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Last-modified: 2011-03-07 (月) 09:07:24 (4792d)

才人達が待機してたルネに駆け寄って、風竜に乗り込む
「ルネ、頼む」
「解った才人、今指示が来た。ラ=ロシェール方面外れ。グラモン、モンモランシ方面に向かえ」
「良し、行け新人」
バサァ
風竜が離陸し、一気に速度を上げて飛行する
飛行高度は500メイル、雲が出てる為、雲下で捜索ついでだ

街道に沿って飛ぶルネ達に、白い信号弾が飛ぶのが見える
「ありゃりゃ、あちこち外れだなぁ」
「ちっ、海に向かう積もりか?」
ルネが言うとアニエスが返す
すると、進行方向から、赤い信号弾が打ち上げられるのが見える
「当たり!!速度上げるよ。ヴァルカン!!」
「きゅい」
下では、馬に乗った銃士が走るの見えるが追い越し、銃士が手を振る
相手は恐らく馬だ。馬では追い付けない
竜騎士とのランデブーポイントに到達前に、捕捉する必要が有る
風竜の速度なら、先行する、飛行で速度を上げたヒポグリフとも合流出来る
ルネは顔に真剣な表情を浮かべ、鞍に掛けてるロングランスに触れ、手綱と一緒に左手に逆手に持ったレイピア状の軍杖を、しっかりと握り直す
上手く行けば一番槍も有り得る。みるみる緊張していくのがアニエス、才人、ルイズに伝わる
「新人、落ち着け。才人より強い相手はそうは居ない。お前はその才人と稽古した実績が有る。後はチャージを決めるだけだ」
「は、はい!!」
「アベル=ガイドを越えたいか?」
「はい!!」
「なら落ち着け。先ずは深呼吸だ」
言われた通り、すーはーと深呼吸するルネ
「良いか?新人は、栄え有るトリステイン竜騎士隊の一人だ。勇敢と無謀は違う。冷静に考え、自らの騎竜と、杖とランスを信じろ。がむしゃらに突撃しても、結果は出ん」
「はいっ!!」
「敵を見付けたら、本丸ではなく最後尾を狙え。本丸は凶悪だ。竜騎士と言えど、一合で撃墜されかねん」
「はいっ!!」
「順序を踏めば、後はブレスと速度を上手く使えば、竜騎士は本当に強い。だから、冷静に落ち着いて対処しろ。仮に敵竜騎士が出たら、無理するな。撤退も視野に入れろ。衛士隊が此方に向かっている」
「はいっ!!」
更に一時間程飛行を続けると、馬車と馬で20騎程の連中が西に向かって爆走してるのが見え、更に上空にはヒポグリフ隊が11騎見える
丁度射程に捉えたのだろう、錐の陣型になり、突撃を敢行しようとしている
「構わん、新人追い越せ、一番槍決めてみせろ!!」
「ウィ!!全員衝撃に注意!!」
そのまま追い越し、一気に降下し、槍を構えてチャージを敢行する
ヒュッ
風切り音を残し、最後尾の騎馬から人が消え、影が騎馬に落ち、空から奇襲されたのを察知し振り向くと、ヒポグリフが続いて降下してくる
対処の時間は、残されていなかった
ドシュドシュドシュ
次々にチャージに捕らえられ、あっさり12騎から人影が消える
「やった、一番槍だ。やったよ僕」
竜の背で歓声を上げ、喜びに打ち震えるルネ
竜騎士はブレスが基本攻撃だが、風竜のブレスは火竜に比べて弱く、しかも今回はアンリエッタが居る
チャージを決めないといけない場面で、一発で決めたのだ
ルネは完全に舞い上がる
敵を刺したロングランスを、震える手だけでは支えられないので、脇に挟んで何とか支持する
だが、驚愕の事態が起こる
刺された敵は、ランスをがしりと掴み、振り向くとにぃっと陰湿な笑みを浮かべ、杖を構える
「マズイ!?ルネ、ランスを離せ!!」
ドカッ!!
才人がランスを後ろから蹴り飛ばし、ランス事敵が落下していく
ヒポグリフ隊も貫いた敵が魔法を放とうとした為、思わずランスを離し敵を落下させる者、ランスを振って上空から叩き落とす者
そして、間に合わず、防御魔法をしつつ被弾する者が出る
「何だこいつ等?致命傷与えたのに、反撃するだと?」
ジェラールが驚き、被弾したヒポグリフが不時着を始め、騎士が落馬する
「くっ、ランスを失っては錐は無理だ。錬金じゃ、俺以外は強度が保てんし、材料が必要だ。全員降下」
敵も逃げられ無い事を悟り、下馬したヒポグリフ隊と才人達が合流する
「新人、貴様はエアカバー」
「ウィ」
バサァ
竜騎士がエアカバーの為にアニエス達を降ろして離陸する
「使い魔。竜の羽衣はどうした?」
「あんた誰だ?」
才人は見た事有るような無いような、微妙な相手だったので尋ねる
「ヒポグリフ隊隊長、ジェラール=ド=グラモン」
「あぁ、ギーシュの兄貴殿か。零戦は整備中。飛行出来ないよ」
「ち、使えん使い魔だな」
「言ってろ。其より気付いたか?」
「あぁ。連中、痛みを感じてない。傷を見てみろ。そのまんまだ」
皆で、ランスが刺さったまま落下し、レビテーションで着地した敵を見据える
更に敵はそのままガランとランスを抜き捨てた
腹に大穴が空いているが、全員構わない
「ゾンビだな。でもメイジだ。なら無力化するには、杖を折るか」
「喉を潰すか、だな」
「アニエスさん」
「何だ?」
「長銃で牽制。俺が突っ込む」
「承知」
「デルフ」
「あいよ」
「見せ場だ、気合い入れろ」
「おうともよ」
「ルイズ」
「何?」
「エクスプロージョン。数は撃たなくて良い、狙い済まして使え。相手は動く死体だ。胸を爆発させろ。下半身は無視で良い」
「うん、解った」
「成程、此がアイツが惚れた男か。くっく」
ジェラールが才人の指示を聞き、笑いの発作が起きる
「兄貴殿」
「何だ?弟よ」
「はい?」
「気にするな」
「はぁ、被害は?」
「三騎。戦闘可能は俺含めて8人は動ける」
「魔法戦は実は素人だ。指示してくれ」
「ふん。自身の限界を素直に認めるか。良いな、実に良い」

バタン
馬車から人が降り、ルイズ達に大声を上げる
何時までも発車しないので、降りて来たのだろう
「ルイズ!!アニエス!!ジェラール!!」
「「「陛下!?」」」
「行かせて下さい!!この通り、ウェールズ王子が生きていたのです!!私達が結婚すれば、アルビオン=トリステイン連合王国が出来るのです!!ですから、行かせて!!」
「ウェールズ王子。生きて……居たのか?」
ジェラールとアニエスが、驚愕に目を見開く
「デルフ。俺達が看取ったよな?」
「あぁ。でも、ありゃ確かにあの王子様だぜ。髪見ろ髪」
髪が一部、切り取られたままであり、才人は其を見て唸る
「ちっ、確かに本物だ。俺が遺髪切った部分が、そのままだ」
「本物だと!?」
ジェラールが口を挟む
「だが、確実に死んでた。つまり、あの王子様も」
「動く死体か。ならば、ウェールズ王子の遺体損壊もやむを得ないな。使い魔、突撃して陛下を回収出来るか?援護する」
「了解。ルイズを頼む」
ダッ!!
才人がジャケットの前を閉め、デルフを抜き一気に突撃し、衛士隊とルイズが詠唱を始め、才人の脚に力が乗ると、アニエスがしゃがみ、長銃を構えて発砲する
ダアァァァン!!
銃声が、アンリエッタ誘拐事件の戦闘の開始を告げる
才人の脚力で、すれ違い様にデルフでゾンビメイジを斬るが、全く意に介さず、そのまま詠唱し才人に杖を向ける
その横からブレットが直撃し、ゾンビ兵が吹き飛ばされる
更にゾンビ兵が才人に攻撃を集中させるが、持ち前の機動力で一気に突破し、その隙に衛士隊の魔法が着弾し、次々にゾンビ兵が吹き飛ばされる
ダアァァァン!!
ビスビス
才人に向け魔法を唱えてたゾンビ兵の胸に二つ穴が開き、肺が絞んでいき詠唱が中断される
「ふぅ、二つ弾、上手くいったな」
アニエスは胸を撫で下ろす
危険な為、実戦で使うのは久々だ。しかも二発共命中
「今日の私は、運が良い」
すかさず、朔杖で火薬を詰め、弾を銃口から二つ落とし込み、構え引金を引く
ダアァァァン!!
今度は外れ、単騎じゃ、中々銃も当たらない
火薬を注ぎ、朔杖で詰め、弾を込めているとジェラールの怒鳴り声が聞こえて来る
「アニエス避けろ!!狙われてるぞ!!」
火球がアニエスに向かって飛び、アニエスは長銃を手放して、ダンと飛び退く
バアァァァァン!!
火球に呑まれた長銃の火薬に引火し、長銃が暴発する
長銃は銃身が赤熱した時点で火薬に引火した為、爆発に耐えられず破裂する
「…カノ・オシェラ」
ルイズの詠唱が完成し、目標に向けて杖を振り下ろす
光が発生し、次いで爆発音が周囲に鳴り響く
ドオォォォン!!
だが、狙いが甘かったせいで、周りを吹き飛ばすだけで終わり、戦闘不能にするのは至らない
吹き飛んだ相手が傷そのままで、続々とムクリと起き出し、ルイズは戦慄する
「動いてる相手を狙うの、難しいよサイト。サイトの言う通り、もっと良く狙わないと」
右手に杖を構え、始祖の祈梼書を左手に持ち、初めての自身も戦力としての実戦で、身体が震えながら何とか立つ
何せ自身の使い魔が、攻撃をかわしながら、何とか突破しようと身体を張っている
主人が泣いては居られない
「サイトを、あたしが助けるんだ。見てて、サイト」
また狙う為、ルイズは詠唱を始める

「デルフ、何とかしやがれ!!」
「やってんだろうが!!相棒こそ、心震わせやがれ!!」
魔法を吸い込みながら、攻囲を突破する為に一個々々かわし、アンリエッタに近付く
遂に突破し、アンリエッタの前に立つ才人
「やっと抜けた。さぁ、姫様。皆が心配してます。帰りましょう」
「帰って。帰って下さい!!貴方にトリステインは、どうでも良いのでしょう?」
「そう言われちゃ、返す言葉がねぇな」
才人は悪びれず、苦笑する
「嘘つき、ウェールズ王子は、きちんと生きてたじゃないですか。私を今まで騙してたんですね?」
傍らのウェールズを見る才人
「う〜ん、そういや攻撃来ないな。ウェールズ王子、久し振り」
「久し振りだな、使い魔君。アンリエッタの傍に居るからだよ。流れ弾で、被弾されちゃ堪らないからね」
「姫様を返して貰うよ」
すこぶるご機嫌なジョークだと、ウェールズは肩をすくめる
「何でだい?アンリエッタは僕のモノだよ。君には関係無いだろう?」
「生前のアンタなら、黙って渡したんだけどな。でも、死んでるアンタじゃ駄目だ」
「言わないで!!」
アンリエッタが大声を上げる
「やっぱり、知ってたんだね。姫様」
「私は水メイジです。水の流れで直ぐに気付きます。でも、私も、夢を‥‥‥夢を見たいの!!何で私は、見てはいけないんですか?」
才人は溜め息をしながら、優しく諭す
「駄目だ、ソッチに行くのは、夢は夢でも、カタチある悪夢だ。死体との間に、子供を作る気かい?俺は、不幸になるのを解ってて、女のコを見捨てる事なんざ、出来ない」
「嫌です!!私を拒否した方になんか、言われたく有りません!!帰ってぇぇぇ!!」
首を振り、アンリエッタは顔を手で覆う
「と、言う訳で、お引き取り願おうか。使い魔君」
才人に対し、杖を向けるウェールズ
「ちっ、仕方ねぇ。王子様、アンタを真っ二つにするわ」
デルフを左手に逆手に持ちながら鞘に手をかけ、鯉口を切り、右手で一気に抜刀
アンリエッタが顔を上げた時にはウェールズの身体が真っ二つになって・・・・いない
チイィィ
「くっ、何だこりゃ?」
ウェールズの身体から数サントの所で、霧を巻き散らした村雨の刃が、斬撃と別の力で拮抗する
「まさか…エルフのカウンターか?」
デルフが驚愕の声をあげる
ブワッ!!
「おわっ!?」
力と力の拮抗が破れ、才人に力が全て流され、威力が才人を空中に吹き飛ばす
ジェラールが才人に遠距離から弱くレビテーションをかけ、才人が着地すると、一気に才人に魔法が飛び、才人はバク転から側転し、更に反動を付けて後方に身体を跳ねさせ回転しながらかわし、ジェラール達の所迄退避する
ザッ
「体操ニッポンここに健在。日本代表才人選手のムーンサルト、極まりましたぁ!!」
「…アホウ」
「良いじゃねぇか、デルフ。くそっ、まだ別に居やがる」
「失敗か、使い魔」
ジェラールが確認する
「何か変なの居るんだよ。斬撃が跳ね返された」
「にしても、あんな軽業師みたいな動きも出来るのか。化物め」
「ゼロの使い魔はこんなもんよ」
言いながら立て直しの為、攻撃に対し魔法障壁を張る衛士隊と、デルフで魔法を吸う才人
「ありゃ、エルフのカウンターだ。見ろ」
デルフが促すと、ウェールズの後ろに黒装束の、胸の非常に大きい女が控えている
その女がヴェールを脱ぐと、長い耳がぴょこんと現れた
「エルフだと!?」
ギリリと奥歯を噛み締めるジェラール
「ちっ。まさかアルビオンに、エルフが与してるとはな」
アニエスが短銃を構えながら舌打ちする
「どうだ?デルフ?」
「あぁ、どうやらあのエルフは余り高位じゃねぇな。カウンターの力も弱い。だが、エルフはエルフだ。はっきり言って、洒落にならん。こういう時に、打開策合ったと思うんだがなぁ」
「打開策?」
ルイズがエクスプロージョンを命中させる事が出来ず、デルフに聞く
「そうだ嬢ちゃん。祈梼書開いてみな。もしかしたら、打開策有るかも知んねぇぞ?」
「あ、そうか」
言われてルイズは祈梼書をパラパラと捲り、とあるページで止まる
「初歩の初歩、ディスペルマジック(解除)」
「其だ、娘っ子」
ポツッポツッ
雨が滴り落ちてくる
「ちっ、雨か。足場が悪くなるから、俺には鬼門だ。早く決着つけないと」
才人が苦々しく言うと、対面のアンリエッタが歓声を上げる
「雨‥‥雨です!!行かせて下さい!!雨の中で、水使いに勝てる訳有りません!!帰ってぇ!!」
「出来ねぇ相談だ!!絶対にひっ捕まえて、お尻ぺんぺんだ!!覚悟しとけ!!」
才人が怒鳴り返すと、アンリエッタはウグッと声を詰まらせる
「ヒュ〜〜〜。俺でも流石に言えんわ」
ジェラールが苦笑し、流石に衛士隊が眉を潜める
「無冠の騎士殿、言い過ぎです!?」
「言い過ぎなもんか!!一度お仕置きしなきゃ、また過ち繰り返す!!絶対にやったる!!アンタ達が、腫れ物扱う様にすっからこうなるんだ!!」
才人の剣幕に衛士隊が鼻白み、ジェラールが呆れて問い正す
「……陛下を何だと思ってるんだ?」
「そこら辺に居る、只の夢見る少女だよ。ちょっと、王様の仕事してるだけだ」
才人は答える
才人の言葉に何か考えさせられたのだろう、ジェラール達は黙ってしまう
ルイズは、自身の使い魔の剣幕に反応せず、ひたすら詠唱を研ぎ澄ませる為に集中する
その集中力と魔力は、降り始めた雨も避けて降る様に見えた

「仕方有りません!!ウェールズ様」
「良いだろう。アンリエッタ」
アンリエッタとウェールズが同士に詠唱を始め、更にエルフの女が助力を行い始める
「我と共にある水と風よ、古の盟約に基づき、この者達の力と成れ」
二人の詠唱は王家の血と言う絆で結ばれ、巨大な一つの詠唱となる
更にアンリエッタの持つ王家の杖の水の力、雨と言う天候
水と風に先住の助力が加えられる
風,風,風、水,水,水
余程の才と訓練を重ねない限り、他人同士では通常有り得ない完全なる六乗
王家の血だからこそ為しうる一つの偉業。巨大な水の竜巻になる
「うっわ、またヘキサゴンスペルかよ。しかも規模が、隊長殿軽く越えてるわ。デルフ」
「わり、先住混じってるから、俺っちでも無理」
「絶対絶命じゃねぇか」
「ウル・スリサーズ」
ピクン
才人がルイズの詠唱を聞き、覚悟を決める
「総員聞け。デルフ」
ザク!!
デルフをルイズの3メイル前に突き立てる
「出来る限り吸え。衛士隊は残りを全開防御。流せ。アニエスさんは、後方で被害負った衛士隊の退避」
「おうよ!!」
「「「ウィ!!」」」
「承知!!」
「兄貴殿は騎乗で俺に付き合え。残りの雑魚をチャージで俺と一緒に仕留める」
「解った。ピュイ」
ジェラールが口笛を吹くと、ジェラールのヒポグリフが駆けて来る
「イル・アース・デル」
ジェラールが土からランスを錬金し騎乗すると、才人が後ろにしゃがんだ状態で乗り込む
「行くぞ!!」
「おうさ!!」
ダンッ!!
ヒポグリフの地上での圧倒的な加速での突撃と、その場から動かないルイズ達に対しての竜巻の衝突が重なる
「アンスール・ケン・ギョーフー・ニィド・ナウシズ」
ルイズは自身の使い魔が打開する為に動く事を確信し、詠唱に完全にトランスする
ゴオォォォ!!
水の竜巻にデルフが拮抗し、可能な限りで吸い込み、その後ろを衛士隊が全開で魔法障壁を展開し、左右に分断し、流す
「御婦人すら守れず何が衛士隊だ!?俺達の真価は此処で発揮しろ!!」
「「「「うおぉぉぉ!!」」」」
中隊長の発破に隊員達が雄叫びを上げ、感情を高め限界を限界で無くす
更に追撃の魔法が来たら、恐らく全員精神力が切れただろうが、ヒポグリフ隊隊長ジェラールはやる時はやると全員が確信し、しかも無冠の騎士と組んでいる
目の前に対処すれば後は何とかなると、全員が脇目も振らず集中する

突撃したジェラールと才人は、ジェラールが才人に指示を出す
「俺から身体を出すなよ」
「ん?解った」
一気に突撃を開始したジェラールと才人に攻撃が集中する
雨が急角度で真横になり、全弾ジェラールとヒポグリフが被弾する
「ちっ、ウォーターバレット
「平気だ、硬化してる」
そのままランスを構えたジェラールは、最初の一人の口をランスで貫き、そのまま裂き上空に飛び上がる
才人は交叉した瞬間に飛び降り、別の相手の首を一振りで落とした反動でブレーキをかけ着地すると、返す刀で別のゾンビ兵の杖を切り、更に擦り足で移動し杖を切るか、首を落とす
詠唱による力で懐に入ったガンダールヴの速度には、回避を念頭に置かないゾンビ兵はあっさり刈り取られ、更に頭上からヒポグリフを駆るジェラールが、真上からチャージを叩き付け、先程の魔法でボロボロになってた身体が完全に損壊し、動けても意味が無くなる
剛の攻撃と瞬の攻撃のコンビネーション
ジェラールは笑いっぱなしだ
「こいつは最高だ!!女より良いぜ!!此だから軍人は辞められねぇ!!」
「兄貴殿!!」
才人が叫ぶと、ジェラールが空中で一回転し才人の傍を通過し、才人を拾い上げる
「雑魚は無力化した。エルフに向けて急降下。仕留める」
「出来るのか?」
「やってみる。俺が離れたら離脱しろ」
「了解」
ヒポグリフが上昇し、才人がジェラールの肩にしゃがんで乗ると急降下を始め、才人が村雨を両手で構えながら、瞬動を小さく唱える
「イル・ウォータル・デル・パース・ウィアド」
飛行の風切り音と雨の音で、ジェラールには聞こえない
ダン!!
才人がジェラールの肩を瞬動を用いて蹴り、反動を食らったジェラールが悲鳴を上げる
「グァッ!!」
痛みに耐えながらジェラールは急上昇し、才人は急降下に蹴り脚の威力を乗せ、一気にエルフに村雨を叩き付ける
「エイワズ・ヤラ・ユル・エオー・イース」
才人が自身の被害を省みない急降下斬撃と、ルイズのディスペルマジックの発動が重なる
ダァン!!
精霊の力を助勢に注力したせいで、迎撃出来なかったエルフはカウンターで受けるが、才人の捨て身の斬撃の方が威力が高く、カウンターを切り裂き、服が切り裂かれ、才人が着地する
カウンターを切り裂いた際にエネルギーが減衰された為、自殺にならずに済んだ
「ぐうぅぅぅ、こんだけやっても、布一枚かよ………でけぇ」
衝撃で、両手両足から悲鳴が上がっている
衝撃に耐えきれず、ヒビが入ったのだろう
だが、才人は目の前に有るたわわなメロンに、釘付けになってしまった
戦場をルイズのディスペルマジックが包み、肉片となっても動いていた死体が魔力を解除され、動かなくなる
当然エルフやウェールズに掛ってた分も解除され、糸が切れた様に崩れ、ヘキサゴンスペルが瓦解し、魔力が象を失い拡散する
思わず才人は、エルフの女性を抱き止めてしまう
ルイズと防御に専念した衛士隊は、ヘキサゴンスペルが治まった途端、崩れ落ちる
「……見たか、衛士隊の……底力」
中隊長は台詞を残して気絶する
「おぉおぉ、てぇしたもんだ。相棒の代わりに、俺っちがはなまるくれてやらぁ」
アニエスは障壁が解除されると、衛士隊員達に礼を言う
「ふぅ、大丈夫か、お前達。逆に助けられた」
「いえ、ミラン殿に傷でも負わせたら、無冠の騎士殿に刻まれますので」
アニエスが落馬した衛士隊隊員を退避させようとして、流されたヘキサゴンスペルの進路に逢い、何とか身体を起こした隊員達が障壁を張り、自分達とアニエスを守った
ヒポグリフ達は、空中に逃げている
才人は動かぬエルフの女性の胸を凝視しつつ、顔も見る
非常に美しい。才人はつい魅入られる
「はぁ、本物のエルフって、スゲー綺麗だな」
ピクン
エルフの女性の眼が開き、才人は優しく声をかける
「生きてるのか?大丈夫か?」
「……少しだけ、水の精霊にお願いしました。彼方の方にも。私と一緒で、心残りが有りそうですので」
才人はエルフの女性が寂しそうに微笑むのを見て、真剣な顔をする
「遺言か?」
「…はい。アヌビス」
「…」
「……では、イーヴァルディ」
「…あぁ」
そしてエルフの女性は、直接、ある言葉を話した
「あなたにおねがいがあります。わたしは、いつかこうなるとかくごはしてました。でも、むすめにはおなじようになってほしくない。きっと、あなたなら」
才人は翻訳せずに、直接届いた発音に驚愕する
「……何故、その言葉を知っている?」
「あなたとおなじ、くろかみできいろいはだの、とのがたにおそわりました」
「……佐々木……武雄」
「はい。あなたなら、きっと……はるけぎにあでもなく、えるふでもないあなたなら……わたしのむすめをしあわせに……」
そう言うと、才人のジャケットのファスナーを弱々しく開き、細い腕を回し、胸を押し付け、才人に口付けする
舌の侵入を才人は黙って受けいれ、絡める
「ん、あんなくずより、ずっとじょうず。わたしのあいしたおっとよりも」
「光栄だ」
「くろむうぇるに……あんどりばりのゆびわにきをつけて」
満足そうに微笑み、エルフの女性は眼を閉じる
「名前は?」
エルフの女性は返事をしない
才人は女性の遺体を優しく横たえ、両手を合わせた

「ウェールズ様、ウェールズ様!!」
才人がエルフの女性と最期のやり取りをしている時、アンリエッタは倒れたウェールズを抱え、号泣している
ピクン
ウェールズの指が動き、眼を見開く
「おぉ、ウェールズ様、良くぞご無事で」
「嫌、違う。僕の叔母上が、僕に最期の時間を与えてくれた」
「叔母‥‥上?」
「モード叔父上の妾さ。モード叔父上と叔母上の粛正が、僕達の破滅の始まりだった」
「そうなの‥‥‥ですか」
「アンリエッタ、良く‥‥聞いて欲しい。最期の頼みだ」
ウェールズの身体から血がにじみ、本当に最期の言葉になるのを、アンリエッタも自覚する
「最期だなんて、言わないで下さいまし」
「あぁ‥君は何時まで経っても‥‥我が侭だな。僕の可愛い‥アンリエッタ。大事なお願いだ‥‥僕を忘れて‥‥他の人を‥愛して欲しい」
「そんな‥‥ウェールズ様以外をだなんて」
「僕を‥‥安心して‥ヴァルハラに向かわせて欲しい‥叔母上も‥気付いたから‥時間をくれたのさ‥誓って‥くれるね?」
アンリエッタは涙を流しながらウェールズの手を取り、言う
「誓います。誓いますから、最期だなんて言わないで下さいまし。アンリエッタ=ド=トリステインは、他の殿方を愛す事を、ウェールズ様に誓います。今、治癒をおかけします。イル・ウォータル・デル」
だが、奇跡の力たる魔法も、先住の力でかろうじて支えられたウェールズの肉体を、癒すには至らない
どんどん、精気を失っていくウェールズ
「そんな、ウェールズ様」
「何一つ‥‥自由に出来なかった‥‥人生だけど‥‥君に逢えて良かった‥‥ヴァルハラから‥‥君が幸せになる様を‥‥見させて‥‥も‥ら‥う‥‥よ‥‥‥」
静かに眼を閉じるウェールズ。顔には、満足の笑みが浮かんでいる
「ウェールズ様?ウェールズ様ぁぁぁぁぁ!!」
ピィィィィ!!
上空からホイッスルが鳴り響く、竜騎士の警告だ
「ちっ、新手か?」
才人が痛む手足を引きずり、瞬動で酷使した全身は既にズタボロ
そんな才人にヒポグリフが降り立ち、才人は後ろに乗る
「デルフを拾ってくれ」
「解った…手前ぇ、戦闘終わったら覚えてろよ?」
「…何かしたか?」
「人の鎖骨折っておいて、何かしたかだと、おい?」
「俺は両手両足逝ったが?」
「あんな墜落するからだ。普通は死んでるぞ」
「俺もそう思う」
そのままヒポグリフはデルフに向かって走り、走りながら才人がデルフをパシッと握ると、一気に上昇する
「さてと、単騎じゃ竜騎士相手は流石に無謀だな」
「そんな事ねぇな。出鼻だけなら砕けるぞ。デルフ、出してねぇだろうな?」
「わり、腹一杯だったから、3割位出した」
「このやろ」
「でぇじょ〜ぶだって。この前の王宮の時よりあっから」
「成程な、使い魔、歳は?」
「26、兄貴殿は?」
「23。年上の弟かよ。俺の事はジェラールと呼んでくれ、才人」
「わぁったよ、ジェラール」
「俺達もとうとう年貢の納め時だな、見ろ」
ジェラールに促された先には風竜が6騎、此方に向かっている
軍装から、アルビオンとジェラールは断定している
ランスを戦闘空域に携行しないトリステイン竜騎兵は居ない
ランスを戦闘空域に携行しないトリステイン竜騎兵は居ない
タルブ戦で、有効と判断された為だ
「迎えに来た連中か。失敗を知れば撤退する筈」
「さあて、どうかな?死ぬ前に教えろ。カトリーヌはどうだった?佳い女だったろ?」
「佳い女だ。控え目で芯を持って。感度も最高。グラモンの教育は大したもんだ」
「だろ?妹じゃなければ、口説いてたっての。さて、待ってる女達の為に色男は死ねん。やるぞ、才人」
「あいよ、肩貸せ」
「右肩にしろ、左は折れてる」
言われると才人はデルフをジェラールの右肩に峰側を乗せ、狙いを定める
「デルフ、射程内に入ったら全力開放」
「あいよ。開放迄、5・4・3・2・1、開放!!」
一気に吸い込んだヘキサゴンスペルとその他の魔力を開放し、敵竜騎士に向かうが、竜騎士は散開して全騎避ける
「デルフ!!だから、言ったろうがぁ!!」
「わり、こうなるとは思って無かった」
だが上方に散開した竜騎士に、上空から急降下で竜騎士の背後から一騎、チャージを仕掛ける竜騎兵
アルビオン竜騎士が回避軌道を取り、ロングランスが外れると同時に、すかさずブレスの追撃で一騎、撃墜する
「ルネか?やるじゃねぇか!?」
「ほう、俺も負けて……おい才人、降りろ。重くて叶わん」
才人を突き飛ばして、落とそうとするジェラール
「無茶言うな!!幾ら俺でも死ぬ。絶対に死ぬ!!」
「うるせぇ!!ごちゃごちゃ言ってねぇで、さっさと降りろ!!唯一の利点の小回りが効かねぇんだよ!!ほら来たぞ!!」
「避けろ、ジェラール!!」
「だぁぁぁぁぁ!!」
その時、戦場にもう一騎、才人には見慣れた、幼い風竜が現れる
「きゅいっ、きゅいっ、きゅいっ」
弾む様に歌いながら風竜は声を出し、その背に乗るは二人
赤髪と青髪の少女達だ
「ん〜もう、雨だなんて最悪。私の熟れた身体のラインが、ダーリン以外に見られちゃうじゃない」
「ラグース・イング・ハガラース」
「もうやるの?せめて、前口上させてよね?ウル・カーノ・ソウイル・イーサ・ウィンデ」
水系統も使えるタバサが天候を利用し、ウォーターバレットを雨天下だからこそ出来る三乗で乗せ、一気に雨が水弾と化し、広範囲にアルビオン竜騎士達に襲いかかる
アルビオン竜騎士達はブレスを吐き、水弾を蒸発させると、その影から炎の矢が飛来、至近で爆発する
バババババン!!
「を〜〜〜ほほほほ!!ウォーターバレットは囮。フレイムアローが本命よ。見たかしら?微熱と雪風の空中サーカス!!」
顎下に斜めに手を当て、高笑いをするキュルケ
「…撃墜出来てない」
「……やっぱり、雨の中じゃ威力弱いわぁ」
タバサが突っ込み、キュルケがぽりぽり頬をかいてとぼける
「…撤退」
「はいな」
直ぐに踵を返して離脱する、キュルケとタバサ
「……援軍かと思ったら、何やってんだ?二人共?」
「一撃離脱……判断は的確だな……」
ジェラールと才人は、助けて貰ったにも関わらず、ぽかんとしている
だが、そんなジェラール達を尻目にアルビオン竜騎士達は、踵を返して撤退を始める
「あれ?撤退始めたぞ?」
「まさか……本当に援軍か?」
後ろを振り返ると、衛士隊が飛んで来ている
「ふぅ、終わったな」
「あぁ」
ジェラールが溜め息を付き、才人が頷く
事件はどうやら終わりそうだ

*  *  *


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Last-modified: 2011-03-07 (月) 09:07:24 (4792d)

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