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Last-modified: 2008-11-10 (月) 23:00:49 (5617d)
お久し振りでございます。ハルバードでございます。 拝啓、自由な旅人様。…誠に、誠に、申し訳ありません。 未だに雑談用掲示板にコメントが出来ません。 後これを見て下さっている方々。 そしてこれを見て下さっている方々。 大事な事を言い忘れていました。 もし続きを楽しみにしていただけるなら! 〜ゼロの裁判〜 オルレアン法律事務所にオリバー・クロムウェルが来た翌日の朝。 そんな寒い中、黒髪の青年がオルレアン法律事務所の前で うろうろしていた。 彼は時折、「…ちくしょ。早く来過ぎたなぁ…。」とぼやく。 彼は昨日と同じ失態を繰り返さぬ為に事件の書類をもらった後すぐに寄り道せずに家に帰り、 努力の甲斐あり、早く来る事が出来たが… 尚、待ち合わせの時間は7:00である。 しばらくすると、青髪の眼鏡をかけた美女が歩いて来る。 「おはよ。サイトっ。」 「おわっぷ?!」 突然の青い弾丸にサイトは倒れそうになるが、なんとか持ち堪える。 「おはよ、シャロ。……あれ?先生は?」 当然と言えば当然の反応だが 「…後から来る。出かける時にまた母様といちゃついてたせいで 「またかよ…。人に遅刻するなよって言っといて自分が遅刻て。」 ハア…。と2人で溜息をつく。 そしてシャルロットは何かに気付いたように少しだけ離れ、サイトの手をとる。 「…サイトの手、冷たい。………暖めてあげる。」 そう言ってサイトの手にハアっと息をはいて、手をさする。 サイトは、シャルロットのそんな気遣いにうれしくなる。 「…ありがと、シャロ。」 そう言って笑うとシャルロットは少しはにかむ。 「…別にいい。でも…私も寒いから…ぎゅってして。いっぱい暖めて。」 そう言って抱き付き、目を閉じつつ軽く唇を近付けて来る。 《これはあれですか!伝説の『キスして』ですか!…これが俺のファーストキスか…。 …いつの間にか鬼神が降臨していた。 にこにこ笑っているのに 額に青筋浮かばし、どす黒いオーラを立ち上ぼらせている鬼神が。 「せ、先生…後から来るんじゃ…?あ、あははははは…。」 既にサイトは乾いた笑いしか出来なかった。 「なあに、君がこういう事してんじゃないかなあって勘づいてタクシーで来ただけさ。…あとね?才人君。」 「ふ、ふぁい。」 「いくら才人君でもさぁ…。ウチの娘に手ぇだしたら…」 「は、はい。」 あっさりとオーラに飲まれたサイトはマジビビリする。が、 「…父様?」 運よく救世主が現れた。 「…次、邪魔したら許さないと言った筈だけど?」 途端にシャルル弁護士は逃げ腰になる。 「ご、ごめん!シャルロット!父様見てられなくて!」 「……もういい。そんな事より早く出発しないと日が暮れる。…私の事になるとすぐ目的を見失うのは父様の悪い癖。」 そう言って軽く睨む。 「ごめんシャルロット。」 「…いいから。最初はどこ行くの」 そしてやっとの事で調査が開始された。 同日、AM8:00。 3人はとりあえず事故現場へ向かって歩いていた。 「先生。」 「なんだい?才人君。」 「先生は昨日『クロムウェルさんの依頼は100%勝てる』って言ってましたよね? シャルル弁護士は途中のコンビニで買った缶コーヒー (微糖)を飲みながら答えた。 サイトは首をかしげて尋ねる。 シャルル弁護士は飲み終わると、缶をゴミ箱に捨てながら答えた。 「今回の依頼は初めて才人君が引き受けた依頼だからね。なるべく自分の手で考えて欲しいのさ。」 そしてまた歩き始める。 「じゃあ今日は私が才人君に質問しよう。…才人君。今回の事件のどこが不自然なんだと思う?それとも、おかしな所はなかっただろうか。」 シャルル弁護士は楽しげに才人の 顔を見ながら質問する。 「え……えーと……。…全然分かりません。」 「本当に?全く?」 「…すみません。 」 「やれやれ。がっかりだなあ。」 シャルル弁護士は口ではそう言ったが、顔は全くがっかりしている様子はなかった。 むしろ、どこか期待しているような感じだ。 「じゃあ一つだけ、ヒントをあげよう。ヒントは“酒と地下駐車場”だ。……いいかい才人君。もし何かわからない事があっても、すぐに『わからない』で済ますな。『考える』んだ。絶対すぐには諦めるな。根源…つまり、『なぜそうなるのか?』を考えてみたまえ。」 そう言ってサイトの答えを待つ。 「…事件の概要書類、見ながらでもいいですか?」 サイトは若干困った顔で シャルル弁護士の顔を見る。 「ああ、覚えてないのか。うん、いいよ。」 「有り難うございます。」 サイトは昨日もらった書類を鞄から取りだし読み始める。 「事件が起こったのは4月10日午前1時頃。 深夜、自動車事故により一人死者がでた。 死亡したのはウェールズ・テューダー(27)。 事件が起こった場所はウェールズ宅の地下駐車場。 その日はウェールズの誕生日パーティでだった。 終わった後はパーティに来ていた人達をそれぞれ地下駐車場で見送った。 本人 は“飲んだ記憶は無い”と否定しているがクロムウェルは酒を飲んでいたと証言。 2人の目撃証言によると、クロムウェルは車に乗りこむなり、アクセルを思いっ切り踏み抜き、車 が通るゲート を開けていたウェールズを思いっ切り撥ねたらしい。 彼は急いで病院に運ばれたが 治療の甲斐虚しく死亡した。 そしてクロムウェルは訴えられた。 サイトは全部読み終わって…気がついた。 横でシャルル弁護士はにやりと笑う。 「そういえばクロムウェルさんを送る時、地下駐車場に行ったって事はクロムウェルさんは『車で来て いた』…って事になる。 それなのに、いくらパーティでも酒を飲むか? じゃあクロムウェルさんはどこで飲んだんだ? ……それに……なぜ酒を飲んでいたクロムウェルさんを地下駐車場へ? ……だいたいもしクロムウェルさんを車で送る用意をしていたとしたら、なぜクロムウェルさんが運 転席に乗りこめる?既にアンリエッタ婦人か、ルイズさんが乗ってる筈なのに…って事すか?! 先生!」 「その通り!正解だ才人君!…じゃあここで、これから行く所で調べなければならない事 を整理しておこう。 1・クロムウェルさんはどんな形で酒を飲んだのか?または、本当に飲んだのか? 2・死んだウェールズ社長の死ぬ経緯及び、人間関係。 3・アンリエッタ婦人とルイズさんの目撃証言の詳しい内容及び、人間関係… シャルル弁護士の整理した事を聞いたサイトは不思議そうな顔で質問する。 「先生、なぜわざわざ人間関係を調べるんすか?…つーか調べられるんすか? するとサイトの問いに対して、シャルル弁護士はクスクスと笑いながら答える。 「そこを聞き出さなきゃ〜。それにさぁ。もし私がそうゆう交渉が出来なかったら、私は弁護士やってこれなかったよ。 そしてその2秒後、彼らは 同日AM11:30 ここは、今は亡きウェールズ氏の家の一室。 今はもう警察の捜査のせいでほとんどの物が証拠として消えたが、2人の思い出の品は部屋に置いてある箱の中に僅かに残っていた。 そんな部屋に一人ポツンと、栗毛の女性が部屋の真ん中に立っていた。 「…どうして……?なぜ、あなたは私と一緒にいてくれなかったの……?」 大粒の涙を流しながら一人呟く彼女の名前はアンリエッタ・テューダー。 彼女は泣きながら思い出の品の一つの、写真を箱から取りだし抱き締める。 彼女は唇を震わせて、時折しゃっくりあげる。 彼女にとって今一番側にいて欲しい人は今ここにいなかった。 彼女がしばらく泣いていると玄関のチャイムがなる。 ドゥィンドゥゥン。 「ごめんくださーい。オルレアン法律事務所の者ですがー?」 アンリエッタ婦人は涙を拭い写真を箱に戻す。 「オルレアン法律事務所…?ああ、あの時の…。」 そう呟いて彼女は玄関に出向いた。 3人がチャイムを押してしばらくすると、 「お久し振りです。アンリエッタ婦人。お元気ですか?」 するとシャルル弁護士の顔を見て少し、笑顔になる。 「あら、お久し振りです!シャルル先生。…あの時は有り難うございました。 「ああ、近くを通ったものですから。……ウェールズ社長は元気ですか?」 その言葉を聞くとアンリエッタ婦人は悲しげに目を伏せながら、答える。 「いえ…、主人は一週間程前に亡くなりました…。」 「なんですって? どうしてまた…?」 「…殺されたのですよ。家のお抱え運転手に。」 「…詳しく聞かせてもらってもいいでしょうか?」 「…わかりました。何もお構い出来ませんが、どうぞ中へ。」 アンリエッタ婦人はドアを開けて3人を迎え入れる。 3人はアンリエッタ婦人に案内されて廊下を進む。 きれいに片付いたリビングに着くと、アンリエッタ婦人はここで少し待っていて下さいと言ってキッチンに 引っ込む。 「…先生、あんな嘘ついていいんすか? サイトがジト目でそう聞くと、 「ああ、昔ちょっとウェールズ社長の弁護した事があってね。 「先生、なんかセコいすね。」 「ふふっ。これも戦術さ。人生のね。」 しばらくするとアンリエッタ婦人がリビングに入って来た。 「…どうぞ。粗茶ですが。」 そう言ってお茶を出す。 シャルル弁護士「ああ、これはどうも。」 サイト「あ、有り難うございます。」 シャルロット「…どうも、有り難うございます。」 アンリエッタ婦人は配り終えると3人と向かい合う感じでソファに座る。 「…それでは、お話します。」 〜省略。さっきの書類と中味が一緒の為。〜 「わかりました。話して下さって有り難うございました。 「…すいません。その事は『絶対誰にも話さないで下さい』 と今回担当する検事さんに 言われてまして…。 「…そう、ですか…。 (チッ)それじゃあ、事故現場とウェールズ社長の部屋だけ見せてもらってもいいでしょうか?」 「…えっと…事故現場の方には警察の方がまだいますけど…。それでもいいとおっしゃるなら…。」 「ええ、構いません。有り難うございます。 同日PM1:00ウェールズ社長の書斎。 「…なんもないすね。先生。」 「まだ机と箱とスーツがあるよ。可能性はゼロじゃない。」 「父様。ウザいから早く調べて。」 「…シャロ。」 「何?」 「先生がまた落ち込んじゃったんだけど?」 「…いちいち気にしてたら時間の無駄。サイト、私達は手分けしてなんらかの証拠になるものを探して。」 「でもさぁ、シャロ。例え見つけたとしても、勝手に持っていっちゃったら……泥棒じゃない?」 シャルロットはフルフルと首を横に振って、 「 写真に撮れば大丈夫。…だからサイトも早く探して。」 「うん、わかったまかしとけ。」 〜数分後〜 「ん?なんだこりゃ?」 「…スケジュール帳?……一応写真撮っとくか。」 すると、今まで他を探していたシャルロットが急いで近付いてきた。 「サイト。それ…。」 そのスケジュール帳にはウェールズ社長が浮気相手と会う約束が書かれていた。 「…写真に撮る。」パシャッ。 サイト達は、第1の証拠…ウェールズ社長の浮気予定帳を手に入れた。 「…サイト、これを見て。」 シャルロットが見せた物は、ウェールズ社長にかけられた保険金の契約書だった。 「…?なんでこんなにかけてんだ? …これじゃあまるで…」 「…保険金目当ての殺人。」 「…サイト。もう一つ気になる物がある。…この契約書。 」 シャルロットが見せたもう一つの紙を見ると、 「まだあるかな?証拠品。」 「…探す。」 が、しばらく探しても何一つ見つからなかった。 「…ないね。」 「ああ。…つーか先生いつの間にかいねぇし。」 2人は少し休憩していた。 「証拠品はいくつか見つかったけど…。さすがに警察がいろいろ持っていっちゃったらね…。」 サイトとシャルロットは、ハアっと溜息をつく。 「ただいま〜。証拠品見つかった?」 「あっ!先生!どこに行ってたんですか! …いくつか見つかったんすけどね、 先生がいないせいでどうしたらいいのかわからなかったんすけど?」 「それは悪かったね。…でも、私も一つ情報を手に入れて来たよ。…まぁ、悪い情報だけどね。」 「どんなんすか?」 「…今回の法廷は 一筋縄では行かないかもしれない。」 「どういう事すか?」 「相手が少し悪いのさ。」 「相手?検事の事すか?」 「うん。さっき事故現場で見掛けたんだ。」 「7年前に起きたあの有名な事件を担当した時に戦った検事さ。」 「なんて名前なんすか?」 「アニエス・ミラン検事さ。」 〜終〜 |
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