X00-42-23
Last-modified: 2008-11-10 (月) 23:01:17 (5639d)

X00-42-22のつづきです。

「あなた、見事な戦いぶりでしたわ」
「ちょっとあんた、どうして空飛べるなんて教えてくれなかったのよ」
「娘っ子、相棒は未だ上手くゴールドドラゴンの力をコントロール出来ねぇんだよ」

「え?ちゃんと飛んでたじゃない」
「緊急事態で精神が昂っていたからだろうな。今飛んだらあっちにフラフラ、こっちに
 フラフラになるだろうさ。相棒ここんとこ忙しい上に、娘っ子らに精も根も吸収されまっくて
いたからな。練習どころじゃなかったんだよ」
「うっ…あっ…ははは」

「それにしてもあんた、何時呪文詠唱したのよ?」
「詠唱の必要は、ねぇんだよ。念じるだけでいいんだ」
「あんな強力な呪文が念じるだけで?そんなの不公平だわ」
「言っとくがあの呪文、本来の十分の一も出てねぇぞ」

「嘘!」
「ホントだ」
「言ったろ娘っ子、龍語魔法はトリスタニア位簡単に消せるって。相棒がその気になりゃ
トリステインそのものも消し飛ばせるな。だから練習して自在に飛べるようになれば
ゼロセンとかいうヒコーキより早く飛べるはずさ」

「そんなに速く飛べるようになるのっ?!」
「一日3時間、一カ月程練習すればな」
「そんなに掛るの?」

「ゴールドドラゴンの力をコントロールしなきゃいけねぇんだ。言っとくが
 並みの奴には、一生掛っても不可能なんだぜ」
「そうなんだ」

「おーいサイト」
「やったなギーシュ」
「君が装甲板を斬ってくれたおかげさ。でなければ僕らの攻撃は、一切効かないからね」

「お見事でしたわ、ミスタ・グラモン。それから水精霊騎士隊の皆さん。
 女王としてお礼申し上げますわ」
「恐縮です。女王陛下」
「この後、貴方がたの今回の勲功に対する会議を開きます。全員同席願いますわ」
「えっ?全員ですか」
「ええ、全員です」
「畏まりました」
(普通評価される側は、同席しない筈なんだが一体如何ゆう御積りなんだろう?)

「アンリエッタ女王陛下」
「如何なさいました?閣下」
「この度、ご結婚なされるそうで誠におめでとうございます。今日の救命の礼とご結婚のお祝いとしてサイト大公を我が国の大公に叙し、アルビオンのゲルマニア領を下賜したく存じます」

「まあ!随分と大きなお祝いで御座いますわね」
「いやいや、そんな事は御座いません。つきましては、アルビオンの共同統治領を本日の
 オークションで落札したレッサードラゴンと交換して頂きたいと存じますが」

「約500万エキューの代金としてですか?随分気前がよろしいですわね」
「んっ、いや、そうなればアルビオンは、ほぼ全てトリステイン領になるではないですか
 御嫌ですか?」

「いいえ、お受けいたしますわ」
「ご承諾有難うございます。ではこちらが権利書関係です」
「随分準備が宜しいですわね」
「ん、いや、後で踏み倒されたとか言われたくないのでね。サイト大公には、後で勲章を
贈ります」

「分かりました。道中お気をつけてお帰り下さい」
「うむ、それでは失礼致します」
 何故ゲルマニア皇帝は、これ程破格の事をしたのか?
 理由は、才人が領主税を取らない政策を執ったため、ゲルマニア領の民衆が大挙して
才人の領地に移住してしまった。
(戦費を回収しようと高税率を掛けていたせいもある)
結果領民が殆どいなくなってしまい、ならず者の吹き溜まりとなり、この一カ月弱で
治安維持のために30万エキューもの大金を注ぎ込む事になった。
つまり厄介払いなのである。
ゲルマニアは広大、その上元々自国領ではないので、執着もなかった。
その上オークションで貴重なレーサードラゴンが大量に競売に掛けられることになったため、
アルビオンを押し付けて、レッサードラゴンをタダで大量に入手しようと目論んだ訳である。
レッサードラゴンの方は、ロマリアとガリアが通常の約2倍の値で競り落としたため、
予定数までは、競り落とせなかったが、アルビオンは、無事押し付けられたため、皇帝
は、終始ご機嫌であった。その上結婚祝いも出さなくて済むため計算の上では、大幅な
黒字である。

一方トリステイン側は、アルビオン王国再興の最大の阻害要因のゲルマニアが撤退
してくれる事は、とても有難かった。無論ホーキンス達からアルビオンの現況報告
逐一届いていたため、遠からずゲルマニアが撤退するのは、分かり切っていた。
レッサードラゴン500万エキュー分で済むなら安い買い物だとアンリエッタは思った。
残るは、ガリアが所有する港1つのみ。
(王国再興は、思ったより早く出来そうね)

「アンリエッタ殿」
「聖下」
「この度ご結婚なされるそうですね。救命のお礼とお祝いを兼ねたものを差し上げます。
 それにこれは、始祖の遺言でもあるのです」
「始祖の遺言?」

「そうです。ご結婚相手のサイト大公は、『ガンダールヴ』それも特別の」
「ご存知なのですか?」
「はい、虚無に関する事は、色々調査しておりますゆえ。始祖の遺言の一節にこう有ります。
『彼の地より召喚されしガンダールヴ現れし時、我が血を引く者結ばれん。そこから
生れし子、我の力目覚めし者なり』と有るのです。」
(その先にその子等により我の願い叶うものなり、とあるのですがね)

「ですから貴女方がサイト大公に、惹かれるのは当然と言えるのです。それ故
始祖の力を持つ者が私生児では、困ります。何より彼女達の祖国の民が悲しむでしょう
 ですからサイト大公には、私と始祖の名において重婚の許可を与えます。
 3週間後にアクイレイアで私の即位3周年記念式典があります。そこで結婚式を行いましょう。
そして結婚式の神官は、私が務めましょう。そうすれば誰にも文句を言われずに済むでしょう」
 周囲から大きな歓声が上がった。
 無理もなかった。通常国王の結婚式は、その国の大司教が務めるもの。ブリミル教
 の頂点に立つ教皇自ら務めるなどあり得ない事であった。
 つまりこの結婚に異を唱える者は、異端(=死刑)とみなされる事になるのだ。
 それが例え陰口だろうとも。

「聖下、恐れ多いですわ。聖下に神官を務めて頂くなど」
「いいえ、私は嬉しいのですよ。始祖の御心にそえられる事が出来る。正に至上の喜びです」
「勿体ないお言葉です。聖下」
「それでは3週間後お待ちしております」
「聖下、有難うございます。宜しくお願いいたします」
「それでは、これにて失礼いたします」
「聖下、道中お気をつけてください」

「ジュリオ、落札したレッサードラゴンをトリステインの国中の豪商及び魔法アイテム屋
 に通常の値で捌くよう指示してください。そうすれば、税金となってトリステインの国庫を
更に潤す事でしょう」
「畏まりました」
(あと少しで我らの悲願が成就する…あと少しで)


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