスタバサの仕草、可愛い過ぎです
其所から先は、ちょっと覚えてません
酔うと酒乱になるから、飲むの控えてたのに、やってしまいましたよ
あはははは、はぁ
起きた後に、皆に聞いてみました
「私、途中から覚えてないんですけど、何かしませんでした?」
「えぇっと、私もモンモランシーも結構早く潰れたから、解らないわ」
ミスモンモランシもポーカーフェイスじゃなく、二日酔いの頭痛状態で頷いてましたので、多分本当ですね
ちょっと、詠唱するのも辛いみたい
「ミスグラモンはご存知ですか?」
「ん〜どうだったかなぁ?タバサは覚えてる?」
「…才人に襲いかかろうとしたから、後頭部殴って眠らせた」
…そういえば、なんか後頭部がズキズキします
「この痛みが、ミスタバサの仕業ですね?」
「…才人が困ってたから、仕方ない」
「そう言えば才人さん、何で無言なんですか?」
「…俺が言うと、多分こじれると思ったもんで」
ちょっと、考えてみましょう…………うん、確かにこじれる
昨日の、魔法制裁レベル迄こじれたら大変だ
「あの、ミスタバサ。酒乱状態の私を制してくれて、有り難うございました」
「…ああいう止め方は好き。任せて」
「出来れば、もう少し穏便にお願いします」
「魔力切れで、杖で殴るしか無かった」
「それじゃ、仕方ないですね」
メイジが、常に魔法を使える訳じゃ無いって事を今更ながら痛覚、いえ、痛感しました

さて、今日は洞窟探検の日です
私達が雑談しながら向かう途中で土がボコって盛り上がると、其処にはヴェルダンデさんが居ました
えっと、どうやって探し当てたんでしょう?
そしたら、ロビンさん迄ピョンって飛び出て来て、びっくりです
才人さんが聞いたら、行動予定聞いて先回りですって
はは、使い魔さんのが、私より頭良いみたいです
がくり
もう、人間の威信もへったくれも有りません
才人さんが、知恵持つ獣達の使い魔達を、人と同じ様に接してる理由が、ちょっぴり理解出来た気がします

さて、更に私の護衛としてヴェルダンデさんが追加されました
才人さん曰く、洞窟内だし、シエスタの安全に気を使うのは、当然だそうです
貴族の皆様も賛成してました
どうやら、昨日みたいになるのは、とにかく回避出来るならやろうと言う方針で、一致したみたいです
「何か申し訳無いです」
そしたら、ミスグラモンが言ってくれました
「人には向き不向きが有る。出来ない事を嘆くより、出来る部分を誇るんだね。少なくとも僕達は全員、君程料理は出来ないし、野草の知識も無い」
「君が居なかったら、肉を取りすぎても保存も出来ず、料理も粗末で体調を崩したかも知れない。平民だから、戦闘が出来ないからと言って、馬鹿にする連中は、僕達の中には皆無だよ。君は僕達パーティーの補給の要だ。君が居るから戦える。誇って構わないよ」
そう言った後、あの薔薇の杖をくわえて、ポージングしちゃいました
「ミスグラモン」
「何だい?」
「せっかく良い事言ってたのに、そのポーズで全部台無しです」
見てた皆が、爆笑しちゃいました
「決まったと思ったんだけどなぁ」
頭をカリカリ掻いてます
…絶対笑わせる為にやってませんか?
まあ、そんなこんなで皆が洞窟に向かうとフレイムさんとヴェルダンデさんが、シルフィードさん一体分の離陸スペースが開けた場所に私を誘導します
あぁ、上空警戒と緊急離陸兼ねてるんですね
やっぱり、私なんかより頭良いです
その後シルフィードさん達が私を抑え込みます
「あの、そんなに抑えられたら動けませんよ?」
「きゅい」
「動くなって事ですか?」
「きゅい」
コクコク頷いてくれました
そういえば、ヴェルダンデさんが見えてないですね
何処に行ったんでしょう?
暫くしたら、ヴェルダンデさんが地中から出て来て、地上を私達から等間隔で一周しました
なんのジェスチャーでしょう?
そしたら、フレイムさんが其に合わせて、尻尾で私達の周りに円を描きました
「此所から先には、出るなって事ですか?」
「きゅい」
シルフィードさんが頷いてくれました
ヴェルダンデさんは高速で穴堀りが得意でしたね
あ、まさか
「一周全部落とし穴ですか?」
「きゅい」
参った、此は動けない
「おトイレどうしよう?」
「きゅいきゅい」
「気にしちゃ負けですか。そうですね、安全には変えられないか。ヴェルダンデさん、有り難うです」
声に応えて鼻を持ち上げてふんふんした後、地中に潜って行きました
シルフィードさんに吊り下げられた荷物から、燻製を引っ張り出して、フレイムさんとシルフィードさんの口に運びます
「はいどうぞ、腹が減っては戦は出来ぬです」
二体はパクリと食べてくれて、私も座ってはむはむ食べて、後は皆を待ちましょう
のんびりぽかぽか良い陽気
ついウトウトして、シルフィードさんに寄りかかって、居眠りしちゃいました
あぁ、そよ風が気持ち良いなぁ
「きゅい」
シルフィードさんの警戒鳴きで、思わずびくりと跳ね起きちゃいました
距離が有るためか、私達には目もくれず一目散にコボルト達が、才人さん達が向かった洞窟に、向かって行くのが見えます
「彼処、コボルトの住処だったんだ。才人さん達なら大丈夫かなぁ?」
才人さんが本気なら、多分大丈夫でしょう
才人さんは私達が目を見張る位、急速に成長してましたし
あれも、使い魔のお陰だって、言ってましたっけ
シュヴァリエも、呆れてましたからねぇ
「それじゃ、シルフィードさんの布団で、もう一眠りです」
こんなぽかぽか陽気じゃ、気持ち良くて気持ち良くて
「ふあぁぁ」
いつの間にか、寝ちゃってました
待ってる間は、私に取っては休憩時間ですからね
どれ位寝てたか解りませんが、シルフィードさんの声で目が覚めました
「きゅい」
「ふあぁぁっ。シルフィードさん有り難うございます。才人さん達帰って来ました?」
「きゅい」
「あ、本当だ」
私は立ち上がって埃を払い、才人さん達を手を振って迎えました
「皆さん、お帰りなさ〜い」
そしたら才人さん、私の警告聞く前に歩いて来てズドンと落とし穴に落ちちゃいました
あ〜あ
まぁ、才人さんなら平気かな?
其で私はシルフィードさんに落とし穴を飛んで貰って跨いだ後、皆で才人さんを置き去りにして、歩き始めちゃいました
「あの、さっきはああ言いましたけど、大丈夫ですか?」
「デルフ居るから平気だよ。さてと、ビバーク地点探さないと」
「ギーシュの言う通りよ。設営はモンモランシーとシエスタに任せるわ。後の三人は狩りね」
「僕、魔力切れなんだけど?」
「ワルキューレ7体使役で魔力切れか。ま、しょうがないわね。私もタバサも魔力たっぷり残ってるし、二人で行きましょ?ダーリンは、相変わらず働き過ぎだから、休ませて上げてね」
そう言って、ミスツェルプストーはミスタバサと共に、狩りに出て行きました
何だかんだ言って、一番親身になってくれるんですよね
プロポーションしか見ない殿方が多すぎですよ
才人さんはそういう方々とは違うから、一緒に居て楽なんでしょうね
うん、美女も大変だ
「ミスモンモランシー、お水お願いしますね」
「はいはい」
う〜ん、水使いは本当に生活に欠かせませんね
そういえば私達、全員着たきり雀でした
流石に下着は変えて、洗濯して干してますよ
身体も例の魔法石鹸使って拭いてるから、ピカピカです
全員必死ですよ、もう。全部才人さんのせいだ〜!!
そんなこんなで洗濯して干してたら、才人さんが戻って来ました
「お帰りなさい。才人さん」
「ただいま。置いてけぼり、酷くね?」
「あぁ、キュルケが言ってたよ。ああしないと、才人が狩りにも出るから駄目だって」
ミスグラモン、ミスツェルプストーはそんな事言ってたんですか?
「…随分遠回しな、休め指示だな」
「ま、分担だよ、分担。だから休んでなよ」
才人さん、溜め息付いて腰を下しちゃいました
「ギーシュの言う通りね。あんた、気付いて無いけど、疲れとダメージ溜ってるわよ」
「ミスモンモランシ、本当ですか?」
「えぇ、だから私がキュルケに話したのよ」
「余計疲れさせたじゃねぇか」
「あんたの場合、あの程度は大した疲れじゃないでしょ?」
はわぁ、そんな裏事情があったんですか
本当に、ミスツェルプストーは誤解されがちな人ですよね
才人さんと、どっちが優しいんでしょう?
才人さん両手を上げて、降参しちゃいました
「降参、お言葉に甘えて少し寝てくる」
才人さんはテントに入って、横になってしまいました
今、私は才人さんの寝顔を見ながら、これを書いてます
居るだけで安心出来るって、凄いですよね?
多分、皆同じ気持ちなんだろうなぁ
さてと、植物採集と料理の準備に出ましょうか
「フレイムさん、護衛お願いします」
「きゅるるるる」
応えてくれたので、もう出ますね
今日は筆を置きましょう

ひいお爺ちゃん
才人さんの居ない生活なんて嫌だなって、つくづく思い知らされちゃいました
もっと頑張って、素敵な女性にならないと
頑張るぞ、おー


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Last-modified: 2010-11-29 (月) 11:17:36 (4896d)

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