7-495
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:57:41 (5645d)
495 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:35:17 ID:7w++2WTP 舞踏会の会場は、沢山の人でごったがえしていた。 「これ、全部誰かが化けてんのか…」 はー、と感心しながら、才人は会場の中に入ろうとする。 「これこれ」 すると、見知らぬ美女に呼び止められた。 「使い魔だとて例外はないぞ?君も鏡で変装したまえ」 …なんかずいぶんとじじむさい喋り方をする人だな? 「ほら、わしじゃよ。オスマンじゃ」 言って美女はうっふんと右手を頭の後ろに、左手を腰に、セクシーポーズを取る。 「さあ、思い浮かべるがよい。己の理想の姿を…」 理想の姿…。 「ん?どういうことじゃ?」 恐る恐る目を開けると…そこには自分がいた。 「あれ?どゆことっすか?」 オスマンの突っ込みに思わず反論する才人。 「んなわけないでしょ!ガンダールヴの力かなんかですよきっと」 才人は結局才人のまま、舞踏会に参加することになった。 「最強の力、か。なるほどそう言うわけか。なかなか面白いもんじゃの」 ジジイ言葉の美女は余り様になっていなかったが。 496 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:36:01 ID:7w++2WTP 「お前なあ、分かりやすすぎ」 才人が語りかけたのは、カトレア。 「あら、どちらかと勘違いされていらっしゃるのでは?残念ですけど、私待ち人が」 言って才人は、カトレアに化けたルイズを抱きしめる。 「え…?サイト、なの…?」 抱きしめられながら、半信半疑でルイズは問う。 「そうだよ。なんでか知らねえけど、鏡の魔法が効かなくてさ」 そう言ってルイズをいったん離し、その瞳をじっと見つめる。 「見つけたぞ、約束どおり」 その言葉に、ルイズの頬が赤く染まる。 「え、なんでっ?」 泣くようなことしてないぞ俺、とか思いながら、慌てて才人はルイズの肩を抱く。 「ちょ、ちょっと外の空気吸ってこよう。な?」 そして、二人はバルコニーに出る。 497 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:37:20 ID:7w++2WTP 「な、なんで泣くんだよ…」 ルイズは、未だ泣いていた。 「う、嬉しくっ、って…」 サイトが私を見つけてくれた。私の姿じゃないのに、見つけてくれた。 「…だって、カトレアさん知ってるの、俺とお前くらいじゃないのか…?」 才人の空気読んでない突っ込みが、ルイズのキモチを一気に冷めさせた。 「アンタわー…」 でも、見つけてくれたことには変わりない。 「で、さ…」 才人が口を開く。 「あ、あの約束の事なんだけど…」 才人は照れたようにそっぽを向き、もじもじしている。 「…うん、わかってる」 不思議と心は落ち着いていた。 「部屋で、待ってる。ずっと、待ってるからね」 そう言って、ルイズは、カトレアの姿のまま、才人とキスをした。 498 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:39:01 ID:7w++2WTP 「ちょうどいいわ。アナタ一人ね」 そのガーゴイルの肩に、かつてウエストウッドの村で見た、もう一人の虚無の使い魔…ミョズニトニルンがいた。 「どうしてアンタがこんなとこにっ!?」 ルイズの問いかけに、ミョズニトニルンは酷薄な笑みを浮かべて、応える。 「私はね。私の主の望む場所にはどこでも赴くわ。それが例え、王宮でもね。 ミョズニトニルンの言葉に反応するように、ガーゴイルが大きくその腕を振り上げた。 才人は、突然の奇襲に驚いていた。 「一体、なんなんだよ!」 理不尽な攻撃に、才人は怒気とともにデルフリンガーを抜き放つ。 「な、なんだこれ!?いつもと違うぞっ!?」 驚きの声を上げる才人に、デルフリンガーが嬉しそうに語り掛けた。 「ついに、繋がったか!いよいよ『虚無の使い魔』のお目覚めだぜ!」 499 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:41:12 ID:7w++2WTP サイトっ!大丈夫!? 心の声が、お互いの心に響いた。 「ついに『使い魔』として覚醒したってこったよ!お前らは今、完全に繋がった! デルフリンガーの声が、お互いの心に響く。 そうか。これが。 二人はお互いの位置を即座に理解し、そして伝え合う。 ルイズ、そいつをひきつけながらこっちに来れるか?俺は目の前のをなんとかしてそっちに向かう! 心の中で語り合い、二人は目の前の敵に対峙する。 「さて、さっさと決着つけさせてもらうぜ。 才人はそう叫んで、大地を蹴った。 「…悪ぃ、急ぎなんでね!」 そして、デルフリンガーではなく、空いた左の拳で、襲撃者の鳩尾を容赦なく打ち抜いた。 「タバサ!?」 気を失っているその襲撃者の正体は、タバサだった。 500 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:41:48 ID:7w++2WTP 「きゃぁっ!」 才人の助言に、自分を捕まえようと振り下ろされたガーゴイルの腕を、ルイズは避ける。 「おのれ、ちょこまかと…!」 シェフィールドは違和感を覚えていた。 「くっ、何故だ、なぜ捉えられん!」 焦りを見せるシェフィールドに、ルイズは余裕を見せる。 「アンタが下手糞なんでしょう!ほら、私を捕まえるんじゃなかったの?」 その言葉はシェフィールドの逆鱗に触れた。 「おのれ!愚弄するかぁっ!」 ガーゴイルの拳が、先ほどに倍する速度で振り下ろされる。 ドスっ! 鈍い打撃音をたて、ガーゴイルの拳が止まる。 「遅刻よサイト」 その言葉に、才人も笑顔で応えた。 「悪ぃ、遅くなった」 501 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:42:28 ID:7w++2WTP 「くっ…ガンダールヴ!刺客はやられたか!」 拳を引き抜き、シェフィールドはガーゴイルの体勢を整えさせる。 サイト。ディスペル・マジックを使うわ。 シェフィールドの目に、詠唱に入った虚無の担い手の姿が映る。 「させるかぁっ!」 シェフィールドの指示に、上空を舞っていた小型のガーゴイルが、ルイズめがけて文字通り雨のように降り注ぐ。 「やらせねえよ!」 才人はなんと、詠唱中のルイズを抱え、ガーゴイルの群れからルイズを守る。 「なっ…!?」 予想外の才人のスピードに、シェフィールドは全く着いていけていなかった。 「悪いな。伊達に最強の使い魔じゃないんでね」 言って才人は、デルフリンガーの柄で、シェフィールドの鳩尾を思い切り突いた。 502 名前:双月の舞踏会〜if[sage ] 投稿日:2006/11/17(金) 00:43:04 ID:7w++2WTP 気絶させただけのシェフィールドを見下ろす才人の右腕の中で、デルフリンガーはそう呟く。 「言っただろ?俺はもう、誰も戦争の道具になんかさせやしない。 言ってデルフリンガーを鞘に戻す。 …アンタの言葉、嘘じゃなかったんだ。 二人の心は今や、完全に繋がっていた。 …そっか。ルイズは俺の幸せのことなんて、気にしてたんだな。 そして今、ルイズには才人の幸せが何なのか、はっきりと分かっていた。 …ずっと。 二人を、死が別つまで。 二人の視線が絡み合い…二人は唇を重ねた。 「…愛してる」 静かに輝く二つの月が、祝福するように二人の誓いの言葉を照らしていた。 〜fin |
|