X00-42-22
Last-modified: 2008-11-10 (月) 23:01:15 (5639d)
X00-42-21のつづきです。
オークション当日 王宮中庭
この日、トリステイン王家主催のオークションにハルケギニア各地から有力者や豪商、魔法アイテム屋など多数参加した。
主だった有力者は、ゲルマニアからは、皇帝アルブレヒト三世、フォン・ツェルプストー家他。
トリステインからは、ラ・ヴァリエール公爵家、バーガンディー伯爵家他。
クルデンホルフ大公。
ガリアからは、財務大臣(ジョゼフ王の名代)他。
ロマリアからは、教皇聖エイジス三十二世ヴィットーリオ・セレヴァレ他有力寺院。
無論彼らには、近衛騎士団やら花壇騎士団、聖堂騎士団、空中装甲騎士団、親衛隊などが護衛に就いている。
中でも注目されたのが、何といっても現教皇の参加であろう。
本来、このような俗事に参加する筈が無いからだ。
「聖下、ご連絡頂ければお迎えに上がりましたものを。それにしてもこの様な俗事に聖下自ら参加されるとは、思いもよりませんでしたわ」
「お気遣いご無用に願います。これは私の我儘で来たのです。表向き宗教庁に入用品の買い付けですが、
オークションなる物に参加したいだけなのですよ。何しろ教皇ともなると、何か一つ行動しようとすると、司教やら神官達が色々煩いもので、
その憂さ晴らしをしに来ただけなのですよ。アンリエッタ殿もお分かり頂けると存じますが」
(真の目的は、聖戦の資金援助。もう一つ、聖戦の切り札の作成のためですがね)
「えぇ、分かりますわ。それでは聖下、オークションをお楽しみくださいませ」
「ご理解感謝致します」
こうしてオークションの幕は、切って落とされた。
普通物量が多い場合は、高値にはなりにくい筈だが、レッサードラゴンの各部位という非常に入手困難な、それ故偽物も多いのだが、
今回はトリステイン王家100%保証の本物のため、オークションは過熱していた。
無論、教皇とジョゼフの陰謀も加わっているためだが…
殆どの品が、通常のほぼ倍の値段で落札されていった。
オークションに出品されたレッサードラゴンは、倒された119頭からアカデミーの研究用に2頭差し引いた117頭だった。
他にドラゴンアーマー用に鱗は、全て取り除かれていた。
結果1頭当たり約180万エキューで落札されていった。
総売上金額は、約2億1,060万エキューとなった。
これにより才人の報奨金は、185.4万エキューとなり、
水精霊騎士隊は、一人当たり4,500エキューとなった。
銃士隊が一人当たり1,800エキュー、レイナール、ルイズ、ティファニアは、特別報奨金として1万エキュー、モンモランシーが5,000エキュー、タバサ3,000エキュー、他の魔法学院生500エキュー、戦死者一人当たり1,000エキューが支払われることとなった。
支出合計は、約283万エキューとなり差し引き約2億777万エキューが国庫に入る事となった。
これはトリステインの国家予算の1年4カ月分以上もの大金であった。
そして才人とアンリエッタ女王の婚約と4人の側室の発表があった。
大きな歓声が上がり、表向きの祝福がなされた。
無論あちらこちらで、ひそひそ声の嫌味が発せられていた。
オークションが恙無く終了し来客が帰り始めた時、布を取り払っていきなりヨルムンガントが3体現れた。ギーシュが以前才人の像を作った時使った「周りの景色に合わせて模様を変える魔法の布」を掛けて中庭の隅に潜んでいたのだった。
人々は、悲鳴を上げ逃げ惑った。
「さあて、どうやって遊んであげようかね。ジョゼフ様の命令が無ければ虚無の担い手とガンダールヴを倒してやるんだがね」
オークション終了まで待機の命を受けたミョズニトニルンであった。
「こけにされた分、死なない程度に痛めつけてやるとするか」
恐ろしげな笑顔で呟いた。
「あれは、アルビオンで見た騎士人形じゃねえか」
「姫様、早くお逃げ下さい。最悪この辺り一帯廃墟になってしまいます」
「いいえ。皆が逃げのびるまで此処を動く訳にはまいりません」
「ルイズ、ラグナ・ブレイド!」
「サイト、精神力あまり溜まっていないの」
「嘘!ここんとこ、お前が怒る様な事続いたじゃねぇか」
「相棒、娘っ子はあまり怒っていないんだよ」
「へ?」
「つまりだな、自分も一緒に納得してやっていたからなんだよ。もしのけものにでもされていれば、ラグナ・ブレイド2,3発分の精神力が溜まったんじゃねえか?」
「サイト、私なら精神力満タンだから神衣(ゴッド・クロス)唱えられるよ」
「テファ、俺はいいから皆に掛けてくれねぇか」
「えっ…うん、分かった。けどサイト死なないでね」
「ああ、じゃ頼んだぞ」
「ルイズ、唱えられるとこまででいい、後は俺が何とかする」
「分かったわ。でも無茶しないでよね」
「相手が相手だからな。保証はできねぇ」
「止めても無駄…ですわよね」
「ああ」
「では、約束して下さいまし。私を再び悲しみに濡らさぬと」
「約束する」
「貴方は、私達の太陽。絶対死んではいけない」
「ああ、死なない」
「ちゃんと戻ってきてください」
「戻ってくるよ」
ルイズがデルフリンガーに短い詠唱のラグナ・ブレイドを掛けた。
「相棒、はっきり言うが倒せねぇぜ、せいぜい装甲板を斬り裂くくらいしか出来ねぇぞ。それも2体で精一杯だあね」
「そっか、それでもやるしかねぇだろ。とにかくギーシュ達に協力してもらう。今のあいつ等なら、力を合わせれば倒せると思う。俺に考えが有るんだ」
各国の近衛騎士達、親衛隊達は、主を守るためヨルムンガントに魔法攻撃を加えた。
無論、反射(カウンター)の掛ったヨルムンガントには、全く効かなかった。
「何なんだ、あの怪物は?此方の攻撃が全く通用しないぞ!」
「此処は危険です。早くお逃げ下さい!」
悲鳴に近い叫び声が中庭を埋め尽くす。
「おい、ギーシュ。力を貸してくれ」
「サイト、一体如何するんだね?奴には、魔法も君の剣も効かないんだぞ。あっ、そう言えばゴールドラゴンを倒した時のルイズの呪文は?」
「はっきり言うが装甲板を斬るしか出来ねぇとさ。だからお前達に協力して欲しいんだ。俺が斬った切り口に水魔法で出した水を錬金で油に変えて、風魔法で大量の風と共に押し込んで、ファイヤーボールを打ち込んでくれ。そうすればきっと倒せる」
「コルベール先生の『ゆかいな蛇くん』の応用だね」
「その通り、流石レイナールだな」
「分かった。その作戦で行こう。サイト、そっちは頼んだぞ!でもどうやって斬るんだい?レビテーションは浮かぶ事しか出来ないし、君を抱えてフライで飛んでも奴ら素早いから捉えきれないだろうし、最悪、的になると思うけど」
「ゴールドドラゴンの力を使えば単独で飛べるよ。未だ上手く飛べねぇけどな」
「そうか、君にはその力があったんだったね。すっかり忘れていたよ」
「じゃあ頼んだぞ」
「任せておきたまえ」
才人は、鎧姿になった。
「行くぞ、デルフ」
「しくじるなよ、相棒」
才人は、一番近くにいたヨルムンガント目掛けて飛び立った。
「何?ガンダールヴが単独で飛んでいるだと?あの金色の鎧は一体?」
才人は、一気に喉元まで接近し、デルフリンガーを振り下ろした。
「おおおおおおおおおお」
ヨルムンガントの装甲板は、斬り裂かれた。
生物であれば致命傷となるであろうが、ヨルムンガントは、何事もなかった様に才人に襲いかかった。そこにギーシュ達が、指示通り魔法攻撃を切れ目に打ち込んだ。
「離れろ相棒!」
ヨルムンガントの体内で爆発が起こり、巨体が真っ二つになり…崩れ落ちた。
「馬鹿な!倒されただと?!」
他の2体が才人目掛けて突進して来た。
「あと一体だけだぞ、相棒」
「分かってるよ」
再び飛び上がり、手前のヨルムンガントを斬った。
すかさずギーシュ達の魔法攻撃でヨルムンガントは爆発し、崩れ落ちた。
ラグナ・ブレイドの光が消え去った。
「奴は危険だ。命に反してでも、此処で殺しておかなくては!」
才人の頭上にヨルムンガントがやって来た。
「踏み潰せーーー」
「相棒、迷うな。龍語魔法(ドラゴンスペル)を使え!」
才人は、右手を真上に上げ。
(ドラゴン・フレアー)
才人の右手から眩い閃光が放たれ、ヨルムンガントは、左足首だけを残して消滅した。
文字通り塵一つ無く消滅した。
「馬鹿な!3体のヨルムンガントが、あっという間に倒されてしまうとは…何よりガンダールヴが最後に放った閃光は、一体何なのだ?強化した装甲を無に帰すとは…信じられんがジョゼフ様にご報告申し上げねば」
「ミューズよ」
「ジョゼフ様、申し訳ありません。3体のヨルムンガントがあっさり倒されてしまいました」
「良い良い、気にするな。奴らの力が分かったのだからな。早々に帰ってまいれ」
「はっ、畏まりました」
(次は、必ず倒してやるぞ、ガンダールヴ!)
「サイトの奴、一人で空飛べるなんて私に一言も言わないなんて…後でお仕置きだかんね」
「それにしてもサイトが最後に使った魔法凄かったね」
「私のエクスプロージョンより遥かに強力だわ。私の魔法では、バラバラにしか出来なかったもの」
「あれが龍語魔法」
「サイトさんも凄いですけど、ミスタ・グラモン達も凄いですわよ。各国の精鋭が傷一つ付けられなかった怪物を倒しちゃたんですから」
「あれは、サイトが傷を付けたからよ」
「それでも凄いと思うわ。デルフさんの幅の中に正確に打ち込まなければ、絶対倒せなかったでしょ」
「確かにそうだわね。あいつ等そこまで腕を上げているのね」
「これで、彼等にまた叙勲の必要が出来ましたわね」
「でも姫様、この間したばかりですわ」
「私達だけではなく、各国の要人も守りましたわ。叙勲しなければ、私が笑い物になってしまいますわ」
「うっーーー確かにそう…ですわね」
「皆さん、先ずは、彼らの労を労いましょう」