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Last-modified: 2014-03-21 (金) 01:04:29 (3689d)
779 :夜中の練習:2014/03/18(火) 19:16:00.14 ID:wQZxwkzA アルビオンでの任務が終わり。ルイズが異常優しくなったりしたものの、二人は普段の日常に戻っていた。数日前までは。 授業が終わり、才人とルイズは女子寮へと続く廊下を歩いていた。二人とも、虚ろな目をして、足取りもおぼつかない。ふらふらと倒れかけたルイズを才人が肩を抱いて支えた。 「眠い……」 才人は最近寝不足が続いていた。 「ふぁぁ……」 才人は隣であくびをかますご主人さまを見た。大口を開けて、瞼を袖でごしごし擦る。美少女台無しである。 「なあルイズ」 眠いのか、声にいつものような張りがない。目の下にはうっすらくまが出来ている。 「お前さ、なんでそんな寝不足なわけ?」 才人の質問に、ルイズは10センチほど飛び上がった。 「べ、別にいいじゃない! あんたに関係ないでしょ!」 真っ赤な顔でそう怒鳴ると、ルイズはドカドカと大股歩きで先に行ってしまった。 夜。才人はルイズが動き出すのを、今か今かと待ち構えていた。 外に出てから、30分ほど過ぎた。ルイズに近寄る人影はない。そろそろ寒くなってきた。帰ろうかな、と才人が立ち上がったとき、ルイズが小さくくしゃみをした。 「あのバカ」 考えるより先に駆け出していた。 780 :夜中の練習:2014/03/18(火) 19:20:56.08 ID:wQZxwkzA 「なにやってんだよ、風邪引くだろが」 振り向くと、才人が呆れた顔で立っていた。 「な、なんであんた起きてんのよ! べ、べべべ別に関係ないでしょ!」 そう言ってルイズはそっぽ向いた。だが、寒いからかすぐに才人に身体を寄せる。くしゅんっとまたくしゃみをした。 「ほら、やっぱ寒いんだろ? 上着貸してやるから、帰るぞ」 才人がルイズの手を引っ張るが、ルイズはいっこうに動かない。 「おい」 そう言って、ルイズは才人の手を振り払おうとする。才人は握る力をさらに強くした。 「バカか。誰を待ってるのか知らないけど、誰も来ねーよ」 才人は頭にきていた。もうルイズが逢い引きしているかどうかなんてどうでも良かった。こんな格好で、寒さに震えているのに意地を張り続けるルイズにムカついた。 「ほら、帰るぞ!」 ルイズは少し俯いて呟いた。 「……魔法の練習よ」 才人は握っていたルイズの手を離した。ぽかんとしてルイズを見つめる。それをどう思ったのか、ルイズは憮然とした表情になった。 「出来もしないくせに、ばかばかしいと思ってるでしょ」 ルイズはバカね、と呟いた。 「魔法が出来なかったら、手柄を立てても認めてもらえないじゃない」 ルイズの言葉に、才人は城から帰ってきた日の教室を思い出す。モンモランシーの言葉は負け惜しみに近かったが、ルイズは相当悔しかったようだ。 「努力しても失敗するときはするわ。今までのわたしはそうだった。でも、これからのわたしはどうかしら。明日には、失敗が成功に変わるかもしれないじゃない。たった少しでも可能性があるのなら。絶対に出来ないって決まったわけじゃないのなら。わたしは絶対諦めない」 唇を固く結んで、月を見上げるルイズは神々しいほどに美しい。 781 :夜中の練習:2014/03/18(火) 19:21:59.04 ID:wQZxwkzA うらめしそうにぼやくルイズ。それを見ながら、才人は口を開いた。 「あ、あのさ。俺、昔聞いたことあるんだ。人は絶対何かの天才なんだって」 そっぽを向いて話す才人を、ルイズはぽかんと見つめていた。なんとなく恥ずかしくなって、目を反らす。 「なにそれ、意味わかんない。むちゃくちゃだわ」 顔が熱い。暗くて良かった、とルイズは思った。 「サイト、帰るわよ」 ルイズは才人のパーカーを頭から被り直した。 「練習するんじゃなかったのか?」 ルイズは才人に背を向けて歩き出した。 「お前にだけは言われたくねえよ」 才人もルイズの横に並ぶ。 782 :夜中の練習:2014/03/18(火) 19:22:39.98 ID:wQZxwkzA いつの間にか寮の前にまで来ていた。才人の呼び掛けに、ルイズは慌てて手をネグリジェから出す。 「な、なによ」 ルイズは少し頬を染めた。誤魔化すように才人に食いかかる。 「っていうか、あんたはなんであんなとこに居たのよ」 暗くて才人の表情はよく見えない。 「そうね、あんたの言う通りね。明日からはちゃんと寝るわ」 才人がルイズに顔を向けた。驚いているようだ。 「え、どしたのお前。ほんとに風邪ひいた?」 ルイズは腕を振り上げた。だが、しばらく上げた腕を見つめると、ゆっくり降ろした。 「別にあんたに言われたから早く寝る訳じゃないわ。寝不足でろくに身体が動かないんじゃ、あんたが粗そうをしたときにお仕置きできないじゃない」 そういうことかよ、まあそうだよな……とかなんとか才人がぶつぶつ言っている。 次の日、二人揃って風邪をひいて、学園にルイズと才人が夜中に外で破廉恥なことをしていた、という噂が流れるのはまた別の話。 |
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