X00-42-13
Last-modified: 2008-11-10 (月) 23:01:02 (5639d)
X00-42-12のつづきです。
買付日の翌日
魔法学院の大特訓が開始された。
元々ある程度訓練していた水精霊騎士隊とは違い、下地ゼロの学院生は、直ぐ倒れる者が続出した。しかし疲労回復薬と何より成し遂げたい目標が彼等を立ち上がらせた。
「こんな特訓、学院生が良くやっていられるな」
アニエス式特訓を見て才人は、率直にそう思った。
そんな中、一騎の竜騎士が降り立った。ルネだった。
「サイト大公、レイナール副大元帥、王命によりお迎えに上がりました」
「ルネ、ギーシュ達にも言ってあるが、敬語使うなよ。友達だろ」
「いや、しかし」
「たっく、じゃあ命令『俺に公式の場以外敬語禁止』」
「了解、相変わらずだな。サイト」
「まあな、で姫様何の用?」
「用件は分からない。迎えに行ってくれだけだから」
「そうか、レイナール行こうぜ」
「ああ、それではお願いする」
「了解しました」
才人達を乗せ、風竜は空に舞い上がった。
1時間程の飛行で王宮に到着した。
「サイト殿、レイナール殿、急なお呼出申し訳ありません」
「いえ、ですが姫様一体なんの用ですか?」
「お二人には御決裁して頂く書類が有るのです。サイト殿には大公の、レイナール殿には、枢機卿の補佐としての書類が有るのです。他に面会なども有ります」
「姫様、俺決裁なんて解らないんですが」
「ご安心を、ちゃんとお教え致しますわ。枢機卿はレイナール殿のご指導お願い致します」
「畏まりました」
「では、サイト殿執務室までいらして下さい」
「はい」
執務室に入ると、アンリエッタの机の隣にもう一つ机が並べられていた。
「姫様、もしかして俺、隣で決裁するんですか?」
「ええ、私の隣は、御嫌?」
(私は嬉しいですわ)
「いえ、そんな事有りませんが、緊張しますね」
「まあ、ですが隣の方が分からない時、聞きやすいと思いまして」
「確かにそうですが」
「では、始めましょう」
才人の決裁は、ほぼ名前を書くだけ済むようになっていた。しかし量が半端じゃなかったので、数枚書いただけで、嫌になっていた。
しかし、アンリエッタの方は、更に枚数が多かった。だが彼女は、次々と決裁を済ませて行った。
「サイト殿、如何ですか?」
「名前を書くだけなんですが、大変ですね」
「スレイプニィルの舞踏会で私が言った事を覚えていらっしゃいますか?毎日山の様な書類と向き合い、嫌な相手でも笑顔で接しなければならず、多忙と心労で貴方に癒しを求めた事をご理解頂けたかと存じます」
(貴方が傍に居て下されば公務も苦になりませんわ)
「確かに」
「レイナール殿の方は、枢機卿の補佐なのでそれ程多くないと思いますが、サイト殿は毎日こなさないと大変な事に成りますわよ」
「毎日…ですか」
「ええ、幸いサイト殿は、学院生ではないので授業は無いでしょう。ですから大公ですし王宮内にサイト殿の部屋を設けてお住まいになって構いません」
(そうすればずっといっしょに居られますし)
「ルイズが卒業しないことには」
「そうですね…ですが毎日となると大変ですわよ」
(そんな事仰らずに今日からお願いしますと言ってくださいまし)
「そう思います。ですが騎士隊にも協力しないといけませんし」
「そうでしたわね。それでは気が変わったら何時でも御しゃって下さい」
「有難う御座います」
「もう直ぐ昼餐ですので出来るだけ片付けましょう」
「分かりました」
その日一日、アンリエッタの苦労を実感した才人であった。
執務室が同室になったのは、無論枢機卿差し金である。その理由は
@例の計画の下準備
Aアンリエッタの心を癒し、執務能率を上げる
B面会等の効率を上げる
である。
帰路
「サイト、毎日魔法学院から通勤するつもりかい?」
「ああ、ルイズが許す筈ねぇだろ」
「確かにね、でも明日からは馬でかい?」
「いや、姫様の計らいでルネが運んでくれるよ」
「そりゃ良かったな。馬だと毎日はきついからな」
「ルネ、済まないな」
「命令だから構わないよ。竜騎士隊の人使いの荒いのは慣れているから」
「後で何か礼をするからさ」
「期待しているよ」
「レイナールの方は?」
「僕の方は、3日に一回位かな、その時は、一緒に乗せてもらえるかな?」
「構いません」
「では、僕も礼を用意するよ」
「有難う御座います」
こうして才人達を乗せ風竜は、魔法学院目指して飛び続けた。