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Last-modified: 2011-03-12 (土) 10:47:05 (4786d)

後続の衛士隊と合流し、ジェラールが点呼を行う
「戦死一名か・・・奴の遺体は遺族に届ける。保存を頼む」
「ウィ」
後続で精神力と魔力を消耗してない隊員が保存の為、固定化と冷気魔法をかける
精神力が尽き、気絶した隊員達は手当てを受けている
ジェラールはそのままアンリエッタに近寄り敬礼、報告を行う
報告します。陛下誘拐犯は、無冠の騎士の助力と陛下の女官ミスヴァリエールの活躍により壊滅。迎えの竜騎士の軍装から犯行はアルビオン政府と断定しました」
「‥‥」
アンリエッタは、ウェールズの遺体を抱えたまま、動かない
「陛下、お言葉ですが申し上げます」
「‥‥」
「死者より、生者の事をお考え下さい」
アンリエッタは顔を上げ、キッと睨む
「常に恋にうつつを抜かす貴方にだけは‥‥言われたく有りません」
「だからこそです。死者に操を立てるのも結構ですが、誰も幸せになりません。陛下の事を受け止める男が、この先現れる筈です。今は泣いて構いませんが、立ち直って頂きたく」
「‥‥ラグドリアン湖へ、ウェールズ様を埋葬致します」
「ウィ」
敬礼し、ジェラールは指示を下す為に戻る
「グリフォン隊、捕虜と負傷兵と戦死者の護送だ。ヒポグリフ隊、ラグドリアン湖迄、陛下とウェールズ王子の御遺体を護送する。アニエス殿は銃士と合流してくれ。才人はどうする?」
「最後迄付き合うさ」
「そうか」
才人はデルフをしまい、村雨を抜くと握ったままルイズを抱き上げ、降りて来たキュルケとタバサに預ける
「頼む。どうして此処に?」
「あらやだ。あんな銃声で起こしておいて、そんな事言うの?窓から外見たら竜騎士に乗って離陸するのが見えたから、タバサ起こして追跡したの」
キュルケはケラケラ笑いながら答える
「助かったよ」
「良いのよ。ね、タバサ」
タバサはコクリと頷き、ルイズをレビテーションで受け取り、シルフィードに乗せる
そのまま才人はエルフの女性の遺体を抱き上げ、着陸したルネに向かう
「一騎撃墜、お見事」
「才人が上手く眼をそらしてくれたからね………エルフ!?」
ルネが驚き、思わず杖を向ける
「仏に何考えてる?ラグドリアン湖だ。それと、胸見るなよ。故人に欲情したらぶっ飛ばす」
「わ、解った」
才人が遺体抱えたまま、竜に乗り上げるのを竜が喰わえ、手伝う
準備が出来たヒポグリフ隊と竜は一路ラグドリアン湖へ赴く

*  *  *
アンリエッタ達がラグドリアン湖に着陸すると、アンリエッタはウェールズの遺体を受け取り、自ら湖畔に沈める
「水の精霊に‥‥守って頂きます。もう二度と‥‥こんな事に利用されない様に」
そのままアンリエッタは祈りを捧げる
そんな様を見ながら、才人は思い出した
「あっ、そうだ。ちょっと報告が有る。水の精霊、聞こえてるか?依頼を受けた者だ。聞こえてるなら姿を見せてくれ」
才人がエルフの遺体を抱えたまま、水の精霊に呼びかける
ザザザザザ
暫くすると、水の精霊が姿を表し、アンリエッタ含めて衛士隊達が驚く
その姿はエルフを象取っていた
「依頼を受けし人の子よ。承けた品を持って来たのか?」
「いや、違う。報告だ。だけど、何でこの女性の姿?」
「我はそなたの今一番の好みに姿を変えている。依頼を果たしたと思ったので、サービスだ」
聞いた瞬間、周囲の温度が下がり視線が幾つも、才人に突き刺さる
「あ、いや、そんな事しないで良いから」
「人の子の繁殖行為もしてみせようか?擬似行為だが可能だぞ?」
「だぁあ!?あんた俺をからかって面白いか?」
「面白いが?」
才人はカクンと頭を垂れる
「勘弁してくれ。現在のアンドリバリの指輪の所在が解った。アルビオン浮遊大陸。持ち主はクロムウェルだ」
「では、取り返して来い」
「一国の元首だぞ?どうやって?」
「其を考えるのが、人の子の仕事では無いのか?」
才人は溜め息をつく
「確かにそうだが、きっつい依頼だよ、本当に」
「……ふむ、水の精霊の加護が必要か?」
「どういうの?」
「何、水の精霊の力の干渉を無効化する様に、人の子の水を操作する事も出来るが?」
「……それって、治療も出来なくならないか?」
「鋭いな、その通りだ」
「絶対に負傷で死ぬな、俺」
「ふむ」
するすると精霊が近寄り、エルフの女性の遺体に侵入し、ぱちりと眼を開け、喋り出す
「ならば、この様にするか?我も外の世界を見聞をしてみるのも一興だ」
「……死者への冒涜だ。止めてくれ」
「難儀な人の子よの」
クスクス才人の腕の中で笑い、一つキスを唇にした後、才人の身体をそのまま癒し、遺体から離れる
「……あ、済まん、治療してくれて助かった」
「我の依頼を実行するのに必要だからな。感謝の必要は無い。それに、接吻と言うのも初めて味わった。肉の身体も乙なものだな」
すると、象を崩しながら精霊は喋る。帰る準備だろう
「事情はあい解った。また何かあれば呼べ」
「待って下さい!!」
アンリエッタが叫び、水の精霊が象を戻しながら振り返る
「どうした契約の者よ?我とそなたの更新迄、まだ先の筈だが?」
「いつ、サイト殿と知り合いに?」
「少し前に我から依頼を交した仲だ。そなたとの契約に関係は無い」
機嫌が悪くなる前兆を感じ、アンリエッタは慌てて応じる
「も、申し訳ありません。ですが、一つ頼みが有りまして」
水の精霊がアンリエッタの話の先を取る
精神に干渉出来る水の精霊が、濡れた状態の人間達の思考を読み取っているのである
「先程沈めた遺体か?契約に基づき、きちんと我の管理下においておこう。自然に朽ちるに任せる」
「あ、有り難うございます」
すると才人に振り向き、問い正す
「そちらのエルフの遺体もそうするか?」
「いや、出来るだけ美しい場所に埋めてやりたい。墓が無いと駄目な人なんだ」
「ならば案内しよう、依頼を受けし者のみ付いて来い」
言われて、才人、キュルケ、タバサのみ付いて行く
ルイズはまだ目が覚めてないのでアンリエッタに任せる

才人達が着いた場所は、確かに美しい場所だった
才人は無言で女性を横たえ、デルフを抜く
「相棒、まさか……」
「悲鳴上げたり文句言ったら、この場で湖底に沈めてやる」
デルフは黙り、才人が黙々とデルフで土を掘り返し、キュルケとタバサがレビテーションで周囲の土を大雑把にえぐり、才人が形を整える
非常に重労働なのだが、身体を癒された事でガンダールヴの力を使い切った才人でも行えた
エルフの女性を横たえ、土を被せる
ザッザッ
才人が埋め終わると、タバサが土から墓石を錬金し、墓にレビテーションで置く
「名前は?」
エルフは敵との認識が二人共有るが、才人が故人に礼儀を正してるのを尊重し、何も言わずに手伝う
「知らないが、こうしよう。『娘の幸せを願い、エルフと人の運命に抗った美しき人、此所に眠る』」
こくりとタバサは頷くと、風魔法で文字を刻み、才人は村雨で日本語で同じ文章を刻んだ
「佐々木少尉に会ったら、宜しく伝えてくれ」
水の精霊はそんな才人達を眺めながら、語りだす
「人の子の習慣とは奇妙なモノだな。世代が代わり、やり方が変わろうとも、根底は一緒だ」
「そりゃ良かった。俺も人の路からまだ外れてないか」
「そうか、何れ踏み外すか」
「物騒な事、言わないでくれ」
「何、大いなる意思の基に集う者が増えるだけだ。問題無かろう」
「ちょっと待て、どういう事だ?」
もう、水の精霊は姿を消している
「一体何が有るんだよ?この世界には……」
キュルケとタバサは顔を見合わせ、才人は仕事が増えた事と、謎が増えた事に頭を悩ませる事になる

才人達が戻ると、アンリエッタ達が待っていた
「終ったか?才人」
「あぁ」

「「さてと」」
ジェラールと才人が同調し、二人共身体を軽く動かし、コキコキと関節をならし、いきなり互いに拳を振るった
ジェラールの右と才人の左のクロスカウンター
ドゴッ!!
二人して顎にモロに喰らい、たたらを踏み後退する
いきなり殴り合いを始めた二人に、周りは呆然とする
「テメェ!!よくも人の骨折った挙句、謝罪も無しだと!?」
「ウルセ〜!!テメェこそ、俺の事上空から突き落とそうとしやがって!!」
「「ぜってぇ、泣かしたる!!」」
ドゴッバキッドカッ
二人の拳と脚の応酬に、誰も彼もポカンとしする
すると、ヒポグリフ隊員達が賭けを始めた
「さぁさぁ、張った張った。どっちが勝つ?」
「俺、無冠の騎士」
「俺、隊長」
「勿論ダーリンよね」
「…才人」
「ああ見えて、隊長拳の喧嘩も得意だぞ?良し、隊長だ」
「あの‥‥」
「陛下、野暮は言いっこ無しですよ?」
「‥‥引き分けで」
「おっと、陛下も参加だぁ!!」
「「「「おぉ〜〜!!」」」」
さっき迄のしんみり感が二人の喧嘩で吹き飛び、外野がやんやと騒ぎ出す
ドゴッバキッ
二人してボロボロになりながら拳を構え、最後の一撃
右と右のカウンター
ドカッ!!
二人してクリーンヒットし、同時に崩れ落ちる
決着が着いた様だ
「…両者ノックダウン。引き分け」
タバサが無情に宣告し、衛士隊員から悲鳴が上がる
「やられたぁ〜〜〜!?」
「陛下の総取りかよ!?」
「くっそ〜〜〜!?」
場に合った金貨を巻き上げ、胴元をやった隊員がアンリエッタに渡す
「あの‥‥宜しいのでしょうか?」
「良いんですよ。こういう遊びはきちんとけじめ付けないと」
「‥‥はぁ」
「………お前ら、ちったぁ隊長の心配しやがれ」
「何時もの事じゃないっすか」
「今回は刃物持って無いだけマシだよなぁ?」
どっと笑う隊員達
「いや、コイツマジ強ぇわ。アニエス殿が鍛えただけ有るわ」
「そりゃ、こっちの台詞だっての」
ムクリと起き出し、才人が言う
二人共顔がパンパンに腫れている
アンリエッタが慌てて駆け寄り、二人に治癒をかけ、小言を言い出す
「二人共、余計な手間をかけさせないで下さいまし!!」
その台詞に、才人とジェラールは顔を見合わせ、ニヤリとする
「さて、少しは気分が晴れた様ですな、陛下」
「良かった良かった」
「まさか‥‥演技ですか?」
「んな訳無いでしょう?俺は才人が嫌いだ」
「俺もジェラールが嫌いだ」
二人して相手を指しつつ撫然と言い、アンリエッタから笑いを取り出す
「中々良いコンビですね、二人共」
「「ご冗談を」」
二人して肩をすくめて同時に言い出し、余りのシンクロぶりに、とうとうアンリエッタは吹き出した
「ぷっ、クスクスクスクスクス。本当に面白い殿方達」
アンリエッタが笑うのを見て、二人は笑みを浮かべ、才人はポンと手を叩く
「さてと、一つやり残しが有ったなぁ」
ゆらりとアンリエッタの前に進み、アンリエッタが思わず後退る
「あ、あの?」
「まさか、お前、本当にやる積もりか?」
「有言実行は俺のモットーだ。さて、お仕置きの時間ですよ。姫様」
「ご、ご免なさい。って、駄目ですか?」
「駄目」
「せ、せめて、人の居ない所で‥‥」
アンリエッタがじりじり後退し、才人がその分詰める
「総員回れ〜〜右。耳と眼を塞げ!!」
「「「ウィ!!」」」
衛士隊がジェラールの命令に従い、目と耳を塞ぎ、アンリエッタがダッシュを始める前に才人が捕獲し、杖を取り上げる
「キャア!?」
そのまま抱え上げ、尻をひっぱたき始めた
パァン!!
「痛い!?ご免なさい!!」
パァン!!
「ご免なさぁい!!」
パァン!!パァン!!パァン!!
「…見るの……二回目」
「普通、女王陛下にやらないわよ?」
タバサとキュルケは才人の行動を呆れてみる
「ゆ、許してぇ!?」
涙目でアンリエッタが訴える
「もうしない?」
「しません!!しません!!も、許してぇ!!」
その時、才人は背後に殺気を感じる
「………ななな何やってんのよ?馬鹿犬」
沸々と怒りを溜めて、わなわな震えるルイズ
「見ての通り、お仕置きだ」
「……しししして良い事とわわわ悪い事の区別もつかないの?」
「付いてるからやってんだ」
「して言い訳………無いでしょうがぁぁぁぁぁ!!」
ドカン!!
ルイズは今迄で一番早く詠唱し、エクスプロージョンの花火が才人を華麗に吹き飛ばした
放物線を描いて湖に飛んだ才人を見送り、ジェラールは呟く
「落ち迄付けるたぁ、心底芸人だな、アイツ」

*  *  *


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Last-modified: 2011-03-12 (土) 10:47:05 (4786d)

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