7-565
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:57:49 (5643d)
565 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/18(土) 11:48:26 ID:ZknoTngp マザリーニは言って、開いていた帳簿をパタンと閉じた。 「これこれ、はしたないですぞ女王陛下」 言ってアンリエッタは席を立ち、マザリーニの背後に回りこむ。 「あなたもお疲れ様でした、枢機卿」 アンリエッタの指圧はぎこちなく、マザリーニの肩の凝りをほぐすには程遠かったが、それだけで彼の一日の疲れは飛んでいくようだった。 「それで、明日以降の予定はどうなっていますか?」 指圧を続けながら、アンリエッタは問う。言わなくても明日の予定は分かっていたが、念のため、だった。 「…あと二日は、特に大した公務もありませんな。溜まっている書類もすべて、こちらで処理できる範囲のものです」 アンリエッタの顔が歓喜の色に彩られる。 「で、では、少しお出かけしてもよろしいかしら…?」 そして、再度マザリーニの肩を揉む。それは、厳しい父親のご機嫌を取り、外出をねだる娘のようで。 「…明後日の夕刻までには、お戻りくださいね?」 アンリエッタの満面の笑みに、マザリーニも笑顔になる。 566 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/18(土) 11:49:42 ID:ZknoTngp 「災難だったな、サイト」 明らかに笑みを含んだ声で、アニエスがそう語りかける。 「…アニエスさんが『デートだ』なんて言うからですよ…。 アニエスが学院にやってきた理由は、アンリエッタ女王が才人を呼び出した、という書簡を届けるためだ。 567 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/18(土) 11:50:12 ID:ZknoTngp 『シュヴァリエ・ド・サイト。トリステイン女王アンリエッタの名において、汝を召還す。 王命で呼び出されたとあっては、シュヴァリエの才人は断ることはできない。 「少なくとも陛下は『デート』のつもりだと思ったんだがな? ニヤニヤと笑みを浮かべながら、アニエスは器用に馬を操りながら肘で才人の頭を小突く。 「え。あの。その」 全部話す訳にもいかず、才人はしどろもどろになる。 「ま、日頃の修行の成果を試す時だな? そうしてもめていると、街道沿いに小さな旅籠が現れた。 「ここから先は、お前の仕事だ。 アニエスはそう言って、馬を反転させて才人と別れる。 「ア……アン……?」 その黒髪の女性は、髪の色と髪形こそ違え…アンリエッタ女王、その人だった。 「お待ちしておりました、シュヴァリエ・サイト」 最も天上に近い王たるアンリエッタが、ただのシュヴァリエの才人に、恭しく礼をした。 「そ、そんな、丁寧にしなくても…」 しかしその唇を、『アン』はウインクしながら、人差し指で塞いだ。 「サイトさん、忘れてません?私は『アン』ですよ」 言って腰の後ろに手を回し、にっこりと微笑んだ。 568 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/18(土) 11:51:39 ID:ZknoTngp 「…え?」 驚く才人に、周りに居合わす客たちは、口々に才人を称える。 「シュヴァリエ・サイトのお出ましだ!」 なにこれ、と才人が隣で微笑むアンに視線で説明を求める。 「すいません、サイトさんの名前で宿をとったら、あっという間にお客さんたちの間に『あの英雄が泊まりに来るぞ!』って話題になっちゃって…。 言ってアンは食堂の真ん中のテーブルを勧める。 「おう、こいつは俺のおごりだ!俺は『赤熊』!アルビオンでお前さんに助けられた傭兵よ! 『赤熊』と名乗った男の怒声に、周りにいるどう見ても尋常ではない風体の男どもが、『おぉぉーっ!』と鴇の声を上げる。 「あ、ありがと…」 その勢いに押され、才人は思わず引く。 「さ、皆サイトさんを待ってますわ。音頭をどうぞ」 そして両手を添え、才人にジョッキを持ち上げさせる。 「えっと…我らの未来に、乾杯」 その声に一瞬、食堂がしん、と静まり返る。 「おう!我らの未来に!」 そして、宴の幕は切って落とされた。 654 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:05:20 ID:xUaI2Nz7 「大人気ですね、サイトさん。私も鼻が高いです」 言って、隣で肉を切り分けるアン。 「はは。正直そんな器じゃないと思いますけど」 苦笑いして、アンの取り分けた皿を受け取る才人。 「なぁに謙遜してやがんだ!単騎で七万の軍を止めるなんざ、俺でもできねえよ!」 周りの傭兵仲間が、そうだそうだ、と合いの手を入れる。 「お前はそれをやってのけた。そして、それに倍する命を救ったんだ。 そして、アンの切り分けていた肉の塊を半分ばかり両手でむしり取ると、手にした塊にかぶりついた。 「こんな旨いもんが喰えるのも、旨い酒が飲めるのも、綺麗な姉ちゃんが抱けるのも、全部お前さんのお陰だ! そしてもう一度、ばしんばしんと才人の肩を叩いた。 「俺がトリステインの盾だーーーーーーっ! その声に、食堂中が沸きあがる。 656 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:06:21 ID:xUaI2Nz7 「んー、おれがとりすていんのたてらー…」 幸せそうな寝顔で、そう呟く。 「お付さん、英雄を部屋に連れて行ってやんな」 箒で床を掃いていたアンに、赤熊はそう声を掛ける。 「でも、まだお片づけが」 そう言って箒を抱えて、惨状を呈するフロアを指差す。 「アンタじゃ明日の朝日が昇っても掃除は終わらねえよ」 言って口の端を豪快に歪め、続ける。 「アンタ、英雄のお付なんて言ってたが、相当いいとこの出だろ? そして、呆けるアンから箒を奪い取る。 「たまの休みにゃ嫁にいびられながら家の掃除するのが趣味なんだ、俺は。 言って不器用なウインクをする。 「そういう鈍感な男はな、押しに弱いんだ。なあに、女がいようとかまやしねえ。 そして下品な声でがははははは、と笑う。 657 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:07:25 ID:xUaI2Nz7 アンは才人に歩み寄ると、そっと耳元で囁く。 「あの、サイトさん。そろそろお部屋に行きません?」 すると才人はバネ仕掛けのようにびょんっ!と気をつけの姿勢になると、 「平賀才人、部屋に戻るでありますっ!」 と赤熊に敬礼をして、ぎっこぎっこと危うい足取りで歩き出した。 「ああ、危ないですっ!ほら、掴まって!」 千鳥足の才人をアンが支え、二階への階段を上がっていった。 「昔は俺もあんな感じだったのかねえ…」 気がつくと、ベッドの上で横になっていた。 「あ、目が覚めたんですね」 手の上には、湯気を立てるシチュー皿の載った盆を持っている。 「もう夜中ですよ。 そして、酔った才人を思い出し、くすりと笑う。 「あ、あの、俺…」 なにかしませんでしたか?という才人の台詞を遮って、アンは言った。 「なかなか可愛かったですよ、酔ったサイトさん」 …マジデ俺ナニシタンデスカーーーーーー!? 「赤ちゃんみたいで♪」 …死んだ。俺の心は今殺されました…。 「はいどうぞ。お腹が空いていると思って」 そして、スプーンでシチューを掬って、才人の前に差し出す。 658 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:08:25 ID:xUaI2Nz7 「おいしい!おいしいよコレ!」 言ってアンから皿を奪い取り、夢中でシチューを貪る。 「ご馳走様っ!」 そしてアンを見ると。 「え?ええええええええええ??お、俺なんかした!?」 何が起こったのか理解できず、慌てる才人。 「いいえ、違うんです。嬉しくって…」 アンが言うには、このシチューは彼女が宿の厨房に頼んで作らせて貰ったものだというのだ。 「ずっと、上手に出来るかどうか不安だったんです。 そして、目尻に溜まった涙を拭き、笑顔になる。 「これで、自信がつきました。ありがとうございます、サイトさん」 言ってぺこりと頭を下げる。 「そ、そんな大したことしてないですよ俺…」 頭を掻く才人のお腹が、不意にぐうっ、っと鳴った。 「ちょっと待っててくださいね。お代わりを入れてきます」 659 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:09:36 ID:xUaI2Nz7 「あのー?」 言ってアンは、才人の目の前に椅子を引っ張ってくると、そこに腰掛け、シチューの皿を手に取った。 「はい、あーん♪」 才人は思わず周囲を警戒するが、誰も見ているはずがないと思い直し、アンの言葉に従う。 「あーん」 才人の口の中に、再び天上の味が広がった。 「はー、もうお腹一杯だあ」 満足して、才人は椅子の背に身体を預ける。 「あら、もう入りません?」 言って、盆の上に載った小さな瓶を手にする。 「大丈夫、まだ余裕ありますよ」 才人がそう言うと、アンは瓶を持ったまま、妙なことを言った。 「それじゃ、準備しますからアッチ向いててくださいね」 そして反対側の壁を指差す。 「…な」 そして固まった。 660 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:10:12 ID:xUaI2Nz7 「ななななななな、なにやってんですか!」 言いながら、うろたえる才人に歩み寄り、蜂蜜を塗ったせいで光を反射する胸を突き出してみせる。 「サイトさんだけの特別サービスです…。 才人の理性はその一撃でノックダウンした。 「はぁ…ふぁん!」 アンの喉から、嬌声が漏れる。 「あっ…ふぁっ…!すわれ、るぅっ…」 右胸が蜂蜜と共に才人に吸い取られるんじゃないか、という錯覚が、アンを狂わせる。 「あ、あ、あ、はぁっ…サイトさっ…」 右胸を犯されて蠢き始めたアンの獣が、喉の奥から艶かしい声を絞り出す。 661 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:10:47 ID:xUaI2Nz7 両胸を犯される快感に、アンの喉と背筋が踊る。膝かかくかくと震え、体重が後ろにかかる。 「は、あ、あ、あ、あ、あーーーーーー!」 その胸虐だけで、アンの身体は仰け反り、視界が白く染まった。 「全部…食べないとな」 ケダモノに支配された才人は、そう言い放つと未だ快感の余波に浸っているアンの胸の隙間に、舌を這わせた。 「ひゃぁっ!?」 一度達したアンの身体は、才人の舌が胸の間を這うだけで、燃え上がった。 「ふぁ、ふぁ、やぁ、おなかっ、やだぁっ」 アンはその快感に堪えるしかない。必死にかぶりを振り、意識を繋ぎとめる。 「ここにも…残さず食べなきゃな。アンがせっかく用意してくれたんだし」 才人はそう言って、右手でべとべとのショーツをずらし、アンの中身を外気に晒す。 「全部食べちゃうよ?」 才人の台詞に、アンは頷く。 「どうぞ…全部、サイトさんのですから…」 アンの言葉に、才人は遠慮なく、二つの蜜でどろどろになった彼女の蜜壺を貫いた。 662 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:12:32 ID:xUaI2Nz7 そのまま密着してきた才人の上半身を、アンは抱きしめる。 「ん…んふっ…」 才人の頭に両腕を回し、その口付けに応えるアン。 「ん、ん、んんんんーーーー!」 唇と秘所を塞がれたまま、才人を抱きしめ、アンは達する。 「アン、だ、出すよっ!」 どくどくどくどくどくっ! 「あ、だめ、だめ、だめ、だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 視界が無数の色にフラッシュし、アンの意識は焼き切れた。 663 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:13:29 ID:xUaI2Nz7 「送りますよ、トリスタニアまで」 いつまでも自分の腕を離さないアンに、才人はそう優しく語り掛ける。 「ダメですよ。そんなに優しくされたら…泣いちゃいます」 しかし、既にアンの目尻には、涙が浮かんでいた。 「じゃあ、一つだけ。 そう言うアンの瞳は深くて、吸い込まれそうで。 「いいですよ」 一つじゃなくて二つじゃん、なんて野暮な突っ込みは、停止した才人の思考にできるはずもなく。 「い・ぬ?」 その数メートル向こうで、聞きなれた声とともに、地獄の扉が開いた。 「あんまり遅いから迎えに来てみれば? 一切崩れない完璧な作り笑顔がものすごく怖い。 「…あ、あの、どうやってここを?」 後ろを見ると。 664 名前:夢への一歩 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日:2006/11/19(日) 23:13:59 ID:xUaI2Nz7 詰め寄ったルイズと、アンの目が合う。 「あーーーーーー!姫様ーーーーーーーーーーーーーー!!」 …あ。バレた。 「…相応の覚悟ってこういう意味だったんですか姫様ぁーーーーー!」 ルイズはアンの襟元を掴み、がっくんがっくん揺する。 「な、ななななんの事ですか?私はアン、旅籠の女将を目指す、普通の女の子ですっ!」 あくまでとぼけるアンに、ルイズはふーーーん、と揺するのをやめる。 「なら、ここいいるのは、サイトを狙うアン、って子なわけですね」 再び物凄い勢いでアンをがっくんがっくん揺する。 「さて。事情をたぁっぷりと聞かせてもらいましょうか?主にその身体で」 満面の笑顔で、ルイズはダメ出しをした。 その数日後、『トリステインの盾』を遥かに凌ぐ強さの女メイジの噂が、トリステイン中の傭兵の間で駆け巡ったというが、それはまた別の話。 |
|