X00-54
Last-modified: 2011-05-01 (日) 22:57:24 (4742d)
ルイズが夏休みに入ってからは、才人の仕事を邪魔をせずとも、一緒に居るモノだと思ってたのだが、一通の命令書が、儚い願いを打ち砕いてしまった
しかも、あの姉のエレオノールが何か奇妙な事になっている
『まさか、姉さまに限って………ないよね?』
そんな疑念を感じつつ、タルブ戦の報酬から才人がタバサを呼ぶ際に部屋に寄って渡された活動資金と、指令書に付いてた小切手と僅かな着替えを持ち、トリスタニアに出発する
ルイズの任務は、民衆に対する王政の評判の情報収集
いわゆるヒューミントである
情報収集は非常に大切な任務なのだが、貴族とは正面から戦うモノと、刷り込みが有るルイズ達学生には、誰であろうと非常に重い任務である
恐らく、きちんと任務を果たせるのはタバサとキュルケ位だろう
ルイズでなくても辛い
銃士隊のが世馴れしてる為、良い結果が出る筈である
だが、アンリエッタは敢えてルイズも使った
要するに、情報チャンネルの多様化である
報告は報告者の主観と偏見が絡み、更に女王に対する美辞麗句が混ざったりするものも、場合によってはある
貴族は女王と通じる可能性があれば任務をねじ曲げ、自分の都合の良い様にする場合が非常に高いのだ
特に宮廷政治参加者に、その傾向が顕著である
才人がルイズだから頼まれたと言ったのは、ある意味世馴れしてないが為に、何も知らない真っ更であり、見た事聞いた事を正直に伝えるからだろうと、判断したからだ
当然、アンリエッタも其を期待しているのである
只、才人が側に居た場合、才人の意見を聞きかねない
自分の仕事もあるし、ルイズも社会で一人行動する気概が必要と判断し、突き放している
だが、小切手が出てたにも関わらず、小遣いを渡すあたり、やはり才人は才人である
只、紆余曲折はあるだろう
色々な思惑が絡み、ルイズは一路トリスタニアに向かう
乗り合い馬車に乗り、貴族の証のマントを外し、地味なワンピースに袖を通し、靴だけは革靴である
平民で革靴は余程収入が高くないと履けない為、裕福な平民のお嬢さんと言った所である
腰には金貨の袋を下げ、如何にもである
杖は夏休み前に届き、きちんと契約済みである
ルイズが実家に連絡をし、代替分を手配して貰っている
以前と同じ型の杖であり、あくまで小型軽量のワンド(短杖)を使っている
使い勝手は良いのだが、材質にも因るが耐久性が低い為、余り戦いに使用すると、破損の浮き目に遭うのが欠点である
タバサの様なスタッフ(長杖)や、軍人に代表される武器として使える軍杖は、現在の貴族階級では流行らない
耐久性では現在主流のワンドと違って、群を抜いている
特に軍杖は武器としての使用前提の為、先ず武器として業物である必要があり、その分高価であり、軍務関係者でしか殆ど需要が無い状態である
軍杖にも、形状別に、
ナイフ(ダガー,マンゴーシュ等の短剣)
レイピア(刺突剣)
サーベル(ソード又はセイバー等の剣,又は、フランベルジュ,グレートソード等の大剣)
メイス(錫杖,棍,フレイル,ハンマー等の殴打武器)
スピア(ランス,パイク,パルチザン,トライデント,戟,ハルバード等の長短槍)
アックス(フランチェスカ,ポールアックス等の長短斧)とある
ちなみに村雨等の打刀や太刀、並びに伝説の剣たるデルフリンガーは、分類としてはシャムシール(曲刀)である
シャムシールを使うのは、三日月刀を装備するエルフや、カトラスを装備する海軍や海賊であり、ハルケギニアでは、剣はあくまでサーベルだ
剣の名称は地方によって、セイバーやソードと名称が変わるだけである
銘は無銘の物が殆どだ
ルイズはトリスタニアに付くと財務関係の役所に出頭し、女官の任命証と小切手を提出し、資金を調達する
最初は胡散臭げに見られたが、王政府発行の小切手と任命証はあっさり信用に成り代わり、ルイズの前に金貨と任命証が返却される
才人の渡した小遣いと合わせると、中々の小金持ちだ
ヴァリエールとは言え、まだまだ学生のルイズは、此処までの大金を扱った事は無い
ついつい気が大きくなってしまう
「うっふっふっふ、サイトも心配性よね。そりゃ、あたしが最初に馬を使うとか言った時は、止められて正解だったけど、別に大丈夫よ。何で袋を小口で複数持って、出来れば背負い袋を使って入れて、金貨を靴や靴下にも仕込めとか言ってたんだか……」
タッタッタッタッタッタ、ドン!?
誰かがルイズにぶつかり、そのまま走り去って行く
「あいた!?前見て走りなさいよ!!」
何か非常に腰が軽い
ふっと見ると、金貨を積めた袋が無くなっている
才人に貰った方であり、今しがた貰った方より、金額は多いのだ
「あ〜!?スリ!?」
既にスリは、人混みの中に消えている
「や、や、や、やられたぁ」
ルイズは呆然とする
いきなり、おっきくケチが付いてしまった
平民の女のコが其と解る大金を持って、おのぼりさん宜しくしてたら、狙われるのは当然である
貴族のマントは魔法の報復を意味しており、狙われる事は無かった為、ルイズはそう云った事に気が回らなかったのだ
才人の場合は、平民と言えども男であり、帯剣してる為、狙われない
だが、今のルイズはか弱い平民の女のコ
何時もの如く、貴族の積もりで動いてしまっても、誰も貴族としては扱わない
それなりに慣れてたトリスタニアの都が、いきなり牙を向いた様にルイズは感じる
「うぅ、だ、大丈夫だもん。まだ資金は有るもん。ちょっと宿屋をケチれば、大丈夫だもん……多分」
ちょっぴり涙目で唇を噛んでいる。とても可愛いらしい
思わず通りを歩いていた男達が振り返り、ルイズに近寄り、声を掛ける
「おんや、お困りかい?お嬢ちゃん?俺が優しくしてあげるよ。何処に行きたい?酒場?カジノ?ホテル?そっか、ホテルだね?いやぁ、俺参っちゃうなぁ。こんな可愛い女のコに、誘って貰えるなんて…………て、ちょっと!?」
ダダダダ
ルイズは必死に走って逃げる
「ハァハァハァ。な、何これ?何これぇ!?一体………どうなってるのぉ!?」
そりゃ、可愛い桃色ブロンドの天下の美少女が涙目になって唇噛んでたら、大抵の男は下心ハァハァで寄って来る
だが、貴族のマントと才人と言う守護者が居ないルイズは、そんな当たり前の事が判らない
アッチで声を掛けられては逃げ、逃げた先で声と同時に腕を掴まれそうになって逃げ
疲れたので噴水の段で休憩してたら、また声を掛けられて逃げる
もう、自分自身の容姿が誘蛾灯になっている事に気付かず、パニックに陥り、その様が逆に男心を刺激し、あちこちで声を掛けられて、更にパニクる
気が付いたらカジノの前に着き、そのまま気付かずに飛び込む
「ゼェゼェ、ハァハァ、つ、疲れた。み、水」
「いらっしゃいませ、マドモワゼル。当カジノへようこそ」
ルイズが扉を後ろに、両手を床に付いてゼェゼェと呼吸を整えていると、上から声が掛けられる
「え……はい」
上を見ると、画面一杯に、久し振りの美男子だ
『だ、駄目よ。あたしはサイトが理想なの!!でも、美男子も大事よね』
ついつい、そんな事を考えてしまうルイズ
やっぱりお年頃、美男子は別腹らしい
才人が見たら、爆笑するか苦笑するだろう
「喉がお渇きの様ですね、では此方に」
そう言って、ルイズを立たせ、手を恭しく差し出し、貴婦人のエスコートを完璧にこなす店員
ついルイズは何時もの如く、応じてしまう
「えぇ、良くってよ」
そのままエスコートされると、甘い芳香を湛えたワインが差し出される
「マドモワゼルの様な美しい桃髪にちなみまして、ガリアの貴腐ワインを用意させて頂きました。ご賞味あれ」
『水が欲しいんだけどな』
だが、貴族の見栄が出てしまい、つい飲んでしまう
「……甘ぁい。美味しい!!」
ついつい全部飲んでしまい、あっという間に回るルイズ
「ではマドモワゼル、当店で遊んで行きましょう。今だけは、現世から離れ、夢の世界へ」
酔ったルイズはコクリと頷き、金貨の袋を差し出し、全額がチップに換金される
何と言うか、世間知らず此処に極まれり
余りのちょろさに、ホストがルイズの居ない所で苦笑している
「さてと、何時もの如く、あのお嬢さんに夢を見せてやれ」
裏に回ってたスタッフが頷き、何時もの如く動き出す
「では、マドモワゼル。どのゲームに致しますか?マドモワゼルだと、ルーレットとかが相性良さそうですね」
「ポーカーやブラックジャックは?」
「残念ながら、当カジノのポーカーテーブルとブラックジャックテーブルは、負けず嫌いなディーラーしかおりませぬ。恐らく、あっという間に身ぐるみ剥がされてしまうでしょう」
「ちょっとやってみる」
「では、どうぞ」
ホストに案内され、ポーカーテーブルに付いて試しにチップを一枚ずつで賭けてみる
あっさり10連敗し、ブラックジャックに切り替え、やっぱり10連敗する
バカラも有るが、バカラは絶対にやるなと両親所か、教師に迄徹底されて叩き込まれている為、酔っていても避ける
破産者が大量に出るのがバカラなのだ
その代わり、一夜で億万長者になれるのもバカラである
魔法学院には、毎年禁を破ってハマり、親の財産を賭けさせられ、親事借金背負わされるのが一人位居る
残念ながら、賭け事の世界は貴族が杖振るっても、きっちり回収されるのが鉄則であり、用心棒にメイジが居る為、戦力差が出ないのだ
そんな訳で、ルイズはディーラー相手は酔ってる状態じゃ絶対に負けると気付き、最初に言われた通り、ルーレットに着く
ルイズの容姿でも誰も気にしない
青髪の少女貴族がたまに小遣い稼ぎで出入りしてるのを、客もディーラーも知ってるからだ
しかも、この少女は勝ち過ぎず負け過ぎず、きちんと計算し、トータルで勝ち越しする様にする計算迄行ってるのを、ディーラー側も把握してる為、苦笑しながら受け入れている
少女が勝てる相手なら自分も勝てると勘違いして突っ込み、他の客から絞り取れる為、良い客寄せパンダである
さて、ルイズの場合はどうだろう?
チップをルーレット用に交換し、ディーラーがベルを鳴らした後ルーレットを回し、ボールを入れる
試しにボールを入れた後、黒に一枚賭けてみる
ディーラーが終了を宣言
カラカラカラカラ、コトン
「12の赤」
ハズレ
「まぁ、まだ序盤よ」
その後、偶数奇数で一進一退、赤黒で勝ったり負けたり、段々白熱し、とうとう一目賭けを行う
チン
「ん〜と、15」
「では回します」
カラカラカラカラ
ヒュッとボールを入れディーラーが終了を宣言
コトン
「15の黒」
配当36倍がルイズにデンと出される
「やった、当たったわ。あたし、ギャンブラーになれるかも」
本当に根は単純である
その後も当たり当たり外れ、当たり当たり当たり外れと順調にチップが増えて行き、ルイズの前に、小山になったチップがあり、ルイズの姿を隠してしまう
当たった時は、前賭けのみの事に、ルイズは気付いていない
「今日のあたし、ツイテル。もう絶対にツイテル!!今度は全部賭ける。これ全部1!!」
周りの常連客達は苦笑している
このカジノの手に、すっかりルイズはハマっているのだ
ディーラーがルーレットを回し、ボールを入れる
コトン
「ゼロ、親の総取りです」
「……嘘!?」
ざぁとチップが引き波の音を立てて去り、ルイズはスッテンテンになる
『な、何これ?あたしのあだ名迄馬鹿にするの?』
常連客達はその際、ゼロとゼロゼロに賭けつつ、他のベットもカムフラージュでして、回収している
正に阿吽の呼吸である
だが酒が回り、熱中したルイズにはさっぱり解らない
そんな中、良く見るとチップが一枚残っていた
一番高い単位のチップである
「や、やった。まだ、すってない。こ、今度こそ……」
すると、バカラが目に入る
ルイズはふらふらと行こうとするが、ホストに止められる
「な、何よ?店員が客の行為を止めるの?」
「左様でございます、マドモワゼル。あのテーブルで起きてる声を、聞いてからでも遅くありますまい」
ルイズが言われてテーブルの話を聞くと、とてもこの世とは思えない声である
「ちょっと、それ夫に黙って持って来た土地の権利書。待ってぇ!?それだけは止めてぇ!!」
「ど、どうしよ……全財産所か、親族の金迄かっぱいで来たのに……」
「よっしゃあ!!今までの負け、城一個分取り返したぜぇ!!」
「待って、まだ賭けるの有るから。そ、そう、私、私を賭けるからもう一勝負〜〜〜!?」
ギャンブルに溺れた人生の縮図が展開されている
ルイズは流石に真っ青になる
「…な、何あれ?」
「ギャンブルに溺れた者達です。当店は、あらゆるお客様に御応えする為に、バカラも用意してますが、本来は健全な店で在りたいと願っております」
「ですが、負けたお客様には、例え女王陛下と言えども、きっちり取り立てするのが当店のモットーで有ります。アチラの額縁をご覧あれ」
指された先には、とある証文が飾られている
「…何の証文?」
「時の国王フィリップ三世陛下の負けの証文でございます。当時の店主がバカラの負け分を取り立てる為、王宮に赴き謁見で堂々と請求し、当時の国家予算の1/10の負け分を、取り立てました証拠でございます」
「…嘘」
流石国王、負けっぷりも凄まじい
………と、言える問題では絶対にない
「余りに堂々と取り立てた為、フィリップ陛下は笑いながら国庫からお出しになられたと聞いております」
「ですが、それが後のエスターシュ大公の謀反に結びついたのではと、我々の間では専らの噂でございます」
国家資金を博打でする国王なぞ、絶対に嫌だろう
ルイズはエスターシュに同情する
『……あたし、王家に忠誠誓うの、間違ってないかしら………』
「マドモワゼル、まだ引き返しは出来る筈です。勉強代と思って、お引き取り願いますよう」
これ以上やると身体で払うハメになって帰れないぞと、言外に言ってるのだが、ルイズは聞かない
「何よ?まだあるでしょ?このチップで、ブラックジャックやるわ」
「……仕方有りません、ではどうぞ」
チップをルーレット用から通常チップに変えた上に両替し、ブラックジャックテーブルに案内され、ルイズは席に着く
其処には、何人かの客が居る
「良し、心気一転だ。やるわよ〜〜〜!?」
そしてまた、トントン拍子に勝ち上がり、気分を良くした時点でディーラーが一騎打ちを申し込み、ルイズは心良く応じる
「ふっふっふ、やっぱり今日のあたしはツイテル!!」
シャシャ
カードが配られ、配役を見る
エースと9だ
もう勝ったも同然である
「レイズ、全部」
最初に賭けたのから、更に上乗せするルイズ
一番博打してはイケナイ性格に違いない
「ではダブルアップ」
「……嘘」
ディーラーはルイズの倍掛けだ
ルイズは悩むが
「良いわ」
突っ走るのみである
「では、ショウダウン」
「20」
「21、ブラックジャック」
「……あ〜〜〜〜〜!?」
エースとジャックの最強手で返され、ルイズはたっぷり借金を背負う事になってしまう
具体的に言うと、ヴァリエールの屋敷の半額程度
流石にルイズは真っ青になる
「ではマドモワゼル、負け分を耳を揃えて払って頂きましょう」
既に背後には、怖いお兄さん達が並んでいる
既にルイズはガクブルだ
「どどどどうしよ?そうだ、お父さま……い、言えない。ならお母さま………間違いなく殺されるわ」
「ちい姉さまにも言えない。姉さまはアカデミーの給料だけだからそんなにないし……そうだ、サイトに……」
「マドモワゼル。身体で払う道も有りますな。マドモワゼルならそうですな、一年程売春宿に勤めれば、完済出来るでしょう。おい」
パチンと指を鳴らしたディーラーに、怖いお兄さん達がルイズを両脇からガシリと掴み、連れて行く
ズルズルと涙目で、ルイズが連行されて行くのを、誰も助けない
何故ならカジノでは、ありふれた光景だからだ
そんな最中、奥の部屋に連れて行かれる手前、最奥に位置するバカラテーブルから、声が掛けられた
「ああ、その娘親戚なのよ。勘弁してくれない?」
「マダム、負け分を肩代わりすると?」
「えぇ、良いわよ。丁度止めようと思ってたし、足りるかしら?」
ルイズがマダムと呼ばれた人物を見ると、何と男である
だが、彼が払ってくれると言うなら、とりあえず黙る事にする
「流石マダムですな。お釣りも出ますよ」
「あら、有り難う。じゃあ、付けておいてね」
「かしこまりました」
「ほら、行くわよ」
「は、はい」
開放されたルイズは、男性の後にとてとて付いて行ってカジノを後にし、暫く距離を取った後、思い切り男性に怒鳴られた
「なぁにやってんのよ!!アナタは!?あんな身も蓋も無いやり方したら、はめられるに決まってるじゃない!!」
「ご、ごめんなさい。あ、あの、有り難うございます」
「この貸しは高いわよ?解ってるでしょうね?」
確かに非常に高い
ルイズは素直に頭を下げる
「本当に、本当に、ありが、ふぇっ、怖かっ、た」
グシグシ涙を両手で拭い、ルイズは必死に大泣きしそうになるのを押し殺す
「全く、何処のおのぼりさん?見た所、裕福な家のお嬢さんじゃない。どうせ、初めて来るトリスタニアにびっくりした所にスリに遇って、なけなしの金をカジノで倍増させようとして、見事にはめられたんでしょ?」
ぴたりと当てられ、ルイズはがくりとする
「そんなに、解り易いですか?」
「アナタみたいなの、沢山見てるのよ。じゃあ、付いて来なさい。一文無しでしょ?」
「う……はい」
ルイズが素直に付いて行き、着いた先は酒場であり、名前は魅惑の妖精亭だった
「お帰りなさい。ミ・マドモアゼル」
準備中の店内では、ビスチェを纏った可愛い(際どい)衣裳の女性が、テーブルや酒と食材のチェックを入れている
「はいはい皆、集まって〜〜」
パンパン
男性が手を叩くと、女性達が整列する
「それじゃ皆さん、今日から入る新しい妖精さんです。名前は?」
ルイズはいきなりの展開に付いて行けず、とりあえず答える
「ルイズです」
「じゃあ皆さん、妖精のルイズちゃんです。仲良くしてね」
「「「「ウィ。ミ・マドモアゼル」」」」
「……はい?」
ルイズはいきなりの展開に、キョトンとするしかなかった
* * *
任務を始めたルイズから、初日の手紙がアンリエッタに届いた
手紙の封を切り、読み進む
報告です
姫様、トリスタニアはとっても怖い所です
とりあえず、魅惑の妖精亭の店員になる事が出来ました
追伸、フィリップ三世陛下が、バカラで大負けしたのって、本当ですか?
「‥‥‥あらやだ、あのカジノに行ってしまったのね‥‥‥‥バレて無いでしょうね?」
国家財政のその他雑費欄に、アンリエッタの負け分が少々入っているのを知ってるのは、デムリとアニエスとアンリエッタのみであり
時々惚けているのは、半年に一度のカジノ通いでの勝利法を考えているせいであるのを、アニエスのみが知っている
* * *