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Last-modified: 2011-02-21 (月) 12:45:23 (4812d)

翌日、ルイズが何時も通り、教室の席に付くと、何時も早いキュルケやタバサが来ていなかった
「あれ?珍しい事も有るのね?ま、良いか」
そう言うと、持って来た毛糸と編み棒を取り出し、ひたすらに編みだす
本人は真剣そのものなのだが、如何せん生来の不器用が災いし、何を編んでるかは本人しか解らない
クラスのほぼ全員が着席し、授業開始を待ってると、ガラリと扉を開けて三人が入って来る
セーラー服を着た、キュルケ、タバサ、モンモランシーだ
セーラー服が臍ギリギリの丈であり、動く度に、チラリと見えそうで見えない
キュルケは胸のボリュームが圧倒的で有り、その下が空隙になり、余計魅力的になっている
モンモランシーはそのままでも美しさを損なわず、正に正統派美少女として周りが呆然とする
そして、ダークホースがタバサである
タバサが着ると、とにかく可愛らしい
ギリギリの丈すら、愛らしい
男子生徒は歓声を上げ
女子生徒は注目を一身に集めた三人に嫉妬する
「やぁね、ダーリンったら。こんなにセクシーな格好させちゃって」
「キュルケは胸が反則なのよ。私だって捨てたもんじゃ無いでしょ?タバサだって、凄い可愛らしいじゃない」
「ダーリンの国って、本当に魅力的よねぇ………あらルイズ。あんた、着なかったの?」
「ななな何よ?その格好?」
キュルケ達が席に付き、ルイズに話しかける「ダーリンの国の学生服ですって。セクシーにも可愛らしくもなるだなんて、素敵よねぇ」
ルイズは指を差し、硬直する
「なっなっなっな」
「ダーリンのやる事、信じてあげないから乗り遅れるのよね」
キュルケにからかわれ、ルイズはムッとする
「きょきょきょ今日は、偶々だもん」
「あらあら、旬は今日で終わりよ?明日からは、普通になってしまうもの」
モンモランシーがそう言い、クスクス笑う
「うぅ〜〜〜〜(まさか、こんなに似合うだなんて)」
ガラッ
教室にシュヴルーズが入室し、三人を見ると問い正した
「はい、お早うございます。出欠を……貴女達、何時から水兵になったのですか?」
「はい、ミセスシュヴルーズ。才人の国の学生服との事で、着てみました。似合わないでしょうか?」
「水兵服が異国の学生服なのですか……面白い文化ですね。異国の文化を学ぶと云う意味で、大変意義は有るとは思います。ですが、なるべく学院指定の学生服を着て下さいね。感想ですが、とても似合ってますよ、三人共」
「有り難うございます、ミセスシュヴルーズ」
代表してモンモランシーが答え、三人がスカートを軽く持ち上げて礼をした
「では、授業を始めます。着席して下さい」

*  *  *
「才人」
「はい?」
何時もの如く才人が洗濯物を干してると、何時もの如くアニエスが来る
「そう言えば、今の送迎は?」
「地方に回ってた竜騎士を、中央に戻した」
「成程、欠員分は?」
「早期登用だが、まだ編成が終えてないな」
「成程ね。所で今日も、コルベール先生の所に行くのかい?」

「いや、すぐに結論は出ないだろう。暫くお前の稽古を重点的にやる」
「はいさ。今日のメニューは?」
「チャージによる馬上試合だ。落馬をすると、大怪我するぞ」
「へぇへぇ。気をつけます」
アニエスはそのまま才人の腕に腕を絡め、馬小屋に向けて歩き出した

*  *  *
放課後になると、馬上試合を行なってる二人の傍にセーラーを着た三人がやって来る
「ダーリン休憩にしない?」
ダカラッダカラッ
ガキッ!!
ダカラッダカラッ
ダカダカダカダカ
水の槍をお互いに交錯させて走り抜け、並足で構えながら才人は聞く
「どうどう、アニエスさん!!どうする!?」
「ふむ、良かろう!!流石に水が欲しいしな、休憩だ!!」
お互いに大声で話し、馬に乗ったまま三人の傍に才人は寄り、飛び降りる
「お〜、三人共良く似合ってるよ」
「もぅ、ダーリンったらこういうの好きなの?おへそが見えちゃうわ」
そう言って、才人にしなだれかかるキュルケ
「おっと。キュルケは何着ても色っぽいな」
「ダーリンが独り占めしても良いのよ?」
キュルケは艶のある笑みを浮かべ、アニエスが渋面を浮かべる
「何だ、他にも渡してたのか」
「へぇ、アニエスさんでも嫉妬するのね?」
モンモランシーがそう言いながら、ふっと笑みを浮かべる
若さによる勝利の笑みだ
才人はキュルケをそっと離すと、ずっと黙ってるタバサの前にしゃがみ、目線を合わせる
「タバサ、凄く可愛いぞ」
「…本当に?」
「本当だ。やっぱりタバサは可愛いな。うん、俺の目に狂いは無かった」
そう言って、タバサの頭をくしゃりと撫でると、タバサは初めて微笑みを浮かべる
「…気に入った」
「そりゃ、良かった」
「才人、私には何か無いの?」
モンモランシーが抗議の声を上げる
「良く似合ってるぞ、モンモン。やっぱり美女や美少女ばかりだと、良く映えるよ」
「あ、そうそう。聞いてよ。ルイズったら着て来ないで、私達見て絶句してたのよ?本当に傑作だったわぁ」
キュルケが、からから笑いながら才人に話す
「そういや、ルイズは?」
「授業終わり次第無理矢理私を連れて、秘薬を一個、強奪してったわ」
「…モンモン、ヤバい代物じゃないだろうな?」
「大丈夫大丈夫。パーティーとかのお遊び用のアイテムよ」
「…そうか」
アニエスはメイドからお茶を貰いながら話を聞き、才人の様子に気が付く
「どうした、才人?」
「……最近、ルイズが不安定なんだよ。何か変なんだ」
皆が唖然として才人を見つめる
「才人、あんた解って無いの?」
「はぁ?」
才人が首を傾げ、ハテナマークを連発すると、モンモランシーががくりと肩を落とす
「忘れてた。そういや、こいつはこういう奴だった」
「アッハッハッハ。ダーリンって、本当に面白いわよねぇ。肝心な所は、本当に駄目なんだから」
キュルケが腹を抱えて笑い、才人が頭をがりがり掻き、ぼやく
「どうせ、おりゃ鈍感だってぇの」

*  *  *
「ふんふんふ〜ん。どう?天下の美少女なら、一番魅力的でなくって?」
「いんや、魅力下がってるわ。特に胸」
ルイズがさっと杖を構えると、デルフが意見を180度ひっくり返す
「いやぁ、もう最高だね。相棒もイチコロだぁね。きっとその美貌の前に、ぴょんと跳ねて、娘っ子を押し倒しちまうわね」
何故デルフが部屋に居るかと云うと、才人が持って行くのを、忘れてたからである
村雨は持って行ってる為、呪いのせいとはいえ、デルフは内心面白くない
そんな時にからかい甲斐のある相手がわざわざ抜いて、意見を求め始めたので、ここぞとばかりに遊ぶ事にした
「そうでしょそうでしょ?やっぱりあたしが一番よね?でも今回は、これだけじゃないのよ。ジャア〜〜〜ン!?」
「…嬢ちゃん、何だそりゃ?」
ルイズが手に持った物を聞くデルフ
「ふっふっふ。此は魔法の髪染めよ。お遊び用で効果は丸一日だけだけど。この秘薬を使えば、あたしは黒髪になれる!!」
「そう、才人の国を完全に再現するのはこのあたし!!ルイズ=フワンソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエール以外に有り得ない!!」
ルイズは大声をあげ、デルフは鍔をカタリと鳴らす。人間なら、ポカンとなってるだろう
「何言ってんだ?メイドの嬢ちゃんだって、黒髪じゃねぇか?」
「なぁに言ってるのよ?この滲み出る高貴なオーラが違うのよ?」
「…滲み出るのは暴力じゃね?」
ルイズが杖を構えると、またもや意見を翻すデルフ
「はい、その通りです。もう高貴なオーラ出まくり。デルフ、高貴なオーラで困っちゃう」
「そうよねそうよね?やっぱり公爵家ヴァリエールよね?やっぱり、あたしが一番なんじゃない」
『相棒は、良く嬢ちゃんをコントロール出来てるな。俺じゃ無理だわ』
「よっし、気合いは充分。それっ!!」
パシャッ
髪に秘薬をかけると、黒い艶が髪の毛全体に、じんわりと広がり始め、鏡で確認する
「えっと、瞳の色も変わるって言ってたけど、うん、黒の瞳だ。へぇ、流石あたし、黒髪も似合うじゃない」
「う〜ん、相棒の黒髪には叶わねえなぁ。相棒の黒髪、艶やかで虹が出るもんな」
「ああああれと比べないでよ。サイトの黒髪なんて、反則じゃない」
サイトの名前を出され、杖を持ち出すのは止めにした様だ
「で、どうすんのかね?このまま部屋で待つのかね?」
「う〜ん、どうしよっかなぁ?このまま待つのも良いかなぁ。でも、迎えに行くのも良いかなぁ。呼び方もどうしようかなぁ」
一人、ウキウキになりだすルイズ
「呼び方は……そうだ、おにいちゃんにしよう。おにいちゃんって、一度呼んでみたかったのよね。あたしはサイト=ヒラガの妹ですって。うん、名案名案」
『それってよ、相棒に家族居たら、思い出させる事になるんじゃねぇか?相棒あれでも、時々故郷思い出してんだぞ?解ってんのかねぇ?』
だが、口に出すのは別の言葉だ
「でよ、おにいちゃんって呼ぶのは構わないけどよ?他の娘っ子が聞いたら、眼中外ってならね?だってよ、相棒の事は、兄としてしか見てませんって、事になんぜ?」
その瞬間、ルイズは硬直する
「ママママズイわね。じゃあ、部屋で待つ事にする。そして、おにいちゃんにたっぷり甘えるの!!妹は兄に、甘える義務があるの!!」
「…何時もと何が違うんだか」
杖を構えたルイズを見た瞬間、デルフは鞘に引っ込んだ

*  *  *
ガチャッ
才人が本日の訓練を終了して部屋に戻ると、黒髪セーラー服の少女の背中が見えた
「えっ!?」
少女は振り返り、にっこりと微笑み、言葉を発する
「お帰りなさい、おにいちゃん」
才人は呆然としたまま、立っている
『あれ?失敗したかな?』
ルイズは後ろで手を組みながら才人にそろそろと近寄り、才人の顔を下から覗き込む
すると、才人の身体が震えている
「おにいちゃん、どうしたの?何か変だよ?」
ガバッ
才人は突然ルイズをきつく抱き締め、身体を震わせる
「きゃっ(え?何?威力有り過ぎだったの?)」
「………済まなかった」
「…うん」
「……飯、食えてるか?」
「?…大丈夫だよ?」
「…そうか…また、喋れなくなってないか?」
「…?何で?あたし、ずっと喋れるよ?どうしたの?おにいちゃん?」
「あぁ、俺が居なくなってから、少し背が伸びたんだな。良かった、ちょっと遅れたけど成長したんだな」
「…何を言ってるの?あたしは、ずっとちびだよ?」
「俺は、悪い男だな。あんだけ約束したのに、事故で遠い所に飛ばされちゃってさ。やっと………ルイズ?」
才人が抱擁を解き、両肩に手を乗せて、顔を覗き込むと、やっと気付く
「サイト?」
ダン!!
後ろに思い切り跳躍し、扉にぶつかる才人
「あっ!?」
才人の顔が歪んでいる
ガチャガチャ
才人が扉から出ようとするが、扉が開かない
ルイズがロックしたからだ
「ねぇ、どうしたの?おにいちゃん、勝手に出て行っちゃ駄目だよ?」
才人は村雨を抜刀し、扉を切り裂いた
シュババッ
そのまま廊下に飛び出すと、窓を突き破り、飛び出す
ダッ、ガシャン!!
「ちょっと、ここ三階よ!?」
才人はそのまま木に引っ掛かり、木を使って一気に跳ね回りながら降りて、広場を走り去って行く
ルイズは呆然と見送る
「……とうとう、やっちまった。あんなに心が震えた相棒、初めて見らぁ」
自身の相棒がガンダールヴとしての能力を完全に発揮させたのが、主人の好意で、しかも震えたのは、明らかにマイナスの感情だ
デルフは手が有ったなら、頭を抱えてるだろう
「ちょっと、ぼろ剣。サイトを追うわよ」
「止めとけ、今の相棒は、明らかに嬢ちゃんの容姿に反応してた。ありゃ、嬢ちゃんの前に居たら、ヤバい事になる。せめて、黒髪落ちる迄、近付くのは止めるんだな」
「…あたし、何をしたの?」
「多分、相当深い所をえぐったみたいだな」
「…扉、どうしよう?」
「使い魔の不始末は、主人の不始末じゃねぇのか?」
「うぐっ」
ルイズはとりあえずカーテンを掛け、扉の残骸を組み合わせてると、キュルケが戻って来て出くわす
「あらん、フレイムから連絡来たから寄ってみたけど、何やったの?って、黒髪?へぇ、セーラーも着たんだぁ」
「…何でも無いわよ」
「ふん、有りましたって顔じゃない。ダーリンの太刀筋だけは解るわよ?困った事になってるでしょ?」
「…サイトが、あたしの格好見て逃げ出した」
「成程ねぇ。あんた、知らずに傷えぐったでしょ?」
「解んないわよ。あたしは、サイトに喜んで欲しくて、この格好になったのに」
「サイトは硬直したかと思ったら、いきなり訳解んない事言い出して、あたしの顔を覗き込んで、初めてあたしに気付いて、そしたら逃げ出して。何でこうなるの?何で何で何で?」
ルイズは、涙をぽろぽろ流しながら、キュルケに訴える
「さぁ、ダーリンの優しさは残酷だからねぇ。多分、ルイズには言えない事なんでしょうね」
「サイトサイトサイト」
ルイズは涙を溢しながら、サイトを求める声を切実に出す
「まるで、親から引き離された子供よね。ま、あんたの代わりに探してあげるわ。扉と窓も新しいの頼んでおいてあげる」
「本当?」
ルイズは涙目のまま、キュルケを見上げる
「本当よ、だけど一つ言っておくわね?」
「…何?」
「記録更新しても、恨まないでよ?」
「…心の底から恨むわよ」

*  *  *
「さあってと、安承けあいしちゃったけど、何処に居るのかしらね。ダーリンの本気って、捜索効かないのよねぇ」
キュルケは一人、才人を捜索する。タバサに頼もうかとも思ったのだが、今の才人は通常でない可能性が高い
才人を理想の男性と求めてるタバサには、ちょっと重いだろう
「タバサは自分自身で手一杯だから、ダーリンの弱い部分迄は受け止めるのは、まだまだ無理よねぇ」
そうして、茂みの中、講堂、厨房と探し回り、暗い中探してたら、足元の地面がなくなり、キュルケは一気に転げ落ちる
ズザー
「あたたた、何でこんな所に穴が有るのよ?」
ライトを唱え、穴を見渡すと、才人が体育座りで蹲っていた
隣にヴェルダンデが鎮座している
「ダーリン?」
「…」
「ねぇ、どうしたの?」
「…」
「ルイズから逃げ出したって聞いたんだけど」
ビクン
才人は身体を震わせるが、何も言わない
「…もう、何か言ってよ」
「…帰ってくれ」
「嫌よ」
「じゃあ、森に行くわ」
才人はすっくと立ち上がると、村雨に手をかけ一気に出ようとするが、キュルケが後ろから抱き止める
「許さない。何でもかんでも、一人で決めないでよ」
「……キュルケには関係「有るに決まってるでしょ?いい加減にしなさい!!」
キュルケの心からの訴えに、才人は応じる
「…思い出したんだよ。俺は、こんな所でのんびりしてる訳には行かねぇ。一刻も早く、東に………そうだ!!零戦に増槽をフルで入れれば、5000km飛べるじゃねぇか!?」
才人はそう言うや穴から飛び出し、キュルケは慌てて才人を追う
コルベールの研究室に才人は飛び込み、コルベールに声を掛ける
「コルベール先生。今直ぐ増槽とメインタンク満タンで、出ます」
「無理だよ才人君」
コルベールの手元には、栄エンジンがバラされ、コルベールが各部品事にメモを取りながら、検品している
「な、何やってんだ!?あんたはぁ!!」
コルベールの襟首を両手で掴み、ガックンガックン揺さぶる才人
「く、苦し。な、何って、バラして整備序でに原理の確認するなら構わないって、才人君は言ってたじゃないか?」
才人ははたと気付き、コルベールの襟首から両手を離すと、とぼとぼ歩き出し、出ていく
「ミスツェルプストー。才人君は一体どうしたのかね?」
「あぁ、ちょっと今、正常じゃないんです。先生、グッジョブ!」
そう言って親指を立て、キュルケも慌てて出ていく
「何だったんだ、一体?さてと、今回は間に合わなくても、何時でも出せる様に整備しないと」

「ダーリン、ちょっと落ち着いて」
拳で壁を叩き始め、声にならない声を出す才人
キュルケは思わず後ろから羽交い締めで才人を抑え様とするが、才人の力が圧倒的に強く、そのまま振り切られる
「もぅ」
レビテーションを唱え、才人を無理矢理浮かせて止めるキュルケ
「一体何なのよ?私にも話せないの?何でこんなになってるの?日本に一体何があるの?」
「……待ってんだよ」
「誰が?」
「待ってんだよ。俺が居ないと死にかねない奴が一人。高校生になれたんだ。もう少しで……もう少しで回復するんだ。今は、何より優先しなきゃならないのに……何で俺は、こんな所に居るんだよ?」
『ダーリンの……大事な人?』
「待ってろよ。何が何でも帰ってやる。理不尽だらけなアイツの人生から、俺迄欠ける訳には行くか!!」
「その人……恋人?」
「……」
「答えて……くれないの?」
「…恋人じゃない」
才人は顔を手で隠し、表情を見せない様にしている
「ダーリンって、向こうじゃ、事故死になってるんでしょ?」
「…アイツは信じねぇ。死体が出て来ない限り、絶対に信じねぇ」
「そうなの?」
「あぁ、そういう奴だってのは、俺が一番知っている。絶対に待ってんだよ。しかも、体調を崩した状態で、だ」
「…そんなに?」
キュルケは嘆息する
『ダーリンの帰郷の念に、火が付いちゃった。泣きたいのは私の方よ、バカルイズ』
「ルイズに似てるの?」
「……言動や行動はそっくりだ。ルイズより小さいがね」
「長い黒髪とセーラーって……」
「……あぁ、勘違いしちまった」
ふぅ、と溜め息を付くキュルケ
「ダーリン、今は戻りましょう」
「…嫌だ」
「ルイズの所じゃないわよ。私の部屋」
「…嫌だ、一人にしてくれ」
「駄目よ、今のダーリン、自分自身を壊しかねないわ。ダーリンの力、凄い上がってるのよ?拳は皮剥けちゃってるじゃない」
「こんなの屁でもねぇ」
「駄目ね、強制執行するわ」
そのまま、キュルケは才人を浮かせ、自分自身の部屋に運び込む

カタン
ルイズは物音に反応し、壊れた扉を飛び出しキュルケを確認する
「キュルケ!!サイトは?」
「先に部屋…あれ?まだセーラー着てたの?」
「キュルケも着てるでしょ?」
「あんたが問題なのよ。ん〜、言い辛いんだけど、髪の毛の色が元に戻る迄、ヴァリエールはダーリンに接触禁止」
「……何で?」
「何でも。其とダーリンは泊めるわよ。一人にすると駄目だから」
「一人じゃ駄目って…」
「ダーリン、自分自身を傷つけるのに、何の躊躇いも感じてない」
「サイトは前からそうよ?」
「その理由が、少しだけ解ったわ。とにかく、さっきの言いつけを守りなさい。解ったわね?」
パタン、ガチャ
ロックの施錠がかかり、物音もしなくなる
サイレンスもかけたのだろう
ルイズは、キュルケの言う通り、黒髪を見つめ、溜め息を付いた
「黒髪、嫌いなのかな?」
才人の居ないベッドの前に、ルイズは風呂に向かった

*  *  *
「ダーリン」
「……何で連れて来た?」
「だって、見てられないわ」
「なら…捨て置けよ」
キュルケは泣きたくなる
「ほ、ほら、私の部屋なら、酒もあるし、暇つぶしのジグソーパズルもあるし、フレイムも居るし……私も居るし」
最後に付け加えた言葉は、非常に小さい
「…悪い。気を使わせちまった」
才人がそう言って、背を向ける
キュルケはそのまま、才人の背後から豊かな胸をぶつけながら、抱き締める
「ダーリン。さっきみたいに、気持ちぶつけて良いのよ?」
「もう、大丈夫」
実際に、声は何時もの調子に戻っている
『あぁ、もう閉ざしちゃった』
「夕飯、食べた?」
「いや、食ってない」
「ちょっと待ってて」
キュルケは自身の夜食用とフレイムの夜食用の干し肉とパンとチーズを取り出し、ワインを添え、才人に差し出す
「フレイムの分じゃねぇか」
フレイムは火炎を吹き出し、反応する
「あげるって」
「良いのか?」
フレイムはこくりと頷く
才人は手を合わせ、食べ始める
キュルケはにこにこしながら、テーブルに両肘を付き、顎を両手に乗せ才人の食事を見守る
「ふぅ、ご馳走様」
「足りた?」
「あぁ、フレイムが食いしん坊で助かった」
「ふふっ」
キュルケは自分の事の様に嬉しくなる
「ねぇ、ダーリン」
「何だ?」
「私、まだお風呂に入って無いの」
「俺も入ってねぇな。入って来れば良いだろ?」
「ダーリン一緒に入ってくれる?」
「…入らない」
「シエスタにはやってるじゃない」
「…」
「まぁ、そう言うと思ったわ」
キュルケはゴソゴソと魔法石鹸を取り出し、才人に見せる
「此で身体を拭いて」
「ふぅ、了解」
キュルケはセーラーを脱ぎ、スカートを脱ぎ、靴下をショーツを脱ぐ
褐色の美の化身が才人の前に立つ
「お願い」
才人は水桶から水を別の器に入れ、手拭いを浸し、石鹸を付けて、キュルケの身体を拭き始める
顔を拭くと化粧が取れ、年相応の顔になる
背後に回り、腕、背中と拭いて行くと、キュルケから悩まし気な息が漏れる
「ん、ふぅ」
次に胸を拭き始めると、才人に身体を預け、手を添える
「ん、あ、上手。これも、待ってる人にやってたの?」
「…あぁ。アイツは、一人で風呂にも入れない。と言うより、一人で居るのを異常に怖がった」
「…そう」
「俺が仕事で遅いと、いっつも涙目で俺を待っていた」
「…そう」
「一人で寝られ無かった。一人だと、思い出すから嫌だと、いっつも泣いていた」
「…そう」
「俺以外の男には、一切近寄れなかった。男を見ると、完全に脅えて、常に逃げる様にしてたから、女子校に通ってた」
「…そう」
「俺に時間が出来て、学校に迎えに行くと、一目散に走りよって来て、俺の事を周りに自慢していた。何時も何処で見張ってるか解らない位の、即応振りだった」
「…そう」
「今は、俺はアイツの傍に居てやれない」
ポタ、ポタ
キュルケの身体に水が落ちる
キュルケが才人の顔を見ると、涙が垂れている
「ダーリン…」
「俺は…こんな所で使い魔なんて、やってる暇なんざ……無い」
「…」
「俺は、女のコに言い寄られる資格も無い」
「…何で、そんな風に決めるの?」
「事実だからだ」
そう言うと、才人はキュルケの下半身を拭き出し、キュルケは才人の指が花弁に触れるとビクンと跳ねる
「ひぅ!?」
「悪い、強過ぎた」
キュルケは首を振る
「違うの、良かったの。お願い、遠慮しないで」
才人はそのまま尻を拭き、両足を拭き取り終える
「はい、終わり」
キュルケは熱っぽい目で才人を見るが、才人は表情を消している
『駄目だ、後一押しね』
「ダーリン、次は私がやってあげる」
そう言うと、キュルケは才人の服を脱がし出す
才人は為すがままだ
才人を全裸にすると、汗をかいた猛烈な男の匂いが、キュルケを刺激する
『凄い匂い。でも、何か癖になりそ。モンモランシーがダーリンの匂いが好きってのも、頷けるわ』
今度はキュルケが手拭いを取り、才人を拭き出す
才人にやって貰った通りの順番でやる
顔を拭き、腕を拭き、背中を拭く
背中を拭く時に、思わず嘆息する
「改めて見ると、広い背中。惚れ惚れしちゃうわ」
才人とキュルケは背丈は変わらないが、やはり男女の違いは如実に出る
特に才人はしなやかに鍛えてるせいで、筋肉隆々ではなく、瞬間的に出す筋肉で、見た目以上の筋力を誇っている
一瞬に賭けるガンダールヴに取って、ゴテゴテしたパワー重視の筋肉は邪魔なのだ
才人にキュルケは密着し、胸から拭き、股間を念入りに拭くと、尻を拭き、両足を拭き取り終える
そのまま、才人の背中に引っ付いている
「ねぇ、ダーリン」
「何だ」
「…して」
「俺の息子に聞いてくれ」
才人の股間は反応してない
キュルケは才人の前に周り込み、才人をそのままベッドに押し倒す
トサッ
キュルケは妖艶な笑みを浮かべ、才人に聞く
「もし勃ったら、朝迄してくれる?」
「あぁ」
「約束よ」
キュルケから才人にキスをし、胸を密着させる
才人は胸が好きなのを存分に武器にし、また股間も密着させる
だが、キュルケは自分が高ぶるばかりで、才人がちっとも反応しない
「何でぇ?私、魅力無いの?」
「違う。俺が駄目だからだ。男は、精神状態に左右するんだよ」
「ふん、意地でもして貰うんだから」
キュルケは才人の顔に花弁を当て、自身は才人の股間に顔を埋める
「元気になってね」
キュルケは才人の息子に話しかけ、口に含む
ヌルリと口腔に迎え入れ、何とか立たせようと、舌と粘膜に絡める
ぴちゃっ
「っ!?」
思わずキュルケの身体がビクンとなり、危うく才人を噛みそうになる
「ふ〜、ふ〜」
才人がキュルケの花弁を愛撫し始め、キュルケは自分が一気に高ぶるのが解る
才人は陰核を丹念に指で刺激し、膣と陰唇をたっぷり舌でねぶる
「ん、ん、ん゛〜〜!?」
才人を口に含んだまま、先にキュルケは痙攣を繰り返す
「ふ〜、ふ〜、ふ〜(まだ、半分位?)」
キュルケは、丹念に才人の息子を舐め、とにかく勃起させるべく頑張るが、才人の攻めが更に続き、キュルケは上に乗ってるのに、ペースを完全に握られる
「ん゛ああ、もう駄目!!我慢出来ない!?」
キュルケはまた痙攣し、とうとう口を離してしまう
「……はぁ、素敵」
「キュルケのここ、凄い綺麗だな」
「本当に?嬉しい」
最早完全に脱力し、キュルケは諦める
才人が身体を起こし、キュルケの尻を持ち上げ、攻め始める
「え、やだ、ダーリン。恥ずかしいわ」
「ああ、恥ずかしがってる女のコの方が萌えるね」
ちゅぴ、ちゅぴ
才人がわざと音を立て、キュルケを攻める
「やぁ、音、立てないでぇ!?」
「綺麗だよ。キュルケ」
言葉とは裏腹に、尻は持ち上がり、才人を誘う
「はっはっはっ、駄目。またきちゃう!?」
ビクンビクン
キュルケが痙攣し、才人がキュルケの尻を膝立ちの位置迄降ろす
「はっはっはっ、あっ、やだ、イッたばかりなのに!?」
キュルケが痙攣してる最中に、才人は無言で息子をあてがい、一気に挿入する
ぬる
「あひっ!?」
いきなり挿入された感覚と絶頂の余韻で、キュルケは自身の平衡感覚が崩れ、何をしてるか解らなくなる
グチュグチュ
「キュルケが綺麗だったから、勃っちまった。約束通り、朝迄だ。恨むなら、自分の言葉を恨め」
「私、初めてだから」
「聞かない。痛いか?」
キュルケは首を振る
「じゃあ、覚悟しろ」
才人が動き出し、キュルケは自身の身体から、今迄感じた事の無い部分から、才人に花開き、強引に開発されて行くのを実感する
「やぁ、ダーリン少し休ませて。またきちゃう!?」
ビクンビクンと痙攣しても、才人は腰を振るのを止めない
「あっあっ、凄いのダーリン凄いの!!ひっ、いっ!?」
「出すぞ」
ドクン
才人の射精と絶頂が同時になり、キュルケは自身に才人の精が送られる感覚を、絶対の快楽と刷り込ませられる
「あっ、やだ。こんなの仕込むの?私、ダーリンの牝になっちゃう!?」
才人の射精を受け入れ、歓喜に打ち震える
才人は勃起が萎えない様に、射精が終わると覆い被さり、ゆっくりと動く
「良いか、キュルケ」
「はい」
「イク時は、必ず言うんだ、誰のでイクのか、誰のが欲しいのか。そして誰の牝なのか。自分が誰を誘惑したか、しっかり心に刻み込め」
キュルケは頭からの命令には受けた事は無いし、受けたら反発するだろう
だが、今は才人の言う事に従うのが、快楽だと仕込まされ始めている
「はい、私は才人のちんぽでイって、才人のちんぽが欲しい、淫乱な才人のメスです。才人の事を遊び半分で誘惑したら、逆に才人の虜になっちゃった、胸ばっかりの、お馬鹿さんです」
「どうされたい?」
「次は正面から、抱き締められたいです」
「いい子だ」
才人は一度抜きキュルケをひっくり返し、正常位で挿入する
「あぁ、良いの、いいのぉ!!」
才人を正面から抱き締め、脚を絡め、キスをねだる
才人は腰をゆっくり動かすが、キュルケがガンガンに押し付け、才人を貪欲に味わう
才人は胸を吸おうと考えたが、キュルケが決して抱擁を解かず、キスも止めない為、そのままの姿勢でフィニッシュ迄持っていく
キュルケは何度か痙攣すると、一際強く才人を抱き締め、才人の射精を感じる
ドクンドクン
キュルケの身体が脱力し、ようやく才人は解放されると、胸の愛撫をやり始めた
ピチャピチャ
「やぁ、今、ダーリンのちんぽでイッたばかりなの。おっぱい弱いの、入ってる状態でやられたら、あっあっ駄目、だめだめだめ!?おっぱいでイっちゃう!?」
キュルケはまだビクンビクンと痙攣し、涙を溜める
「ごめんなさい、ダーリン誘惑してごめんなさい。だから、少し休ませて、お願い」
「駄目。俺がしたい様にする。キュルケが俺の獣性を解き放ったんだ。責任取れ」
また、かぷりと豊満な胸を食わえる才人。その眼は何時もの優しさではなく、暴力的な攻撃の眼、熟れた女を食い尽す、牡の眼をしている
「いやあぁぁぁ。ごめんなさいぃぃぃぃ」
キュルケは、歓喜の悲鳴を上げる
結局、キュルケは約束通り、朝迄たっぷりと愛され、自身の言葉をたっぷり後悔する事になった

*  *  *
朝日が差し込み、才人は眼を開ける
「ふあぁぁ、すっきりした。キュルケ?」
才人の腕枕で、完全に寝ている
才人がゆさゆさ揺すると、キュルケは眼を開け、才人の顔を恐る恐る覗き込む
昨夜の獣の様な才人ではなく、何時もの優しい瞳の才人だった
「……酷い」
「ごめん」
「初めてだって、言ったのに。優しくしてって、言ったのに。休ませてって、言ったのに」
息を吸い込み、涙を溜めて、更に言う
「ちっとも優しくしてくれないし、休ませてくれないし、私、10回イった以降は憶えてないわ」
「ああ、それ大体やってる時間の1/3だな」
「私、その三倍イってたの?」
「うん、もう凄かった。ずっとちんぽちんぽ言ってて、俺が抜けるとおねだりして、射精のたんびに矯声あげて。私はダーリンのまんこなのぉって」
キュルケは顔が真っ赤になる
身体を確認すると、確かに証が大量に注がれてるのを実感し、実際に精が足れて、才人を受け入れた実感が湧いて来る
「もう、あんなはしたない言葉、貴族に言わせないでよ?」
「ちょっと待て、俺はちんぽとかまんことか、言えと言ってねぇ」
キュルケは自爆し、更に赤くなる
「つ、次は優しくしてよ?」
才人は済まして言う
「手加減しちゃ駄目って、叫んでたの誰だっけ?」
キュルケは才人の下の枕を抜くと、才人にボフボフと叩き付ける
「この、この、一晩で私の誇りを、ひっくり返しちゃってからに!!私はセクシーだけど淫乱じゃない!!」
「あたた、ごめんごめん……キュルケ」
枕を振りかぶったまま、ぶっすぅとしながらキュルケは応じる
「何よ?」
「慰めてくれて……ありがとな」
キュルケは叩き付けてた枕を抱き抱えながら、ぽつりとらしくない言葉を言い出した
「……責任」
「へ?」
「責任取って!!」
才人は寝てた状態のまま、何故かがくりとベッドに沈む
「あ、いや、その」
「責任取れ、この馬鹿ぁ!!灼熱の相手見付けたんだから、責任取れ〜〜〜〜!!」
キュルケはわんわんわめきだす
「私の余裕も何もかにも、あんたの前じゃちっぽけで、お子様扱いするわ、妹扱いするわ、挙句の果てに、実際ベッドじゃ撃沈された。あんた以外考えられなくなった、責任取れ〜〜〜!!」
「ごめん」
「謝るな、この馬鹿ぁ!!あんたを知らなかった頃の私に戻せ〜〜〜!!」
その後、ベッドの上で手足を放り投げて暴れ始めたキュルケをなだめるのに、才人はたっぷり時間を使わされる事になった

*  *  *


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Last-modified: 2011-02-21 (月) 12:45:23 (4812d)

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